「新世界より(TVアニメ動画)」

総合得点
87.4
感想・評価
3340
棚に入れた
15913
ランキング
149
★★★★☆ 3.9 (3340)
物語
4.2
作画
3.6
声優
3.9
音楽
3.9
キャラ
3.8

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waon.n さんの感想・評価

★★★★★ 4.3
物語 : 4.0 作画 : 4.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

秀逸な世界観のサイエンス・ファンタジー作品

【First impression】
 初見では断念しました。というのも世界観になんとなく入れなかったのが原因なんですが、超能力が当たり前に存在しているっていうところですかね。当たり前っていうのは認知されているのではなくて、誰でも使えるというところです。しかしこれはのちにちゃんとした説明がなされるので、私の勘違いでした。
 冒頭を油断せず見ることが大切だと痛感させられました。中盤からはドンドン世界観にハマり一気に見てしまうほど面白い仕上がりいなっています。ちゃんと評価通りという感じで良かったです。

【Story synopsis】
 人類は呪力という超能力を身につけこの力をコントロールするために子供の頃から掟を守り暮らしている。
 主人公の渡辺早季は他の子どもよりもこの呪力の発現が遅れており、両親に心配されながらもなんとか12歳で呪力が発現し、これをコントロールするために全人学級という訓練学校に進学する。昔から馴染みの友人たちと一緒に楽しく暮らしていたが、ある事件が起こしてしまう。皆無事だったと安堵したが馴染みの友人が一人姿を消してしまう。なぜ消えたのか、消えたことに気づかないのか。どこか引っ掛かりを覚えながらも早季自身も忘れてしまい大人の階段を上がっていく。そこには大人たちが隠している真実があったことも知らずに。

【staff】
原作者は貴志祐介さん『青の炎』や『悪の教典』など執筆しているけれど、読んだことのあるのは後者のほうで、エキサイティングな内容で驚かされたと同時に、人間の2面性に恐怖を覚えた作品でした。ホラーとSFの両輪を巧みに使う作家さんのようで、まさに『新世界より』はそういった作品となっていました。

制作会社 A-1 Pictures 監督 石浜真史さん。 シリーズ構成 十川誠志さん。キャラクター原案 依りさんトータルデザインコンセプト 長澤真さん。プロップデザイン 岩永悦宜さん。

 とまぁ何名かの気になるスタッフを上げてみましたが、まだまだ私の足りない知識のため、見聞きしてこなかった方々でした。監督の石浜さんはこれが初の監督だったみたいです(wiki)。
 十川誠志さんは個人的にこの作品で大注目になりました。調べてみると100話以上になる作品のシリーズ構成も行っていました。『新世界より』では少年期、青年期、壮年期のように構成されています。辻褄を合わせ、分量を調節しそれぞれの期でクライマックスを作り出すことに成功し、さらには続きが気になるように終わらせていますね。凄いっす。
 トータルデザインコンセプトの長澤真さんについてよりもこのトータルデザインコンセプトってなんじゃいと思いまして調べてみたんですが、なにやらこの作品独特のスタッフのようです。んでもって長澤真さんを調べてみると監督がたまたまネットで見つけて声をかけたらやってくれたそうです。であるならとネットで探してみたら、この方の作風が上手く活かされている作品だったんだなと感じました。同時にプロップデザインというのにも目がいきます、これまであまり意識していない領域というか美術監督でしょという認識だったのですが、本当にアニメっていろんな人が絡んでいるなと思わされますね。プロップというのは背景に飾られている家具や装飾品などのことを指します。トータルデザインがあって、これを基にさらに細かく装飾品を書き込んでいくことで世界観を出すことができるという作りなんでしょうかね。ほかにもコスチュームデザインもトータルデザインを基にしてこの世界観独特なもので上手く描きリアルとの差別化をしています。
 そういう意味では、やはりSFよりもファンタジーの要素があるアニメの作りになった形だと思われます。監督がこれらの才能を集めた結果の化学反応としてみるとめっちゃ面白いなと感じます。

【Review】 
 前述のとおり長編小説『新世界より』の原題そのままにアニメ化されたアニメーション作品です。この小説は文庫版だと3冊に分けられているそうで、私自身は読んだことがないので、原作との違い。みたいなことは全然分かりません。
 とはいえ、長編小説を2クールで物語として上手くまとめられており、完成度は高いと感じます。
 少年期、青年期、壮年期の3部構成があり、それぞれの期で見どころを作りだし、起承転結がうまく作られています。これが時間の流れを作りだし、瞬間を切り取っただけでなく子供から大人へ至るまでが描かれているため壮大な物語のように感じられました。
 時間という当たり前のものをときに感じさせないアニメもありますが、私は時間という概念をしっかりと組み入れた物語のほうがリアリティがあり好きです(カラータイマーなどの制限時間的なものではなく)。
 少年期ではホラーの要素が所々に散りばめられ、子供ならではの恐怖や大人が観たときの恐怖とが描かれています。
 青年期では、思春期であるためラブストーリーという化けの皮を被っています。その実、大きく物語を動かすため。大人の隠していた事実や歴史が少しづつ明るみになってきます。
 壮年期ではこれまでのいくつかに分かれていた下地が一度に押し寄せ怒涛の展開を見せます。
 この大きく3つに分けられた年齢で起きる事件に伏線をしっかりとしのばせておき、最後に一気に結び付けてくる。この構成が素晴らしいです。後半になればなるほど驚きがあり、どうやって切り抜けるのかドキドキして観ることができます。
 つまりこれは成長を描いたアニメではなく、あくまでも見せたいのは出来事であり、超能力というファンタジー要素が現実に存在してしまったその未来を描くことに終始している。そのためブレることなく物語の軸を作ることができている点がこの作品の魅力の一つといえるだろうと思います。
 また、サイエンスの要素も面白い。そもそものトリガーは超能力を使えるようになったことであり、それ自体はファンタジーの域を出ませんが、その結果としてあるサイエンスの要素が面白く物語に相乗効果を生み出しました。このような要素の絡ませかたが見事な物語でした。
 この作品は最後まで観ることでやっとタイトルが回収できます。

 『新世界より』タイトルがそもそも好きなんです。もう新世界ってどんななんだろうっていうワクワクと、どんなメッセージが送られてくるんだろうっていう不気味さがあるタイトルですよね。アニメ化するにあたりこのタイトルに負けない内容を要さなければなりません。その勇気がすごい。
 まずは新世界が魅力的に描かれることが大事なので、物語と同じくらい、世界観の構築が大事な作品でした。小説であれば、そこまで意識することは無いかもしれませんが映像化するにあたり、ここが恐ろしいところでしょう。タイトルがこれだから仕方ないですね。逆に、新世界よりって言いながら本当に私達の生きている世界を再現するのも面白いですが、かなりの難易度をようするでしょう。ん~駄作になるか、傑作になるかのどちらかかなw
 世界観を上手く出したのが、長澤真さんでしょうかね。たまたまネットでみつけて声かけたって『ブレードランナー』シド・ミードを想起させます。監督はこうやって人をみつけて使うのが上手い人なんでしょうかね。
 しかし、プロップデザインにはしっかりとアニメでコンセプトデザインの実績もある岩永さんを起用するあたりはしっかりしていますね。この二人で世界観を作り出したんじゃないかなと感じております。

 あなたに届く新世界よりのメッセージはどんなものだったでしょう。
 

投稿 : 2020/12/18
閲覧 : 428
サンキュー:

7

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