「惑星のさみだれ(TVアニメ動画)」

総合得点
60.2
感想・評価
160
棚に入れた
349
ランキング
5824
★★★☆☆ 2.9 (160)
物語
2.9
作画
2.2
声優
3.1
音楽
3.2
キャラ
3.0

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ネタバレ

エイ8 さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0
物語 : 4.0 作画 : 2.0 声優 : 2.0 音楽 : 3.5 キャラ : 3.5 状態:観終わった

ヘッドフォン推奨

『惑星のさみだれ』(ほしのさみだれ、Hoshi no Samidare)は、水上悟志による日本の青年漫画。作者にとっては以前同誌で連載されていた『散人左道』に続く2本目の長期連載作品であり、『ヤングキングアワーズ』(少年画報社)にて2005年6月号から2010年10月号にかけて連載された
完結から12年後の2022年7月から12月まで毎日放送・TBS『アニメイズム』B1枠ほかにて放送された(wikipedia)

色々と難点の多い作品だと感じました。まずは作画、これはもう最初から最後までかなり低い品質です。通常アニメを観る時は「作画崩壊」を懸念することが多いと思うのですが、本作に関して言えば初めから最低水準に近いため多少崩れたところで気にもならないのが長所と言えば長所かもしれません。1クール目には靄のかかったような描写だったのですが、2クール目になるとそれは無くなったように感じます。ただ作画の悪さは相変わらず、本来はバトルシーンがウリの一つだと思われるのですが、GIFアニメのような切り取られた同じ動作が続くなど高揚感も躍動感もありゃしません。人によっては美麗に描かれた静止絵の方がまだマシと感じるかもしれない、そんな次元のクオリティです。

次に声優、本作の主役の一人である雨宮 夕日 (あまみや ゆうひ)役である榎木淳弥氏の演技なのですが、邦画を揶揄する時にちょくちょく言われるような薄暗いリビングでのボソボソ喋りみたいな声でとにかく聞き取りづらいです。部屋が寒いからとガスファンヒーターでもつけようものならその音にすらかき消されてしまい何を言ってるのかわからなくなります。夕日のバディでもあるノイ=クレザント役の津田健次郎氏もお世辞にもクリアな声質であるとは言えない上にコミカルな声を出す演技をすることもあるのでこれまた聞き取りづらかったりします。本作を観るのであればヘッドフォンをつけるか真冬を避ける、また周囲の喧騒が気にならない時間帯に視聴することをお勧めします。2クール目にはこの傾向は改善されたように感じましたが、正直時すでに遅し感がハンパなかったです。

ユーモアセンスもあまりよくないです。冒頭でノイを窓から捨てたりだとかさみだれの姉でもある朝日奈 氷雨(あさひな ひさめ)に対するセクハラじみた行為など、2005年発という時代を考慮しても尚ちょっと古臭い感さが否めません。

シナリオに関しては原作ものだけあってまずまずの出来だと思いました。ただ幾分粗い面も見受けられます。例えば敵であるアニムスのもとに茜 太陽 (あかね たいよう)がいることを風巻 豹 (しまき ひょう)が知るのですが、彼が茜の裏切りを報告しなかったのは単にただの偶然であり本来はそれが知られてしまった時点で物語は大きく破綻します。あれは風巻が知らせない前提で組み立てられたプロットであり正直ちょっとモヤモヤしました。

宙野 花子 (そらの はなこ)についても、一体彼女はどんなトラウマを抱えているんだ?と思っていたらビックリするぐらいの「知らんがな」案件。あんなことで笑顔奪われたとか言われてもどないせえっちゅうねんって感じでした。そんなんでよくデスノートじみたこと出来るよな、がり勉の癖に冤罪の可能性とかも考えんの?

