「勇者、辞めます(TVアニメ動画)」

総合得点
69.2
感想・評価
291
棚に入れた
939
ランキング
1817
★★★★☆ 3.3 (291)
物語
3.3
作画
3.2
声優
3.4
音楽
3.3
キャラ
3.3

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ネタバレ

テナ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7
物語 : 4.0 作画 : 3.5 声優 : 3.5 音楽 : 4.0 キャラ : 3.5 状態:観終わった

勇者である事で苦しむ生態兵器

今期のファンタジー作品ではNo.1作品だと個人的に感じました。

勇者を辞めようとした理由。

魔王を倒した勇者に待っていたのは国外退去だった。
魔王を1人で倒した勇者レオは強すぎる程の力を持っていました。
だからこそ魔王軍を1人で倒せたのですが……

人は圧倒的な力に恐怖します。
その圧倒的な驚異を圧倒的な力で潰す者‪がいたとしたら……

大きく分けて、2パターンの考えがあります。

魔王を倒した平和への安堵感。

そして、魔王を倒した圧倒的な力への次なる恐怖感。

今作では、後者が勇者に向けられた目になっています。
正直、圧倒的な力で魔王を倒したと言っても命を掛けて戦い抜いた人に対して向ける目ではないですよね。

そりゃ戦いの中で文化遺産を壊してしまったとかはあったみたいだけど、世界を平和にしようと頑張った結果がこれではやってられませんよね。

王様は勇者を追放した後に「忘れるなよ!私は信じてるからな」って言葉を残してます。
私には嘘にしか聞こえません。
王様は民の意見に耳を傾けない訳にはいかないから仕方ないみたいな感じで追放したみたいに見えるけど……

1番、勇者を信用していないセリフだと感じました。
結局、王様は勇者の報復が怖かったのです。
だから、もしも勇者が報復を考えていた場合の言い訳……民が言うなら仕方ない。
民の意見に従っているだけだから、忘れるな王様は信じている他とは違うからなと言うセリフにしか聞こえないのです。
悪いのは民だと、民に悪をなすりつけて。

本当は1番味方をしなければいけないはずの王様の言葉にしては無責任で最低のセリフだと感じました。

だからこそ彼は考えた。
「俺を世界が殺そうと言うなら俺が世界を殺そうと思った」

それが魔王軍に転職する理由であり。
もぅ1つ

魔王エキドナ……レオは彼女の気になる点があった。
それは彼女との戦いの中で。

彼女は無駄な殺しは認めない。
彼女は戦いを穏便にすませようとする。
彼女が人間界から撤退しない理由。

レオにはそれが気になっていた。
エトギナには魔王軍再建の面接で即座に否定されていたけど、彼は他の幹部に認めてもらい姿を変えて魔王軍で働く事になります。

そんなある日、魔王と姿を隠しての飲み会があり。

彼女は人間界の賢者の石を手にするために人間界へきた。
魔界は荒れ果てていて、魔族同士が残された資源を奪い争っていた。
そんな争いで魔界が荒れ果ててゆくのが嫌で人間界に賢者の石を手にする為にきた。

彼女は人間なんてどうでもいいと言いながらも悪になりきれなかったそうです。
争いの中で、失われた命で泣く家族や友達や恋人がいる。
それは魔族も人間も関係ない。
誰しもが悲しい事です。

その痛みを知る彼女だからこそ……無駄な殺しをしてはいけないと考えているのです。
自分の故郷の為に賢者の石を人間界に奪いに行く……きっとそれすら迷い決断したのでしょうね。

正直、争いをする魔王としては考えも決意も覚悟も足りてなくて甘々です。
しかし、優しい王様だから付き従ってくれた仲間達もいる訳だし、故郷の為に悪となる事を決意した。

出来るだけ被害を出さないように賢者の石を手にして、故郷を守りたくて。
自分の命なんて覚醒しているからどうなろうといいけど、周りの人が傷つくのは嫌だ。
矛盾だらけの魔王だけど、素敵な王様だと思います。

