「四月は君の嘘(TVアニメ動画)」

総合得点
91.6
感想・評価
5046
棚に入れた
20052
ランキング
29
★★★★★ 4.3 (5046)
物語
4.3
作画
4.3
声優
4.2
音楽
4.4
キャラ
4.2

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ネタバレ

RFC さんの感想・評価

★★★★★ 4.8
物語 : 5.0 作画 : 4.5 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

Melodies of Life

キービジュアルの掌を広げた女子が気になって視聴開始。

【作品概要】
 小学時代、ピアノコンクールの1位を総なめにした主人公有馬公生。
 しかし彼はとあることをきっかけに、自分のピアノの音が聞こえなくなり、
 ピアノから遠ざかります。
 中学生となった公生は、とある同級生のバイオリニストと出会い、
 物語は動き始めます。

【作品に対する感想】※2021/5/3 6)7)追記
 ・・・
 あかん、もう無理です つ_T)
 
 結論としては「どんなに辛いことがあっても人は生きていくしかない」
 ということなんでしょう。
 私の中ではトップクラスの秀作に巡り会えたと思います。

 命は終わってそれまでじゃない。
 その人が与えた影響は、いろんなところに連鎖して
 他の誰かを活かす、輝かせる。

 もちろん逆の場合もあるんですけど。

 この作品は2周以上周回することを強くお勧めします。
 最後まで視聴し、全てを知った上で2周目を見ると、
 些細な作画の意味、伏線など新たな発見がたくさんあると思います。
 

1)物語
 おっさんになると、この作品は親目線と本人目線のダブルパンチなんで、
 涙腺攻撃の威力が2倍になります。

 初めてかをりと公生が出会うシーン。
 なんでかをり泣いていたのか…ずっと引っかかってたんですよね。
 {netabare}
 最後のチャンス、想い人に出会う切っ掛けが実ったから…なんでしょう
 {/netabare}

 シリアスシーン以外は努めてはっちゃける演出が多かったと思います。
 作品のトーンが暗くなり過ぎないように…そういうことだったんでしょうね。

 また、音楽に関しては基本的に苦悩に重きを置いて描かれています。
 私はそういう気持ちに同調する側なので、
 彼らのレベルではないにしろ、共感して作品を視聴していました。

2)作画
 闇から光へ、晴れから曇りへ、モノトーンからカラフルへ、
 明暗の切り替えをはっきりさせた作画でした。
 また奏者たちの心の内を全身全霊をこめて描き切っていたと思います。

3)声優
 なんといっても演奏中のモノローグ。
 血の涙が出そうなくらいの威力があったと思います。
 特に早見沙織(井川絵見)の「響け…!響けッ…!」は秀逸。
 

 花江夏樹(公生)も苦しいシーン、解放されたシーン、
 負けじと相座武士(CV梶裕貴)、
 凪(CV茅野愛衣)の公生に煽られて「嘘つき、詐欺師、バカ」など
 最高でした。
 
4)音楽
 前半OP「光るなら」がいいですね。青春全開って感じで。
 裸くるくるにやたら花江夏樹さんが食いついてたのが面白かったです。
 
 後半ED「オレンジ」はひどすぎます。つ_T)
 暗示しているようにしか思えません。

5)キャラ
 君らホントに中3?
 というくらい、皆大人びていました。
 +4,5歳でもいいくらいでした。

 ➀有馬公生
  子供のころからの異常な環境ゆえの歪みなんですけど、
  基本うじうじ系なので好き嫌いは分かれそうです。
  あまりの自己肯定感の無さからの火付の悪さに、時々イライラしましたが、
  基本気持ちは分からんでもないと思いました。

  子供の頃の公生の境遇は決して幸せに満ちたものではなかったと思います。
  ただ、あれがなければかをりとあそこまでの接点を持つこともなく、
  武士、絵見と競い合うこともなく、
  椿の心の内を聞くこともなかったかもしれません。
  

 ➁宮園かをり
  基本明るくまっすぐなんですけど、時折見せる覚悟や言動が
  序盤から「死」を意識しているように感じられました。
  この娘の言動、自分の事よりあまりに公生寄りだったので
  「公生に託したい」のかなと感じていました。
 
