「ソードアート・オンライン アリシゼーション(TVアニメ動画)」

総合得点
85.8
感想・評価
1006
棚に入れた
5198
ランキング
214
★★★★☆ 3.8 (1006)
物語
3.6
作画
3.9
声優
3.8
音楽
3.8
キャラ
3.7

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ネタバレ

なばてあ さんの感想・評価

★★★★★ 4.8
物語 : 5.0 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

焼き直しと批評性

原作未読。基本的な評価は『無印』と『Ⅱ』のそれに準じる。

まず、「なんだ、SAOも異世界転生ものをあらためて後追いするのかよ」と思わせておいて、それをちゃぶ台返すストーリー構成が巧みすぎる。そもそも「異世界転生もの」のオリジネータのひとつが『SAO無印』なのだから、フォロワの設定に寄せていかなくてもいいのではないかというツッコミを受けることは確信犯的だったと思う。

第一期アインクラッドの「本当に死んでしまう」あの緊張感を取り戻すために、ここまで壮大な世界観をインストールせざるをえなかったのか、・・・とメタな感慨に浸りつつ見始めるのだが、そのうち、そのメタで冷めた目線を維持するのがむずかしくなる。それはアンダーワールドの人びとの「フラクトライト」に感銘を受けざるをえないから。

アインクラッドの「焼き直し」でしかなかったのなら、緊張感は続かなかっただろう。けれどもボトムアップAIのフラクトライトの「気高さ」というストーリーのキーは、ものすごく効果的に画面を引き締めていく。あらゆるキャラクタは「だれかがトップダウンで設定したもの」に過ぎず、だとすればあらゆるアニメが喚起しようとする感情移入はすべて寒々しい浮薄なもので。

けれども、このボトムアップAIのフラクトライトという設定は、その寒々しさを括弧に入れるほどの射程を持つ。有り体にいうなら、『アリシゼーション』はメタアニメとして貴重な批評性を獲得しているということである。#10「禁忌目録」の激昂や#19「右目の封印」の決断においてまばゆく輝く「気高さ」は、ヒトとかAIとかの定義にこだわるカテゴリ論をはるか後方に置き去りにする速度の説得力がある。

じつは『アリシゼーション』前半の24話を見ている最中は、「SAO」を凡百の「なろう系」と区別しうる重層的世界観が希薄に思われて、現実世界との接点の薄さを残念に思っていたのだけれど、後半23話まで視聴したいま、ふり返ってあらためて分かったのは、『アリシゼーション』のほんとうに重要なことはすべて、この前半に凝縮されていたという事実である。

後半の感想はまた稿をあらためるけれど、アリスの「まっすぐさ」は、他のアニメの主人公が見せるそれとは次元がちがうし在りようが別である。このボトムアップAIというマジカルとも思える設定が、その説得力と肌感覚を高い水準で担保し続ける。ここまで主役を張ってきたキリトは、もはや後景に引っ込んでみえるほどに、アリスの杓子定規な几帳面さに胸が熱くなる。

梶浦音楽も『Ⅱ』のときはちょっと浮いてる気がしたけど『アリシゼーション』ではわりと収まりがよかった。あと、#19「右目の封印」ラストに挿入されたReoNa「虹の彼方に」はハマりすぎてヤバかった。アリスの茅野さんはさすがの演技派で、MVP。背景美術は、そもそも美術設定の詰めがすごくしっかりしていて、ほんとうに「異世界」は広いんだなあと思わせる内容。

ひるがえって、作画は無難。つまらないという意味ではない。後半の整合騎士との連続バトルは、すごく見応えがあった。けれども、シャフトやトリガー、ufotableとくらべると、作画の余韻があとに残らない仕上がり。まあA-1だし、物語をしっかり成立させるために、作画が悪目立ちすることを避けるというのが至上命題となっていたのだろう。それはそれで職人的気概を感じさせてほだされる。

そう、なにが職人的といって、ほとんど破綻していないということだろう。後半までの全47話、原作のすばらしい物語を「ニュートラルに」映像化することに心を砕いた。鬼滅バブルで作画への関心が高まるなか、むしろその浮薄な関心に背を向けて、やるべきことをしっかりやるという一本気な誇りを感じさせないではない。

あと、ロニエがかわいい。前半はティーゼの影に隠れて目立たないので残念。これは後半で補完。

衝撃:★★★
独創:★☆
洗練:★★★★☆
機微:★★★★★
余韻:★★★★☆

投稿 : 2021/02/18
閲覧 : 385
サンキュー:

5

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