「崖の上のポニョ(アニメ映画)」

総合得点
64.8
感想・評価
648
棚に入れた
3077
ランキング
3530
★★★★☆ 3.5 (648)
物語
3.3
作画
3.9
声優
3.3
音楽
3.6
キャラ
3.5

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ネタバレ

蒼い星 さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.9
物語 : 1.5 作画 : 4.0 声優 : 2.5 音楽 : 4.0 キャラ : 2.5 状態:観終わった

老境。

【概要】

アニメーション制作:スタジオジブリ
2008年7月19日に公開されたオリジナル劇場アニメ。
監督は、宮崎駿。

【あらすじ】

5歳の男の子・宗介は、老人ホームに勤めている母親のリサと崖の上の一軒家に住んでいる。
父親の耕一は貨物船の船長で、家を留守にしていることが多い。

そんな宗介が海辺で赤いさかなの女の子を拾って助けたことから、
さかなの子は宗介に懐いてしまい、宗介はポニョとさかなの子に名付けて可愛がる。

ポニョは、かつては人間だったが人類を愚かで身勝手と見限り海の眷属の魔法使いになっていた、
父・フジモトから逃げて家出をしていたのだが、結局は捕まって連れ戻されてしまう。

フジモトは「生命の水」を蓄えてその力で、海洋生物が地球の主たる「海の時代」を、
引き起こそうとしていたが、ポニョに「生命の水」を全て奪われてしまった。

“生命の水”の力を得て、人間の子供の姿を得たポニョ。
ポニョの魔法の影響で世界は台風と大嵐で大混乱。
脱走したポニョは、巨大な水魚に変身した数百匹の妹たちとともに、
嵐と豪雨の中を大津波の上を走り抜けながら宗介に会いに行くのだった。

【感想】

宮崎駿監督といえば日本を代表するアニメ界の巨匠ではありますが、
ポニョは評価が分かれていて批判寄りの声も目立つ作品。

後の2011年6月11日に、「No!原発」というプラカードを下げて東小金井で小さなデモを行い、
更には6月16日に、「スタジオジブリは原発ぬきの電気で映画をつくりたい」と社屋の屋上にて、
横断幕を掲げた、文明社会への不平不満を漏らしては理想社会を夢見る理屈っぽい老人。
その宮崎駿監督が、完全にとは言い難いものの自分の小理屈を極力封印して、
子供向けを目指して作ったものではありますね。

監督が田舎に対しての憧れや幻想が強いのか、舞台のモデルは広島県福山市の港町・鞆の浦。
絵本のような背景の描き方でレトロでノスタルジックな情感を出しているのですのが、
自分から見たら、2008年の当時の日本を描いたにしては妙に古ぼけた部分を感じさせますね。

2008年といえばiPhoneが日本上陸した年で、『ストライクウィッチーズ』が放送された年。
しかし、このアニメでの鞆の浦は田舎町といえど、
当時の文化や風俗などの時代感覚が欠けていて21世紀の日本から取り残された、
まるで竜宮城の浦島太郎状態なアナログな世界。
ポニョの世界はこれが70年代、ギリギリで80年代の前提なら、まだ合っていたと思います。

「子供には起承転結や整合性のあるストーリーなんか要らねえ」
と振り切った(開き直った?)感があるシナリオ。

千と千尋もそうだったですが、登場人物がシナリオの従属物ではなくてひとりひとりにハートがあり、
「自分がこうしたいからこうする」と、思いのままに行動している。
シナリオではなくて、キャラが物語を引っ張って動かす類の劇を多分目指して作っている。

完全なる無から世界や登場人物を創造しているわけでもなく、
そしてポニョの世界の住人を形成しているものは宮崎駿監督の中にある記憶や感情そのもの。

船に詳しくモールス信号をマスターしている幼児・宗介は家業が零戦の部品を製造してたことから、
軍事マニア少年(長じても続いている)であった宮崎監督の分身。
仕事で忙しく子供ほったらかしの父親・耕一は、
アニメアニメで忙しく吾朗ら実子を放置していた監督自身が元ネタ。
気が強くしっかりしてるものの、仕事仕事でなかなか家に帰ってこない夫に寂しさでむくれる、
母親リサなんかも宮崎監督の好みのヒロイン像でしょう。
そして、リサが働いている老人介護施設「ひまわりの家」の老婆のひとりのトキは、
宮崎監督が亡き母を思いながら描いたキャラ。            

地上の人間たちに関しては老境の宮崎監督の胎内回帰願望が少なからず含まれており、
そこに同調して感銘を受けるかで作品に対する印象が変わってくるとは思います。

そして、その登場人物たちをジブリ品質に裏打ちされたアニメーションで生き生きと見せる。
それは、ヒロイン?で魚の幼女ポニョも含めまれており、宗介とポニョら子供の純真な姿に、
大人たちは元気や安らぎを貰い、子どもたちは共感をしてキャッキャと楽しむ類の作品。