  彼女が公生に与えた影響は凪まで届いており、
  人は一人じゃないということを印象付けられました。
 
 ➂澤部椿
  公生がガラスを拾おうとしたときにすぐさま止めに行った、
  あのシーンで一気に好きになりました。
  こういう気遣いできる娘、とても中3に思えません。
  後半になるほど自虐的に自己否定していますが、
  決して自己否定するほど嫌な子ではありません。
  この娘はこの娘なりの魅力をたくさん持ってると思いました。
  感情に振り回されるのも、年齢相応と思います。

  この娘のすごい所は、恋の面で大ピンチですが
  ライバルを貶めるって発想にいかないところ。
  それだけ公生のことを想ってるんでしょう。
  公生がそれで立ち上がれるなら…と。
 
  一度だけ「かをりが好きなのは渡だ」って
  公生にジャミング掛けたことがありますが、
  これはしょうがないレベルかなって思います。
  多分椿もかをりの本当の想いに気づいてたんだと思います。
  でもかをりは「渡が好き」って言ってるってことを
  自分への言い訳にしたかったのかなと。


 ➃渡亮太
  基本チャラ男は嫌いなことが多いんですけど、
  こやつの場合そこまででもないかなと。
  人の心の機微にもちゃんと気を配ってますしね。
  公生の兄貴みたいな立ち位置でした。
  多分こやつも途中から、かをりが好きなのは公生だと気づいてましたね。
  
6)お気に入りのシーン(2021/5/3追記)
 むっちゃ長いうえ、妄想マシマシです。
 {netabare}
 ➀かをりコンクール1次予選
  渡の感想は「かわいかったよー」で満足してたのに対し、
  公生に対しては震えながらの「どうだった?」。
  かをりが音楽と想いを届けたかったのは公生であり、
  その答えを聞くのがとても怖かったことが分かります。
  かをりはヒューマンメトロノームと揶揄されていた公生の演奏に
  一石を投じ、覚醒させたかったのでしょう。
  ただその想いを受け取ってもらえたのか、全否定されるのか。
 
  かをりにとっての公生の回答は100点ではなかったと思います。
  他人の話を聞きたいのではなく、
  公生がどう受け取ったかが知りたかったんだと思います。
  ただ、ヒューマンメトロノームと言われていた公生が否定しなかったことで、
  「想いはある程度は伝わった」とかをりは納得できたんでしょう。

  実際公生の方も、あまりに価値観をぶっ壊す演奏に
  呆けていた様子でした。
  かをりの演奏を「美しい」と思ってしまう正直な自分と、
  母が残した価値観が失われていく寂寥感。
  どうしていいか分からず気持ちだけがざわざわしている感じなんでしょう。

  その横で、椿がかをりの行動に驚いてる表情してたのも印象深いです。
  かをりにとって友人Aのはずの公生に「なんで?」って思いますよね。  

 ➁かをりコンクール2次予選
  
  涙を流して頭を下げるかをり。
  1周目「かをりらしくない」と違和感があったんですよ。
  聴衆の記憶に焼き付ける…だけであれば公生でなくても出来るんですよ。
  じゃあその本当の理由は…?

  一つ目は、かをりは死ぬ前に公生と一緒に演奏したかったから。
  それもコンクールに勝つ演奏じゃなく、公生の本当の演奏と
  かをりのすべてを出し尽くした「忘れられない魂の演奏」。
  子供の頃に公生の演奏に心打たれ、ヴァイオリンの道へと
  進んだことを意味あるものにするため…というのもあるんでしょう。
  それができる、ラストチャンスだと思ったから。
  「くじけそうな自分を支えてください」とは
  演奏の緊張でくじけそうなんじゃなくて、
  生きることにくじけそうなって意味だったのかなと感じました。
  
  二つ目は公生にピアノを弾いてほしいから。 
  子供の頃に引き込まれた公生のピアノ。
  公生に近づくことで知った、公生がピアノが弾けなくなった理由。
  かをりは何とかして公生に取り戻してほしかったんでしょう。  
  だからこそかをりは自分の演奏を止めてまで「アゲイン」したんでしょう。

