「Sonny Boy サニーボーイ(TVアニメ動画)」

総合得点
69.8
感想・評価
282
棚に入れた
791
ランキング
1652
★★★★☆ 3.4 (282)
物語
3.3
作画
3.4
声優
3.5
音楽
3.5
キャラ
3.4

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ネタバレ

蒼い星 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.3
物語 : 3.0 作画 : 3.5 声優 : 3.5 音楽 : 3.5 キャラ : 3.0 状態:観終わった

Going My Way.

【概要】

アニメーション制作:マッドハウス
2021年7月16日 - 10月1日に放映された全12話のTVアニメ。

監督は、夏目真悟。

【あらすじ】

真っ暗な異次元空間に校舎があった。
校舎の外には無限の闇が続き、闇の中には何もないのかもしれない世界。
夏休みの折り返しを過ぎた8月16日。
その校舎に、36人の中学3年生が超常的な力で閉じ込められていた。

そこで少年少女たちは超能力に目覚めて、
その能力で好き勝手したい者、規律を求める者で意見が分かれていた。

元の世界に帰るという共通の目的があるはずだが、
明日の見えない異常な状況に巻き込まれていることで、
そのストレスで人を疑いやすくなっていて、
誰かを罰することで安定を求めたい者も、それでも冷静でいたい者もいた。

その集団生活の一人に、無気力で人生を諦めたような少年の長良と、
そして長良に話しかけるショートカットの帰国子女の少女の希がいた。

集団のルールで厳格に集団を統率したい生徒会と、
お前らのルールには従えないというグループによる対立。

彼らの歪な争いを横目に希は、この真っ暗な世界から脱け出そうと校舎から飛び出してジャンプ。
落下する希の手を掴む長良。長良が逆の手で握っていた手すりが壊れて落下する二人。

落ちた先は海で、校舎ごと36人は暗闇から無人島に転移していたのだった。
謎だらけの数々の世界で、元の世界への帰還への手がかりを探す彼らの長い道のりは続く。

【感想】

40年前には人気のジャンプ漫画家だった江口寿史氏の冴えないキャラデザ。
主人公は生気のないモブ顔。老猫が鼻水を垂らしている。
汚い男子トイレで脇役のおっさん顔の男子中学生がパンツおろして尻を出して便座に座る。
音は出してないけど、多分、排泄をしている。
その、おっさん顔の男子中学生が暴走した報復で全裸でうさぎ跳びを強いられる。

と、絵面が趣味じゃないな!と以前は余裕で1話切りだったが、今回はなんとか完走。

これがサバイバル状況下の険悪な人間関係に焦点を当てた作品か?
と予想すれば、部分的にはそうではあるが中心ではない。
謎の能力で物資は届くし、世界のルールだかで食べなくても餓死しない、
衣食住に不都合のないどこか温い異世界漂流生活。
よくわからない世界の法則を解き明かして次の世界に進む話?
現代社会の少年少女の心の行き詰まり、集団生活に適応することへのストレスや不安の話?

最初は36人いた生徒もシナリオ上に必要なのは5~6人程度で残りは殆どが意味がなく、
展開上の役割を終えた途端に長良たちとは別の道を選んで物語から消えていく。

このアニメのテーマは元の世界に帰ろうとする集団のドラマではない。

実は、長良少年を主人公にした不思議な体験を通じての陰キャの彼の成長の話。
市民劇団みたいな芝居じみたストーリーの連続でオムニバスにも似ている連続した物語。

それは、脚本を書いてる監督の頭の中にある、
ストーリーや思想や哲学を延々と聞かされているよう。
それでありながら、情報をフルオープンにするわけでなく、
作り手が断片的にストーリーを提示して、視聴者の頭で考えてくださいなスタイル?

いろんな話で毎回攻めてくるものの、何を言いたいのか実はよくわからない。
特に第4話で映像で見せずに暑苦しい口調だけで4分間も続く猿と野球の話の朗読が、
あまりにもつまらなくて苦痛だった。

ルールを守ることが世界の秩序を守ることであり、
ジャッジする者が情に流されてのルール破りで秩序を破壊してはならないジレンマ、
同調圧力に屈さずに最後までルールを守ったことで、
暴徒となった猿の軍団に殺された球審の猿は英雄だった言わんばかりの希の反応。
野球帽のおっさん中学生の長話とは、
自分も含めて漂流者となった生徒たちの集団生活のあり方と重ねていて、
答えは聞いたひとりひとりの心の中にあるのだろう。

モンキー・ベースボールはタダの彼の妄想や作り話だったのかもしれないし、
万事この感じで何が言いたいのかダイレクトさに欠けていて、
このアニメ全体が突拍子もなく支離滅裂で意味不明な話の集合体に思える視聴者もいる。

第6話の、ミミズを食事としてタコ部屋で雑魚寝をして何千年も労役している学生たちの話など、
監督の頭の中で紡ぎ出した夢のような妄想のような不条理な世界に、
あーだーこーだと考察するだけ実は無意味、理屈や法則なんて特に無いのだから。
ただ監督の妄想ホラ話に耳を傾けてなにか琴線に触れるものがあればいい、
といった類のアニメに思えてきた。

今どきの映像と音での感覚型、わかりやすい言い回しでのキャラへの共感型のアニメと逆の、
回りくどい言い回しで不条理丸出しのサブカルアニメ。
このアニメの創造主である監督はビューティフル・ドリーマーに憧れがあるのだろうか?

「頭の良い人間は わかりにくいことを簡単に説明し、
 頭の悪い人間は 簡単なことをわかりにくく説明する」

自分が頭がいい人間だとは思わないが、
見る者が困惑するアニメとは、
わかりやすく伝えることをクリエイターが放棄した自己満足の世界とも思えてくる。

と万事煮えきれないムードのままに進んでいくこのアニメのオチは、
現実世界はつまらなくて退屈で楽しくないことだらけだ。
思い通りになることなんて殆どないが、それでも前を向いて歩こうって感じ。
それはそれで悪くないけど、画作りが暗くてグダグダ喋るのが長すぎて、
観ていて大して面白いわけでもない。

第25回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞受賞作品であるが、
この手の作品は審査員ウケと商業的成功が両立しない。

要するにマニアや審査員に評価されるように作っていて視聴ターゲットが選ばれる、
わかる人だけわかればいいアニメ、だから楽しめる人が限定的になる。
ゲージュツとは、そういうものなのだ。
商業的に振るわなかったとしても、
クリエイターが自覚して割り切っていればそれで良いかもしれない。
監督のコメントを自分は確認していない。

好きでもないのにモヤモヤ感と印象が残る、
なんとも不思議なアニメだった。
自分が今後これを見ることは多分、無いだろう。

銀杏BOYZの主題歌を頭の中で再生しつつ、
秒速5センチメートルにも似たビターエンドを思い出しながら、
自分は心のなかでこの作品に、そっとサヨナラを告げた。

ついでに言えば、瑞穂だけは嫌いではなかった。

これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。

投稿 : 2022/09/30
閲覧 : 249
サンキュー:

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