「真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました(TVアニメ動画)」

総合得点
67.0
感想・評価
339
棚に入れた
1093
ランキング
2567
★★★★☆ 3.1 (339)
物語
3.0
作画
3.1
声優
3.3
音楽
3.2
キャラ
3.2

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ネタバレ

エイ8 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.4
物語 : 4.0 作画 : 3.5 声優 : 3.0 音楽 : 3.0 キャラ : 3.5 状態:観終わった

レッドはギデオン

『真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました』(しんのなかまじゃないとゆうしゃのパーティーをおいだされたので へんきょうでスローライフすることにしました)は、ざっぽんによる日本のなろう系ライトノベル。
2020年11月にテレビアニメの製作が発表された。2021年10月から12月までAT-Xほかにて放送された。原作の4巻までがアニメ化されている。(wikipedia)

内容としては、なんでかよくわからんけど仲間の一人に貶され真に受けすごすご全部捨てて出て行って田舎でのんびり暮らしてたら超ハイスペお姫様と偶然再会して速攻で同棲始めてという感じのお話で……ええなあ~憧れるわ~、こんなんが押しかけ女房してくれるとわかってたら真の仲間なんぞなんぼでも捨てて田舎暮らしするわ~とか思いながら観てました。え?それを捨てるだなんてとんでもない!ですって?心配ご無用、いくら捨ててもゼロはゼロのままですから!(`;ω;´)

原作は未読ですが、タイトルからしてあからさまに某テイルズのあの作品を意識してますよね。つくりから見るに従来温めてたファンタジーのアイデアと混ぜ合わせたといった感じでしょうか。ぶっちゃけ「真の仲間」くだり唐突に出てきますからね。多分あのフレーズが有名になってなければわざわざやるような展開じゃなかったと思います。むしろ内容的には足を引っ張ってるといってもいいくらいでした。(とはいえ、これが無ければ無いでわざわざ選んで観たかどうかは微妙なところなので、少なくともアニメ化までこぎつけてる以上作者の作戦勝ちと言っていいのでしょう。)

アニメを観る前まではいわゆる「もう遅い」的な追放系だと思ってましたし、後述しますがそれはある意味合ってました。ただパッと見では主人公にはそういった陰険さはないように映ってます。
元仲間の一人であるアレス以外はみ~んな主人公レッド(偽名)ことギデオン(本名)を高く評価しているそうです。ただ傍から見る限りよくこんなの評価してたなという気はしますが。なんというか典型的な現代陰キャの理性的「風」ええかっこしいなんですよね。こんなんを誇り高き騎士様方が本当に評価するもんかね?というのが率直な印象です。

ギデオンが勇者のパーティーから抜けたきっかけそのものはアレスにいじめられたからなんでしょうが、多分前々から自分がついていけてないことを自覚していたのでしょう。つまり、本音では元々辞めたいと思っていたわけです。だからパーティーの一人にちょっと言われただけで、まるで渡りに船とばかりに辞めてしまいます。驚いたことに騎士団副団長としての責務すらぶん投げて。しかも彼が気にしたことはただただその地位にいた者としての体面だけであって残されていく者のことではないんですよね。まあハナから上に立つものとしての資質自体無かったのでしょう。
多分ギデオンと、そして作者自身の中では自己犠牲的な脱退劇だったのだと思います。誰にも言わずにひっそり出て行くということに美学のようなものを見出しているのかもしれません。が、一般的にはこういう人の事を「無責任」と言います。また端的に言って他のメンバーに相談や報告もせず出て行ってる時点で信頼関係を結べていたとは言い難いです。アレス以外のメンバーは彼の事を評価していたとしても、彼自身は仲間を対等だと思っていなかった証左でもあります。
では何故他のメンバーと相談しなかったのか?それは第一に仲間に引き留めてもらおうとしているように映ってしまうことはプライドが許さないということ。第二に万一みんなから「あ、辞めるんスか?おつかれーw」なんて感じで快く送り出されなんかしたらメンタルが持たないということ。そして第三に、本当に引き留められなんかしたら辞めるに辞められないという以上よくばり三点セットであることが容易に想定できます。
彼の行動は自己保身そのものです。せめて本当に魔王軍の調査に赴くべきでした。それならまだ正当化の余地があったのですが彼の選んだ道は誰にも干渉されないところでのプチ隠居。ほとんど広義の引きこもり状態です。