また、朝日奈 さみだれ (あさひな さみだれ)と夕日が地球を破壊する旨の話を白道 八宵 (はくどう やよい)が聞きつけるシーンがあるのですが、彼女その時下駄を履いてカランコロン言わせてるんですよね。それに気づかない姫達って一体なんなんでしょうか。描写以上に距離が離れていたとしても、それならそれで下駄の音も届かない距離の相手に聞こえるぐらいの声で喋っていることになります。細かいと思われるでしょうがやはりちょっと不自然です。

他にも一時は10体目として認識した筈の泥人形ピュアノプシオンを倒したつもりになっていたにもかかわらず別のシーンでは10体目と認識してないような描写があったりと(あったよね?)設定管理の甘さも見えた気がしました。

とはいえそこまで目くじらを立てるようなレベルのものではないので、ストーリーについては本当は星4.5をつけようと思ってたのですがあまりにも期待外れな最終回だったため4に下方修正しました。ハッピーエンドなので体裁は整っていますが、物語の締めとしてはそこまで良いものではないと感じます。

まず一番嫌というか気持ち悪かったのが仲間内カップリング縛り。作品としてはついさっきまで夕日に未練たらたらだった白道が次の瞬間には風巻とデキてるとかゲロ吐くかと思いましたよ。せめて本編でそれを匂わすような描写があればもうちょっと感じ方も違ったでしょうが、本当にただ余りもの同士をくっつけただけのよう。これならば白道は有名コスプレイヤーになり、風巻は同僚と思われる氷雨とくっついたほうがまだマシだと思いました。白道、風巻二人がくっついたことについて夕日は「10年もあれば……」と言いましたが、だとしたら花子は?そう、作品中で出来上がってないカップルは彼女と既に家族のある南雲 宗一朗 (なぐも そういちろう)だけなんですよね。では何故か?これはもう彼女が既に故人である日下部 太朗 (くさかべ たろう)に操を捧げているような状態だからでしょう。花子本人は自分のやりたいことと言ってましたが、太郎の影響がなければ外食産業などに手を出さなかったと思います。結局彼女は死んだ男の呪縛から10年経っても逃れられていないのです。せめて花子に太郎を乗り越えるような描写があれば良かったのですが、ひょっとしたら実質殺人者である彼女の業がそうさせているのでしょうか?ただいずれにしろ氷雨もまた同様に故人である東雲 半月 (しののめ はんげつ)に操を捧げさせられている状態と言えるためこのラストは「いい話」というよりは「キモイ話」だと感じました。これは最低でも太郎が生きていて初めて認められるオチだと思います。

実際、本作は序盤から結構シリアスなシーンも多く、太郎と半月の他に秋谷 稲近 (あきたに いなちか)の計3人もの騎士が死んでいます。にもかかわらず不治の病であったさみだれは生き延びて大団円を迎えました。半月の死はわからなくありません。おそらく彼が騎士に選ばれたのは他の騎士と同様にアニムスになる素質があるというだけでなくアニマ、アニムスの祖先でもあるからです。おそらくアニマは自分達が産まれないようにという意図もあって彼を死地に追いやったのでしょう。勿論生き延びる可能性もありますが、実際に物語としては死亡し世界は彼女達が産まれえない別の世界線へと移行しました(ドラえもんのセワシルートに乗っていなければ)。

物語としてはさみだれは死ぬべきだったと思います。決戦の後「また明日」と言って別れますが、そこで翌日には冷たくなった方が良かったんじゃないでしょうかwそして結局一緒に死んであげられなかった夕日は苦悩し、まるで祖父のように性格をこじらせながらも仲間達、特に白道に支えられ最後は家族として笑顔で死ぬ、この方が白道の願いの伏線も回収できて良かったのになあと思いました。二人の騎士であるノイとシア=ムーンの間にも因縁があるなど二人には結構伏線もあったんですがねえ。結局彼女の願いは知り合いの弟が死んだことから来た程度のものでしかなかったみたいです。

最終決戦の後、アニマはさみだれに対して「未来は決まってない、お前が決めろ」と言います。一見良いシーンなわけですが、これ実際は未来の夕日から10年後の情報を得た状態で言ってるわけです。であるならば、未来はむしろ変わってはまずい筈なのですw
そもそも未来の夕日を呼び出せてる時点で地球破壊は回避されたという確定演出になってるんですよね。もっとも初見では彼が何者なのかは正確にはわからないのですが、すぐ後に結局は未来の夕日自身であることが知れたわけですからね。

