「きみと、波にのれたら(アニメ映画)」

総合得点
70.8
感想・評価
101
棚に入れた
380
ランキング
1437
★★★★☆ 3.6 (101)
物語
3.7
作画
3.9
声優
3.4
音楽
3.5
キャラ
3.6

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ネタバレ

蒼い星 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9
物語 : 4.0 作画 : 4.5 声優 : 3.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

打ち上げ花火()がつないだ恋と結末。

【概要】

アニメーション制作:サイエンスSARU
2019年6月21日に公開されたオリジナル劇場アニメ。
監督は、湯浅政明。

【あらすじ】

向水ひな子(むかいみず ひなこ)は、サーファーである。
海が好きという理由で小さい頃過ごしていた千葉の九十九里浜の、
美しい浜辺のある町にある、海洋学部のある大学に進学をして、
ホテルのような外観の高層マンションに引っ越して8階に住んでいる。

ある日、隣の建設中のビルに不法侵入して、
無免許で危険な花火遊びをする若者の集団が火事を起こしてしまい、
ひな子が住んでいるマンションに飛び火して延焼。

ひな子は子供の頃から大切にしているサーフボードを抱えて避難を始めたが、
携帯と財布を持っていこうとして、エレベーターに乗り損ね逃げ遅れてしまった。

仕方がなく上の階に逃げて、
降り注ぐ火花からボードで身を守りながら屋上から地上に助けを呼ぶひな子。

そこへ消防隊が救助に現れて、はしご車のバスケットにひな子を乗せてくれたのが、
イケメン消防士の、雛罌粟港(ひなげし みなと)だった。

港は以前から、ひな子を知っていてヒーローと呼んでいたのだが、
ひな子は港に一目惚れ。

そこから、ふたりが付き合い始めるまで時間はかからなかった。
港をサーフィンに誘うひな子。ドライブしたりで回数を重ねていくデート。
幸せいっぱいに歌う歌は『Brand New Story』
旅行に行ったり抱きしめ合ったりで甘ったるいラブラブの日々。

だがそれも、クリスマスの日。1人でサーフィンに行った港が、
水難に遭った人を救助しようとして亡くなってしまったことで、
唐突に終わってしまうのだった。

結婚して一生添い遂げそうな最愛の恋人を失ってふさぎ込んだひな子だったが、
偶然にも想い出の『Brand New Story』の曲が流れている間だけ、
何故か自分だけが、水の中に恋人・港の姿を見えるようになっているのに気付くのだった。

【感想】

これまでの湯浅作品と違い、少女漫画のようなルックスで等身が高い作画に変化していますが、
絵柄に合わせたアレンジがあるものの、パースなどに湯浅監督らしさも健在でして、
更には水の表現の仕方が前作の『夜明け告げるルーのうた』と同一である作品。

なぜ作られたかと想像してみますと、

MAPPA→この世界の片隅に (27億円)
京アニ→聲の形 (23億円)
映画レビューサイトでは低評価ではありますが、
シャフト→打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?(15.9億円)

と、深夜アニメで有名な会社が、
アニメファン以外の客層にも見てもらう意図や戦略を持った作品を発表して、
各々が興行収入で実績を作っている風潮に自分も加わろうとしたのでしょうかね。

今回は「青春ラブストーリー」で「ゴーストもの」にチャレンジでありますが、
GENERATIONS from EXILE TRIBEの客層を当て込んだ企画なのでしょうか?

『君の名は。』などの、近年の劇場版オリジナルアニメのパターンを踏襲して、
主題歌はアーティストが担当。GENERATIONS from EXILE TRIBEが歌うは『Brand New Story』
そのボーカルである片寄涼太が雛罌粟港、そして、AKB48の元メンバーである川栄李奈が、
ヒロインの向水ひな子を演じる。他も若手女優の松本穂香、
2020年10月28日に不祥事を起こしてワイドショー番組を賑わせた俳優・伊藤健太郎。
舞台挨拶では湯浅監督以外はタレント4名なわけでして、
いかにもアニオタお断りな感じですね(笑)
EDのクレジットを見たら大地葉など本職の声優をサブキャラに添えていますけどね。

自分のこだわりだけでなく、広く多くの人にシンプルなラブストーリーを届けたいという、
湯浅監督なりに普遍的にウケそうなものを目指して、オシャレ感あふれる作りで、
若者の恋愛→ヒロインの心の成長の物語を、意図したものではあります。