田舎で再会を果たしたリット王女とは旧知の間柄だったようです。で、何やら過去にレッドさんは怖がる彼女に説教垂れてました。曰く大切なのはそこに誇りがあるかどーとか。本来ならこれアイロニカルなシーンなんですよね。人には偉そうな口叩いていながら自分は尻尾撒いて逃げとんかい、と。レッドから田舎にこもった理由を聞いた時、わたしゃてっきり姫さん怒っちゃうもんだと思ったんですよ。「あなたは何故こんなところで呆けている!?勇者の仲間じゃなかったのか!?実力不足?真の仲間じゃない?それがどうした!?戦闘で役に立たないならば後方支援だって出来る!妹の身の回りの世話だって構わない!それこそ本当に偵察に行けば良かったじゃないか!それをちょっと言われたぐらいでおめおめ逃げ出して、ふざけるな!最後は勇者の盾になって死ぬぐらいの気概を何故持てない!お前の誇りはどこ行ったんだ!?この、臆病者が!」みたいな感じで。ところが実際彼女の口から出た言葉は「なによそれぇ!(`・ω・´)」……怒りはしましたが、それはレッドに対してではなくアレスに対してのもの。学校行事で班からハブられた男子の愚痴を聞いてる真面目な女子の図かと思いましたよ。
まあ彼女は彼女で王位を継承する重圧から逃げてきているわけですから、お似合いといえばお似合いのカップルですよね。傷をなめ合う相手としては丁度良いと思います。

とはいえ、この辺は追放ありきで考えた設定だからこういう流れになったんだという気はしてます。当初の構想としては魔王を倒した勇者の隠遁記みたいな感じだったんじゃないかな、という印象。だけど勇者を追放するわけにはいかないし、完全ハイスペを追い出すのも難しいということで現状に落ち着いたんじゃないかと。

それにしても本作でも実に「なろう」らしいドヤ知識が披露されていたりなんかしてとてもありがたい思いでした。えーっと、何でしたっけ?ポーションに混ぜると5倍になる薬、でしたっけ?いいじゃん、どんどん売ったりゃいいんですよ。リットさんはポーションの価値が暴落することを恐れていますが、そんな一店舗が手作りでつくるようなもんでそんなに市場が動きますかねえ?どうしても気になるならその薬の値段をポーションの4倍にすりゃいいんですよwそしたらポーション5個買おうが代わりにレッド薬買おうが変わらないので市場は安泰です。そうなんですよね、ポーションの価値は変動するのにレッドさんの薬は安く固定されたままという前提で話すからこういうことになるんです。姫さまうっかりミスですね。
勿論細かく言えば保存とかの観点からどっちが有利とかはあるでしょうが、あの時点ではそんな情報出てませんでしたしね。またひょっとしたらポーション100個にレッド薬1個でも400個になるとかのチートアイテムの可能性もありますが、それはそれで革命ですから世界平和に貢献することでしょう。まあいずれにしろどっかがレシピ買ってくれると思います。ちゃんと売れるアイテムを破棄するだなんて勿体なかったですね。
とまあこのように「なろうドリーム」を掴むにあたって勉強は不要なのです。夢をどうもありがとう。

いずれにしろおそらく作者は実際に自営業を営んでおられる方ではないんだろうなあという印象は受けました。もしそうならそんなマクロじみた話じゃなくて店の帳簿の話とかを中心にされる気がします。ただ、どうも「なろう」系では異世界で薬屋営みがちみたいな話を目にしたので、単にトレンドを追っかけただけの職業設定なのかも。

それと多くの場合、レッドのようなタイプの天敵って「考えなしの陽キャ」とか「考えさえしない脳筋」のようなタイプだと思うんですよね。一般的な職業だとこちらの方が遭遇率が高そうな気がしますが作品内でヒールとなっているのはインテリ系賢者。意外と作者はそれなりの所にお勤めなのか何らかの専門職の方なのか、或いは学生時代の記憶か。成績や学歴は良いけどソリが合わんかった奴あたりをモデルにしたんじゃないかと邪推しましたwまたひょっとしたら「なろう」の読者層を研究しての可能性もあります。タイトルなんかもあからさまに媚び媚びですし、これも売れるために行った配役なのかもしれません。

