「ゆるキャン△ SEASON2(TVアニメ動画)」

総合得点
85.1
感想・評価
614
棚に入れた
2417
ランキング
248
★★★★☆ 4.0 (614)
物語
3.9
作画
4.1
声優
4.0
音楽
4.0
キャラ
4.1

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ネタバレ

ナルユキ さんの感想・評価

★★★★★ 4.9
物語 : 5.0 作画 : 4.5 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

冬キャンプの楽しさに一匙の厳しさを

相も変わらず、観ればキャンプ趣味を肯定的に捉えることができるようになっている作品だ。ただ、1期を観て実際にキャンプをやってみた人たちの中には、上手くいかず苦い思い出を作って帰ってきた方もいるのではないだろうか。そんな方の共感をも誘うのが本作の第1話である。
1人キャンプの醍醐味も、大勢でキャンプをする華やかさも、第1期よりさらに深く伝わってくる展開が魅力。冬キャンプを通じてさらに深まっていく女子の絆に心暖まる。

【変わらない魅力:1人キャンプを楽しむ少女・志摩リン】
現在では当たり前のように1人キャンプを繰り返す志摩リンにも「初めて」があり、失敗もあり、父母やキャンプ場の管理人に助けられてなんとか成立させた時期もあった。テントを立てる時にペグを曲げてしまったり、火起こしも苦戦しキャンプ飯も大失敗。木を切る道具を持ってくれば良かった。椅子を持ってくればお尻が痛くならずに済んだよな────敢えてこの2期の始まりをリンの初キャンプで飾ることで、しっかり者な彼女にも嘗てはこんな時があったんだというほっこりとした気持ちを与えつつ、1期1話と対比して志摩リンというキャラクターの奥行きを深める効果が得られている。これがアニメオリジナルの部分だというのだからやはりこの製作陣、『ゆるキャン△』という作品をよく理解している。
そんな回想を踏まえた上で1期の続き。12月のクリスマスキャンプを経ることでソロキャンパーが誰かと一緒にやるキャンプ──グループキャンプ──の楽しさに目覚めたかと思いきや、他の皆がアルバイトに勤しむ大晦日にまた独りで静岡方面へと繰り出し、そこで年を越して新年を迎える。その感想をなでしこが訊いてみると、リンは迷いなく「よかった」と答えるのである。

『クリスマスの後、ソロでキャンプして改めて思ったよ。私はやっぱり1人のキャンプも好きなんだ、って』

『同じキャンプでも、“1人だと全く別のアウトドア”で、見たものとか、食べたもののこととか、1人でゆっくり物思いにふけったり────』

『なんていうか……ソロキャンは“寂しさも”楽しむものなんだ、って』

キャンプといえば夏か秋に家族や友人などを囲って大勢で楽しむもの。そんなキャンプへの「固定観念」を誰も傷つけることなく緩やかに破壊するのがこの『ゆるキャン△』シリーズだ。
“寂しさも”という含蓄ある台詞が印象的である。1人キャンプのメリットはグルキャンにはない「自由」や「気楽さ」などが思いつくが、そんなまるで人と関わるのを面倒くさがるような部分ばかり褒めるものでもない。そこで“1人だと全く別のアウトドア”という台詞にも注目する。
1人だからこそ気づけること、すぐ傍に人を置かないからこそできる挑戦、そして「寂しい」というマイナスな感情をわざと抱くことで高まる感覚────そういったものをリンたちソロキャンパーは求めているのではないだろうか。とくにマイナスな感情をわざと抱く、という点では恐怖を楽しむホラー鑑賞に通ずるものがありそうだ(一緒にしてほしくない人がいたら申し訳ない笑)。
1期で楽しいクリスマスキャンプを共に過ごしたのに、それでも「1人キャンプ」を選び続ける志摩リン。そんな彼女の姿勢は、なんと常に「友達みんなとキャンプがしたい」と考える各務原なでしこ(かがみはら - )の心の方を動かしてしまう。

