「結城友奈は勇者である(TVアニメ動画)」

総合得点
77.7
感想・評価
1405
棚に入れた
6882
ランキング
588
★★★★☆ 3.7 (1405)
物語
3.7
作画
3.8
声優
3.7
音楽
3.7
キャラ
3.8

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ネタバレ

キー男 さんの感想・評価

★★★★★ 5.0
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

しょーがねーだろ岸監督なんだから

☆の点数は気にしないでください。数日前に☆1低評価爆撃をしてる輩を見かけたのでその打消しの意味でつけてます。実際はピッタリ☆4くらいかなぁと思いますが、その人にとって何が悪かったんでしょうね。

とはいえ、この第1作のみで評価するとやはり最終話は説明不足であり、当時からかなり賛否両論になったのは覚えています。「ご都合主義である」とも言われてましたね。

戦犯として原案のタカヒロさんをつるし上げて非難する人もいます。【アカメが斬る!】や【真剣で私に恋しなさい!】のシナリオを書いた方です。話が悪ければ脚本家に責任がある。まあ素人はそう考えがちですよね。

ですがkey作品を嗜んできた自分にとってはこの作品の批判点、何処か既視感がございます。ゲームではなくアニメオリジナル作品であり、最終話にキャラの扱いやストーリーの顛末で一部、大ブーイングを喰らった作品……そう、【Angel Beats!】です。

もうお気づきの方、もしくはとっくの昔に知ってるよという方もいらっしゃるでしょうが、実は【結城友奈は勇者である】と【Angel Beats!】は共に岸誠二監督の下、制作されたアニメです。常識ではございますが、アニメ監督というのはシナリオに従ってアニメーションの制作を指導・統括し、作画及びレイアウトの指導を行い、最終的に1個の作品としてのアニメを完成させる役職です。脚本家はその同格以下となりますので、必ずしも脚本家が上げてきたシナリオをそのまま流用するということはありません。ダメなシナリオライターには書き直させたり、場合によっては制作から外す権限も持ち合わせています。アニメ制作における実質的なトップと言えるでしょう。

同じ監督が作ったアニメが同じ所で批判を受ける……この因果関係を鑑みれば、悪いのは脚本家や原案者ではなく監督ということになるのではないでしょうか。両作品は脚本家の人物は異なっていますからね。

ここまで自分は脚本家擁護、監督批判の形を取っておりますが、どうか誤解しないでください。私はお二方とも素晴らしいクリエイターだと考えております。特に岸監督に対してはこの作品も【Angel Beats!】も楽しませていただき大変、リスペクトしております。嘗ては【瀬戸の花嫁】のアニメも携わり、評判の悪くなりがちな“原作改変”も成功させた希有な人物でもございます。ただ、監督の作風は“説明しない”要素を含むためにどうしてもある程度は人を選んでしまうようです。

岸監督は“視点”というものを大事にしています。明確に主人公がいる作品なら主人公たちから見える物語を描写し決して群像劇めいたものにしない、王道でわかりやすい演出でとても入り込みやすい作品を作ります。その一方で主人公たちの見えない部分……例えば主人公らに対峙する“敵”が裏で行動しているなどといった部分の描写は控える傾向にあるのです。【Angel Beats!】では死後の世界に訪れた少年少女たちを中心に描き、結構大人数なメインキャラクターの中から主人公の『音無結弦(おとなしゆづる)』、「戦線」の代表である『仲村ゆり(なかむらゆり)』、「天使」の『立華かなで(たちばなかなで)』と徐々に少人数に絞りながら物語を展開していきました。その過程で他のキャラの顛末や死後の世界の謎、黒幕などの描写がどうしてもおざなりとなってしまい、それらが批判点となってしまいました。「1クールではなく2クールかけて丁寧に描けばもっと良かったのでは?」とはよく書かれていますよね。

この作品も同じです。{netabare}主人公たちはちょっと変わった部活をやっていただけの普通の少女たち。バーテックスという未知なる敵や四国以外が滅びてしまっている世界の謎、残った世界を牛耳る大赦のことなど知る手段がありません。そんな少女たちからしか見えない視点で物語を描写したから観てる人には見えない部分……説明不足に感じる部分が出てきてしまうのは仕方がありません。{/netabare}“神の視点”で作った作品じゃないのですから。

確かに作品を観て全てを理解できれば気持ちがスッキリして「良いものを観たな」と感じてしまうのかも知れません。だからこのサイトでも登場人物の心の声がダダ洩れている【かぐや様は告られたい】とか【鬼滅の刃】などがとても高い評価を受けているんじゃないかと思います。ですがそれではアニメにおける視点が登場人物という“主観”よりも神の視点という“俯瞰”の方が優れている。物語を俯瞰で描いて神ともナレーターともつかない存在が鬱陶しいくらいに説明しまくる作品こそが正しい。そんな風潮がまかり通ってしまっているようで自分的には納得がいきません。説明不足は悪いことではなく、敢えて説明しないことによる情緒や考察への誘いも素晴らしいアニメーションの醍醐味ではないでしょうか。岸監督もまたそういった演出を貫く名監督の一人だと自分は評価します。

最終的に何が言いたいかというと、「もう少しこの作品、高評価してこうぜ」という呼びかけです。なんだかんだで岸監督の作品はここのサイトでも評価は高い方です。【Angel Beats!】は60位、【瀬戸の花嫁】は266位、【Persona4 the ANIMATION】で340位といった具合です。勿論、目も当てられないような順位の作品を手掛けたこともございますが……。

そんな中でこの作品は現在554位……まあ沢山の人たちの評価で決まっているだろう順位にあれこれ文句をつけるのはマナー違反でしょうが、先日の☆1爆撃なんかも見てしまうと「ここでは結城友奈は不当な順位に落とされてしまっているのでは?」と考えられずにはいられないのです。同じ監督であり同じ欠点を抱えている筈の【Angel Beats!】は2桁第なのにこちらは3桁第の後半ですからね。違いと言ったら登場人物が男女混合の学園ファンタジーか女性中心のヒロイックアクションといった位ですが、どちらもオタク好みな作品であることに変わりはありませんしここまでの隔たりが生まれるのは本来、可笑しいのではないでしょうか。

この作品は常に何かしら他のアニメファンによる“悪意”に晒されている可能性が考えられます。低評価を下す方のアニメ棚にはよく【魔法少女まどか☆マギカ】が入っておりますが……?

疑惑はともかく、この作品をほんとに途中までは楽しんで、最終話で「説明不足だ!ご都合主義だ!」と憤慨するような方がいるのなら自分はこう言いたいとも思います。「監督、そーゆー作品以前にも作ってるよ」と。アニメを観る時は監督の作風を調べるくらい、常識になって欲しいものですよね。

投稿 : 2022/08/14
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サンキュー:

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