かがみ さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
ゴールデンウィークの悪夢
「化物語」のもう一つの前日譚である本作では阿良ヶ木とシリーズヒロインの一人である委員長中の委員長の究極の委員長、羽川翼が繰り広げる「ゴールデンウィークの悪夢」が描き出される。人は皆、何かしら「傷物」であり何処かしら「偽物」である。そして、そんな世界の中で「本物」を演じるとすれば、それはしばし「猫をかぶる」などと言われる。本作は長年「猫をかぶる」ことを強いられてきた少女がまさしくその猫に魅入られた物語である。羽川の悲劇は、両親が何度も入れ替わるという特殊な家庭環境の中でカントのいう定言命法的理性の実践こそが「普通」であると思い込み「普通」という名の「本物」を演じた点にあったといえる。そして彼女が「本物」を演じれば演じるほど、義理の両親にとって彼女は「化物」に見えたのであった。あるいは純粋な理性とは純粋な狂気と等価なのかもしれない。そうであれば純粋な正義とは同時に純粋な悪と等価であるというべきなのだろうか。