Witch さんの感想・評価
3.0
物語 : 3.0
作画 : 3.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.0
状態:今観てる
【14話視聴】新キャラ・僧侶ザインも上手く大局に織り込んでいる
【中間レビューNo.1】(2023/12/09現在)
コミック原作で2023年作品。全〇話。
元々娘がコミックを買っていたので原作既読です。コミックは「マンガ大賞
2021」を受賞するなど前評判も高く、後はいつアニメ化されるかって話でした
がついにきましたね。
(ストーリー)
勇者ヒンメル、僧侶ハイター、戦士アイゼン、魔法使いフリーレンら勇者パー
ティー4人は、10年間もの旅路の果てに魔王を倒して王都に凱旋する。
ヒンメルら人間にとっては10年は感慨深いものがあったが、1000年は軽く生き
る長命種のエルフであるフリーレンにとっては、ほんのひとときであった。
あれから50年、流星群を観るために4人は再会を果たすが、見た目は全く変わら
ないフリーレンに対し、ヒンメルら人間は随分と年を取っていた。
(ドワーフのアイゼンはそれほどでもなかったが)
そして間もなくヒンメルが天寿を全うする。
彼の葬儀でフリーレンは自分がヒンメルについて何も知らず、知ろうともしな
かったことに気付いて涙する。その悲しみに困惑したフリーレンは、人間を知
るためと魔法収集のために旅に出る。
それから更に20年後、フリーレンは老い先短いハイターを訪ねる。ハイターは
戦災孤児のフェルンを引き取って育てていた。ハイターはフェルンのことを弟
子にするようフリーレンに依頼するのだが・・・
これは人間を知るために、人間と交わり旅をする彼女と新たな仲間達の物語。
(評 価)
・第1-4話:フリーレンの世界観がしっかり再現された製作陣の仕事ぶりに◎
{netabare}・マッドハウスの本気度を感じさせる精力的な動き
・金曜ロードショーで2時間(4話分)を一挙放送
昔から第1話1時間拡大ってのはありましたが、「推しの子」の90分を凌
ぐ2時間拡大スペシャルで勝負にきました。しかもまだ他作品が出そろっ
ていない9月中にぶっ込んでくるなど、かなり精力的な動きが見られます。
・連続2クールまで明言
コロナ以降分割2クールの作品が格段に増えましたが、一気に連続2クー
ルで放送することも明言!
初回の作画もかなり力が入っていましたが、これを最後まで維持できる
力があるのか、視聴者としては嬉しい限りですが、逆にちょっと心配な
部分もあります。
とはいえ、賽は投げられました。後はマッドハウス頑張れと。
・OPに「YOASOBI」
OPは「勇者/YOASOBI」と、いやーこの辺も抜かりないですなw
・フリーレンの世界観がしっかり再現された製作陣の仕事ぶりに◎
正直本作は「面白可笑しくテンポよく」という作品ではないので、その辺
りどうなのかと心配でしたが、本当に原作のもつ「緩やかな空気」や「間」
といったものをしっかり意識して作っているなという、作品の理解度の高
さに驚きました。4話分の放送で(コミック1巻+2巻1話の)全8話分を完
全再現したんじゃないですかね。
それゆえに初見の方には「テンポが悪い」と映る方もおられそう。
でもそういう作品じゃないんだよなあ。
・何気ないセリフや会話が心に響く
勇者パーティーにいた頃のフリーレンは(どうせ彼女にとってはひととき
の出来事に過ぎないとして)他人には無関心でしたが、今振り返るとあの
時の何気ない言葉たちにいろいろな思いが込められていたことに気付かさ
れます。
{netabare}また2話の「ヒンメル像のために蒼月草を見つける」エピソードでは、
フリーレン「もう少し探したら切り上げるよ。」
フェルン「もう少しって何年ですか?」
という2人の時間に対する感覚の違いも巧み表現されるなど、こういう細か
いセリフ回しとかも実にいい。
(この花を見つけるエピソード自体も素晴らしい){/netabare}
そしてアイゼンとの会話
{netabare}「お前は人の時間を気にするような奴じゃなかった。」