{netabare}(私も……リンちゃんみたいにソロキャンプやってみたいな){/netabare}

【ココが面白い:1人キャンプを楽しむ少女・{netabare}なでしこ{/netabare}】
{netabare}2人が互いのキャンプスタイルを尊重し合う仲だからこそ、グルキャンに参加したリンの次はなでしこがソロキャンをする番である。そんな脚本の都合かどうか定かではないが比較的、自然な流れでなでしこは1人キャンプに興味を持ち、実行に至る。
友達が楽しいと思うものを自分も知りたい。「寂しさも楽しむ」って何なのか知りたい。各務原なでしこという少女は1期の1話から変わらない、好奇心にあふれる女の子だ。
そんな彼女が再びリンの師事を仰ぎ、1人キャンプを安全に行うために入念なチェックリストを作り時間をかけて消化していく。その様子はダイジェストで送ってはいるものの、挿入歌『この場所で』と合わせることで初めてのキャンプスタイルに挑むなでしこの「ワクワク感」を演出しており、非常に見応え・聴き応えのある1分15秒間となっている。{/netabare}
{netabare}独り旅に独り外食。視聴者にとっては些細な出来事かもしれないが、高校生の女の子にとっては人生における一大イベントだ。天真爛漫な彼女が自分自身で大人の階段を登りつつあることを自覚する姿は可愛らしく、食べ物も本当に美味しそうに映り、食欲がそそられる。
そしてなでしこの1人キャンプは実に彼女らしい。リンのキャンプは書いてしまえば『孤独のグルメ』風であり、あまり人と関わらず自身の心の内や天の声(CV:大塚明夫)で状況をツッコんだり、キャンプ道具やテクニックを解説する人気パートであった。あまり料理をせず、キャンプ先周辺の飲食店に赴くことが多いため尚更、孤独のグルメを彷彿とさせる雰囲気を醸し出している。
ところがなでしこと人との繋がりはソロでも途絶えることはない。1人キャンプをしている筈なのにたまたま近くになった見ず知らずの家族と仲良くなってしまうのだ。その切欠もやはり食べることも作ることも好きな彼女なりの方法であり、同じ1人キャンプなのにリンとはここまで対照的になってしまうのかと微笑んでしまう。
キャンプをあまり楽しいと思っていなかった子供たち。そんな2人に意図せず「アウトドア」の楽しさをなでしこは教えていく。
キャンプで食べるご飯は何でも美味しいよ。
初めはお肉を焼くだけでもいいんだよ。
失敗して、変なのが出来てもちょっと面白いよね。
リンからキャンプの楽しさを教わったように、彼女もまた意図せず誰かにキャンプの楽しさを伝えている。この「布教」がいつか彼女の仕事────人生の中心に置かれていく。劇場版との繋がりを強く感じさせる部分だ。{/netabare}

【そしてココがためになる:冬キャンプの厳しさを学ぶ】
1期はキャンプの楽しさを描いている作品だった。2期はそんなキャンプの楽しさも描きつつ、キャンプにおける費用の大きさや自然の脅威などの欠点も描いており、より深く1期以上に「キャンプ」というものを詳しく描写していると言ってもいい。
とくに冬キャンプの「寒さ」は時に命の危険すら及ぶ。準備不足、リサーチ不足を自覚し、自覚したあとにどうするか。常に上手いこといくわけではない、自然の中で楽しむものだからこそ、そんな自然の厳しい一面も本作はきちんと描いている。
どんな場所に行くにしても自然の中に行くならば「連絡」が取れるようにしておく。その重要性と怠った時の危険性をこの作品はリアルに、そして真剣に描いている。
{netabare}鳥羽先生のお説教が良かったな。「怒り」じゃなく「心配」の感情が全面に押し出されつつも何が足りなかったのかをきちんと言葉にして伝えて、叱るばかりでなく顧問としての自分の落ち度も認めてこれからどうするべきかを提案する。これは千明ら3人も先生の言葉がスッと頭に入ったんじゃないかと思う。{/netabare}
そんな厳しさを描いたあとに「暖かさ」も描く。温かいテントの中、薪を燃やすストーブの暖かさ、そして人の「優しさ」に彼女たちが触れる。
トラブルを乗り越えた先に見た3人だけの景色。それは3人の友情をより深めた証。少し照れくさそうに、少し寒そうに、だけど楽しそうな3人の姿にやはりほっこりとしてしまう。