  椿は椿で、ピアノに情熱を傾ける「かっこいい公生」に戻ってほしい
  願いのため、かをりと協力し、叶えられつつありました。
  反面、かをりと公生の「目と目でわかる」ようになりつつある
  関係を目の当たりにして、公生が手の届かないところに行ってしまう
  焦りを自覚します。
  椿が輝いているのは学校生活のレベルの話で、
  日本屈指とかいうレベルになると、もう空の彼方なんですよね。

  で、公生はかをりがコンクールに出場する理由を誤解したままです。
  かをりにとってコンクールの結果は二の次で、演奏で公生に想いを
  伝えられれば十分なことをわかっていません。
  かをりからすると公生の後ろめたさは全く見当違いなものだったと思います。
  
  公生の音が聞こえなくなる演出素晴らしかったです。

 ➂公生の家で俺修羅
  時々差し込まれる不穏なシーンを吹き飛ばすような修羅場。
  焦り始めた椿に強烈な追い打ちです。そら椿もキレますわ。
  よくよく考えたらかをりも自宅に帰ればよかったものを
  わざわざ男子宅に上がってシャワー浴びるとか、なかなか剛の者です。
  ましてや椿の気持ちを知っていた上でなら、
  もう少し気を遣いそうなもんですけどね。

 ➃かをり 狸寝入り
  公生に上着懸けて貰ってた時、絶対起きてますよね?  

 ➄かをりの言う「私達」に椿が入っていない
  かをりは悪意あってそう言ったわけじゃないと思うんですけど、
  椿はそう受け止めました。
  5m後ろで止まってる公生を引っ張ったら、
  1000m先まで走って行っちゃって置いてけぼり。みたいな。
  私も凡人側なので、椿の気持ちはすごく共感しちゃいますね。

 ➅公生1回目コンクール
  ここ無茶苦茶好きなシーンです。
  鬼気迫る武士、絵見の演奏。
  それを自然体で受け止める公生。
  一方で「自分はどう表現したい?」を初めて考えて臨むコンクールに
  かつて感じたことのない緊張も。

  一曲の中に公生のこれまでの生き様が濃縮したような曲になりました。
  鋼鉄のようにブレない公生にあこがれた武士。
  煌めく感情を表現する術を持ちながら
  機械の演奏を続ける公生を否定する絵見。
  ともに公生の影響を強く受けた二人。
  彼らと影響を与え合いながら、
  公生は母の呪縛から一歩を踏み出せたようで何よりです。
 「届くといいな」…かをりがソロを奏でた時と同じことを
  公生は考えているんですよね。

  独特の演出として、恵美と公生の演奏にはピアノソロのはずなのに
  Perc.やVn.が乗ってきました。
  特に絵見の方は激しい感情のうねりの表現として、
  素晴らしかったと思います。

  武士と絵見、お互いのこと良く解ってますね。

  あと、絵見を見て「可愛い」と言った渡を特に気にしていないかをりが、
  彼女の正直な気持ちの表れなんだろうなと思いました。

 ⑦ガラコン
  公生強くなったなと感じました。
  音が聞こえないことを逆手に取り、母の呪いとも向き合い
  言い訳して逃げないようになりました。
  ここでの「届くといいな」は天国の母へ…ですね。

  椿の焦りがどんどん大きくなってますが。 

  かをりの両親、2周目だと表情の作画に込められたものが
  拾えるようになります。

 ⑧凪 文化祭
  無茶苦茶好きなシーンその2。
  公生の成長がこれでもかと出るシーン。
  まだピアノの音が聞こえるから集中できてないって…おかしいでしょ(笑
  もう自在にスイッチ入れるあたり、ラスボスです。

  凪を壊すか成長させるかギリギリのラインで煽りまくる公生。
  彼の能力の高さがうかがい知れます。
  凪の必死の食らいつきが涙腺を刺激しまくりです。

  最終話で凪が「私の行く先に絵見がいる」とつぶやくシーンが
  ありますが、兄貴に見てほしいだけでやってたピアノに
  真摯に向き合う覚悟が出来たようですね。

  一方でかをりは公生との演奏をやって夢を叶え、
  公生が歩きだせるように背中を押しました。
  やることやってあとは死を迎えるだけ…。
  と、思ってたところをぶん殴られて立ち上がります。
  エアバイオリン、泣きそうになります。

