「ゆるキャン△(TVアニメ動画)」

総合得点
93.9
感想・評価
1815
棚に入れた
7194
ランキング
7
★★★★☆ 4.0 (1815)
物語
3.9
作画
4.0
声優
4.0
音楽
4.0
キャラ
4.1

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ネタバレ

ナルユキ さんの感想・評価

★★★★★ 4.8
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

この名作がある限り、キャンプ業界は安泰でしょ!

「男の趣味やスポーツを可愛い女の子にやらせてみた! キャンプ編」という安直さを感じていたが、そのこだわりと魅せ方に一切の手抜きは感じられず、たった1話でそんなマイナスな印象は何処へと消えてしまっていた。
キャンプの中でも“冬キャンプ”に焦点を当てた本作。関連アイテムが売り切れ続出というムーヴメントまで起こしたその魅力が私のレビューでも伝わればいいな、と思う。

【ココがすごい!:冬キャンプを魅力的に見せるシナリオとキャラクター】
そもそもどうして彼女らは冬にキャンプをするのか?キャンプといえば夏じゃないか、寒空の下でアウトドア趣味に勤しむ意味が解らない。
開始5~6分まで、大半の視聴者はそう思うことだろう。しかし閑散としているキャンプ場に着いたメインキャラの1人・志摩リンは心の中でこう呟く。
(貸切状態……シーズンオフ最高♪)
そう、まず冬キャンパーは夏秋の人混みが出来るキャンプ場を好まない。冬の風と湖の波打つ音しか響かない自然なキャンプ場の方に趣を感じているようだ。それを理解してもらおうとしてるのか、第1話のAパートは独りの少女の静かで丁寧なキャンプシーンを送り届けている。テントに加えてロールテーブルにアウトドアチェアと、何もなかった河川敷をキャンプ道具でテキパキと自分の快適空間にする流れがアニメを観るようなインドア派にとってとても新鮮なものに見えるだろう。
キャンプの醍醐味であるキャンプファイアー──即ちたき火も冬なら“暖をとる”という真っ当な使用目的が与えられる。起こす本人は「燃料集めるのがめんどくさいし、肌が乾燥するし、けむり臭くなるし、火の粉が飛んだらやけどしたり服に穴が空くからイヤ」とフルボッコ並みのダメ出しを最初にするのだが、カイロの熱が心許ないと「結局この暖かさには抗えない」と掌を返すところにチョロい系の可愛さを覚えてしまう。それでいて準備は独りでそつなくこなすのでしっかり者な印象もある──と、リンは多方面で魅力的なキャラクターに仕上がっている。
まあ流石に彼女1人では持たない間もあるので、キャンプに関する豆知識はMr.スネークこと大塚明夫が天の声として解説してくれる。あの独特な低音が日常モノで聴けるとは思いもしなかった(笑)
そして各務原(かがみはら)なでしこ。常軌を逸した行動とミスの連続にはちょっとご都合も感じたが、そのおかげで出会い助けられたリンへの憧れを切欠に冬キャンプにのめり込んでいく所は説得力がある。冬キャンプをよく知らない者ばかりだろう視聴者は主になでしこの視点で本作を追っていくことになる。可愛くてアグレッシブな彼女も中心とする物語は決して退屈せず、不快感なく完走できる筈だ。

【ココもすごい!:如実に再現された冬景色】
ゆるキャンは「背景がリアルですげえ!」と話題になった作品でもあるが、残念ながら2期の第2話でGoogleストリートビューからの景色をフォトバッシュしていたことが露見した。「そりゃ現実と変わらない背景が描けるわな」と幻滅したファンもいることに違いない。
しかし手法はどうあれ、現実にあるキャンプ場を忠実に描写することで、アニメーションながら一種の旅番組のような雰囲気も作り出しており、一般層でさえもアニメ化された山梨県の絶景目当てで視聴できる作品になっている。私のコミュニティでも普段はきらら系アニメを趣味としてない友人がこぞって本作は観ていた──なんてオチもあったくらいだ。現実の背景を忠実に美しく描くこともまた美術であり、多くの人を惹き付ける要素と言えるだろう。権利関係はしっかりしてほしいが……(汗
また、冬キャンプ独特の空気感は決してGoogleストリートビューだけでは表現することができない。登場人物の吐く白い吐息やたき火の煙、キャラクターの身震いなどから、冬空のピリピリとした冷たい空気を目で感じ取ることができる。
これらの美術背景が本作を通じてのキャンプの疑似体験に一役買っていることには間違いない。

