「STEINS;GATE 0 [シュタインズ・ゲート・ゼロ](TVアニメ動画)」

総合得点
94.6
感想・評価
1459
棚に入れた
7314
ランキング
4
★★★★☆ 4.0 (1459)
物語
4.0
作画
3.9
声優
4.1
音楽
4.0
キャラ
4.1

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ネタバレ

エイ8 さんの感想・評価

★★★★★ 4.6
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 5.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

大傑作の続編。ただ綻びも見え始め……

『STEINS;GATE』(シュタインズ・ゲート)は、5pb.の同名ゲームソフトを原作とした日本のアニメ作品。2018年4月から9月まで続編『シュタインズ・ゲート ゼロ』が放送された。(wikipedia)

(ご注意!当レビューは考察も含んでおり約5000字あります。時間のある時にお読みください)

前作の正統続編、2010年8月11日の屋上で岡部が紅莉栖を救う事を諦めた世界線での話になります。
今作はほぼ全編に渡り岡部の「厨二病」設定は鳴りを潜め、全体的に落ち着いたトーンで話が進みます。ただそれは岡部が紅莉栖を失ったことによる反動のためどちらかと言えば重苦しい雰囲気となってることは否めません。
今回は内容的に脳科学が背景となったSF作品となっていますが、特にそれに基づく重要な考察要素は無いものと考えられます。むしろハードSF的見地にたった場合前作よりも「荒唐無稽」度は上がってる気がしなくもないですが、いずれにしろ「そういうもんだ」というガジェットSF的見地に立ってみれば充分良くできた内容になっているものと思われます。

アニメ全体としての出来栄えも非常に素晴らしいものでしたが、その一方で本来マルチエンドの作品を一本道のストーリーに仕立て上げていることもあってかやや肩透かしを食うこともありました。例えば岡部が未来から戻ってくるところですが、その後鳳凰院凶真として復活し最高潮の盛り上がりを見せたにもかかわらずその後一旦ガタンとテンションが落ちてしまいます。これはゲームとは違う展開に発展したことによる弊害です。ゲームだとこの後主にレイエス教授と関わる展開になるのですが、アニメではそれをカットしそのまま別のルートとつなぎ合わせてしまったためこのような事態となりました。

作品を見ていて阿万音由季の腕の怪我に違和感を持った方もおられるかもしれません。これはゲームでは伏線として働くのですが、アニメではそのこともカットされています。
というのも今作「ゼロ」においては新キャラクター「椎名かがり」と「阿万音由季」の両名は大きく分けて二通りのキャラ設定を持っているのですが、そのことをマルチエンドの無い一本道のストーリーとして成立させるのは難しかったのでしょう、結果として単なるミスリードのような描写になってしまいました。

私だけでなくゲームとしての「ゼロ」をプレイした方の中には何故二人をこのような扱いにしたのか疑問に思った方もいたかもしれませんが、由季に関しては『STEINS;GATE 線形拘束のフェノグラム』の公式資料集に「α、β、シュタインズ・ゲートそれぞれの世界線で姿が違う」というような記載があり、初めからそういうつもりで作られたキャラなのだと思います。フェノグラムの中で、紅莉栖によりダルは鈴羽の父親ではない可能性を指摘されるストーリーがありますが、そういったことですら初めから織り込み済みなのかもしれません。

さて、私は前作「シュタインズ・ゲート」のレビューで、正直これは微妙だなと思える設定が続編(つまり今作「ゼロ」)において顕在化してくるといった主張をしたのですが、それは「リーディングシュタイナー」に関してです。
ここから先は長くなるので一応ネタバレとして隠しておきます。興味ある方だけどうぞ。

{netabare}まず第一に、今作においては「原因が特定できない世界線の変動」というものが何度か生じます。私は当初これを完全な矛盾ではないかと考えていました。というのも、リーディングシュタイナー(以下RSとします)が発動するのは未来から過去にDメール送信等のアクションを起こした時であり、過去に何かが起こった時ではない筈だからです。そして、当時の岡部が言うようにその時は電話レンジ(仮)が無い状態なのだから過去に働きかけることは不可能のため、その時点の岡部にRSが発動するのはおかしいと考えていたのです。

