「電波女と青春男(TVアニメ動画)」

総合得点
84.9
感想・評価
4327
棚に入れた
21063
ランキング
257
★★★★☆ 3.8 (4327)
物語
3.4
作画
4.0
声優
3.7
音楽
3.6
キャラ
4.0

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nyaro さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0
物語 : 4.0 作画 : 3.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

名前を正しく呼ばない物語…この時代のラノベは純文学に近しかった…女々について追記。

 この時代のライトノベルは純文学に近しい気がします。不条理とか奇をてらったということではなく、登場人物の奇異な言動がそれぞれの生きざまや考え方について不思議なリアリティを持って迫ってきました。でも、何も明言しないという感じでした。

 ゼロ年代って、作家性=非常に内向的な人間のインナースペース=不思議なキャラと舞台設定という感じでラノベは成り立っていた感じがありました。その最終盤に登場した本作は特に強くそれを感じます。まあ、もともと入間人間という人はデビューからそんな感じでした。

 涼宮ハルヒの憂鬱が日常に見えてSFだったのに対して、本作はSF的な雰囲気でちょっと変わった日常系でした。UFOの目撃が多いとかいう街という設定や野球の最後の星宮のシーン…ここを深く考える必要はないと思います。なにかそういう「感じ」が欲しかったのでしょう。
 いや、ひょっとしたら「境界」をあらわしていたのかなあ。何か不思議な閉塞感がなくはなかったですよね。灰羽連盟的ななにか?考えすぎかなあ。でも女女は自由なようで捉われていましたし。古くて暗い駄菓子屋…うーん。家族や年齢に捉われていましたね。

 キャラ達が何か自分ではない皮をかぶっていました。エリオの布団や前川さんのコスプレ、星宮の宇宙服はそのままですが、しつこいくらい名前…キャラがキャラを呼称するときに本名からずらしてきましたね。つまり、他人から見た自分と自分をどう見せたいか、というのがテーマということだと思います。

 ここに解答をつけなければ純文学だと思うのですが、微妙にエリオの布団に理屈がついていました。「あー…理由説明しちゃったよ」というのが第一印象でした。ただ、主人公真の解釈が途中で変わっていたので、原因はわかっても理由はわからないということでいいのでしょう。
 ひょっとしたら実はSFでした、という解釈の余地も残したのかもしれません。それでも面白いかもしれません。

 ペットボトルや野球に何を見出すかは人それぞれでいいでしょう。ソフトボール部の部長の達観もおそらくは裏がありそうですよね。この娘、花沢さんも山本さんも本名じゃなかったです。

 テーマはおそらくはアイデンティティなんですが、テーマを語ってない…解説していない感じです。そして日常のようでいて、奇行に走る人間ばかり。本名を正しく呼び合わない。布団をかぶっていた一番の変わり者だったエリオのみが「まとも」に戻ろうとしていました。最後まで見ると布団をかぶっていたことが大したことじゃない気がしてくるくらいでした。ここは真と女女がちょっと語りすぎていたかなあ。

 純文学かどうかは定義が難しいです。芸術では現代アートが解釈とか作品の背景や文脈の解説あるいは画商が存在しないと成立しなくなったように、純文学も作家名や登竜門の賞を取ったかどうかで決まってくるようなところもあります。つまり、純文学はカテゴリーとしてはもはや死んでいるのかもしれません。

 総評としては、面白さは中途半端ですけど、雰囲気に見せられた感じが強いです。ただ、キャラたちの行動に心のどこかを確かにかき乱されました。つまり、私にとっては十分純文学として機能した気がします。まあ、純文学ではないにせよ、この時代のラノベって文学の進化の可能性を持ってたよなあ、と思います。村上春樹もラノベみたいなものですからね。

 なお、作画はひどかったですね。エリオや前川さんの脚とか、唇、髪はやたら頑張ってましたけどね。



 追記 女々さんについて

 そういえば女々が1話で名刺を渡すシーン。名刺の一番大きな文字が名前でなく39歳でした。過剰に若作りした言動、そして子供は可愛がっているもののまるでいないかのような態度も取ります。

 これがこの作品の大きなポイントなんだと言われた気がしました。女々にとって年齢が名前より重要。独身かのように振舞いたい=男を欲している。つまり女の価値に捉われていたんでしょうか。そもそも名前が女々さんですし。

 この1話の名刺のシーンのとき画面の左端の携帯を見ていた女子高生が走り去る場面がありました。わざわざ作画したわけですから意味があると思います。これは何を象徴しているのか。あるいは伏線なんですかね。

 ばあちゃんの家にいたとき=40歳になったからエリオと向き合う決心がついた?女じゃなくなったこと(失礼)を受け入れたということでしょうか。これは40歳になってから山本さんのところにいったのは、もう男を追いかけるのは止めて母になる決心的な意味もあるんでしょうか。考え過ぎかなあ…でも駄菓子屋にいったタイミングで女々さん、変わった感じがしました。

 それとロケットとはなんでしょうね。やっぱり境界の外に対する何かの気がします。


 うーん。一筋縄じゃいきませんね。原作読もうかなあ…ということでポチってしまいました。8巻かあ…

投稿 : 2022/05/31
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サンキュー:

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