いつか彼女が導く世界が平和であって欲しいと思います。
勇者レオも彼女の優しさを知り改めて本当に協力したいと考えて決意する


勇者は対悪魔の生体兵器でした。
デモンハートシリーズの生き残り……
何百年もずっとずっと人間を守る使命から解放されることも無く……でも、人に拒絶された事で彼は勇者を辞めるチャンスを得た。
だから、彼は守り続けた人間に拒絶され悲しむその一方で嬉しかった。

実は、辞める事って凄く難しいです。
自分が、やってきた事を辞める。
レオもそうだけど、自分がやらなければならいと、どうしても考えてしまうものです。

何度かは辞めたいとか考えるけど周りの人の事などを考えたり、これまでの思い出とか色々考えるとそれも出来なくて、でもどんな事も終わりは必ず来て、必ず辞める日がくるものです。

そうなった日には、これで心配しなくていい、考えなくて済むと言う安堵感と……
辞める事を少し寂しく感じるのですよね。

私の場合は自分が優柔不断なのかとかと考えてたのですが……
その時に気がついたのです。
辞めれなかったのではなく、その場所が好きだったのだと。
だから、終わりの日を心の底では待っていた。
終われるきっかけを……

勇者レオも、もしかしたらそうだったのかな?と思いました。
長年生きてきて、「絶対守りたい人や直ぐにでも死んで欲しい奴もいた」ってセリフから感じたのは、自分の使命がなんだかんだで好きだった。

人を好きだったのかなって。
でも、人に拒絶された事で、自分の役目を終えられた。
それは悲しいけど勇者を辞めるチャンスに感じたのは、そう言う意味なのかな?って思いました。

後、勇者レオって過去を見ると少し機械的と言うかなんか今と違って感情表現がないのが違和感ですね。

でも、多分勇者レオはインプのエイブラッドとの出会いが変わるきっかけだったんだろうなぁ〜と思います。
そして、この出会いが御伽噺だと魔界に語り継がれている。

そして、正体を隠した勇者が黒騎士として5人目の四天王となる日……
緊急事態が起きる……
その為に勇者は自分の正体を明かす。

そして、勇者レオは賢者の石を渡そうと道案内をする。
その賢者の石とは……

賢者の石は便利なマジックアイテムではない。
そして、賢者の石を手にするには人間と和解し説明書を探す必要がある。

そして……レオは自分を殺せと言う。
何故なら…

彼は自分の存在意義を守る為に混沌を自ら呼び世界を救うようになるかもしれない。
そうなる前に自分と言う勇者をなんとかしなければならない。

賢者の石は勇者の心臓
レオを殺して心臓を抉り取らなければならなければ賢者の石は手に入らない。

そして、自分を殺さなければ、勇者レオが…愚かな人間を根絶やしにする。
下界に降りたら人間達を皆殺しにする。
賢者の石が欲しければ勇者……元勇者レオを殺す必要がある。

魔王の現在の目的……人間と和解し賢者の石を手にする為に人を守らなければいけない。

正直この展開は盛り上がりました。
勇者が主人公が敵になる展開はまた面白いと思いました。

勇者レオって強いし、ここまで戦闘シーンはあるものの本気の戦闘シーンはここからなんですよね〜
やっぱり強いなぁ〜ってww

勇者レオは辞めたかった理由も解ります。
勇者レオが平和な世界に何を感じ、勇者である事をどう感じていたのか……
戦いの中で勇者レオの本心が描かれます。

平和にする事で喜びと安心を感じていたけど、平和な世界を繰り返す中で、平和が退屈で不満で苦痛な時間になってきた。
平和な世界が早く終わればいい…世界の危機を喜び期待してしまう勇者……
それが勇者としての生きる意味…

勇者として生きる為にレオは今はカプセルの中で眠りについている3000年前の仲間達に人間を殺すようにプログラムを掛けてしまう。
自分の過ちに気づいたレオはそのプログラムを自ら止める……

