「放課後のプレアデス TVアニメ版(TVアニメ動画)」

総合得点
62.5
感想・評価
355
棚に入れた
1769
ランキング
4720
★★★★☆ 3.5 (355)
物語
3.4
作画
3.7
声優
3.5
音楽
3.6
キャラ
3.5

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ネタバレ

Fanatic さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9
物語 : 3.0 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

科学考証と美術はすごい! けれど、脚本が……(゚Д゚)

You Tube版は未見。
「トップをねらえ」「エヴァ」「グレンラガン」のGAINAXと、富士重工業(SUBARU)が展開するアニメプロジェクト「SUBARU x GAINAX Animation Project」第1弾作品です。

監督は「アサルトリリィ」や「めだかボックス」等の佐伯昭志さん。
脚本は「ハイスコアガール」「夏色キセキ」「はがない」等の浦畑達彦さん。
キャラデザは「のんのんびより」「まちカドまぞく」「この美」等の大塚舞さん。

数人の女子中学生が魔法少女に変身して……という設定は他の魔法少女物と一緒ですが、ありがちな〝後半シリアス展開〟みたいなのはあまりなく、最初から最後まで一貫してリリカルでジュヴナイルで〝ぽわ~む〟な空気感。

作画は非常に丁寧で終始崩れもなく、特に美術面は秀逸。
毎回異なるアイキャッチも非常にクオリティが高くそれだけ集めたイラスト集が欲しくなるほどでした。

雲の上や海の底、宇宙など、毎回様々な場所が舞台となりますが、再現度への拘りにも目を瞠ります。
普通アニメだと、海の視認レベルの有光層より下でも、絵が見える程度にほんのり明るかったりするものですが、本作では本当に真っ暗になるので何が起こってるのかよく分かりませんw

宇宙でも、土星の輪とかプロミネンスとかプレアデス星雲とか……非常に美しい描写と言うだけではなく、最新の科学考証により明らかになった「宇宙での見え方」を基に配色しているらしく、とにかく美術面におけるリアリティの追求に職人気質を感じます。

スバルによるアニメプロジェクトということで、魔法少女の乗り物のエンジン音やグリルのデザインなど、スバリストなら『おっ!』と思うようなガシェットも心憎い! らしい!(←友人の受け売り)
とにかく作りが丁寧で、作品に対するスタッフの愛情が端々から感じられる作品でした。

また、科学考証面でもかなりの拘りが。
別々のパラレルワールドから一つの世界に集められた5人の少女がメインヒロインという、のっけからの多元宇宙論を取り入れた導入。
この時点で薄々でも気が付くべきでした。
あの、「トップをねらえ」を制作したGAINAXであったことを……。

平行世界を扱った作品というのは多数ありますが、本作はただ表面的に扱っているだけに非ず。
主人公のすばると幼馴染のあおいが、それぞれ元の世界では一つしかないはずの宝物を持っていると言う場面があり、これによって、お互いに知っている人物ではあるけれど、目の前のすばるやあおいは、彼女たちが知っているあおいやすばるではないと言う、何だか深く考えると混乱しそうな多元宇宙論を、このシーンだけは直感的に視聴者に伝える工夫がされていたと思います。

まだ何者にもなっていない、故に何者にもなれる可能性がある少女たちだからこそ魔法少女になれる……と言う一見ベタな設定にも、よくよくストーリーを追っていくと、【可能性≒量子論的世界観】と言う概念が基になっていることも窺えます。

天文学、航空力学、物理学、量子力学、そして一般相対性理論までを取り入れたSFテイストのエピソードに、最終的には魔法で解決しちゃうというジュヴナイルな展開を絶妙の匙加減でミックスさせた、かなり非凡な意欲作であることは間違いありません。
ただ、普通の魔法少女モノや美少女系ファンタジーのような「ゆるふわ作品」だと思って観始めた私は、どんどん置いてけぼりを喰らうことに……(・∀・)


評価をする上でネックとなったのは「脚本」と「難解さ」。

まず脚本ですが、序盤は盛り上がりに欠ける展開が続き、お世辞にも引きの強い作品とは言えません。
可愛らしいキャラクターやリリカルな雰囲気だけで引っ張れる人以外は、3話までにリタイアした人も多いのではないでしょうか。

徐々に盛り上がっていくのは4話くらいから。
中盤からからは個人回も増えて、だいぶ面白さが増してきます。

一気にボルテージが上がるのは8話以降。
全12話という尺でここまでスロースターターなのは、終盤に余程大きな仕掛けでもないかぎり、一つの作品としてはやはりマイナスポイントでしょう。
ラストには賛否あるようですが、{netabare}余韻が残るビターエンドは、ヒロインたちの状況を考えれば、個人的には納得のいくエンディングでした。{/netabare}

因みに、評価とは無関係ですが、魔法少女物にありがちな百合展開を期待してる人は注意が必要です。
あおいのヤキモチなど多少それらしい描写はありますが、主人公のすばるは、恋愛に対してかなり肉食系のヘテロセクシャルなので(ˊᗜˋ;)

もう一つ、「難解さ」の方がさらに深刻です。
ハードな科学考証に関してはさらりと説明台詞を入れるとか、アバンや予告を利用するとか、或いはスポークスキャラを作って最低限の解説くらいはあってもよかったのでは?と思いました。

8話以降は物語も佳境に入って盛り上がる反面、量子論的なワードも飛び交うため、私のような文系人間にとっては何だか煙に巻かれたような気分になります。
説明も、やり過ぎれば無粋になるのでサジ加減は難しいと思いますが、そこを上手くやれればもっと幅広い層に作品の良さを伝えられた気がします。

ざっくり言うと、科学考証オタクが独り善がりで作ったような演出で、視聴者を突き放した不親切な見せ方なんです。
一回観ただけでは恐らく半分もその良さが伝わらない……どころか、科学考証部分などは、説明されない限り何度観ても解らない可能性もあります。かと言って、脚本に何周もしたくなるほどの訴求力もない……。
まあ、何よりも、あにこれの低評価がそれを物語っています。

拾うべき所も多い作品ですが、アニメ作品としてもう少し、一般向けに分かりやすくするための工夫余地があったんじゃないかなあ、と、勿体無く思える作品でした。

投稿 : 2020/12/11
閲覧 : 299
サンキュー:

8

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