「ペイル・コクーン(OVA)」

総合得点
61.0
感想・評価
187
棚に入れた
833
ランキング
5486
★★★★☆ 3.5 (187)
物語
3.6
作画
3.8
声優
3.2
音楽
3.5
キャラ
3.3

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ネタバレ

薄雪草 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9
物語 : 4.5 作画 : 4.0 声優 : 3.5 音楽 : 4.0 キャラ : 3.5 状態:観終わった

記録の錆、記憶のさざ波。そして青色へ。

吉浦康裕作品のいちファンとしては、すっかり見逃していました。

"ペイル・コクーン" を直訳すれば、"青白い繭" になります。

その理由は、作品の終盤にわずかに目に留められるチャンスがあります。

ただ、それだけではない含みが本作にはあります。

にがにがしいあと味とともに。


~      ~      ~


"記録" を発掘する。

あるいは、修復する。

まず、そこからバイアスへのスティッキートラップが仕掛けられます。


閉ざされた大地下空間。  

深層階に設えられた狭い仕事場。

彼らが丹念に精査し、創り上げていくのは "地球の原風景" です。

海の青、大地の緑、花弁のピンク、プロムナードのネオン・・・。


記録が錆がかったデータであるうちは、彼らはなんの疑問も挟まず、憧憬も持ち得なかったはず。

でも、注ぎ込まれる心血、研ぎ澄まされる専心、忍耐を超える使命感が、ひとつの不思議なシンパシーを呼び覚ましていきます。


それはただ、データの断片で、日々のルーチンに過ぎなかったはずなのに。


~      ~      ~


ついに修復できなかったデータがありました。

それは、当時の人間が吹き込んだ音声です。


口唇の解読。 音声波形の解析。

ハーマニィム(同音異義語)。 センテンスの繋がり。

それは日本語なのか? それは標準語なのか?

雑音の中にも耳を澄まし、無音の上にも目を凝らします。


やがて、導き出されるのは "一つの仮説"。

昂ぶるスピリッツが、証明へと足を向かわせます。


~      ~      ~


圧し下げられた深い闇のなかで一生を凝視していた彼らの瞳と、深遠に浮かびあがる {netabare} 青い星の射影 {/netabare} とが、鋭く対立し、白熱を見せます。


それは、秘匿され、細切れにされたデータの真実。

ギミックの呪縛とトラップからの解放という瞬間。

圧縮と閉塞に生きていく鬱積から、希望と光明を見出したエウレカなのです。


ぎゅっと凝縮されたSFの醍醐味が、そこには用意されてありました。

投稿 : 2023/01/11
閲覧 : 173
サンキュー:

7

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