「ジョゼと虎と魚たち(アニメ映画)」

総合得点
78.3
感想・評価
183
棚に入れた
754
ランキング
553
★★★★☆ 4.0 (183)
物語
4.0
作画
4.2
声優
3.9
音楽
3.9
キャラ
4.0

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ネタバレ

ひろたん さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

初めての世界、初めての夢、そして、初めての恋

この作品は、観ていて純粋に楽しかったです。
もちろん突っ込みどころなんていっぱいありました。
最初の二人の出会いからして、えって感じです。
途中の展開もちょっとそれは無理やりでしょって感じもしなくもありません。
でも、そんなのどうでもいいぐらい、作品の魅力がとても良かったです。
なんと言うか、嫌みなところが全くありませんでした。
それに、自分のことをジョゼと名乗る主人公の女性がとても魅力的でした。

また、遠近感や陰影のある絵、考えられた構図とカメラワーク。
これらを観ていると、今、自分は”映画”を観ているんだなと実感させてくれました。
物語のあらすじだけを見ると王道の展開とやらでくくられてしまうかもしれません。
しかし、それでも全然構わないんじゃないかと、この作品を観ていて思います。
何も奇をてらわなくてもよいのです。
1つ1つの要素をちゃんと積み上げていけば、とても面白い作品に仕上がるからです。


この物語は、ジョゼが男子大学生の恒夫(つねお)に出会うところから始まります。
ジョゼは、生まれながらに下半身に障害があり車いす生活を送っています。
そして、外は危険だからとわずかな時間の散歩以外は外出を許されていません。
家の中では、大好きな絵を描くことと、本を読むことぐらいしかしません。
ジョゼの人生には、自分の世界しかなかったのです。
一方、恒夫は、バイトに明け暮れ、カップ麺生活を送る貧乏大学生です。
でも、それは自分の夢のためにお金を貯めているからです。

ジョゼは、電車のきっぷの買い方すらままならないぐらい外の世界を知りません。
でも、そんなジョゼをあることをきっかけに恒夫が外に連れ出すようになります。
それは、ジョゼが今まで知らなかった「初めての世界」の扉を開いたのです。
見るもの、することすべてが彼女にとって新鮮でした。
そして、その体験を大好きな絵に描いていったのです。
この光景を観ているだけで、じんわりと心にきます。

やがて二人は、お互いに惹かれあっていきました。
しかし、あることをきっかけにジョゼは今までの生活を続けられなくなりました。
そして、大好きだった絵を描くことを捨て、恒夫との別れを選びます。
それを知った恒夫は、「好きなことをあきらめるな」と言います。
この言葉がどれだけジョゼにとって残酷なものか、恒夫には分からなかったのです。
ジョゼは、障がいのせいで、今まで「なにも手が届かない」人生を送ってきました。
それを知っているからこそ、あきらめたのです。
辛いのはもう嫌なので「なにも手を伸ばしたくない」と思ったのです。
そして、「健常者には分からない」と言い残し、恒夫の前から立ち去ります。
楽しい時を過ごし惹かれあっていた仲に”現実”が突き付けられた瞬間でした。

恒夫は、今まで何の迷いも疑いもなく夢を追いかけていた人物でした。
恒夫にとって、ほしいものに手を伸ばすことなど当たり前にすぎなかったのです。
そんな恒夫には、好きなものをあきらめると言う理由が分からなかったのです。

その後、恒夫の身に夢をあきらめなければならないかもしれない状況が訪れます。
これをきっかけに、恒夫は、ジョゼの気持ちを理解することができました。
それは「ほしいものに手を伸ばすことがどれだけ怖いことか」と言うことでした。
一方、ジョゼもこれがきっかけとなり初めて自分の夢を持ちます。
そして、二人の感情が交錯する中、ジョゼにとって初めての恋に発展していくのです。


この作品で、私は、泣いてしまいました。
それは、感動的な展開に泣かされたとかそう言うことではありません。
逆にそんな展開だったら一歩引いて身構えてしまいます。
私がじんわりときたのは、ジョゼの姿そのものです。
それは、初めての世界を見て体験して気持ちで胸が高鳴っていく姿です。
初めて夢を持ちたいと思った心境の変化にです。
そして、初めての恋に気づいていくその純粋な気持ちにです。

この作品は、とにかくジョゼが魅力的です。
とても好きな作品です。

投稿 : 2021/11/21
閲覧 : 238
サンキュー:

23

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