「かぐや姫の物語(アニメ映画)」

総合得点
65.1
感想・評価
264
棚に入れた
1120
ランキング
2589
★★★★☆ 3.8 (264)
物語
3.6
作画
4.2
声優
3.7
音楽
3.9
キャラ
3.6

offingbook さんの感想・評価

★★★★★ 4.3
物語 : 4.0 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

2013年11月23日公開。約2時間17分。
スタジオジブリ制作。

『火垂るの墓』
『おもひでぽろぽろ』等の高畑勲監督作品。
日本最古の物語『竹取物語』を原案にした物語。

竹から生まれた少女が、美しく成長し、
最後には月に帰ってゆく。大人から子供まで、
きっと誰もが知る日本の物語に、
瑞々しい生命を吹き込み、激しい感情を与え、
美しい世界を描き、そして無常の物語へと紡いだ
この映画に、とても心を締め付けられました。

人の手で描かれた鉛筆画、水彩画が、
鮮やかさや美しさをそのままに、
自由闊達に動いている映像美に、息を呑みました。
草花、昆虫、獣、人間、四季、そのどれもが、
幻想的で神秘的で、何よりも芸術的です。
その時代の文化や風俗も丁寧に描かれていて、
もしかしたら、こういった映像の長編作品は、
今後生まれる事は無いのかもしれません。
もちろんこれは、アニメーションなのですが、
でも、アニメとはもはや違う、現実でもない、
二次元でもない、別世界を
見せてもらったような、そんな感覚です。
光の中に生み出された、朧気にも映るこの世界が、
誰しもの記憶の中にある、日本の原風景のようで、
この風景を大切にしたいという思いと共に、
懐かしさも感じました。

この映画を作り出した方々の、
この映画に費やした膨大な時間に思いを馳せると、
かぐや姫の半生を描いた物語と相まって、さながら
ドキュメンタリー映画のようにも感じられます。
制作陣の並々ならぬ努力と熱意とこだわりが、
作中の至る所から伝わってきました。

その世界の真ん中に描かれるかぐや姫。
その眩しい純粋さ、生きている喜び、
荒々しい怒り、そして哀しみ、
そのありありとした感情の揺れ動きが
ぶつかってきて、胸が苦しくなります。
自然の中から生まれ、そして最後には月へと
帰っていくかぐや姫のその姿は、
この星に生を享け、やがてこの世を去っていく
すべての命と重なっているようにも思えます。
かぐや姫の半生を通して、
時の流れの美しさと残酷さ。
生きていく事の自由さと不自由さ。
人間の尊さと愚かしさ。
相反する者同士が描かれていて、
それを否応なく思い知らされたような気がします。

かぐや姫の活発さや孤独さを、女優の
朝倉あきさんが感情豊かに表現されていました。
他にも地井武男さんや宮本信子さん、
高良健吾さんや高畑淳子さん等々、
豪華な俳優陣がそれぞれの役どころを
見事に演じられていました。

映画音楽は久石譲さん。実は久石さんが、
高畑勲監督作品に音楽を付けるのは
この『かぐや姫の物語』が初めて。
一音一音が心に響きました。
二階堂和美さんが唄う主題歌「いのちの記憶」も
素晴らしい楽曲で心を掴まれました。
優しくて温かみのある歌声と音楽であるはずなのに
映画を観終わった後だと、とても悲しく聞こえる、
そんな余韻を残してくれます。

全体的に、どうしても娯楽映画としての
要素は少ないのだけれど、一生に一度くらいは
観てもいい、いや、一生に一度は観た方が
いい物語の一つだと僕は思いました。

絶対に忘れないと誓った記憶も、
いつか失われていく。
叫び出したいほどの強い思いも、
いつか消えていく。
永遠に思える美しい時間も、
必ず移ろいゆく。
変わらないと思えていた人の心も、
変わっていく。

すべて変わっていく。
それだけが唯一、変わらない。

そのどうしようもないほどの哀しさだけが、
どうにもできない儚さだけが、
今もずっと胸に残り続けています。

投稿 : 2020/11/15
閲覧 : 97
サンキュー:

14

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