ostrich さんの感想・評価
3.9
物語 : 3.5
作画 : 5.0
声優 : 3.5
音楽 : 3.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
無名に降参
ざっとレビューに目を通した限り、元ネタとしてある作品を指摘している人がいなかったので、レビューを書く気になった。
列車で世界をぐるぐる回る設定は「銀河鉄道999」はもちろんだが、ポン・ジュノ監督の「スノーピアサー」を意識していると思う。
もちろん、もろもろ、違う部分はあるけれど、「列車(と駅)以外は人間が生きていけない世界」という点は完全一致。そして、「生きていけない理由」にゾンビ・吸血鬼ものをぶっこんでいる。
ちなみに、「スノーピアサー」は全編、列車の中で物語が進行し、それを生かした実に皮肉のきいた現代文明批評的な作品なのだけど、そういう部分は本作にはあまりない。いや、現代文明批評的な部分がないわけじゃないけれど、舞台設定とはほぼ無関係に見える(列車が舞台ではなくてもほぼ成立する)。だから、「スノーピアサー」を観ていると、本作はメタファーが効いていないように見えてしまう。
まあ、ないものねだりかもしれないけれど、いずれにせよ、テーマに対する踏み込みが浅い感じはした。
で、他の元ネタと思しき作品を挙げると、対立する組織の設定は「風の谷のナウシカ」かな。もちろん、甲鉄城が風の谷ね。で、ラストは{netabare}ファーストガンダム{/netabare}。あとは、「もののけ姫」とか「進撃の巨人」とか。
誤解してほしくないのだけれど、だから、つまらないと言ってるわけではない。むしろ、これだけつまみ食いしながら高いレベルでまとめているのは感心する。デザインや作画も含めて、非常に職人的な作品だった。
あ、デザインといえば、あれだ。美樹本晴彦のキャラクター。特に女子。
ていうか、彼のデザインは女子だけ見ておけばいいわけだけど、実に素晴らしい。世代のせいもあるかもしれないが、あざとさを感じつつも、脳が勝手に、かわいいと結論付けてしまう。
特に無名ね。なんですか、あれは。反則。
美樹本原画っぽい止め画とかを出すあたり、制作チームが彼女にやられていることがよくわかるし、私もやられた。
ていうか、もしかしたら、制作チームのリスペクトの先は様々な元ネタよりも美樹本晴彦に向いているのかもしれない。
であれば、本作は何も間違ってないし、「スノーピアサー」を持ち出して、ぶちぶち言っている私が間違っていることになる。
うん、たぶん、そうだな。私が間違っているな。
無名のかわいさ含め、エンタメ作品としてとてもよく出来ていると言わせていただき、筆をおく。