Witch さんの感想・評価
3.6
物語 : 3.0
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
「朗読の世界」×「輝く青春群像劇」1クールだとどっちつかずで終わったような
【レビューNo.179】(初回登録:2025/4/13)
コミック原作で2025年作品。全12話。
タイトルのインパクトと『響け!ユーフォニアム』の武田綾乃先生原作という
ことで、興味をもって視聴し始めた作品ですね。
(ストーリー)
とある島・十鳴島に住んでいた春山花奈は小学生の時に、天才子役・天西園寺
修羅の朗読を見て憧れ、自らも朗読を始めるようになる。
中学卒業後の春休み、いつものように近所の子供たちに朗読会を開いていると、
一人の女子高生に声をかけられる。
彼女はすももが丘高校放送部部長の薄頼瑞希で、花奈の「声質」に惚れこんで
彼女を勧誘してきたのだった。
迷った末に花奈は入部を決意。
・すももが丘高校放送部は創設まだ2年目で先輩は2年生の3人のみ
・新入部員は花奈の他に経験者の夏江杏、冬賀萩大に成績優秀な秋山松雪
花奈たち放送部員はきたるNHK杯全国高校放送コンテスト(通称Nコン)に
向けて、活動を開始するのだった。
(評 価)
・放送部(朗読)としては3話まではよかったが・・・
・1話で「朗読しか取り柄がない」と思い込んでる引っ込み思案の花奈に対し、
「輝ける場所がある」と道を指し示し、尽力した「瑞希先輩かっこいい!」
の導入はよかったし
・2話で新入部員の自己紹介で他の3名と違い「聞き取りやすいアナウンス」
というものを示してくれた杏も面白かったし
・3話では顧問の吉祥寺が登場、「Nコン」の審査基準をしっかり解説。
・聞き手に伝わるアナウンスか?(発声・発音等)
・正しく意味を伝える表現か?(内容把握・アクセント・言葉の立て方)
・間は適切か?(ポーズ・テンポ)
きちんと「競技性」というものを提示してくれましたし、まずは「日本
語アクセント辞典」で正しく学習するところからと、
「やっぱり地道な努力から始めるんやな」
というのもリアリティがありましたし
まさに「掴みはOK」だったと思います。
また花奈についても
「力をもった声質だが、今はそれをゴリ押ししてるだけ」
明確に課題が浮き彫りにされましたし。
でもここから伸び悩んだかなっと。
他のレビュアーさんも指摘されていますが、やはり「朗読の世界」をアニメ
として魅力的に描くのは難しいのだなあっと。
オーバーな表現なしでも
「息遣いや抑揚等を繊細に使い分ければ『音』だけで文章の世界を表現可能」
ということらしいのですが
・トップクラスの朗読者の凄さがあまり分からなかった
→ 昔ラジオドラマを楽しんで聴いてた時期もあったが、物語そのものが
面白かったというのも大きかったような気がするからなあ。
各声優さん上手かったなあとは思いましたが、「音の万能感」みたい
なものはちょっとよく分からなかったかな。
・また朗読のシーンで、その場面をイメージした作画が入ってきますが
→ 時々作画の方が強すぎて「『音』だけで文章の世界を表現可能」って
言ったのを全否定してるやんけw
この作画についてはネット上では「領域展開」(by呪術廻戦)と揶揄され
ていて、この演出に賛否が分かれているようです。
個人的には
・アニメである以上、ある程度の演出はないとそれはそれで不自然だろう
・でも加減というのがあるよね
というところでしょうか。
後述しますが、やはり「朗読ネタ」で1クール持たせるのは無理があり、
途中からは「青春群像劇」に重きを置いていくのは必然の流れですかね。
・青春群像劇もイマイチはじけ切れず
4話あたりからは青春群像劇に重きをおいていくような感じですね。
【よかった点】
・新入部員を中心に、各キャラの掘り下げにしっかり尺を使っていたので、
キャラ個人についてはしっかり描かれていた。
それに『ユーフォ』では結構雑な扱いだった男子共もきちんと平等に見せ
場があった。
