「亜人ちゃんは語りたい(TVアニメ動画)」

総合得点
86.4
感想・評価
1112
棚に入れた
5424
ランキング
196
★★★★☆ 3.7 (1112)
物語
3.8
作画
3.7
声優
3.8
音楽
3.6
キャラ
3.9

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ネタバレ

退会済のユーザー さんの感想・評価

★★★★★ 4.4
物語 : 5.0 作画 : 4.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

🏅宇宙よりも遠い場所

亜人の女子高生達がキャッキャウフフする学園コメディ。

かと思いきやヒューマンドラマかのような見ごたえを冒頭からカマしてくる良質で丁寧な作品。亜人が自己の出自に苦しんで運命を呪うといったようなファンタジックな世界観ではなく、アンコントーロラブルな事実に対しどのように向き合うか、というようなことがメインに描かれます。

亜人(デミ・ヒューマン。通称デミ)
おおっぴらに差別や迫害されることはないものの社会的にはマイノリティ、社会生活を送るにあたり「支援」が必要とされる社会的弱者。学園に数名のレアな存在。周りの生徒達も所詮は高校生、最初はデミに対する知識もないため腫物扱い、クリティカルな話題に触れると見てみぬふりをすることしか出来ません。

特殊な世界観の物語では主人公への解説役が不可欠ですが、本作は亜人を見たことがない生物教師高橋が生徒の相談に乗る形で直接本人たちから亜人の特徴などを説明されます。高橋は学術的好奇心からも亜人に興味津々でセンシティブな領域にもグイグイと食らいつくのでこのへんに嫌悪感を覚える方もいるかも。高橋はより正確な情報を集めたいだけ、それは生徒達にしっかりと向き合いたいという強い想いあっての行動ですが、周囲からは職務からの逸脱だとの批判も受けます。

亜人達は誤解やイジメなど周囲との違いを思い知らされる状況にも当然陥りますが、基本的には明るく前向きです。周囲よりも少し成熟している程度の強さに彼女達のこれまでの苦労が垣間見えます。高橋には研究対象としての好奇心という側面はあれど、亜人を全肯定してくれる姿勢は彼女達からしても救いをもたらす出会いだったでしょう。単純にウジウジしたキャラがいないという点でも観やすいです。

主人公の高橋は教師、あとは生徒と同僚で上司はほぼ出てきません。自然とイイ事言うのは高橋の役目。高橋のアツい説教を受け「なるほど!」「スゴイ!」みたいなリアクションが続くことである意味「俺ツエーハーレム」に見えるかもしれません。異世界モノではお互いの立場はフラットなことが多いですがこれは学園もの。高校生と教師が同じ視座で会話するはずがないのです。構造的には女子高生の内輪モノに似てはいますが、生徒同士ではやりにくい演出も可能にしたナイスアイデア。



この最終回がスゴイ(個人の感想です)
最初デュラハンは画面の絵面やインパクトを意識した飛び道具的アイデアに思えてしまい、ヴァンパイア・雪女・サキュバスなど見た目で区別が付かない種族で勝負しろよ、などと序盤は思ってましたが最終話で度肝を抜かれました。11話が実質最終話のような感動回をもってきてラストどうすんだろと思えばなんと水着回。前回がシリアス展開だったので最後はキャラの魅力全開で軽く終わらせるのかなあと。でも多分この水着回を最後に持ってくるのは最初から決まってたんじゃないかと思ってます。

デュラハンの京子は胴体と首の間が異空間でつながってます。そしてデュラハンがプールの中に潜るというのは人間なら手足を縛られた状態で潜るような自殺行為に等しく、個人での潜水は死を意味する。プールの中というのは京子にとって文字通り「宇宙よりも遠い場所」。ここで人間対亜人の構図から京子視点に移ります。人間もしくは他の亜人ですら簡単な行動が京子個人のみ不可能に近い。人間と亜人の違い、ではなく亜人同士ですら絶対的な違いがあることを一番わかりやすい京子の視点にて表現しています。


人間からすれば「色んな亜人」がいるということになりますが亜人達にとっては他の亜人ですら人間から見た亜人と同じレベルで異種の存在。生まれつき完全アウェイで生きて来た彼女達にとっては「俺か、俺以外か」でしかないのです。


自分たちにとって何の変哲もない場所が、ある人にとっては「宇宙よりも遠い場所」にも成り得る。逆も然り。誰かにとって世界が一変するような衝撃的な出来事が、少しの理解と工夫と視界を広げるだけで、実はこんなにも簡単にできてしまうという事実。潜水はデュラハンにとっては論外の自殺行為。しかしデュラハンに水中の景色を見せるだけならコミュ障のひきこもりにだってカンタンなこと。人間と亜人、違うもの同士理解し合いましょうでは終わらず亜人にだって亜人の理解が必要で、亜人だって亜人を救う事すら出来るというとこまで踏み込んだ作品。

「違いを疎ましく思わずお互いに理解する努力が必要」
「自己の世界の拡張には他人の存在が不可欠」
これだけでも素晴らしいテーマです。

でもこれは当事者目線が素晴らしい。
多数派から一方的に理解を示されて、
多数派から一方的に救われる話ではなかった。

誰かの世界を変えるような事でも、実は誰にだって出来る。
誰かの世界を変えるような事でも、実は亜人にだって出来る。
誰かの世界を変えるような事でも、実は自分にだって出来る。

誰にだって生きる価値はあるという生命賛歌の傑作。

投稿 : 2020/12/20
閲覧 : 491

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