 ⑨東日本ピアノコンクール
  公生が弾き始めた理由がちょっと納得できなかったんですよ。
  公生が「もう無理です」といった理由は、
  自分をピアノに引き戻してくれた大切なかをりを失ってしまうから。
  「一人でいいや」と、一番音を届けたいかをりを失ってしまうから。
  だと思うんです。

  ならばこれを乗り越えて弾けるのは…
  かをりの死を受け入れて乗り越えること以外ありえないと思いました。
 
  にもかかわらず、公生は弾き始めました。
  みんなに支えてもらったからっていう「義務感」で?
  義務感で弾けるなら、「無理です」とはならない気がします。
  あの時の公生にとって、みんなからの贈り物への感謝は
  「乗り越えた上での弾き続ける理由」であって
  「ピアノの前に立つ理由」にはならないかなと思いました。

  この辺上手くかみ砕けなかったので、教えて下さいましたら有難いです。

  途中にかをりを幻視したときの公生の表情は心に刺さります。
  かをりがお別れに来たことを悟ったうえでの必死の競演。
  「行かないで!」の必死の訴えは、
  チェルシーの時に出来なかった後悔からなのでしょう。

  さよなら…ガラコンで公生の母を見送った時と同じセリフ。
  最後の最後でかをりの死を受け入れられたんですね。
 {/netabare}

7)ちょっと理解に苦しんだところ(2021/5/3追記)
 {netabare}
 ➀公生はなぜ母親の味方?
  ある程度年齢を重ねてくると、厳しさの中の愛情といったものにも
  気づけたりするんですけど、幼少の公生にそれが出来たと思えません。
  もはや虐待と呼んで差し支えないレベルの叱責を受け続け、
  なぜ母親をかばうような心持になったのか…
  公正でないと分かりません。

 ホラーの公生ママは公生が音楽から逃げるために作り出された
  公生イメージだったとのことで、実際はもっと愛情あふれる
  母だったようです。
  ただ、そうだとしても、
  一人で生きていけるようにという思いからだったとしても、
  時間がないと焦っていたとしても、
  あざができるほど叩きまくってというのは教育ではないと思います。

  かをりとの出会いで公生はピアノに還ることができましたが、
  あれがなければ公生のピアノの技術は無駄になったわけですからね。
  本末転倒です。

 ➁相座武士、井川絵見はなぜ公生を待っていた?
  こういう熱い流れは好きなんですけど、
  トップレベルの人間の考え方ではないかなと。
  学校の中での友情物語であればこれでいいんですけど、
  個人的接点がない公生に対し、肩入れしすぎに思えます。
  止まってしまった公生にかまってる暇などないはずでは…?
  結果論ですが、二人の演奏を昇華する切っ掛けになったんですけどね。
  特に絵見。 
 {/netabare}


8)ふと思う
 視聴中、レビューのタイトルにした歌が脳裏に響いていたので、
 歌詞を書きます。FinalFantasy9のEDテーマです。
 歌詞の一部は作品にあうように、ちょっと改変します。

 「公生パート」
 あてもなく彷徨っていた
 手がかりもなく探し続けた
 きみがくれた思い出を心を癒す詩にして
 約束をすることもなく
 交わす言葉も決めたりもせず
 てのひら合わせ確かめた日々は二度と帰らぬ
 
 記憶の中の手を振るきみは
 ぼくの名を呼ぶことができるよ

 溢れるその涙を輝く勇気に変えて命は続く
 夜を越え疑うことのない明日へと続く

 「かをりパート」
 飛ぶ鳥の向こうの空へいくつの記憶預けただろう?
 儚い希望も夢も届かぬ場所に忘れて

 めぐり逢うのは偶然と言えるの?
 別れる時が必ず来るのに

 消えゆく運命でも君が生きている限り命は続く
 永遠に、その力の限りどこまでも続く

 私が死のうとも君が生きている限り命は続く
 永遠に、その力の限りどこまでも続く

投稿 : 2021/05/03
閲覧 : 309
サンキュー:

27

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