「その着せ替え人形は恋をする(TVアニメ動画)」

総合得点
85.4
感想・評価
728
棚に入れた
2463
ランキング
237
★★★★☆ 3.9 (728)
物語
3.9
作画
4.1
声優
3.9
音楽
3.7
キャラ
4.0

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ネタバレ

エイ8 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0
物語 : 4.0 作画 : 4.5 声優 : 3.5 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

と……とずぷれ?(; ・`д・´)

『その着せ替え人形は恋をする』(そのビスク・ドールはこいをする)は、福田晋一による日本の青年漫画。『ヤングガンガン』(スクウェア・エニックス)にて、2018年3号から連載中。略称は「着せ恋」(きせこい)。
2022年1月から3月までTOKYO MXほかにて放送された。ナレーションは冨岡美沙子。(wikipedia)

「あたしが……トズしたくて作ったの!」(2話)
すいません、何回も何回も聞き直しました。だけどどうしてもコスではなく「トズ」としか聞こえません。頭の中で「最初はコ!」と必死で思い込ませながら聞いていたら段々と「コ」に聞こえるような気がしてきましたが、それでも「コズ」が限界……だけどこのシーンCMでも使われてるわけですから制作サイドにはちゃんと「コス」って聞こえてるってことなんですよねえ……まさかのところで耳の老化現象を思い知らされヘコんでおります。同様の方、いらっしゃいます?

あにこれ2022年度冬アニメ一位(視聴時)ということで鑑賞。いかにもなイメージイラストとそのタイトルから「ま~た受身系男子が能動系美女に世話焼かれる話か……」とは思ったものの、それでよく一位が取れたなとはという疑問もありました。
で、実際に見てみたところ一応その疑問は解消されます。これはありがちな男子に都合が良すぎるものとは一線を画していて、何だったらむしろ女子の方にこそ都合が良いラブコメとすらいえるんじゃないか。結局のところ、男女双方から万遍なく得票を得たことが高評価につながったんだろうなと推測しました。

服飾系アニメと言えば最近では「ランウェイで笑って」がありましたが個人的には「げんしけん」の大野、田中カップルの方が頭をよぎりました。なるほど、こいつら陰でこんな風にイチャコラこいとったんかいな、と。そりゃデキもするわなあといった感じで。

主人公の五条新菜(ごじょうわかな)は作品がスタートする高一になるまで友達が出来たことがないらしいですが……逆に今までよくボッチやれてこれたよなあ、という結構なスペックの持ち主。おそらく作品上としてはルックスはイマイチ設定なんでしょうが、髪型も含めさわやかで長身かつガタイも悪くない。ずっと座って人形と向き合ってきてる割には猫背でない点も大きい。性格は極めて真面目な職人気質、人のために自分を犠牲にしてでも全力投入できるという男前。おそらく自分から輪に加わりにいかないことからのボッチなんでしょうが、実際だったらどっちかというと周りの方が放っとかなさそう。このタイプがハブられるなんて何かどえらいことをしでかしクラスから孤立したとかじゃない限りあまりないんじゃないでしょうかね。
身長に関して12話で「180……っ!?」のように答えていたシーンがありましたが、178もある乾心寿よりも明らかにでかかったため少なくとも180後半はある筈。五条くんはちょくちょく周りからヒロインである喜多川海夢(きたがわまりん)と対比され不釣り合いなように描かれてましたが、いやこれだけタッパあればそれだけで充分でしょ。しかも彼は普段私服として和装をしてますが、こういう格好って現実では厄介なヤンキーとかマイヤンがやりたがる印象があるのでギャルとはむしろよくお似合いだと思います。彼らが他の男からちょっかいかけられないのも普通なら五条くんの外見によるものと考えられます。