後半は子供の小さな冒険モノとセカイ系な展開となりますが、
基本は、宮崎駿流のハートフル志向な日常アニメ成分を堪能することにありまして、
宗介とポニョが好きになれるか?が視聴者の作品への好感度に直結していますね。

しかしながら、自立した対等の人間として名前で呼び合う教育方針で、
実子・宗介に家族内で『おとうさん』『おかあさん』ではなくて、両親を名前で呼び捨てにさせる、
古来の日本の価値観から離れたものを現代的要素として設定にとりいれてるものの、
え?そんな家庭あるの?自分の範囲では知らない。

半魚人状態のポニョが気持ち悪いなと思ったり、ポニョのおならみたいな息の音とか、
女友達の園児のクミコへの顔面放水で服がビチョビチョだとか赤ちゃんの鼻水とか気になって、
このアニメに気分が乗らなかったですね。
それらを含めて、風変わりであったり微妙に汚い部分もあるポニョの世界を、
愛しく思い受け止められる寛容さが視聴者には必要かもしれませんね。

他にも、プロの芝居にNOをつきつけて職業声優を排除してタレントだけで出演者をかためてまで、
声のリアル?にこだわる。それで何故、長嶋一茂を父親役で起用?とか意味不明であったり、
また、宮崎駿の描く日常やキャラ付けが、監督自身の願望や妄想を重ねすぎてて違和感多すぎですね。

ポニョや介護施設の老婆との交流シーンには時間を割いて描いてるものの、
宗介には同じ年頃の男友達もなく、いるのは女友達がクミコとカレンと二人だけで、しかも扱いが雑。

子供のありのままの姿や人付き合いを描いてるのではなく、
もしも宮崎監督が自分が5歳の子供だったらという願望を妄想して作った交友関係。
宗介が同年輩を蔑ろにして老婆ばかりと仲がいいのは創造主である監督が老人であり、
老人キャラに思いが偏っているから。これは、監督の我が入り込んで投影している結果ですね。

照れもなく『ボクもリサのおっぱいを飲んだんだよ』と普通の男の子が言わない台詞を言わせたり、
『しめしめ』『上々だ-』と子供が使わない老人みたいな言葉だらけの宗介に生の子供感がない。
作り込みが甘いのか単に監督の趣味なんですかね?
宗介のヘンテコ具合から宮崎監督の胎内回帰願望?幼児プレイ感を感じるのはそこですね。

キャラ主体で声のリアルにこだわりが強い割には主人公の宗介とポニョの父親・フジモトが、
やたらめったら説明台詞をわざとらしく呟いてばかりなリアリティの無さが気になります。

それらを差し置いても2020年の今の視点では、
2008年の作品であることを考慮してもそれ以上にアニメが古臭い。
ハウス名作劇場の系譜を継ぎ、世間の流行におもねることなく伝統的な自分たちのやり方を貫いて、
長らく日本アニメのトップランナーであったスタジオジブリ。
ジブリファンが宮崎駿監督に求めているものがそれであると言っても、
過去にはそれでよくても、アップデートしないものは色褪せて見えます。

自分が威張ることじゃないですし言い方が悪いですが、
例えば瞳孔で感情の動きを表現したり日常芝居の研鑽を積み重ねているアニメ会社など、
いろいろな会社の作品を幾度も目にして慣れ親しんでいるので、
ポニョの日常芝居がハウス名作劇場のテンプレにしか見えなくなる!

https://www.youtube.com/watch?v=Tmvhc7wMpjA ←元ジブリスタッフによる動画
https://www.youtube.com/watch?v=IXkGzIXJtCA ←2019年水準の作画と演出による動画

というふうにアニメの演出の方法も時代とともに変化の道を歩んでるなかで、
ジブリ流の演出は2008年当時の水準でも遅れていると思いました。

今でも蒸気機関によるメカのアクションが通用するレベルであったり作画の技術は高いながらも、
変わらなさによる物足りなさは拘りの方向性の問題でしょうか。

それは、34億円の予算と多くの子飼の熟練アニメーターの能力に裏打ちされた、
手描きアニメで圧倒されても、魚や蟹や波の作画が大変だろうな!凄く動いてる!と思って終わりで、
まあジブリだからやるだろう。てな感じですね。

生活芝居やキャラ主体を重視の側面から見たアニメーション作品としてのジブリの停滞、
宮崎監督の老いをポニョのアニメを見てて気になりましたかなと、
名探偵ホームズやラピュタなどにかつて魅せられた一ファン?として寂しい部分が少しありましたね。


こんなにも自分がポニョに拒否感があるのは、自分と宮崎監督の好みや価値観の違いということで、
全く参考にならないのですが、これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。

投稿 : 2020/11/20
閲覧 : 380
サンキュー:

45

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