【そしてココが面白い:巻き取るように縮めていくリンとなでしこの距離感】
{netabare}1人キャンプが好きな志摩リンとグループキャンプが好きななでしこ。相容れないスタイルの2人が物語を通して徐々に変化していく。この変化がとても繊細かつ丁寧に描かれているのが面白い。
なでしこはフレンドリーな性格だが急にリンと距離を縮めたりはしない。しようとはしたが彼女の嫌がる素振りを見て入部した野外活動サークル(野クル)への勧誘を断念している。助けてもらったお礼を兼ねて料理をふるまいに1人キャンプ中の彼女を訪ねた時も、寝床は別にする配慮も持ち合わせていた。
リンは、そんななでしこ1人を先ず受け入れて、次のキャンプは2人で計画を立てて食材の買い出しや寝床のテントも共にする。1人キャンプが好きなことに変わりはないが、1人キャンプの様子をSNS等に上げて彼女との繋がりを保とうとする。
2人は互いのキャンプスタイルを尊重する所から始めており、そこから話数をかけて徐々に距離を詰めていく。だからこそメインキャラ全員のクリスマスキャンプが本作のクライマックスとしてきちんと成立していた。1人キャンプの好きなリンが「誰かと一緒にやるキャンプも悪くないな」という変化と、なでしこの「友達みんなとキャンプがしたい」という願いの成就が同時に描かれている。{/netabare}
【他キャラ評】
大垣千明
なでしこに負けず劣らずの行動派で、なんか男っぽい(笑) なでしこやあおいと一緒に風呂にまで入れる男友達といった感じ。
見てて面白いし、良い性格でもあるけど「女……女なのこれ……?」という疑問が常に頭から離れなかった。多分、ウェーイ系のノリで振る舞っているのと中の人の演技のせいだろう。

犬山あおい
デカァァァァァいッ説明不要!!
いや説明すると季節上、厚着が多い本作でもその主張は中々強く、温泉などで脱がれたら良い景色そっちのけで胸部にしか目がいかない、男子なので
加えてはんなり関西弁と属性増し増し。マンガだと「んなわけないやろがい」だったのが「うそやで~」に置き換わってるので、ゆるくのんびりとしたお姉さん口調は製作陣の粋なアレンジと中の人の演技の賜物だと推察できる。

斉藤恵那
『からかい上手の斉藤さん』という異名を与えられた通り、他者との関わりにエッセンス程度の“弄り”を含めた立ち回りが絶妙。彼女抜きではなでリンの成立はガクッと減るし、彼女自身とリンの絡みも学生のノリが出ていて微笑ましい。
掴み所のなさそうな中の人の演技から、実は只の犬好き&インドア派というのもギャップと共感を誘う良キャラだ。ペットの幸せを恵那ほど考えている人は現実には中々いないだろう。自分も飼っている猫の幸せを考えて行動に移したいものだ。

【総評:この名作がある限り、キャンプ業界は安泰でしょ!】
総合的によく出来ている。きらら系にありがちな『かわいい女の子+α』のαがおざなりになっておらず、冬キャンプというニッチだった題材を、ゆく先々の絶景や美味しそうなキャンプ飯、キャラクターの活き活きとした表情にまったりとしたストーリー展開で描いて「キャンプは夏か秋」という固定観念を、視聴者を傷つけることなく優しく壊してしまった。
そんな魅力ある冬キャンプと野クルの漫才のような活動を繰り返すことで5人の女の子たちが徐々に仲良くなっていき、みんなでキャンプをするようになるまでの過程を1クールでしっかりと描いていた。
流行るのも納得だ。観れば少なからずキャンプ趣味を肯定的に捉えることができる。この1期だけでは冬キャンプの厳しさや敷居の高さまでをハッキリとは描いていないので誘導された思考かも知れない。それでもきらら系において、題材の魅力をここまで引き出している作品は他に見当がついていない。そのくらいの名作だと言えてしまう。
屋内でしっかりと視聴するだけでなく、キャンプ先で作業用BGMとして本作を流してもいいと思う。収録された音楽はOPの『SHINY DAYS』を始め、小旅行に適した良曲ばかりでもある。そんな風に利用したい方は是非、「U―NEXT」へ加入しスマホやタブレットでも本作を観れるようにすべき!(宣伝)

投稿 : 2021/06/17
閲覧 : 528
サンキュー:

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