一方の喜多川海夢の方はクラスの中心にいる美女ギャル設定。耳に大量のピアスと言えば「ホリミヤ」の宮村くんを彷彿とさせますが、ギャルな彼女は一切それを隠そうとしません。そればかりか何に対してもあけっぴろげで全てにおいて寛容、五条くんが敬語を使い続けていても直させようともしない別の意味での包容力。
……ところでこういった漫画アニメのギャルによくある「Anything goes!(なんでもありっしょ!)」的設定文化はいつの頃からできたんでしょうかね?何となく昭和の頃にあったヤンキーこそが実はイイ奴設定の流れを汲んでる気がしますが、いたいけな青少年たちがこんな風潮に騙されて軽々しくギャルに絡みにいかないよう切に願うばかりです。表向きはともかく、裏ではしこたまネタにされると思います。ていうか表でもされます。
話が脱線したので戻しますが、そんな彼女と五条くんの作品上でのファーストコンタクトは文字通りのぶっ飛んだもの。マカンコウサッポウ(ピッコロさんのやつじゃなく一昔前に流行った方)でもやって遊んでたらガチで発動したとかそんなところでしょうか、バトル漫画的なぶっ飛び方でアタマを強打。ちなみにあんな勢いでぶつけたら命にかかわりかねないので絶対に真似しないように。

ギャルである彼女がヲタ文化に対して深い造詣を持つ……ということそのものはアリだと思います。絶対にないとは言い切れませんし、五条くんの「自分の好きなものへの劣等感」との対比としても際立ってます。
ただあまりにも二人の周囲が舞台装置化し過ぎているというのはだいぶ気になりました。例えば互いの両親、五条くんは父母双方、喜多川さんの方は母が既に他界しており父も長期海外出張中だそうなのですが、これらはあからさまに男女が互いの家を行き来するためだけの設定にしか見えませんでした。事実、二人とも両親がいないことに対して微塵も心が乱されてません。12話の花火のシーンで喜多川さんが五条くんに「花火を見に行かない理由」を訪ねた時なんとなく彼から含んだ空気が流れたため幼い頃の両親との思い出的なものが出るのかなと思いましたが何にもなし。結局この家庭環境は喜多川さんの栄養状況と夏休み宿題のくだりぐらいでしか活用されておらずあまりにも寂しすぎました。

個人的に直近で「スローループ」を観たということもあるんですが、親がいない状況というのは本来もっと「おもい」話だと思いますしそれが故に扱いも難しい筈なんですが、この作品では本当にただいないだけ。五条くん家には爺ちゃんはいるわけで、それでも普通に喜多川さんだけでなく色んな女の子が家に上がり込むことができるんですから彼に関しては両親がいたとしても問題なかったと思うんですよね。

喜多川さんの方に関してはおそらく両親がいないことからインドアになってヲタ化した的な裏設定はありそうなんですが、それとギャルとの繋がりがぶっつり切れているのも気になります。作品としての流れはともかくとして、何故ギャル友達をコスプレイベント等には誘わないんでしょうか?設定からいって喜多川さんがヲタを隠してるようには見えませんし、また友人たちがそれを忌避してるようにも見えないのに何故?というのはありました。少なくとも恋する前のコスプレイベント時は誘っても良かった気がします。
全体を通じて、喜多川さんのギャル設定って便利に使われ過ぎでもあるんですよね。異常なくらい男耐性があるように見えるのにかかわらず男友達の影は完全に排除されてたり。途中から五条くんへの恋を自覚したにも関わらず接し方も中途半端のまま。
恋すると通常、積極的/奥手のどっちかになると思うんですが内心的にはともかく外見的にはあまり変わらず。これに関しては作品として喜多川、五条双方のリアクションを描かねばならなかったことからくる弊害だろうなあと感じます。そしてこれは良く言えば先述したギャルの男耐性が活きているとも言えますが、悪く言えばこれにより喜多川さんの感情が不明瞭になってしまってるんですよね。正直、彼女が本当に五条くんを異性として好きなのか、あくまで「雫たん」だとか「ジュジュ様」に対する想いと変わらないのか判断つかなくなってしまってるように感じました。彼女ぐらい明け透けなキャラなら結構気軽に告白できるタイプだと思うのにせいぜい含ませる程度。「本気だからこそ言えない」という観点はあるかと思いますがその割にはスキンシップ等積極的ですごくチグハグした印象を受けました。
ただ実際のところは付き合った方がコスプレする上においても色々便利だと思うんですよ。裸を見られるのがどーとか気にしなくてもよくなるわけですし。