設定自体はよく練っているのだろうなあという感じはしています。一見意図不明なあの12の獣の選抜にも意味はありそうですし、また最後夕日が装備した鎖やマント、それに獣の槍みたいなのも重要な役割がありそうではあります。ただどうやら本作は「The pillows」というバンドを何かとオマージュしたものが多いらしく、思ってるほど深い意図はないかもしれないという気もしてます。そもそもビスケットハンマーってなんやねんって感じですし、対抗手段として現れたブルース・ドライブ・モンスターも、あれもうどうみたってポカポンゲームのやつですもんね。ていうかアレ懐かしいな~と思って観てたんですが今でも普通に売ってるんですねw
サブタイトルにあるルシファーも、どちらも地球を砕く存在ということでさみだれ(正確に言えば最後のでかいやつ)のことを指しているんでしょうが名前自体に意味があるわけではないかpillows関係なんじゃないかと推測しています。

ところで夢?の世界でみる大きな門に描かれた四つの模様、そのうち三つは三体の幻獣でしょうがもう一体はおそらく天使?そしてこれはリングのあるアニマを示しているのでしょう。幻獣は三体しかいないのではなく三つの内のどれかにクラスチェンジするのは夕日と東雲 三日月 (しののめ みかづき)の最後のタイマンから見てもおそらく間違いないと思います。だとしたら天使はアニマであり彼女はさみだれの従者としての側面もあることを示しているのではないかと。(アニマが騎士以外に見えていたのかは実際のところ不明です。物理的に飯とか食べてるので普通は見えてないとおかしいのですが、この辺はとやかく言わないでおこうと思います)
アニマがさみだれを選んだ理由は作中ではぼかされていましたが、ひょっとしたら先述したように自分達の祖先がいなくなる代わりとして選んだのかもしれないとも思いました。

他にも色々意味深なところがあり全てを説明しないまま終わりはしましたが、これ自体はこんなもんで良いと思います。アニムスが死ぬ間際に業を償うのに500年と言ってましたが、これは秋谷の年齢に一致するので関係があると見るべきでしょう。ただ秋谷自身がアニムスの生まれ変わりというよりは「全知」そのものがアニムスなんじゃないでしょうかね。だから500年経って全知との繋がりが消えた、全知の方が業を償いきったからということかも。まあこの辺は解釈次第なんでどっちとも言えるでしょうが。
というかこの作品の全知って実にしょぼくて言うなればネットでの知識みたいなもんなんですよね。だからカジキマグロみてナマの迫力には叶わないなんて素っ頓狂なこと言ってるわけなんです。そりゃ秋谷じゃなくたって全知なんて大したことないって思うでしょうよ。

自分で書いてて何なんですが、伏線を利かせるものって評価が辛くなりがちなんですよね。完璧にやらないと穴の方が目立っちゃうからなんですが、これだと逆に設定ガバガバのシーン重視の作品の方が高評価になっちゃたりするんでこの辺の匙加減は難しいです。

ちなみに自分が夕日・白道エンドに拘るのには理由があって、ED1クール目での顔の順番が夕日→白道→さみだれだったんですよね。なのでこれみた時「はは~ん、さてはオチを知ってるスタッフの先走りだなオチは夕日と白道がくっつくんだな困るんだよな~こういうメタ要素で展開知らされるのはwww」ってな感じでもうすっかりそういうつもりで観てたんでハシゴ外された感が強いんですよw(2クール目のEDで色々察しましたが)あれが無かったら物語の評価は下げなかっただろうなあ……
(というか本当何であんな顔の順番にしたんだろ……単に夕日の右向きか姫の左向きの素材がなかったから?いやそんなことないやろと思うんだけどなあ……ちなみに左右向きでの違いに意味はなさそうでした。左向きは夕日・さみだれ・三日月・アニマ、右向きは白道・半月・アニムス)

投稿 : 2023/02/19
閲覧 : 164
サンキュー:

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