「ジビエート(TVアニメ動画)」

総合得点
52.3
感想・評価
156
棚に入れた
356
ランキング
7631
★★★☆☆ 2.3 (156)
物語
1.9
作画
2.1
声優
2.7
音楽
2.7
キャラ
2.2

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ネタバレ

蒼い星 さんの感想・評価

★★☆☆☆ 1.6
物語 : 1.0 作画 : 1.0 声優 : 2.0 音楽 : 2.5 キャラ : 1.5 状態:観終わった

地道に勝る仕事なし。

【概要】

アニメーション制作:ランチ・BOX & スタジオエル
2020年7月 - 9月に放映された全12話のTVアニメ。
監督は、小美野雅彦。

【あらすじ】

2028年8月21日。ベネチアを旅行中の若い女性から、この奇病が始まったらしい。
その病気はジビエートと名付けられて全世界に拡大。
ウィルス感染することで人体のDNAを汚染して細胞が異常増殖を始め、
遺伝子を狂わせて人間を怪物ジビエの姿に変えてしまう。
感染はジビエの持つ毒針に刺されることでなり、約5時間以内に怪物に変わってしまい、
その毒に感染した個体の年齢・性別・人種の違いによって、変態する種類が異なる。

そして、2030年の日本はジビエートの大流行で国民は異形の怪物になっていて、
荒れ果てている地に、僅かに残った人間が協力して生活していた。

時は変わり1600年。侍の神崎千水と忍者の真田兼六は、
島流しに送られる道中の小舟が雷雨の中の波に呑まれてしまい、
目が覚めると2030年のほぼ無人に近い東京に流れ着いていた。

目の前で青年が理性のない怪物の姿になって襲いかかる。
その怪物を相手に戦う金髪の少女、船田キャスリーン。

キャスリーンともに乗り込んだ、前田老人が運転する車中の会話で千水と兼六は、
ここがタイムスリップで時空を超えてきた430年後の日本だと知る。

千水と兼六はジビエを治す研究をしているヨシナガ博士に協力することになる。
だが、数多のジビエの襲来で生き残りのコロニーが壊滅して、
そこにいた人間もほとんどが怪物の姿に。

かろうじて脱出した7人はワクチンを完成させるために、
研究所のある新潟を目指すことに。

犠牲になる仲間、新たな出会い、人間を襲うやくざ者。
それは、彼らにとっては命がけの旅であった。     

【感想】

侍 vs ゾンビをヒントにした怪物 をイメージして、海外展開を意図した作品らしいです。

“日本の有名クリエイターが「和」をテーマに世界に向かって発信する、
 「GIBIATE PROECT」始動。 今後、書道や刀剣、三味線といった、
 日本文化における有名クリエイターたちが続々参加し、 クロスメディア展開を実施予定!”

↑とプレスリリースに書かれていた、このアニメ。

話は横道に逸れますが、
アニメファンには、監督の名前にばかり拘ったりクリエイターの感性や芸術性などを偏重して、
アニメ仕事のクオリティに関わる、現場で黙々と作業をしている大勢のスタッフの仕事の質を、
「作画が良い」「作画崩壊」の言葉だけで片付けて軽視する人もいますが、そうじゃない。
アニメの良し悪しは大勢のスタッフの下支えが大きいでしょう。
なかにはトップに問題がありすぎて著名なスタッフを揃えても無理だった、
「フラクタル」みたいな作品も世にありますが。

ここでビジネスで用いられる言葉を紹介します。

『守破離(しゅ・は・り)』

・型を身に付ける第一段階「守」。
・型を応用・改良する第二段階「破」。
・型から独立する第三段階「離」。

↑アニメを作る仕事もこれで、基本となる技術と経験に裏打ちされた職人を大勢揃えて、
時間と予算とまともに配分することが大事ですよね。

ところがアニメの業界は作られるアニメ本数に対して深刻な慢性的アニメーター不足でして、
プロフェッショナルもいれば、逆に素人に毛が生えたようなアニメーターも使わざるを得なく、
大量にクレジットされた作画監督が、未熟なアニメーターの絵を頻繁に修正しないといけない。

また、チーフクラスのフリーの有能な人材は大手が確保するから売れてない会社には回ってこない、
とコラムに書いているアニメ監督が実在します。その監督は自社で新人を技術指導してるのですが、
ある程度実績を積んだ社員がフリーになったり移籍するケースが度々あり、
その移籍した人が「鬼滅の刃」で作画監督を務めたりで、結果的に業界の底上げということで、
それで納得して育てて送り出しては、また次のアニメーターを育てているようです。
その監督とは、あにこれでは酷評されてる板垣伸ですが、
業界からは一定の信頼を得ているようです。

別件の伝聞ではありますが、放送前の制作中段階で監督が逃げたアニメもあれば、
現代日本とかけ離れている作品舞台の専門知識を専門の設定や考証のスタッフを置かずに、
研究者並に知悉してないと描けない手に余る仕事を資料なしに丸投げされた一介のアニメ技術者が、
「気軽に言ってくれるなあ」と参加しない口実を作って辞退した案件もあります。

アニメ業界もいろいろで、単純に実力不足だったり盤石のサポートなしに泥舟化したり、
さまざまな負の要因がもたらす半端な仕事から残念なクオリティのアニメが作られるようです。

だからこそ、コツコツと新人から育てて正社員登用制度や福利厚生などをまともに行い、
自社内製で管理が行き届いて高品質の映像を安定して供給が可能なアニメ制作会社は、
ブラックと言われる業界内でも一目を置かれるべき存在ですよね。