本作の最大の特徴はコスプレをテーマにしていることと、先述したように男女双方の得点を稼ぎにいったところにあると思います。特に女性からすれば無駄なエロ描写はマイナスポイントであることが多いでしょうが、それを補って余りある「胸キュン」要素が本作にはあると感じました。実際、特にコスプレされてる方々からすれば「こんなカレシおったら助かるわぁ」って感じだったんじゃないでしょうか。そうなんです、有象無象のハーレム主人公共と違ってとっても役立つ存在なんですよねこちらの五条先生。

喜多川さんとは違って五条先生の方の心理描写自体はある程度一貫してると思います。ただ、だとしても友達がいない設定はちょっとやり過ぎだなと感じました。序盤彼は掃除当番を変わって悦に浸ってましたが、その後はどうなったのでしょうか?そこも継続してるならわかるんですが多分もうそれ止めてますよね?結局喜多川さんが美人であることも相まって下心感が出てしまっているように感じます。これは作品上仕方ないのかもしれませんが他のコスプレキャラも女の子。一人ぐらい男子を入れて、彼のためにも一生懸命というエピソードもいれとけば下心感も薄れるわ一部の性癖の方にも受けるわで万々歳だったんじゃないでしょうか。
いずれにしろ、それで犠牲にするのが本職の人形作りだとしたら本末転倒。願わくば、女の影響で将来の夢が服飾関係に変わったりしませんように。

一応、先述したような両親の不在が活かされてない等についてはまだ今後どうなっていくのかわからないので評価として減点対象にはしていません(原作も未読)。ただどう見ても伏線を活かしていくタイプの作家には見えないんで下手すりゃ幼馴染の子すら再登場しないかもなあと見ています。

描写においても例えば乾姉妹のような関係性などはある程度しっかりしていると感じました。妹の猫背を気にしたりするシーンがあるんですが、逆に言うと妹が猫背になる要素があるキャラ設定だということわかっているということなのでしょう。しかし一方でそれら以外のディティールは結構曖昧な印象を受けてます。(そういえば五条くんが喜多川さんと色々あった後、家で一人ナニかをしているシーンがありましたが、あの時の額をトントン叩きまくる演出……アレ何なんでしょうか?どっか出典あるんでしょうか?気になります。)

コスプレそのものに関しても最初はかなり綿密にやってるなあとは思いましたがほぼ序盤だけな感じでしたし、雛人形職人としても上辺はちゃんと取材してる印象を受けましたが一方でその方向を掘り下げることは無いだろうなあというのも伝わってきました。彼が職人になるにあたっての技術的なことを含む苦悩とかは今後作者の構想外だと思います。下手すりゃあの作務衣姿でうろうろさせたいことからくるコスプレ的欲求から彼は職人になる道を選ばされている可能性も……もっともこの辺は原作を見れば印象が違う可能性は大いにありますが。
それと喜多川さんの名前が海夢(まりん)とのことで海との関連性が示唆されていますが(実際、作中でも海のシーンは印象的に描写されている)これをどう繋げていくのか全く見えてきません。勿論、だからこそ続きが気になるとも言えるのですが、正直大して考えてなさそうと案じております。

通常ならば本作は五条、喜多川の恋物語なのでしょうが油断はできません。前述したように喜多川さんの方の心理が曖昧でよくわからないので、どっかの雨上がりだか雨宿りだかの作品のように「海夢にとってはコスプレ、五条君にとってはひな人形づくり、どちらの恋も成就したのだというハッピーエンドとして描きましたw」みたいなこと言われかねませんからね。(ま、こっちは同級生設定なのでよっぽどのことがない限り大丈夫でしょうけど)

投稿 : 2022/07/08
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サンキュー:

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