「クロスアンジュ 天使と竜の輪舞(TVアニメ動画)」

総合得点
74.8
感想・評価
1021
棚に入れた
5120
ランキング
864
★★★★☆ 3.8 (1021)
物語
3.7
作画
3.6
声優
3.9
音楽
3.8
キャラ
3.8

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ネタバレ

エイ8 さんの感想・評価

★★★★★ 4.3
物語 : 5.0 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

隠れた名作、いや不遇の傑作

『クロスアンジュ 天使と竜の輪舞』(クロスアンジュ てんしとりゅうのロンド)は、2014年10月から2015年3月まで放送された日本のテレビアニメ。全25話。(Wikipediaより)

隠れた名作、いや不遇の傑作というべきか。個人的にも良い噂を聞かなかったため長らく避けていたが、いやはやよくできている。
ロボットものというのはどうにもストーリーが破綻するものが多いと言う印象があるが、クロスアンジュはそんなロボットものにしては珍しく最初に決めた設定をそのまま貫いたという印象を受けた。
にもかかわらずこの作品がいまいち評価されなかった最大の理由は言うまでもなく主人公アンジュのキャラと、無駄なエロ描写だろう。

以降ネタバレ含む。

{netabare}物語は一貫しているが、アンジュというキャラ自体は論理的な存在ではなく、感情的で矛盾に満ちた存在ではある。
・自分自身が散々ノーマを差別しておきながら、いざ自分がされると「ノーマというだけで差別する豚ども」みたいなことを平気で言う。
・兄ジュリオを実質殺しにかかってるところを止められ、エンブリヲがある意味代わりに殺してくれたにもかかわらず「お前は兄を殺し……」みたいなことを平気で言う。
・ノーマというだけで差別されることに憤る反面、自分は相手が「人間」であるというだけで平気でひとまとめにして見捨てる。
・それまで散々殺し合いを続けてたドラゴン族の民衆は助ける一方で一般の「人間」の頭にはワンショットキルを決める。
・最後の最後でおじさん視聴者の心をえぐる。

だが……いや、だからこそそれがいい!と思えるのがアンジュの魅力でもある。何なら美人設定である必要すらなかったと思うのだが、まあその辺はしょうがないだろう。
エロ描写は最初は必要ないと思っていたが、物語全体の流れを考えると重要な描写だったかもしれない。千年生きて尚膜にこだわる処女厨の鑑、俺たちのパイセンことヤリチンのエンブリヲさんの誕生はエロ描写あってこそだからだ。
そしてそんなパイセンがいたからこそ、最後の「生理的に無理!」につながるのだ。おじさんの胸を苦しめてやまないあのセリフ、一体何度リピートしたかわからないおじさんも少なくないだろう……え、自分だけ?

前述した通りストーリーは首尾一貫しているが、それは強固な舞台設定に裏打ちされていたからだと思われる。
もっとも多少は変えたのだろうな、という箇所はある。その多くはドラゴン族にかかわるものだ。

ヴィヴィアンがドラゴンという設定に関して当初はもっと多くの、或いはすべてのノーマがドラゴンになるという設定があったのではないかと疑っている。というのも、プラントが破壊されたという理由もありアルゼナルを捨てる決断をすることになるのだが、果たしてヴィヴィアン一人のためにそんな選択をするだろうかという疑問があるからだ。これはもっと多くのドラゴンがいたと考える方が自然ではある。予想では王族以外(つまり、アンジュとジル以外)のノーマは全てドラゴン化する設定があったのではないか、だからこそ幼少のうちに隔離する必要があった。だがそれだとヒルダで矛盾する。だから急遽変更し、鼻が利き飴を舐めるヴィヴィアンのみということにし羽と尻尾に関しては「切った」ことにした。

だがむしろそれで次なる矛盾が生じる。ならばリィザはどうしていたのか、という疑問だ。近衛長官の身でありながら隠し通せるとは通常思えない。というか、マナの力をどうしていたのかという疑問もある。全部ドラゴンの力で「人間」をバグらせていたとでも言うのだろうか。いくら何でもさすがに厳しい。それができるならジュリオを使って陰謀を巡らせるまでもない。おそらく彼女は自身の意志で隠すことができる設定なのだろうが、ならばわざわざ切る必要などなく薬で抑えられることにすれば良かった。

他にもリィザ関連は色々と疑問に思うところが多い。アンジュの失脚は国家を乗っ取るという理由があったとして(乗っ取りが目的なら何故皇帝本人を狙わなかったのか、というのはあるが)、アンジュのおびき寄せ方も微妙だ。モモカに対しては帰還させられる権限があるのだからアンジュにあってもおかしくはない。そもそも彼女は当初帰りたがっていたわけだし、アルゼナルにそれを超越する権限があるとも思えない。が、まあそれらも一応演出の範疇として受け入れることは可能ではある。

ただ、おそらく当初リィザはサラ達とはまた違う勢力か、或いはドラゴン族そのものがもっと敵対的だったのだろう。結果的にリィザ周辺が浮いてしまい、わざわざ沈められる軍艦からジュリオを見捨てて逃げた演出を入れたにもかかわらずエンブリヲにつかまることになる。そして後に逆スパイのような形でアウラがミスルギにいることを突き止めたと報告するが、ミスルギにある以上どう考えてもジュリオを掌握した時点で掴める情報である。エンブリヲしかしらなかったとは飛空艇でドラゴンを運んでいる図からしても到底考えられないし、何よりわざわざアウラ本体がいるところを馬鹿正直に教えるエンブリヲもエンブリヲだ。アウラは別の場所に置くべきだったとも思うが、それだとシルヴィアを絡ませられないので苦肉の策というべきか。王族関係を一同に集めるイベントでもあればミスティも絡ませることができてちょうどよかったのに、とは思う。

人間がノーマを嫌うように設計したいた割にはそのことを知るまで気づけないというのはどうだかなあ、というのもある。実際にアンジュリーゼは旧友に心酔すらされていた。そしてアンジュの両親とモモカは知っても尚アンジュに甘かった。ミスティに関してもおそらくアンジュを許している、そうでないと人質にされた落とし前を取らせない理由がない。実際に娘が誘拐されたことを王が揶揄される描写もあり由々しき事態であったことは間違いない。ただでさえアルゼナルはローゼンブルム王家管轄なのだから、ミスティの強い意向がないと説明がつかない(にもかかわらずアンジュは最後まで彼女に対して情を見せることは無かったが)。エンブリヲの意向の可能性もなくはないが、そういった台詞を入れなかったところをみても制作側ではもうこれでミスティはお役御免だったというのが一番の理由だろうが。

一方でヒルダの母親は改心したのか実の娘に辛く当たる。結局、彼女の母親と妹は二度と出ることなく物語は終わることになるが、これもありヒルダエピソードは途中で付け加えられたのではないかと疑っている。(それによりノーマのドラゴン化にしわ寄せがきたのではないか)

指輪の存在もいまいち釈然としなかった。当初は色的にドラゴンの額についているものと関連すると思っていたが、その後色とりどりの宝石がでてきた。ただまあ、ドラグニウムが何か関係しているのだろうなあという感じはする。

さて色々と物語の疑問点を書き連ねてきたが、概ねよくまとまってる方だという意見は変わらない。ハードSF派はマシンの起動など別の疑問点があるようだが、個人的にはその辺は気にならない。
当初の予想としては、最初のエアリアの試合で何があっても戻ってくるみたいなことを言っていたので、どこかでそれを回収するのかと思ったがそれが無かったところは残念ではあったが。{/netabare}

投稿 : 2022/01/06
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サンキュー:

4

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