話を戻しますが、
この「ジビエート」は良いところが何一つ無いアニメとしての評価が定まっていますが、
他業種の有名クリエイターを集めれば凄く良いものが作れるだろうという安直な発想がスタート。

キャラ原案の天野喜孝以外に集めたクリエイターは、
書道家や津軽三味線家などアニメの作り方を知らない人たちが殆どで、
アニメの品質には全く無関係な人たちです。
そして、アニメ制作の部分ではろくな人材が集まらなかったろうと映像を見ればわかります。

人間の作画が昭和末期や平成初期のジャンプアニメみたいで古すぎたりで、
「月刊コミックゼノン」の原哲夫エミュの量産型歴史漫画と「MUSASHI -GUN道-」
を足して二で割ったようなキャラデザ。

「漢(おとこ)」のかっこよさと色気を出したかったの知れませんが、
監督でキャラクターデザインで総作画監督の小美野雅彦の過去の参加作品の一部を見るに、
「天の覇王 北斗の拳ラオウ外伝」「ジョジョの奇妙な冒険」があって、
そっちにキャラデザを寄せてしまったのでしょうか?
固定ファンのいないオリジナルアニメで、それをやるのは悪手であったと思います。

また、人間に襲いかかるジビエどもクリーチャーも、
20世紀末の家庭用ゲーム機のRPGのモンスターみたいなCG感が丸出しで、
人間のキャラとの色の摺合せが出来ていない。それがまるで踏み潰された害虫のように、
バラバラに斬り殺されるモンスター扱いのジビエが元は人間だった設定をみるに、
ひたすら気持ち悪くてチープな映像で表現された虫のような獣のような姿に、
生命への冒涜が過ぎて悪趣味なアニメと言わざるを得ないですね。

更には、令和に作ったとは思えないほど動きが適当過ぎていて、
予算?納期?作画スタッフの無能さ?全部足りてないのか最底辺の出来。

・刀を使ったアクションアニメなのに、ほぼ棒立ちで腕だけが動く。
・背景の集中線がスクロールしてるだけでキャラが動いてないシーンが目立つ。
・顔のドアップと叫び声→暗転→敵の首を刀で切り落としてる。

アクションの精度は「MUSASHI -GUN道-」が比較対象になると言えば、イメージしやすいかな?
仮にこれがアニメーターの本来の実力であるならば、
やはり教育でアニメーターの質を維持する重要さを知る悪いサンプルと言える作品ですね。

作画のことはさておいても、歴史考証に細かいミスが多発していたり、
企画・原作・製作総指揮・企画プロデュースで全脚本を書いてる青木良による物語が適当すぎです。
完全にファンタジーな史観であるならまだ言い訳が出来ますけど、
半端に史実を再現しようとしていますしね。

登場人物の挙動もおかしいですね。
1600年の侍と忍者がタイムスリップの概念と未来の日本に来てしまったことをあっさり受け入れる。
2030年の人間もまた、千水と兼六を過去の時代の人間であることを瞬時に理解する。
それは、脚本を書いた青木良の脳内にある情報をネットワークで共有してるみたいで、
人間ごとにある意識や価値感の違いを構築できていません。
その青木良にサリーアンテスト(「他人の心を推測する」機能を量る)を受けさせてみたいですね。

最終回付近でラスボスが正体を明かしてジビエに変身して主人公たちに襲いかかるのですが、
そのきっかけになった、ジビエになった恋人を正体を知らずに殺した主人公らへの憎悪を、
ラスボスが悲劇の主人公気取りで口にしています。

しかし、その時の会話にこそ最大の違和感があります。
そのラスボスが作った薬を誤って口にしたせいで恋人が知性のない怪物になり、
ラスボスのうっかりで起こした事故のせいでウィルスが地球に降り注ぎ、巻き添えで全人類が、
ジビエウィルスに感染して地球が化け物の惑星になってしまった大惨事に、

「全部お前のせい!こいつが諸悪の元凶じゃないか!」

登場人物が誰一人としてラスボスにこう言わなかったのが、おかしいですよね。
ラスボスの理解不能な告白に、困惑で唖然としたままラストバトルに突入なのかも知れませんが。

全12話を通して、ひたすら作画の酷さとストーリーの膨大な酷さが組み合わさり続けて、
奇跡のような凄いアニメが出来てしまったなとの印象です。

『日本のアニメはガラパゴス化しつつある。
 日本のファンの期待に応えるため、外国人には理解しづらい部分が多くなってきている。』

実績もなく、このようにインタビューで語っているアニメづくりの素人と思われる青木良が、
総指揮の立場から誰からも意見されることなく脚本作りを行って、
さらにある程度の実績のある監督が手の施しようがないがないほどスタッフの質が低かった。
そして、青木良の思っていることが全てであり、周りのスタッフにとっては、
自分たちが作っているものを客観視して物を言える環境じゃなかったのかも知れない。

結局、アニメ制作は下積みや確固たる技術を土台にして、
その上に初めて自由な創作・独自色が許される。
素人や未熟な人間の思いつきで作っても何も良いことがない。
繰り返しますが、アニメも『守破離(しゅ・は・り)』なんですよね。
感性・芸術性・作家性も本人に確固たる基礎があってこそです。

まともに意見交換や管理をしてキチンとアニメを作れている制作会社のありがたみを知る。
「ジビエート」という失敗作は反面教師としての意義だけはあるとは思いました。


これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。

投稿 : 2021/10/28
閲覧 : 339
サンキュー:

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