nyaro さんの感想・評価

4.3
物語 : 4.0 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 5.0 キャラ : 4.0 状態：観終わった

出来不出来の問題でなく、この時代には絶対必要な作品だったんでしょう。

　2008年のアニメで2022年6月現在本サイトで順位が17位ですね。本サイトの順位の計算方法は、恐らく経過年数を考慮しているか、年度によってポイントに傾斜があるようなので、2017年以降のアニメが並ぶ中、これはかなりの評価だということです。

　さて、前半がいるか、ですね。もちろん同時代性のある人にとっては、感情移入があったからこその作品です。しかも、やりたい事がわからないみたいなモラトリアム的な悩みは、視聴者たちからの共感に必要だったのでしょう。唐突な妊娠、出産というのも時代的には決して不自然ではなかったです。

　で、まあ、ストーリーで泣くのはいいでしょう。これを否定したら始まりませんし、泣きゲーは「ＡＩＲ」もそうですけど、泣くために存在します。感動ポルノと言ってしまえばそれまでなんですけど、本作の場合、人生とか家族とかそういうものを「感じる」ことが大事だったんだと思います。
　それに「ＡＩＲ」よりも悲愴さは本作のほうが上な気がします。なにせ…まあ、そこはいいでしょう。でも、なにか救いがあるように感じたのは、家族の時間があったから、ともいえます。ＡＩＲの最後は喪失感というよりも虚無感でした。

　実は本作を思い出して再視聴したのは、映画「メッセージ」を見たからなんですよね。運命…それでも幸せといえるのか。確かに家族と過ごした時間がそこにはある。悲しい現実があるにせよ、それがどういう意味を持つだろうか？という感じです。

　さらに、本作については、イフの世界…違う世界線に行けば幸せととるべきか。あるいは一見不幸に見える本作の人生も、絵にかいたような家族団らんも幸せという意味では等価なのかもしれません。

　スクールカースト、失われた３０年、人口減少…一体我々の将来には何があるんだろう、という時代でした。とにかく泣きたい、泣くしかない。当時の携帯小説なども泣くためにあった。感動ポルノと違う気がするのは誘導とか仕掛けじゃないんですよね。とにかく泣きたいというのを制作者側とも共有している気がします。

　音楽です。ＡＩＲもいいですけどＯＰは私はこっちの方がちょっときますね。歌詞も声質も曲調もすべてですね。好きかといわれると積極的には聴きたくありません。胸が痛くなるので。

　とまあ、べた褒めですけど、ＡＩＲの方がアニメ作品としては各段に面白いです。やっぱり本作の前半は辛い。正直面白くない。結果が分かっているからなんとか見ましたが、同時代なら切っていたでしょう。
　そして１期は更に辛い…このアフターストーリーの後半が本編なので、総合評価は私的にはあまり高くないです。ないですが、この時代には絶対必要だった作品だと思います。