という下りも、人と交わり他人を気遣うようになったフリーレンを上手く
表現しており、こういうところも巧みだなっと。{/netabare}
・戦闘シーンも丁度よかった
{netabare}異世界の魔法使いの話ながらも戦闘が話のメインじゃないんですよね。そう
いう意味でも3話の初めての魔族との戦闘シーンも派手過ぎず、地味過ぎず
作品の世界観にマッチした、程よいバランスで描かれていたと思います。
{netabare}(ここでもこの魔族が封印されていた間に80年が経過、その間にこの魔族の
強力な攻撃魔法を研究し、新たな防御魔法を開発(魔族の「たった80年か」
に対し、人間の営みを舐めるな!的な)人間と魔族の時間感覚の違いを上
手く表現している。){/netabare}{/netabare}
初回2時間スペシャルでしたがそれほど長さも感じさせず、それでいて原作の
もつ空気感も壊すことなく、上々の滑り出しだったと思います。作画もよかっ
たですし。懸案事項とすれば、
・上述の通り、連続2クールなので作画がこのレベルを維持できるのか。
(それに落とさず放送できるのか)
・(気が早いですが)原作未完なので、どうしてもラストが・・・
それに2クールなので、原作の大半を消費しそうで、2期があっても数年後に
になりそう。
という感じでしょうか。
まずは制作陣の素晴らしい仕事ぶりに拍手喝采というところですね。{/netabare}
・第5-8話:他の異世界モノと一線を画す練られた世界観 →アニメはアニメで面白い
{netabare}>フリーレンの世界観がしっかり再現された製作陣の仕事ぶりに◎
5話では逆に
「忠実さを意識しすぎて窮屈になっていないか?!」
という不安もあったのですが、以降はエンジンがかかってきて
「アニメとしての面白さがきちんと表現されている」
という印象ですね。
・会話劇がちゃんと面白い
「人間を知る」というのがフリーレンのテーマになっていて、そうなると
必然的に会話劇がキモとなるわけですが、
・原作のセリフの秀逸さを活かしつつ
・種﨑敦美さんの名演
・それを支える他のキャラとのキャッチボールの上手さ(共演者も◎)
・その他アニメ的な細やかな演出
等でちゃんとアニメとしての面白さが確立してるなと。
・他の異世界モノと一線を画す練られた世界観 →時間経過の描写が秀逸
8話がかなりよかったと思うのですが、
・フリーレン VS ドラート
「今の魔族はダメだね。実戦経験が少なすぎる」
・フリーレンの経験の豊富さは普通の作品でも思いつくところで
・上述のセリフも、普通なら「まだまだ青いな」位のセリフで済ませそう
なところですが、これまでの作品の流れからフリーレンというキャラが
しっかり確立してるから、いかにもフリーレンらしい言い回しがピタリ
とハマり
・同時にこのセリフが、魔族側にも大きな時間が流れ、しかも人間界と同
じような問題を抱えているという世界観を的確に表現してるという。
・リュグナー VS フェルン・シュタルク
・「我々魔族は永い寿命の中で一つの魔法の研究に捧げる」
普通の作品なら魔族は「生まれながらのチート」で済ますところを、魔
族側も日々研鑽してるという世界観を提示し
(その集大成ひとつがクヴァールの魔法「ゾルトラーク」だと)
・しかし3話で既にその「ゾルトラーク」は一般魔法レベルに陳腐化してお
り(人間は防御魔法を開発)、フリーレンはそれを対魔族用の「ゾルト
ラーク」に改良、今回は更に弟子のフェルンに伝授できるレベルにまで
解析が進んでいるという時間経過を表現。
その様をアニメならではの戦闘描写でしっかり面白く魅せるという。
このような感じで、魔族という種族も案外人間臭いんだなという独自の世界
観を提示しながら、フリーレンの長寿命を単なるヒンメルたちとの死別だけ
で終わらせるのはなく、魔族の未熟さや魔法の進化といった人間界・魔族界
それぞれの時間経過という作品全体できちんと昇華されている描写が秀逸。
そしてリュグナーは思い出す。
→ 歴史上もっとも魔族を葬り去った魔法使い――「葬送のフリーレン」
タイトルにはもうひとつの意味が込めらていたと!!