先述したように原作は未読なのですが、ひょっとしたらアニメとは違う構成をしてるんじゃないかという気はしてます。というのも、アニメではあたかもレッドを責めているかのような流れにしてるんですよね。彼がリットとイチャコラこいたりして順風満帆な充実した人生を送ってるシーンの後に、妹でもある勇者ルーティのご一行が暗~い雰囲気の中あれやこれやと苦労しているわけです。これがありきたりな追放系ならば「お前ら俺がいなくて苦労してるみたいだけどこっちは人生楽しくやらせてもらってるよwwww」みたいな感じなのでしょうが、この作品では間違いなく妹に対する負い目のようなものはあるわけです。一方でこれも先述したように、この作者は本質的にレッドの脱退劇において彼自身に責任があると想定してるとは思えません。彼はあくまで被害者の立場として描いているように感じています。なのでおそらく原作ではレッドとリットの話をひとまず終えた後のサイドストーリー的なものとして勇者一向の苦難を描いていたんじゃないかなとは推測しています。逆にもし原作もアニメのような構成で描いているのだとしたら一体どういうつもりでこういう構成にしてるのでしょうか。
今のところ本作は「なろう」系にしてはまずまず知性が感じられる内容ではあるんですよ。なので普通の追放系としての構成ではないとは思うんですが……ひょっとしたら単にアレスに対する当てつけのつもりなんでしょうか?だとしたらさすがにちょっと失敗だったと思います。この流れではどうしたって多くの人がルーティの方に同情してしまうと思います。いやそれもアレスが悪いように映ると考えてそうした……?

そういやこの作品って加護が人格レベルに影響するようなんですが、その割には賢者が賢者やってないことには気になりました。どちらかというと道化の加護を持ってるんじゃないかと思えたほどです。まあそういう意味では人格が加護を超越している稀有な存在といえるのかもしれません。むしろ賢者なら自らの煩悩に惑わされずいち早くギデオンの能力を見抜き適切に戦力として活用する筈なのに、見抜いたからこそ嫉妬して追い出すとかわけわかりません。
なので多分、この作品における賢者ってあくまでおべんきょが出来るだけの存在を想定している気がします。というかそうでないと冗談抜きに彼だけは加護を乗り越えていると言わざるを得ません。では何故おべんきょだけなのかというと……ひょっとしたら作者の身近にすんごいイヤ~な感じの高学歴がいたのかもw

そうなんですよね、この作品での真の追放対象者はアレスの方なんです。実際身勝手な理由で脱退した上に再加入しないことを宣言してるのに元の仲間は皆レッドに好意的。口先ばっかりで空気の読めない厄介な高学歴がいるけどこっちからは(体裁が悪いので)追い出せない。なのでそいつの方に暴言吐かせてやれやれそうかいわかったよと大人しく出て行くけども他の仲間達はみんな俺の方が好きで求めていて、それでも一人ギャーギャー喚く高学歴をなんとか穏便に宥めようとするも話聞かずに逆ギレしてみんなを傷つけたから「もう遅い」とばかりに正当防衛で殺しちゃった。ちょーっと後味悪い気もするけど、これでみんなようやくスカッとハッピーだね、みたいな。このように裏読みすると嫌われキャラを愚かな奴として追放するお膳立てがされていて実に陰湿なお話ですw

テオドラの役割もありましたし、さすがにそれは単純化し過ぎかもしれませんが実際ほとんどそんな感じです。wikipediaをみると「「賢者」の加護には強烈な承認欲求を生じさせるという衝動がある」とか「「ギデオンは自分からパーティーを抜けた」という言い分は薄々メンバーから嘘であると気づかれており信頼は低い」とか……やっぱ賢者キャラじゃないですよね、ステレオタイプなペーパーテストでしか点取れない性悪高学歴キャラですよねwというかそもそも何でこんなのパーティーに入れたんでしょうか?どうみたって初めから破綻が目に見えているじゃないですかw実際レッドも「導き手」としての役割果たせてないですし、単純な編成ミスだったと思います。