「朗読」については上述の通りですが、「創作テレビドラマ部門」の冬賀
や秋山の頑張りは面白く描かれていたと思います。
・「瑞希×花奈」については
・最初は”名前呼び”を躊躇していたが、交流を経て自ら”名前呼び”を
お願いするまで打ち解け、最後は溢れ出る「先輩愛」にまで成長
・”憧れ”と”競争”は別モノ、先輩と戦う覚悟を決める
といった過程が丁寧に描かれていた。
・「『女子の友情』って面倒くせェ~」といい意味で思わせる、武田節は健在w
・顧問の吉祥寺は一癖あるが、きちんとキャラ立ちしててよかった。
生徒の性格を考慮して、わざと挑発めいた言動で生徒のやる気を引き出し
したり、特性を見抜いて「Nコン」出場部門の変更アドバイスを送ったり、
謎に”優秀”と持ち上げられてた「ユーフォ・瀧先生」よりはよほど顧問
らしい仕事をしてたんじゃないですかね。
【不満点】
・上述の通り個人は割と上手く描けているが、「瑞希×花奈」以外は相乗効
果という観点からは今ひとつ物足りないという印象。
まあ「冬賀×杏」の”いがみ合い”はアクセントにはなってましたがw
(化けそうな要素もあり、全体的にまだこれからという感じ)
・ひとつのエピソードを創るのに、秋山や瑞希の家庭環境を持ち出してくる
のだが、それが前時代的で何か仰々しい。
その割に物語としてさほど面白みがないというか、話を強引に創り上げる
のが目的で、あまり上手く昇華できてないという印象でしたね。
・折角の他校との合同合宿も、ちょうどいいライバルは描かれなかったね。
(他校に友達ができたという感じ。
「正しい読みの再現性」など新たなスキルの話がでてきたのは面白かっ
たと思います。)
特に尺の都合上「Nコン京都予選」まで描けなかったことは目を瞑るとしても、
最後の{netabare}「瑞希先輩軟禁事件」はなんたる茶番!!
これで終わりとかなんだかなあって感じでしたね。
(これをいうと身も蓋もないのですが、瑞希兄はここで妹想いのいい兄貴
キャラを演じる位なら、そもそも「Nコン」と被りそうな時期に結婚式を
入れるなよと思うのだが!?
こういうところに強引さを覚え、シラケてしまうというか・・・){/netabare}
個人的には『ユーフォ』よりも(アニメ化はされていないが)同じ放送部を
題材にした『ブロードキャスト/港かなえ』との比較という面が強かったの
ですが、そちらの方がキャラが活き活きとしていて、ストーリーも青春群像
劇としてはじけてたという印象ですね。
(「『Nコン京都予選』まで描けなかったことは目を瞑る」とはいったものの)
部活モノだと、大会や初めての練習試合等ある程度真剣勝負の場を乗り越え
ないと、やっぱり”拍”が付かないよねっと。
決して悪くはないのですが、
「『朗読の世界』×『輝く青春群像劇』」
1クールだと二兎を追ったものの、どっちつかずで終わったような印象ですね。
2期はあるんでしょうか。
「ユーフォの武田先生原作」という看板がありながら、あまり話題にされて
いなかった現状を考えると、ちと厳しいような。
それとも武田先生の名前で2期を勝ち取ってくるのでしょうか。
2期があったら「Nコン京都予選の結果(特に冬賀の「創作テレビドラマ部門」
が)」と「”ツン”な杏の恋の行方」は気になるので、とりあえず視聴はするの
かな。
しかし「絶対視聴したい作品」とまではいえないですかね。
花奈の「朗読者」としての成長が感じられるようになれば、2期は手のひら返し
になりそうですが(笑)
ED『朗朗/さとう。』
・人を引き付ける魅力あるボーカルはよかったのでは。
歌詞も作品に合っていたと思いますし。
(追 記)
「Nコン」の課題図書にちゃっかり武田先生の『青い春を数えて』が入って
いたのはちょっと笑ってしまった。
しっかり”宣伝”してるじゃねーかwww
(本人曰く、杏が花奈の選んだ課題図書をディスる場面があるが、他書だと
申し訳ないから(その要員に)本作を入れたということのようですが)
それに感化され、確認したら図書館に置いてあったので、早速予約。
近日中に読んでみようかと。