ネムりん さんの感想・評価
3.9
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
『FIRST INSPECTOR』へと続く前日譚
制作会社がタツノコプロからProduction I.G に戻りシリーズ3作目となる作品。
世間的にあまり評価されていない作品ですが、考察を深めるとしっかりと話が作り込まれていて、『PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR』に繋がる話としてはある程度評価できた作品。
話の内容はシリーズ作品の中では複雑に感じられがちだが、シンプルに考えるとアンニュイな発想が魅力的にも感じられる。
簡潔にまとめてしまえば"ビフロスト"と呼ばれる組織に所属する"コングレスマン"・"インスペクター"・末端である"狐"の存在があって、 シビュラシステムのデバッグとして存在する"ラウンドロビン"を利用してシステムの欠陥をつくことでシビュラに認識されないこれらの存在をどのように解決していくかが話の流れとなり、至ってシンプルに考えられる。
次に.....
◆ 評価が難しかったところ
・ビフロストという組織の存在とコングレスマンを頂点とするダイアグラムに沿った指揮系統における縦の繋がりが、画面を通してからでは分かりづらく、何を伝えたいのか理解することが難しかった。
・シーンの切り替えが多く、時系列的に横の繋がり(ハイパー・トランスポート社とビフロストの関係やヘヴンズリープと信仰特区反対派の関係など)が分かりづらく、関係性をすぐに把握することが困難。
・シリーズ作品の中では新キャラクターの存在がかなり薄かった。
・設定に凝りすぎてしまったため、一期の話の主軸となる"免罪体質者"である槙島聖護のような圧倒的存在感を持つ敵役の存在が感じられなかった。
故に盛り上がりに欠けてしまった。
・結論を劇場版に持ち越すことで、登場人物や世界観、ラウンドロビンというシステムの関連性などの説明に終始してしまい、3期のストーリーからは展開を期待させる内容のものが感じ取れなかった。
◆評価できたところ
・一期と二期のテーマの流れを踏襲する形で、マネーゲームを主宰するビフロストと呼ばれる組織設定において話に幅を持たせることにより、シビュラシステムの存在意義について深みを持たせたことで、人間社会の在り方についてより考えさせられる所があった。
・メンタルトレースという今後の展開を期待させる存在。
神経質にならないまでもシリーズにはなかったサイコロジーな部分が描かれていて作品に厚みを持たせることができた。
・この作品の一つのテーマであるリレーション(関係やつながり)に含みを持たせストーリーが展開されていて、世界観の広がりを感じた。
・本作の主人公、慎導灼、炯・ミハイル・イグナトフ、課長の霜月美佳などのキャラクターが一人の人間としてみれば未成熟な存在に見えても、公安局という纏められた組織で俯瞰すれば、それぞれが個々の役割を果たす魅力的なキャラクターに感じられた。
・ 狡噛慎也や常守朱など、人気のあったキャラクターをワンポイントでも起用したことにより次回作に続く話として期待感が持てた。
以上を踏まえて、メインキャラクターの交代やシナリオの変更、世界観の難しさなど賛否のある作品ですが、 内容を理解しようとする努力が大切で理解できれば評価できないものではないので、次回作に続く礎の作品としてそれなりに評価したいと思えた本作でした。