nyaro さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
何年経ってもいろいろ考えてしまう。22年9月 再視聴・追記しました。
この作品のテーマは、障碍やいじめではないですよね。
硝子がなぜあんな選択をしたのか。それは、自分の存在が人を傷つけるからですよね。耳が聞こえないから辛いのではなく、人の言っていることが理解できない、自分の気持ちが伝わらないことで、人に迷惑をかけ、人の争いの原因になることに絶望したわけですよね。
つまり、人にとって一番つらいのは気持ちをつたえられないこと、または、どうやったら気持ちは伝わるか、がテーマなのでしょう。まあ、作者が似たようなことを明示しているので間違いではないと思います。作者については最後にちょっと一言言いたいことがありますが。
だから、人の顔に×が付くわけですし、植野にひどい事をされても、硝子は怒りませんよね。むしろ、植野の言いたい事がわかったと喜んでいた場面もあるくらいです。妹の写真にこめた気持ちも硝子には伝わってませんでした。
「硝子」は「しょうこ」でもあり「ガラス」ですもんね。透明で繊細で壊れやすくて、人を傷つける。
この映画の素晴らしいことは、とにかくずっと考えてしまうということです。「月」の場面。予告編にもありました。
{netabare} 硝子は耳が悪くなっていることを知らされます。そして、そのタイミングで植野が登場します。将也と植野がじゃれついているのを見てヤキモキしたのか。障碍が進んでいることに焦ったのか。ポニーテールにしたのも、障碍を気にせずにという気持ちなのか、植野のサラサラヘア―に対抗したのか。そして、手話を使わないで告白です。気持ちを声で伝えたいと思ったのでしょうか。{/netabare}
1例ですが、こういうことを映画を見てから何年たっても考えてしまいます。しかも、正解の解釈がどうこうではなくて、硝子の気持ちって本当はどうなんだろう、いろんなことがあってどうやって揺れ動いていたんだろう、などと考えてしまいます。この映画の凄さなんだと思います。
まあ、この作品は他で皆さんが語っているのでこれくらいにして、作品外の感想を2つ。
この作品は感動ポルノか。感動ポルノとは、人の感情を直接揺さぶる題材を全面に出して泣かせることを目的にした作品だと思います。死、別れ、障碍、イジメ、愛、けなげ、家族、子供・動物等々。この作品に関しては、障碍が要素になっていますが、上述の通り、障碍の苦しみで感情を揺るがして、泣かせているわけではありません。なので、感動ポルノとは全然違うと思います。
むしろこの作品以降、京アニ作品に感動ポルノ化の傾向がでていることが気になります。
もう1つは作者のインタビューです。作品は一度世に送り出したら、視聴者や読者に委ねるべきでしょう。もう少し節度を持って語って欲しいです。
どうもマンガや映画から読み取れるのとは違ったことを言っています。あえてずらして言っているのか、なにかひねくれているのか。そんな印象です。
追記 22年9月 5点満点の作品は極端なので評価見直し中です。再視聴しましたが、本作は5点のままとします。
本作については、見れば見るほど個々の心の動きに説得力があって、闇の部分を丁寧に描いているので、心をえぐられますね。だからこその名作なんでしょうけど。
さて、以前、原作者のインタビューはよろしくない主旨のレビューをしました。原作者が一旦作品を外に出した以上、作品に解説を加えるのは良くないというレビューを書きました。
原作者が言っていたのは、今後、硝子と石田が付き合わないだろう、というコメントでした。それはおかしいだろう、と反発した感じです。
今でも、原作者が一般人に対して作品解説をするのは下品だし良くないと思います。
が、結論として、硝子と石田は付き合っちゃ駄目でしょうね。この2人はお互いに傷がある状態でお互いが寄り添うしかなかった状況でした。つまり共依存ですもんね。2人ともお互い以外の人間と今初めて本当の意味で、コミュニケーションが始まったわけで、当然住む場所、生活基盤が変われば、恋愛対象の選択肢は沢山でるでしょう。
なんとなくですが、東京で硝子は寂しがり屋だし流される性格だから、出来ちゃった婚とかしそうですよね。
で、石田は家業ついで何となくマイルドヤンキーで地元で暮らして。硝子が離婚して出戻って、30歳くらいで石田とコブ付きで再婚するとかの方が上手く行く気がします。
それぞれが家庭を持って親友として集まる、でもいいですけどね。いろんな作品に触れて、レビューを書いているうちに、やっとこのまま2人が付き合わないだろう、という意味は分かってきた気がします。