ただこれに関しては無印でもDメールを削除するという行為によってRSが発動したことがありました。確かにこれは過去そのものに働きかけたわけではないので上記と同じく現在による改変と言って良いのかもしれません。当時は私は単に「Dメールだから」という理由で無批判に受け入れてたのですが、このことを矛盾だと思った方は多かったようで公式資料集に説明がありました。「ダイバージェンスが変わるような大きな出来事が発生すると、その度に過去は因果律に沿って矛盾がないよう再構成されます」という@ちゃんねる上のジョン・タイターの言葉に基づくものらしいのです。

なるほど、こういう理由かと一旦は納得しました。しかしここには続きがありました。「世界線の収束が行われなかったのはDメールという因果の環から外れたイレギュラーであることも理由」だとあったのです。では、Dメールを使ったとは考えられないゼロで何故世界線が収束せずに過去改変が行われたのか?ゼロの公式資料集には「双対福音のプロトコル」で世界線が移動した理由を岡部が発した情報が米軍に筒抜けだったからだとしていますが、岡部の知識だけでそんな簡単に世界線が移動するのならもう何度移動しててもおかしくない気も……
(ちなみに「どの時代の岡部も別の世界線に移動するのだからどちらにしろRSは発動する」ということは無いと思います。もしこれがあるとしたら、岡部は別の世界線で「常にRSにより移動してきた後」状態を続けてしまうことになるからです。よってRSにはどこか基点があるものと考えています。)

更に、ゲームの「ゼロ」では無印と大きく異なる演出が一つありました。無印ではDメールを送信すると岡部にRSが発動し別の世界線へと移動することになるのですが、「ゼロ」ではDライン(Dメールの代替物)を送信後に一旦エピソードが終了し、過去のシナリオから再開する必要があるのです。
これはアニメでは原則通りRSが発動して岡部が別の世界線に移動することになるのですが、このDラインの送信日時がアニメとゲームで違います。アニメでは7月7日なのですがゲームでは12月18日なのです。この変更は言うまでもなく岡部のRSが原因だと思われます。もしゲームのまま12月にRSが発動したらそのまま物語が終わっていた、ということになるからです。

逆に言うと何故ゲームではその日付にしたのでしょうか。正直このゲームの製作者が適当に日付を決めてるとは思えませんので何か理由があったのだろうとは思うのですが、ちょっとわかりません。劇場版はシュタインズゲートに到達してから1年後の話ということですから多分2011年の夏の話でしょうし……小説か何かでイベントがあるのかもしれませんがそこまで全部調べてないです。フェノグラムでは一応2011年12月18日を経過するエピソードがあるにはありますが多分あんまり関係ないかと……

何故そこまでこんなことを気にするかと言うと、原則岡部はゲームでもこの12月18日にRSを発動させ別の世界線に移動しなければならなかったのです。そしてその移動した先でまた色々と過去改変のために奮闘する、それが前作での流れでした。それが今回は過去に送られたDラインを受信した側として活動し、最終的に無印でのシュタインズ・ゲート到達までの流れへと至るわけなのですが、そこで二つの疑問が生じます。「何故収束が起らなかったのか」ということと「そもそも何故Dメールでは収束しなかったのか?」という二点であり、これは事実上同根の問題でもあります。

そもそも前作においてDメールを送信すると世界線が移動するのは「そういうものだ」という前提があったものと思われます。少なくとも私はそう思ってました。だからこそタイムリープしたときと違い収束が起きないのだ、とも。(Dメールでの移動はαからβへの移動ほど大きいものではないからだという意見もあるかもしれませんが、一応αからΩやΧ(線形拘束のフェノグラム)への移動はあるのです。)

しかし今作「ゼロ」においてその前提は覆りました。(一応フェノグラムでもDメール受信するエピソードはあるにはあるのです。ですがそれは完全に番外編と言った感じのコメディだったのでそれは特に気にしていませんでした。)

言うなれば無印までのDメールの受信者はオートモードで動いたのですがゼロではマニュアルモードで動いたことになります。当然マニュアルなら選択肢によってまた違う世界線に移りかねないわけであり、そうなるとRSの移動先も実際は送っただけでは確定してなかったということになるかもしれません。だとすると「Dメールさえ送れば世界は変わる」みたいな確信はどこから来てるのかという話にもつながります。これ、全作通してのお約束だったんですけどねえ……

