「言の葉の庭(アニメ映画)」

総合得点
85.7
感想・評価
1961
棚に入れた
9351
ランキング
208
★★★★★ 4.1 (1961)
物語
3.9
作画
4.6
声優
4.0
音楽
4.0
キャラ
3.8

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ネタバレ

薄雪草 さんの感想・評価

★★★★★ 4.7
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

仲立つ雨も ゆくへ孤悲しき

心に靄がかかる日は、雨に烟(けぶ)るエキストラでいたい。
大都会の水の辺(べ)に、消えいるくらいがちょうどいい。

水紋と緑葉とで彩られた新宿御苑。

顕世(うつしよ)の喧騒を遠くにさせる優しげな萃雨。
空蝉(うつせみ)の体を気遣うようにささやく雨だれ。

そんなハーモニーとセレモニーとに落ちつきたい寂しさが、胸の奥で疼いている。


~    ~    ~


ビールの苦みは、気抜けしたかのようにいくらもキレがない。

チョコの甘さも、だれかを許せるほどの魔法をあみ出せない。


夏空はまばゆく煌めいているのに、潤いはすっかり干上がっている。

開いたページに世路を辿っても、憂いばかりに足をとられている。


~    ~    ~


その人は、今までどんなふうに暮らしてきたのだろう。

足元の覚束ない彼女を、この先、律するものは何だろう。


孤悲しさを未来に残したい万葉の詠歌なのだろうか。

それとも、万葉に陰るベンチで言向け和す誰かだろうか。


~    ~    ~


いわれなく詰られることに戸惑っている。

だけど、大人の対応がこなしきれない自分にも手を焼いている。

息詰まる想い、そぞろな空言、葛藤と逡巡。

それらにきびすを返した私には、受け止めてくれる寄り木も、招き入れてくれる灯火も、すでにどこにもないのだ。


~    ~    ~


だから、ユキノはひとり四阿にいる。

何かを得るため、誰かと語るために、足を運ぶのかもしれない。

身を寄せ合うため、信じられる言霊を分かち合うためなのかもしれない。


そんなヒーリングガーデンのことを、言の葉の庭と呼ぶのかもしれない。



~     ~     ~
   ~     ~     ~



歩き出そうとするタカオと、まだ歩き出せないユキノ。

雨に誘われた気まぐれが、歩調をそこに止めてしまった。

逢うたび心は寄りかかり、魅かれはじめてしまったのです。


その逢瀬は、夢の在りかをともにできる二人だけのエリアカラー。

その約束は、人生の旅立ちを心に秘めあう淡いモラトリアム。


~    ~    ~


さりげない呼応のなかで、相聞歌はみどりを深めていく。

差し出す足先の白さに、目先は色めき立っていく。


遣らずの雨によって穿たれた二人の純心。

一方通行を求める校則など、助けにはなりえない。


めぐる進路に、ゆれる才智なのです。


~    ~    ~


リビングで向き合えば「今がいちばん幸せ」と納得できる二人のはず。

なのに、教師のてらい、15才の勇み肌が、好きという言の葉の先を打ち消してしまう。


それ以上近づくには、所作がまだ分からないのです。

これまでの振る舞いに、つい背を向けてしまうのです。



~     ~     ~
   ~     ~     ~



仲立つ雨も、ゆくへ孤悲しき。


二人を引き合わせたのは、いっときの天の粧(よそお)い。

分かつ先をそれぞれに歩ませるのも、四季の移ろい。


天気はいつもふたごころ。

人の足元もたやすくは定まりません。


~     ~     ~


二人の魂は、まだ階段の途中にいます。

それは、天でもなく、地でもないかりそめの踊り場。


どんなに思いをぶつけ合い、想いでぶつかり合ってもいい。

でも、決して番うことのできないあえなさなのです。


~    ~    ~


タカオの腕では、まだユキノの足を納めることができません。

あと少し、大人にならなければと。


ユキノの指先は、なおタカオへの気持ちを治められないでいます。

あとしばらく、大人であらねばと。


~    ~    ~


やがていつか、孤悲から恋へと詠える日が、ユキノに訪れるのなら。

雨情にも優る晴れの日が、その靴でタカオが誇れるのなら。

それぞれの言の葉が、一つの庭で彩られるのなら。


と、そんな未来を見てみたいと願うのです。


{netabare}
ちなみに上の句は、 

雷神の  少し響みて  藤匂ふ 



藤の花言葉は、

{netabare}   恋に酔う。 {/netabare}

です。
{/netabare} 

投稿 : 2022/09/02
閲覧 : 233
サンキュー:

21

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