それをアニメとして最高の演出で印象付けるという・・・
製作陣の原作の理解度の高さおよびそれをアニメとしていかに面白く魅せるかと
いう次元までしっかり落とし込まれているなっと。
「鬼滅」や「呪術」に比べ「戦闘シーンは劣るのかな」という懸念はあったので
すが、同じ土俵では戦わず
「『葬送のフリーレン』という作品全体像の中でどう魅せていくか」
という姿勢は賞賛モノですね。
原作既読でも「アニメはアニメとして面白い」と感じられる仕事ぶりかなっと。
(追 記)
6話でのフェルンのセリフ
「ちっさ」
の反響がかなり大きいらしいですねwww
・シュタルクで検索すると「シュタルク ちっさ」が候補に挙がる
・育ての親ハイターの「巨●ン」説が浮上
・LINE公式スタンプが発売されるetc{/netabare}
・第9話:あの淡泊な原作での戦闘シーンが・・・アニメはこの水準でやってくれるのか!!
{netabare}>「鬼滅」や「呪術」に比べ「戦闘シーンは劣るのかな」という懸念はあったので
>すが、同じ土俵では戦わず
>「『葬送のフリーレン』という作品全体像の中でどう魅せていくか」
>という姿勢は賞賛モノですね。
前回こう書きましたが、すいません前言撤回します!!
・リュグナー VS フェルンの魔法戦闘
・リーニエ VS シュタルクの近接戦闘
これ、どっちも「鬼滅」や「呪術」に負けてないでしょ!!
正直原作の戦闘シーンは淡泊な感じなので(それをウリにしていない)あまり
期待していなかったのですが、これは度肝を抜かれました。
この制作陣有能すぎるwww
こんなに動くとか完全に想定外ですわ。
・師匠フリーレン →弟子フェルン
・師匠アイゼン →弟子シュタルク
回想シーンを挟み、その教えをよりどころに強大な魔族に立ち向かう弟子たち
の激アツ展開もいい。
それに構成も
・Aパートにフリ―レン VS 断頭台のアウラの前哨戦でウオーミングアップ
・Bパートで上述全開バトルをぶち込み、時間キッチリに両方とも決着とかw
「鬼滅」や「呪術」が無駄に戦闘シーンが冗長化してきて、食傷気味になって
きてるのをみると余計その辺が際立つというか・・・
最後の決めシーンも8話で魅せたフリーレンが月をバックに夜空に浮ぶ構図を
今度は弟子のフェルンで再現してみせるとか、ホントいい仕事してますわw
完全にこの制作陣の作画力を侮ってました。すいません__|\○_
このシーンだけでもアニメ化の意義が十分あったといえる神回だったかなと。{/netabare}
・第10-12話:ひとつのアイデア →もう一歩踏み込んで更に面白くなるレベルまで昇華
{netabare}・断頭台のアウラ編
・魔族
・人間の言葉を操り人間を欺く
・魔族は組織を統率するために強さ(魔力量)にて格付けが決まる
→ 魔力の放出を制限するという概念が存在しない
・フリーレン
・(そこを逆手に取り)魔力の放出を制限して魔族を欺く
魔法使いにおいては、ある意味魔法を愚弄する卑怯な手段だが、フリーレン
は「一生を掛けて魔族を欺く」という覚悟を持って挑んでいる。
「力を隠してのビックリ展開」自体はバトルモノではあるある設定ですが、
それを細やかな設定や描写で、ひとつのドラマとしてストーリーに落とし込
んでいる創りは本当に見事。
・他のエルフ(クラフト)との出会い
・長寿命のエルフゆえに、自分の成してきた正義や偉業を知る者はどんどん
死んでいく。
・だからクラフトは女神を信仰して、死んだら女神に褒めてもらうのだと。
→ 女神を信仰しないフリーレンは、俺が代わり褒めてやる。
・回想でハイターにすでに褒められていたことに気付き、遠慮しておくよと。
→ いい友人をもったな
「長寿命のエルフゆえの寂しさ」というアイデアから
・「褒めてやる」という些細なエピソードを細やかに創作し
・最後はきちんを勇者パーティーに回帰させ、すでにそんな優しさを受け取っ
ていたことに改めて気づかされる。
