「月がきれい(TVアニメ動画)」

総合得点
93.7
感想・評価
1793
棚に入れた
7550
ランキング
8
★★★★☆ 4.0 (1793)
物語
4.1
作画
4.0
声優
4.0
音楽
4.0
キャラ
4.0

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mm7 さんの感想・評価

★★★★★ 4.8
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 4.5 音楽 : 5.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

「いつもどうしていいのか分からなかった」

彼女に「是非観てほしい」と勧められて視聴。
素晴らしい作品に巡り合わせてくれたこと、本当に感謝してます。



ストーリーは中3の春からスタート。テーマは恋愛。
それだけで個人的には「重たいな...」と思いつつ、見始めました。

持論ですが、中学の3年間というのは、心に一番負荷がかかる時期だと思うのです。
お金にも、時間にも制限があり、交友関係はクラスや部活といった狭い社会のなかで構築しなければならない。ちょっとした失敗が、生活を狂わせてしまう。そんな緊張感をつねに持ちながら、未成熟なまま過ごす時期。それでも、多くの人が初めて本気で誰かを好きになる頃で、その楽しさや、辛さを経験する時期でもあります。

本作は、そんなギリギリのバランスの上で成り立っている青春時代の恋愛を、リアルに、けど美しく描いた作品でした。
上記の持論があったので、ストーリーが友人関係に関してドロドロするのではないかと心配していたのですが、中盤以降からは安心して観ることができました。



~ 「中学生の恋愛」の描写について ~

主人公の小太郎くんと、茜ちゃん。
二人の等身大の恋愛模様は、「以前、中学生だった大人」にはものすごく刺さりますよね。
自分の時は携帯メールでしたが、好きな子と何百件もやり取りをして、学校にいる時とは違う二人だけの世界がそこにはあるんですよね。そして、それが本人たちにとってのすべて。
その描写が本当にリアルでした。

学校生活においても、心の機微がすごく丁寧に描かれています。
好きな人が別の男子・女子と話している時のモヤモヤだったり、メールでは毎日やり取りしているのに、いざ二人で会った時は上手く話せなかったり、といった経験は誰にでもありますよね。でも、ある程度大人になっちゃうと少し打算的になったりして、うまくコントロールできちゃうので、中学生ならではの心理な気がします。
そういった部分の描写が本当に細かくて、毎話、心の古傷を抉られるような感覚を覚えました(笑)




~ シナリオ・演出について(以降、ネタバレ注意) ~


本作のネットでの感想を見ると、高く評価している人が大部分な印象を受けます。
個人的にも納得で、恋愛をテーマにした作品でこれ以上の出来はなかなか無いでしょう。
本当に終盤のシナリオは心に残るもので、10話~最終話は涙が溢れて止まりませんでした。
最終回エンディングの演出は誰が観ても感動できます(今書いてても泣きそう...笑)
ミスリードが上手でしたよね。途中で気づいた方はどれくらい居るのでしょう?幸い自分は最後まで思い至らなかったので驚きと感動で大変なことになりました笑


一方で、若干のご都合主義なラストが受け入れられない故の低評価もネット上では見受けられました。
中学時代の初恋が実って結婚なんて現実感に欠ける。といった所です。そういった感想に関しては、理解はできます。

しかしながら、自分としてはリアリティに欠けるハッピーエンドだからこそ、この作品の魅力が増したように思えています。
中学での初恋が人生を左右するということは、今の時代では殆どあり得ません。作中でお姉ちゃんが「これからどうするの?」や「別れたら?」といったイジワル(茜ちゃん談)を言っています。小太郎君のお母さんも「好きな子を理由に進路を選ぶなんて」と小太郎くんを非難します。これらは、極めてまともな大人の意見です。そして、小太郎くんと茜ちゃんを応援している視聴者だって、それは分かっているのです。自身や周囲の経験上、上手く行くわけがないのは分かっているのです。

小太郎くんのように、小説でドラマチックに想いを伝えることなんて出来やしないのです。
茜ちゃんのように、自分は何も悪くないのに傷つき、それでもなお彼を好きでいられること、果たして中3の女の子に出来るでしょうか?
おそらく難しいでしょう。その辺りは誰もが理解しているはずです。

それでも、大人からしたら無駄とも思えるような未完成の二人の恋愛がこんなにも心に響いてくるのは、視聴者に中学生同士の恋愛の楽しさや苦しさを蘇らせてくれるからだと思います。OP曲の歌詞には“今”や“最高の毎日”といった言葉が何度も出てきます。彼らは、大人になってしまった僕らと違って、“イマ”と全力で向き合っているんですよね。ED曲でも最終回のセリフでも「いつもどうしていいのか分からなかった」という言葉が出てくるのは、全力で向き合った結果です。

そしてもう一つ、「どうしていいのか分からなかった」経験は、中学生だった人なら誰にだってあります。
「あの時、自分がこうしていたら...、こう言えていれば...」といった後悔は誰にだってあるものです。
そして殆どの場合は、分からないなりに選択をして上手く行かず、そして大人になるのでしょう。

そのうえで「月がきれい」という作品で一番心に残ったのは、「どうしていいか分からない」なりに必死に悩んだ二人が、上手く行く「選択」をしたこと、そして手繰り寄せた未来を描いてくれたことです。
僕らの過去は、どの道上手く行かないものだったかもしれないけれど、もしかしたら二人のような未来があったのかもしれない。未完成同士の恋愛は決して無駄ではなく、その先の未来だってきちんとあり得たこと。それに挑戦した過去の自分に胸を張っていいこと。そんな青春を送れて幸せだったこと。そういった、現実につながる可能性や希望を見せてくれたことが、過去に中学生だった人間として、とても嬉しかった。


冒頭に持論として書いたように、中学時代というのはかなりストレスのかかる時期です。もう絶対戻りたくないとずっと思っていました。ですが本作を観て、少しくらいなら振り返ってみても良いかなと思えるようになりました。





他にも背景や、作画・声優さんの演技、挿入歌のチョイス、二人をとりまく登場人物たち。本作の魅力は数多くありました。
こういった素晴らしい作品を作っていただいたスタッフの皆様に心から感謝しています。

とんでもない長文になってしまいましたが、それだけ心が揺さぶられました。
そして、この気持ちを残しておきたいと思い、珍しくレビューなどしてみました。
ここまで読んでくれた方(いるのか?)、お付き合いいただきありがとうございました。




さいごに

最終回を観てから、この作品を教えてくれた彼女のLINE表記は「彼女さん」になっています(笑)
いつか二人で川越に行ってみたいな。

投稿 : 2020/11/18
閲覧 : 220
サンキュー:

12

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