「Re:ゼロから始める異世界生活(TVアニメ動画)」

総合得点
91.2
感想・評価
4049
棚に入れた
16665
ランキング
37
★★★★☆ 4.0 (4049)
物語
4.1
作画
4.0
声優
4.1
音楽
4.0
キャラ
4.0

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芝生まじりの丘 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0
物語 : 4.0 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

それなりに面白い転生ものラノベ

基本的にバトル描写を省いている点、ハーレムくさいにせよ魅力的なキャラクタをうまく配置し、物語をうまく動かしている点、死に戻り設定を活かして善意が裏目に出る皮肉な悲劇を多く描けている点など評価できる。
また、当人がたいして有能ではないのに、パワーインフレがやばくて、周囲から崇められるようになっていくタイプの作品が多いが、本作品の場合、死に戻りの能力が露骨に強力すぎるので、無能な主人公が活躍できることの良い合理的説明になっている。
ユリウスとの対立と共闘なども定番ではあるが物語を盛り上げていたと思う。

ザ・ラノベな感じのヌルいタイトルとかで敬遠していたが、それなりに話題作だったということで今更見てみた。その見込みは大きく外れていなかったが、同時に評判になるほどには面白いし人気を博したのもわかるかなと思った。

映像で見ているから、というのもだいぶあるのかもしれないけれど異世界なろう系アニメのはしりになったのも頷ける出来。

【時間遡行モノの面白さ】
シュタゲやらひぐらしやら時かけ、時間遡行/死に戻り系の作品にはかなり成功作が多い。
この形式の利点には下記のようなものがある。
一つは継続的に主人公に知的優位性を与えることができること。なんの戦闘力もない主人公でも「未来を知っている」というだけで圧倒的に有利にことを進めることができる。知識の非対称性は物語を進める一つのエンジンになる。

一つは終端を見て物語が作られること。
時間遡行系は見切り発車で書けるものではなく、終局を見据えて描かれることになるため、必然的に物語はより精緻に伏線が張られることになる。(これがうまくいっていない作品も存在するが。)

一つは悲劇的展開を作りやすいこと。
当然主人公と周囲の人々の死に様や失敗、全てが破綻する様を何度も描くことができる。

一つはサスペンス的な展開を作りやすいこと。
死に戻り系の作品はある種絶望が予告され、それが実現する物語である。最初の複数回の死、失敗で、誰が犯人か、なぜ自分は死ぬのか、進行する様はある種サイコホラーやミステリー映画などに似た緊迫感を与える。

一つは物語の起こり得た方向性の一段片を示すことができること。
ある種のIf的なエピソードを描くことができることも当然魅力であり、敵であったはずの人間が味方になることも味方であったはずの人間が敵となることもありうるのである。個人的にはベアトリスとの契約を行って引きこもるIfは結構好きだった。

シュタゲ、ひぐらしは原作がゲームであったことから死に戻り/時間遡行設定にはゲームであることの影響も見られる。ゲームオーバーして何度もやり直して、初見殺しを回避して敵の配置を覚えて、クリアするというようなやり方は現代人には当たり前のものであり、また折々のIfストーリーを楽しむというのも当たり前のことだ。

【平凡主人公という存在の根底的矛盾】
いわゆる平凡の域を出ない青少年を物語の主人公にする物語というのは数多い。
その目的の一つは物語を共感可能なものにするということだろうが、それだけではない。
平凡な日常を生きる視聴者「もしも」を考えさせるために、平凡かつ成長のよちが多い青少年というのは格好な題材だ。

そして、物語の中で描かれるもっとも基本的なストーリーパターンはその平凡な青少年が波乱万丈に出世、成功を切り開いていく様を描くというものだ。
しかしこのタイプの物語にありがちなのは、平凡的に振る舞う人物と英雄的な賞賛のギャップが徐々に広がり過ぎて歪な印象を与えてしまうことだ。主人公を平凡人間と置くような成長物語にはその矛盾のなかで徐々に「実は主人公は先天的にすごい人物だった」というように結局持っていってしまうものもままある。
この作品も例に漏れず回を重ねるにつれて「どこにでもいる男子」みたいな設定が足枷になっていくのを感じる。


【エミリアとかいう不憫枠】
この物語で明らかに一番不憫なキャラクターはエミリアである。
彼女はそれなりに出番のある割に視聴者の好感度の低いキャラクターとなってしまっている。
その原因の根本はエミリアが受動的なキャラクタになっている点と彼女の技能や地位などが力を発揮する場面がほとんどないことだろう。
まず、受動的な、つまり主人公に言われたことや状況に定められたことを遂行するだけのキャラクタというのは不確定性がなくつまらなく感じてしまう。最序盤の回では彼女の道徳感による積極行動というものが示されていたが、その後は彼女は自身の性格や考えを発揮して何かを解決するということがほとんどない。

また、高位の人間であることやその精霊魔法、エルフとしての出自など物語を推進する力となる要素を多く持っているにもかかわらず、彼女が物語を左右する局面はほとんどない。(尺の関係での説明不足もあろうが2期での試練も結局聖域を破壊するメリットがあまり見えて来なかったためあまり貢献を感じなかった。)そしてそれに関係して主人公の彼女への愛の動機も薄ぼんやりしたものになってしまっている。
まあそういった部分は一期中盤の挫折と復活のカタルシスに繋がっていたし、あるいは今後の彼らの関係の破綻の伏線としての役割もあるのかもしれないがメインヒロインの扱いとしては同情を禁じえないものだ。


王候補の人選やら屋敷の人々やらペテルギウスやら魔女たちやら興味を惹くキャラクタ造形ができていた人物が多いだけに主人公とメインヒロインにいまいち魅力がないのが際立ってしまっているようにも思う。

投稿 : 2022/07/05
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サンキュー:

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