「イリヤの空、UFOの夏(OVA)」

総合得点
64.0
感想・評価
254
棚に入れた
1394
ランキング
3938
★★★★☆ 3.5 (254)
物語
3.6
作画
3.4
声優
3.5
音楽
3.4
キャラ
3.5

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ネタバレ

てとてと さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0
物語 : 4.0 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

三大セカイ系悲恋の一角。粗さもあるが美しい名作

全6話のOVA。「最終兵器彼女」「ほしのこえ」と並び、セカイ系悲恋の代表作。
中学生の男の子が、戦争の切り札にされた女の子と出逢い、心通わせていく。

【良い点】
セカイ系、彼と彼女の関係がダイレクトに世界の命運決する、
最も純粋で美しい(と自分は思う)作劇の王道ド真ん中。
まだ幼く未熟な少年少女の、一夏の恋未満。
だけど世界はどうでもいい彼だけを守りたいと思える輝き。
サイカノよりも繊細、ほしのこえよりも観念的ではない。
冬の北海道を舞台に物悲しく泣かせにくる最終兵器彼女(サイカノ)に対し、本作は夏の気怠さからジワジワと切なさが嵩じていく感じ。

一見平和だが戦争の陰がちらつく不穏さ、不思議な美少女との出逢い、交流、他愛のない日々そして破局を、説明少なく雰囲気と最低限の情報のみで淡々と丁寧に描いていく。
説明不足は言下に雰囲気を描写する良さでもあり、幼い彼と彼女の悲恋と夏の儚さを確かに感じさせる。
作劇は不親切な部分が多いものの、映像やキャラの微妙なセリフや関係性で少しずつセカイ系悲劇の予兆を描いていくのが繊細だった。
大人たちの意味深な言動や行動で伏線を張り、ラストのセカイ系悲劇に持っていく流れが残酷だが美しい。

浅羽はまだ14歳で相手も自分の気持ちも整理できない幼さあり、この未熟さが後半のすれ違いや終盤の理屈を超えた情動を生む。
伊里野との交流は非常にわかりづらいが、彼らも分かってないのだから仕方がない。
性的なシーンすらも、どう処理していいか戸惑う幼さを表現していた。
そんな幼い彼らが、やむを得ないとはいえ大人の掌で翻弄される様が悲劇的。
破局が避けられぬ逃避行の末の結末。
でも例え掌の上でも、世界より互いを選んだ物語は美しい。
号泣するほど悲しいというより、じんわりと涙が滲む感じ。

部長と妹が殴り合ったり、浅羽に恋する晶穂ちゃんと伊里野が大食い対決する青春劇も良かった。
切ない破局の予兆がより引き立つし、内向的な主役組に代わって日常の輝きを補完。

作画は夏の儚さや不吉な予兆、幻想的な戦闘シーンなど今でも色褪せず。
伊里野ちゃんのキャラデザもやや古いが今見てもかなり可愛い。

声優陣は浪川大輔氏は上手くないように聴こえるが、この未熟さで良いと思う。

楽曲は泣きゲー原作アニメたちにヒケを取らない。

【悪い点】
キャラの心情の掘り下げが説明不足で分かりづらい。
尺不足か中盤以降の心理描写や場面展開が雑。
13話で良い意味で単純なサイカノに対し、半分の6話で繊細な本作は尺的に厳しかった。
尺不足ならば取捨選択が必要。
例えば妹と部長の殴り合い自体は凄く面白いんだけど、浅羽とイリヤの悲恋に直接関係が無い。
平凡な日常の描写も大事なのは分かるけれど、削るとこは削って、ボーイミーツガールに集約すべきだったと思う。

肝心要のボーイミーツガールがあやふや。
これは良い点で述べたが、当事者たちも自覚する余裕が無い幼さ故か。
ここが特有の情緒を生んでもいるが、やはり分かりづらい。
これに中盤以降の雑さが加わり、ボーイミーツガールとしてはイマイチに思える。
イリヤの浅羽への想いは依存ぽいし、浅羽の繊細な心情も描写が足りてなかった。

【総合評価】7~8点
手放しで絶賛するには粗が多いものの、セカイ系悲恋の名作なのは確か。
掘り下げ不足な部分は視聴者側が積極的に情緒を汲みたくなるタイプ。
評価は「とても良い」

【余談】
自分はセカイ系悲恋大好物なので、サイカノ、すかすか辺りも絶賛。
「天気の子」も法令違反なヤンチャを差し引いても拍手喝采。

投稿 : 2022/06/29
閲覧 : 199
サンキュー:

3

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