ちなみにゼロの設定資料集にD-RINEが世界線を超えていることについて過去に送ったメールがどの世界線に届くかという点については特に理屈をつけてないとありますが、これは多分質問者回答者双方の誤解によるものだと考えられます。

まず第一の誤解は、前述したように前作無印ではDメールを送信すると「その時点で岡部にRSが発動し世界線を超える」ためメールがどの世界線に届いていたかは事実上わからなかったので、そのせいでそう言った状況が生じていなかったと考えたのだと思われます。

第二にD-RINEを送信する世界線が1.055821に対して受信するのは1.129848であることからこのような疑問が生じたと思われますが、実際のところは1.055821に世界線が変動している時点でそれ以前の過去の出来事もまたこの世界線に結合され再構成されていることになるのです。ただシナリオ上は「福音のプロトコル」であったためゲームとして元の世界線1.129848が反映されていたに過ぎず、事実上は1.055821だった或いはそうであったとしても問題は生じなかったと思われます。

ちなみに私は以前このことを誤解しており、一つの世界線上で過去未来複数の過去改変が行われた場合、岡部はどのRSが優先されるかわからないという疑問を抱いていました。何故なら原則はRSで移動した基点となる岡部以外は無かったことになるからです。(これはフェノグラムでのルカ子ルートでも生じた現象なのですが、ここで岡部は突如人が変わったかのようになります。ようするにRSで移動してきたのですが、このように本来その世界線にあった筈の過去と未来からも分断された特殊状態となります。)

もし仮に同一世界線上で過去と現在双方の岡部がRSを発動させた場合果たしてどちらの岡部のRS先の世界線が確定されることになるのでしょうか。シュタインズ・ゲートの前提として世界線は常に一つであり過去未来とも再編成されるわけなのですから時間の前後による優劣は本来無い筈なのです。

そこで同一世界線上での複数のRSはパラレルワールド化してしまうのではないかと考えたわけですが、アトラクタフィールド理論によれば世界の改変はレイヤー(Layer)のように折り重なっていくためこのようなことは生じないのではないかと考えるようになりました。前作で岡部がダルにDメールを送ったときにまず世界が改変されますが、改変された世界はこのダルに送ったメールを前提の上に折り重なってるというわけです。仮に複数が同時に過去改変を行ったとしても、それは複数が行った結果としての世界線に移動するため問題にならない、とも。いずれにしろいざとなったら過去は因果律に沿って矛盾がないよう再構成されることになるでしょう。

ただそれでも岡部級のRS持ちが複数いた場合、それらは皆同じ時間に発動するのかという疑問は残ります。作中で「新型脳炎」として発表されていたものはRSだったということが後にわかりますが、「アメリカで猛威を振るっている」と言われるぐらいなんですから相当いたでしょうし、中には岡部級がいてもおかしくないかもしれません。

いずれにしろ彼らはおそらく前作で岡部が世界線を超えたいわば巻き添えを食った形となるのでしょうが、一方でフブキの自己申告では「夢」を見ていたとあります。しかし岡部による世界線の移動は概ね活動時間帯であることを考えるとこの感覚もなんだかなあと思います。本人はそうだとしても前述したようにRSでは周りからは突如豹変したように見えるのですから。まあだからこその脳炎という設定なのでしょうか。だとしても何故一緒にいることが多いカエデとかは気づかなかったのだろうか?とも思ったりします。違う世界線では気づいていたこともあったんでしょうかね?破綻してるとまでは言えないまでも何とも微妙なところではあります。結局RSしてるとまでは言えず寝てる間に何となく思い出してるぐらいなものなのでしょうか。

前作ではあれだけ完璧に作られていたと思われた世界観設定も、こうやって見ると大分メッキがはがれてきたのかなあというのが率直な感想です。勿論私の解釈があっていれば、の話ではありますが。

それにそもそもRSとは実のところ一長一短で元の記憶を引き継げる反面新しい世界線での記憶は保持できません。よって、原則ならば12月18日に岡部の記憶はDラインを送った時に戻されることになる筈なのですが、さて更なる続編が出来た場合この辺はどうなるのでしょうか。アニメとも整合性がとれなくなってますしねえ……

以上で考察は終わりです。長々と失礼いたしました。{/netabare}

投稿 : 2022/01/18
閲覧 : 403
サンキュー:

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