というかアレスさん、5話の時点ではちゃんとルーティに「アレスは魔王軍の偵察をした方が役に立てるからと言って抜けた」って伝えてますよね?それがいつの間にか勝手に逃げ出したと言ったことになってる。案外最初の方はそこまでアレスをヒールにする想定ではなかったのかもしれません。
他にもレッドとリットが裸で風呂入って抱き合ってるのに、最終回ではあたかもお互いの裸を見るのは初めてみたいな描写……まあ「なろう」なんで前に書いたことなんて綺麗さっぱり忘れてるなんてことはよくあるでしょうが、アニメ化にあたってはそれぐらい整えて描写して欲しかったですね。

中盤以降になって唐突に勇者ルーティと邂逅を果たす流れになるのも、なんというか人気獲得のためのテコ入れ展開みたいでした。一応「加護」と意志の狭間の苦悩のようなものがテーマの一つにある感じはしましたので最初から決めてた可能性もありますが、どちらかというとあんまり長期の連載を想定していたようには見えませんでした。とはいえ現状文庫で10巻も出せてるわけですからようやっとると思います。

売れてるので結果的には成功だったと言えるでしょうが、物語的にはレッドは主人公キャラとしては失敗だったと思います。作中どれだけ際立った資質を見せつけようとも、とんでもなく情けない理由でおめおめ逃げ出したという事実がずーっと尾を引いてしまっています。せめて元仲間達から禊ぎを受ければそれも何とかなったと思うんですが、せいぜいレッド自身が自虐気味に自己批判するのが関の山で仲間達はむしろそれを慰めちゃうという有様……これはもう作者が彼を被害者として想定している以上どうにもなりませんね。

正直言って、この作品的にはむしろアレスの方が主人公に相応しい性質だったとすら感じます。彼ならば性格を理由に追放されてもおかしくないですし、露悪的ながらも有能なキャラという一種のツンデレキャラとして場に馴染めていたと思います。一方調整役を気取っていたギデオンの方がアレスという貴重な戦力を失って後悔する方が自然の流れのように思えました。これはこれで普通の追放系っぽくなってしまうリスクもありますが、まあ結局あれもこれも「真の仲間」のくだりがやりたいがために生じた弊害と言えるでしょう。

等々、色々書きましたが単純な娯楽としては言うほど悪くなかったです。ギデオンの脱退劇にさえ目を瞑ればさわやかにコーティングされた主人公のもたらすそこそこ良いお話だったとすら思います。目を瞑れれば、ですが。

リットに押しかけ女房されて寝室も一緒なのにもかかわらず手をださなかったり付き合いもしなかったりというのは当初ハーレムにするつもりだからかなと思ってたんですが、がっつり正ヒロインでしたね。それにしてもリットちゃん滅茶苦茶ベッドにこだわり見せましたね。二人の場所だとか帰る場所だとか、この手の話どっかで見た気もするんですがちょっと思い出せません。昔々のハードボイルドものだったですかね?
二人のロマンスシーン自体も案外悪くなかったですが……やっぱちょっと古めかしいですよね。雪降る夜の帰路、街灯のほのかな光にやさしく包まれたベンチに二人は誘い込まれ互いの淡い恋心を温め合う……とかもうこれいつの時代の月9ドラマだよって感じだったのですが、案外こういう中高生だろうが中高年だろうがそれなりにサマになるシーンってのもいいもんですね。中世ヨーロッパに準拠してるのか現代日本の遊歩道なのかよくわからん「なろう」の無茶苦茶世界観設定がこれほどハマッたのを見たことがありませんw

いやーそれにしてもあれもこれも作者の願望込みで描かれていると思うと実に微笑ましい。こんな恋愛したかったんだろ~なって。しかし万が一……万が一ではありますが実体験をもとに描いたとかだったら星全部没収だかんな!そんな奴ぁ真の仲間じゃねーから!(ヽ゜ん゜)

投稿 : 2022/07/08
閲覧 : 342
サンキュー:

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