争いを望む勇者レオと正しくあろうと勇者レオを殺そうとするレオ……心の葛藤…

後に、エドギナが魔界から攻めてくる。
勇者レオはエドギナの評判を聞き自分の命……心臓を託すかの判断をしようとする。
それは、勇者レオをレオが殺す最後の旅。

レオにはエドギナが魔王だけど勇者に見えたんじゃないかな?って思いました。
きっと、彼女はレオにはない強さを沢山持っていたから……

戦いの中で、エドギナは切り札、対勇者拘束銃アンチレオを発動!……レオが呟く「ありがとう」

やっと死ねるって、彼は思ってしまう……
やっと勇者じゃなくなれる……やっとバグった生体兵器の出番が終わる……

彼はいいます

レオ「1人が出来ることなど、たかが知れてる……だからこそ自分以外の誰かを信じるそれが勇者に求められる1番の素質」

そうですよね……
世の中1人で出来る事には限界がある。
レオは強かったし、なんでも出来たけどさ……
本当の強さってのは誰かを信じて託せたりするものなのかもしれません。
そして、羨ましかったのかな……そんな仲間で形成された魔王軍が……


レオ「勇者でない自分を受け入れてくれる場所などどこにもなかった。」

レオの立場だと……そう見えるよね。
人を守る事と敵を倒す事だけをプログラムされた勇者……それしか考えられなくなる……
人類を守る為に産まれたのなら……平和な世界で産まれた意味に悩む……平和だから必要ないって世界から言われているようで……生きてる意味がないって

けどさ、あると思うんだ……彼の居場所……
生きてきた3000年の中にも………
だって、受け入れてくれたじゃん……勇者を辞めたレオを……魔王軍はレオを仲間として、私にはそこが居場所に見えたけど……

案外気づけないのです。
本人にすれば……1番難しいのは自分の気持ちだったりします。

「勇者じゃない俺を認めて欲しかったんだ。勇者じゃなくてもいいから一緒に来いって」

これは、解るなぁ〜
自分の持ってる物じゃなく自分自身を見てもらい認めて貰いたいって、結構誰しも感じた事あるんじゃないかな?
自分の持ってる物ではなくて、自分自身を認めて貰えるって嬉しいと思う。

レオ「一緒に仕事したのが楽しかった。ずっと続けば楽しいだろうなぁ……死にたくない」

ダメだった?
一緒にいて楽しい……ずっと続けたい、そう思える仲間の中にいても、やっぱりこうした結末しか迎えられなかったのかな?
それでも、レオは勇者の使命に苦しめられてたんだね……誰も笑えない結末しか選べなかったのが切ない……

でも、勇者の気持ちに寄り添えたのは……戦いの中で気づけたのは魔王エドギナ
人類を守る最強の勇者は人類を殺す最悪の勇者を演じていただけど……

決着はついた……勇者の敗北……
後は、賢者の石を勇者から引き剥がして目的を達成……
でも、誰も勇者を殺してはくれません。
それは勇者が本当は生きたいと思ってるから……

自分達のお目当てが目の前にあって……それでも勇者の意志を優先してあげたかった。
彼が勇者である為の呪縛の解き方は案外簡単でした。
勇者自身、それには全然気づいていなくて、彼は気づきます。
ただ、自分がそう思い込んでいただけなのだと……

自分の事は解らないし、自分じゃ気づかない事って沢山あると思います。
他人の気持ちって難しいけど、それ以上に自分の気持ちも難しいものかもしれませんね。
勇者がそうであった様に。
この作品をみると、改めてそう感じてしまいますね。

勇者レオは「自分の存在意義を守る為に混沌を自ら呼び世界を救うようになるかもしれない
」と悩んでましたが……


混沌を自ら呼ぼうとする勇者がエドギナの話を聞いて「人間界と魔界が共存できる道を一緒に探したいとおもったんだ」なんて考えないでしょう?
だから、勇者レオは最初から狂った生態平気じゃなかったのだと感じました。


さて、初見はかなり期待出来るファンタジー作品でした。
最近、ファンタジー作品に飽きてきていた私が見ても期待出来るスタートでした。

最近のファンタジー作品の中ではかなり面白い方だと感じました。
お仕事のワンポイントアドバイス?的なのもあったり、物語も考えさせられる部分もあり、魔王にしても勇者にしても感情移入がしやすくよく出来たファンタジー作品で今期のファンタジー作品の中ではかなり面白い方に入るのではないでしょうか?

投稿 : 2022/06/21
閲覧 : 149
サンキュー:

8

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