とまと子 さんの感想・評価
4.5
物語 : 5.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 5.0
状態:観終わった
Storia d'amore ~ 「愛」の物語
生命を救われる代わりに人工的な肉体を与えられ、厳しい戦闘訓練を受けてテロ組織と闘う少女たちの物語です。
彼女たちは「条件付け」と呼ばれる洗脳を受けていて、バディを組む公安捜査官を身を呈してでも守り、彼の指示には盲目的に従います。
漫画原作のアニメ化で、この一期は2003年に作られました。
今から見ると作画は古く感じられるかも知れませんが、丁寧に作り込まれていてシリーズを通しての物語や一話ごとのエピソードも研ぎ澄まされ、とても深く印象に残ります。
傑作、名作だと思います。
このアニメは、公安がテロリスト相手に派手な銃撃戦を繰り広げるガンアクションものとして観ることもできますし、イタリアの複雑な社会の中での”抗争”ものとして観ることもできます。
あるいは、身体を改造され洗脳を受けた暗殺者たちのサイコホラー的なSFだと言うこともできるでしょうし、殺戮の世界で生きざるを得なかった彼女たちの過酷で非情な運命劇と捉えることもできます。
ただ、これを"可哀想な女の子たちのお話"と捉えることは、違うかな?と思います。
”イタリアに生きる洗脳を受けた殺人機械の少女”なんて、自分から遠く離れた絵空事としか受け止められないかもしれませんが、わたしはそうは感じられませんでした。
観ている間、わたしはひとりひとりの人間としての彼女たちと共に生き、彼女たちの感情を追体験していて、”可哀想”という、対象からちょっと離れて見ているような感覚にはなり得ませんでした。
事故や事件の偶然の結果として選ばれ、戦闘員として仕立て上げられ、”条件付け”された感情と意志から誰かのために生命をかけて闘う…。
そんなことは、いわゆる”自由意志”とは言えないでしょう。
でも、わたしにしても、好きになる人を自分で選ぶことはできません。
誰かと付き合うことや結婚することは”自分で決めた”と思えるかもしれませんが、誰かに恋する恋愛感情は、”自由意志”で決めたり選び取ったりしたものではないです。
それはいわば偶然に”条件付け”られた感情です。
でも、それはとても大切で、離れることはできず、ときには自分の生き方を大きく変えます。
この物語に登場する彼女たちの想いも{netabare} …ヘンリエッタの恋慕も、クラエスの絶望や約束も、そしてアンジェリカの哀しみや寂しさも…{/netabare} ですからわたしには決して特殊な架空のお話しではなく、どこにでもいる誰でもが持ち得る感情に思えたのでした。
死を約束されていることも、生きるために戦うことも、その理由となる”愛情”のあてのなさも、それはわたしたちと何も変わらない「普通の人間」としてのあり方です。
だからこそこの物語は観る人の心に残り、そしてラストエピソードの美しさには「すべての人類のために書かれた歌」こそが似合うのだと思います。