「僕だけがいない街(TVアニメ動画)」

総合得点
91.6
感想・評価
3355
棚に入れた
15475
ランキング
29
★★★★☆ 4.0 (3355)
物語
4.2
作画
4.0
声優
3.8
音楽
4.0
キャラ
4.0

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ネタバレ

Fanatic さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0
物語 : 4.0 作画 : 4.5 声優 : 3.0 音楽 : 4.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

観始めたら止まらない!一級のサスペンスミステリー!ですが……

原作は、ヤングエースで連載されていた三部けいさんの連載漫画。
但し、アニメ化の時点では原作が完結しておらず、三部さんから凡そのプロットだけを聞いて制作されたため、最終話は原作とは若干違う流れになっているそうです。

制作はA-1 Pictures、監督は「SAO」の伊藤智彦さん。
シリーズ構成は「ハイキュー」「憂国のモリアーティ」等の岸本卓さん。
キャラデザは「青エク」「ズヴィズダー」等の佐々木啓悟さん。
因みに、CloverWorksで制作された「富豪刑事Balance:UNLIMITED」も、まったく同じ布陣です。

内容は、タイムリープ能力(本人はリバイバルと呼んでいる)を持つ主人公・藤沼悟が、過去に行って自分や周囲の人々を襲う悲劇を回避するというもの。
シュタゲと比べられることも多いですが、あちらほどSFやループ要素は強くなく、個人的には普通にサスペンスミステリーのつもりで観て違和感はありませんでした。

最初から最後まで、バランスよく張り巡らされる過不足のない伏線と、それらを適時回収してゆく中弛みのない展開は見事で、初話の掴みも完璧。
観始めると止まらなくなるようなテンポ作りと脚本には唸りました。

タイムリープ能力を利用すると聞いて、サスペンスものとしてはガバガバな内容にならないか不安でしたが、タイムリープ自体は突発的に起こる現象で任意に利用できるような設定ではないので、とくに問題ありませんでした。
ただ、タイムリープできた原因や規則性のようなものは最後まで示されないので、ちょっとご都合主義的な感じも。
「そういう謎現象だった」と、まるっと受け入れられない人には向かないかもしれません。

作画は良好で、ラストまで崩れもなく安定しています。

藤沼悟の小学生時代を演じた土屋太鳳さんは、本職でないわりにはそこそこ上手に演じられていたと思います。
ただ、成年を演じた満島真之介さんは、かなり棒気味……。
脇を固めるのが本職声優さんだったため、さらに演技の差が歴然で、違和感がなくなるまで多少の時間はかかりました。

この作品に限ったことではないのですが、普段のセリフはともかく、叫びや嗚咽など、感情の溢れるようなシーンでは、本職さんとの演技力の差が如実に出る気がします。

基本的には、万人におすすめできる完成度の高い作品だったと思います。
それを踏まえた上で、この後は、個人的な好みの問題による不満点となります。
ラストシーンや真犯人に関するネタバレを含みますので、未視聴の方はご注意下さい。

{netabare}―――――ネタバレ――――

まず一点目。
人間ドラマ重視で、犯人当て部分に力を入れている作品でないのは分かりますが、それにしても犯人が分かり易過ぎます。
初登場の段階で八代学が怪しいと思った人は私だけではないのでは?
その後も、他に怪しい人物が登場するわけでもなく、それどころか、職員室で賢也と話している時に意味のない目線のカットを入れる等、犯人を臭わすような演出まで。

「まさかこのまま、八代が真犯人ってことはないだろう」と思って観ていましたが、結局、特に捻りもなく八代エンド。
真犯人をあえて臭わせる場合は、犯人の背景や人間性も深掘りして動機の面などで意外性を持たせるのが鉄則だと思いますが、本作の場合はそこも物足りず。
もう少し登場人物を増やしたり、八代の見せ方を工夫するなど、終盤のサプライズの演出に気を使っても良かったのでは。

次に、結末に関して。
犯人である八代学の犯行を、タイムリープした藤沼悟が次々と阻止していくため、新しい世界線では、潜在的な部分はともかく、体面的には八代学は罪を犯していない一般市民になります。
最終的に藤沼悟を殺そうとしたことで犯罪者とはなりますが、それでも視聴者目線では殺人未遂。結局八代学って大したことやってないじゃん?となってしまいます。

個人的には、八代学にはもっと視聴者のヘイトを集めさせて、最後の対決で破滅する……というような、いわゆるザマァ展開に寄せた方がカタルシスを味わえたのではないかと思いました。
ずっとクレバーに進んでいた物語が、ラストだけは、八代学の藤沼悟に対する歪んだ依存心に頼りすぎた種明かし。
精神論や異常性というオチで、煙に巻かれたような気分になってしまいました。

最後に、メインヒロインに関して。
小学生時代のパートが時間的に大部分を占めており、描写も深かったため、最も感情移入しやすいヒロインは雛月加代だったと思います。
それだけに、藤沼悟が昏睡状態から覚めたとき、加代がすでに他の人と結婚していた展開にはすこし落胆しました。

もちろん、加代は途中で転校している上に、悟も何年も昏睡状態になっているわけですから、主人公だけがいない街で、それぞれ別の人生を歩んでいたというのはリアルだと思います。
ある意味、この結末はタイトル回収の一つだったと言えるかもしれません。
それでも、エンタメ作品ですから、悟と加代が結ばれるくらいのドラマチックな展開を残しておいてもいいかな?と思いました。

ラストは片桐愛梨との未来を暗示させるような終わり方で、それはそれでストーリーとしては納得なのですが、それならば全編を通して、もう少し愛梨を掘り下げるとか、愛梨との後日談にもう少し尺を割くとかして、鑑後感を上げる演出が欲しかったです。

因みに、実写映画の制作時も原作は完結しておらず、結末は原作ともアニメとも違っていたそうです。

{netabare}実写版ではなんと、最後に藤沼悟が犯人殺されるという内容だったそうですが、観にいった人、怒り出さなかったのかな?(;・∀・){/netabare}

PS:
後に聞いた話では、これらの疑問点は、原作版だとあまり気にならないということでした。
八代学や片桐愛梨の掘り下げも深く、原作は整合性のある構成のようです。
そう考えると、アニメ版は小学生時代にフィーチャーすることを意識して構成されていたのでしょうね。

―――――ネタバレ――――{/netabare}

……と、シナリオ面でいくつか好みに合わなかった点は挙げましたが、前置きしたように、全体的には非常にクオリティが高く、引き込む力は一級品のエンターテイメント作品だったと思います。

途中で止められなくなるような上質のサスペンスミステリーを一気見したい!なんていう気分の時にはもってこいの作品だと思います。

投稿 : 2020/12/13
閲覧 : 521
サンキュー:

21

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