東宝の配給で全国299館でテレビでも結構宣伝したものの、
その結果は興行収入が2.5億円と芳しくなかったですね。

映画レビューサイトを3つ見てみたところ、5点満点で3.3~3.4点で一致しており、
名作とも良作とも認定されてない模様。

個人の感想としては、声優初挑戦の片寄涼太の声が爽やかボイスではあるが、
抑揚がなく棒読みに近いのが気になる。川栄李奈は意外と悪くはないですね。
松本穂香は割とキャラ作り頑張ってるけど、伊藤健太郎もイマイチですね。

今回は脚本を吉田玲子1人に任せて湯浅監督は演出家に専念していて、
いつものクレしん風味を半ば封印。その代わりに恋人繋ぎや足の指のモジモジなど、
動きによる感情表現を拘ってみたという感。それが、ねっちこい表現になっているせいか、
ひな子と港が出会ってからの熱々なバカップルぶりは、見る人によっては、
例えば陰キャの精神が破壊されて呪詛を吐き散らかしたくなること間違いなく、
本当に湯浅監督凄い(笑)ここまでやる演出家って殆どいないでしょって意味で面白い。
自分はイチャつき自体は微笑ましく見られたのですが、ちょっとイラッときた(#^ω^)
のがBGMに使われた、ひな子と港が笑い声が散りばめられた『Brand New Story』
の4分間カラオケデュエットが長くて忍耐力いります。

これは、元々が別録りで歌う予定が、主題歌のボーカルでもある港役の片寄涼太のアイデアで、
本当に二人でデュエットをした結果として妙にイチャイチャした感じになってしまいました。
台詞は棒読みなのに、わざと下手にして感情のアプローチが出来てる歌い方で流石は本職。
演技じゃなくてデュエットをしてて本当にこんな空気になったのかもですけどね。
ここまでリア充オーラ剥き出しはやり過ぎにも見えるのですが、これは長いプロローグ。

PVで死亡が明確化されてるとおりに港が亡くなった後の本筋の話に入る前に、
いかにふたりが好き合ってかを見せつけるため、落差の演出に必要だったのかもです。

それが特濃特盛だった反面、イチャつきタイムが終わってからの残り60分が地味で寂しい感じ。
序盤にばらまかれた伏線消化で終わったかな?とも、思ってしまったです。
ゴーストになった港は他の人には見えないので、亡くなった恋人を呼び出すために、
毎回『Brand New Story』を歌っては1人ではしゃいでる挙動不審な変な人に見えてしまう、
そんな、ひな子が不憫に思ったです。そういう不健全な状態から卒業。港への依存からの脱却。
物語の終わりに向けてのひな子と港の関係のルーツであるとかの伏線の消化、
そして、ひな子が人生の新たな目標を見つけていくなどの物語の方向性は良かったですね。

ところどころ目頭が熱くなるシーンもあって、ふたりの切ないラブストーリーとして、
個人的には及第点なのですが、物語のラストに向けての展開が少し雑だったかな。
いかにも燃やしてくださいな建物で、EXILEの客層であるウェーイ系が本当にバカで、
ひな子が住んでたマンションだけでなくて、懲りもせずに再び大火事を起こす不始末は、
ギャグに見えました。そしてその大火事は、
港の成仏&ひな子の成長でエンディングを迎えるための、イベントフラグでもあります。

といった、あれ?と思う部分を内包しつつも脚本は悪くもなく好みの要素があるのですが、
こういう場合は二回目の観賞をしてみると、
ファーストインプレッションより冷静な目でシナリオや演出を見れたりするのですよね。

繰り返し見ても同じ場面で心が揺さぶられるのが、優れたアニメーション作品であると、
自分では思っていますが、『きみと、波に乗れたら』は二回目だと泣けなかったので、
そこまでの作品ではないかな?と。

固形水や波の表現。49分頃の、ひな子の笑顔やダンスの動きなど惹かれる部分があり、
映像力は確かに高いのですが、人物作画に感動を呼び寄せるまでの表現力が薄いのかな?
テンポよく小気味よい動きが湯浅監督の本来の持ち味。
自分の持つ演出能力を敢えて別ジャンルで試してみたチャレンジ精神は良いと思いつつも、
一年後の『日本沈没2020』でどうして、こうなった感。
このアニメが思ってたより売れなかったのもあるのかもしれませんが、
割と良いと思えたこの作品で得た経験を後の作品にフィードバックして欲しいなと思いました。


これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。

投稿 : 2020/12/01
閲覧 : 271
サンキュー:

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