【そしてココも面白い:締めはやっぱりグルキャンで】
{netabare}終盤はみんなで伊豆キャンプだ。志摩リン、野クルメンバー、斎藤恵那、鳥羽先生、あおいの妹・犬山あかり────計7人でキャンプをする楽しさを全開に描いており、その中で描かれる「食事」も安定の飯テロである。
その中でのちょっとした夜更かしの中での会話が染み渡る。なでしこと恵那、1期では無かった2人だけの会話。その何気ない会話と、少し未来のことを話す2人の会話が心地よく、なんてことのないシーンだが2人がなんの遠慮も気遣いもなく、腹を割って話している日常がこの作品の象徴とも言えるかもしれない。
リンにも変化が見える。みんなでキャンプはしている、だが、彼女はマイペースだ。みんなが車の中で、彼女は1人だけ原付バイクで移動し、朝早く起きれば1人だけで遠くの温泉に行ってみたりする。
それでいいのだ、彼女が彼女らしくいられる。みんなでいても「自分らしく」いられる場所がここにある。1期では「苦手」とまでいっていた大垣千明ともLINEをするようになり、まるで恵那とする会話のように冗談を飛ばしたり、軽めにいじったりもしている。

千明『お年玉は○マゾンギフト券でいいですよ!!』

リン『2万円分送っとくよ、使用済みの奴』

なでしこ以外とも仲が良く、そして着飾らず、自分らしくいられるようになっていっている。疲れて自分だけ眠ってしまってもいい、温泉に行ってもいい。それを怒る人はここにはいない。
対等な関係──友達──だからこそ、そこに気遣いや遠慮はない。それぞれがそれぞれの時間を楽しむ絶妙な距離感が素敵であり、そんな5人と先生、妹が巡る山梨や静岡の風光明媚(ふうこうめいび)な土地や名所をやはり如実に再現してアニメーションに落とし込んでいる。{/netabare}


【他キャラ評価】
土岐綾乃(とき あやの)
少々の出番だが、なでしこの浜松時代の幼馴染という絶妙なポジションと気だるげでゆったりとした話し方で一躍、人気キャラクターの1人になった。
昔のなでしこを知っている気心の知れた仲なだけではなく、彼女が遠くに行って知らない趣味を始めてることに少し寂しさも感じてそうな────それでもこの作品のキャラの例に漏れず、互いを尊重する優しさもあって先ずはリンとも仲良くなるのが素晴らしいのである。
{netabare}3期ではリンとなでしこの3人で大井川沿いでキャンプをするなど、メインキャラクターたちとがっつり交流も見せる予定であり、そんな再登場が非常に待ち遠しい。{/netabare}

【総評】
全体的に安定の2期だ。1期はキャンプの楽しさをひたすら描いていたが、2期ではそんな楽しさだけではなく、冬キャンプの危険性や1人キャンプにおいて大切なポイントも説いており、1期で欲しかった描写をきちんと補填している。
{netabare}もちろん、厳しさだけではない。志摩リンの初めてのデイキャンプ、意外なメンバーの組み合わせで行われた山中湖キャンプ、そしてなでしこのなでしこによるなでしこらしいソロキャンプを描き、最後には登場人物オールスターでのキャンプも描いた。どのキャンプも本当に楽しそうで、出てくる料理の描写も1期と同じように飯テロ不可避である。
その中で冬から春へ、そして未来へと緩やかに時間が流れている。漠然とした将来への不安を少しばかり抱きつつも、彼女たちは流れゆく「今」を全力で楽しもうとしている。1人キャンプを、そしてみんなでやるキャンプを。{/netabare}
気心をしれた友達同士の和気藹々(わきあいあい)とした雰囲気に癒される。1期では出会ったばかりだったキャラクターたちが、2期では腹を割った5人の成熟した関係性が構築され、さらに強固となっている。時間は緩やかに流れているが、この友情は変わらない。劇場版を考慮しなくても視聴者にそう感じさせる日常と関係性の描写があり、1期からの面白さもありつつ、2期だからこその面白さも感じさせてくれる作品であった。

投稿 : 2023/05/18
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サンキュー:

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