これも「人を知る」という本作のテーマに沿って、きっちり創り込まれている
なっと。
・剣の里
・英雄譚では、ヒンメルがこの地で守られていた「勇者の剣」を見事に引き抜
き、それを振るい魔王を討伐したとなっているが
・実際はヒンメルは「勇者の剣」を引き抜くことが出来なかった。
それでもヒンメルは魔王を打ち倒し「真の勇者」となった。
(「真の勇者」が実は「勇者の剣」を引き抜けなかったでは恰好がつかない
から、そういう英雄譚になった模様w)
これも「勇者の剣」のネタを逆張り的に創った感がありますが、ここまでのヒ
ンメルの描写がしっかり出来ているから、
「あのヒンメルらしいエピソードだな」
って納得せられてしまうんですよ。物語の全体像がしっかり創り込まれている
から違和感なく、むしろヒンメルというキャラに積み重ねが生まれるという。
面白いアイデアや一見いいシーンだな思う作品はあるのですが
・アイデアを出したことに満足して、そこで終わってしまっている。
・全体像がしっかり練られてないから、いいシーンも「点」にしかならず、むし
ろ全体像との整合性から違和感すら覚えてしまう。
というケースが結構多いんですよね。その点本作は
・全体像をしっかり練り込んだ上で
・ひとつのアイデアをもう一歩踏み込んで更に面白くなるレベルまで昇華
というところがきちんとできているなっと。
私がレビューでよく使う言葉で
「きちんと汗をかいている」
というやつで、だからこそ(「暗殺教室」のレビューでも書きましたが)
>そこに私たちも心動かされ、
>「やっぱりプロのクリエイターは、私たち素人と違って凄い仕事をしてるんだなあ」
>という制作陣や作品に対するリスペクトが生まれるんだと思うのですよ。
本作もそれに準ずる作品かなと。
(逆にその辺をサボり、即効性のある「見映えだけ重視」のシーンに頼り「ドヤ、感動
的な作品やろ」みたいなのが鼻につく作品には、つい辛口なレビューを書いてしまう
んだよなw){/netabare}
・第13-14話:新キャラ・僧侶ザインも上手く大局に織り込んでいる
{netabare}「断頭台のアウラ編」以降地味な展開が続いていますが、あの戦闘シーン
はある意味「制作陣からの特別ボーナス」って感じで、「人間を知る」と
いうフリーレンの旅の目的からすると、本来の姿に戻ったって感じですね。
・13話からは新キャラ・僧侶ザインが登場。
「戦士ゴリラ」という冒険に出たまま音信不通となった親友を探すため、
(兄の親心もあり)暫し同行することになります。
「酒・たばこ・ギャンブル・女好き」のちょいワルおやじ系ですが
・フェルン、シュタルクがまだ「未成熟な子供」なところがあり(で、
フリーレンは人の心が分からないw)、その関係がギクシャクした
ところを「大人」としてサポート。
・「ハイターとも面識がある」
こういうフックを持たせることで、フリーレンの回想にスムーズに
繋げていく一端を担う。
という感じで、単に目新しさだけでなくしっかり大局に織り込まれて
いる点はさすがだなっと。
・14話も「鏡蓮華の花言葉 → 『久遠の愛』」というアイデアを
(アクセサリーの装飾モチーフにして)
・「フェルン×シュタルク」の誕生日プレゼントという単体のエピソー
ドだけで終わらせるのではなく
・「フリーレン×ヒンメル」の回想 → 指輪のプレゼント
それまでその指輪に執着がなかったフリーレンが、(アクシデントで)
扮失した指輪を必死に探すという「人間を知る」というテーマにまで
落とし込む。
1話の尺をフルに活用してしっかり創ってきてるなっと。
それがより際立つように演出なんかも工夫されていて、ちゃんと「アニ
メとして面白く魅せる」という仕事ぶりでしたし。
原作既読ながらもその時は見落していた事項を、改めてアニメで観て、こ
うやってレビューのために言語化してみると、結構新たな発見があるもの
だなあっとw{/netabare}