「まおゆう魔王勇者(TVアニメ動画)」

総合得点
83.6
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ランキング
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★★★★☆ 3.7 (2533)
物語
3.7
作画
3.7
声優
3.8
音楽
3.5
キャラ
3.7

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ネタバレ

みかみ(みみかき) さんの感想・評価

★★★★☆ 3.2
物語 : 3.0 作画 : 3.5 声優 : 3.0 音楽 : 3.5 キャラ : 3.0 状態:途中で断念した

勇者魔王もの大好き男に「どの作品が好き?」と訊ねられたとき、女はどう答えたらいいの?

(インスパイア元:http://matome.naver.jp/odai/2136863010862162801)
(更新日:2014年2月15日)

あ、まず前提として、
貴女が勇者魔王もの大好き男を夢中にさせることが、
はたして貴女を幸福にするかどうか、それはまた別問題だけれど。
とはいえ、勇者魔王もの大好き男たちは玉石混交ながら、
IT系の超かしこい男なども多く、
したがって、釣り師たる女たちにとっては、
なかなかあなどれない釣り場です。


では、勇者魔王もの大好き男に「どの作品が好き?」と訊ねられたとき、
貴女は、どう答えれば理想的でしょう?
まず最初に、その男がドラクエのようなタイプのオーソドックスな勇者魔王ものと
あとはテレビドラマ、そして(自分でものを書くほどではないけれど)ちょっと考えることも好きな、
そんなタイプの場合は、
貴女はかれの目を見て、微笑みとともに質問など無視して、こう言いましょう、
「わたしと、一緒に『伝説の勇者の伝説』観よう♪」
これこそまさに必殺の答えです。
そこで勇者魔王もの大好き男が、えへへ、とやにさがったならば、
貴女は、ひそかに、「DQ3」「DQ4」「FF6」あたりを
ひそかに遊んでおき、雑談に答えられるようにしておきましょう。
これで成功まちがいなしです。


しかし、ここでは、もう少しハイブロウな(?)いわゆる勇者魔王もの好きの男の
落とし方をお伝えしましょう。
この場合、貴女は、こう答えましょう、
「わたしは、『まおゆう』が好き。
一気に全部読んじゃった。アニメも見たし、
あの経済ネタも、ぜんぶ大好き♪」
もしも貴女がそう答えたならば、
その瞬間、勇者魔王もの大好き男の目はきらりと輝き、
かれの貴女への恋心は、
20%増量になるでしょう。


なぜって、『まおゆう』は、
濃厚な味わいのある経済知識が散りばめられていて、
その中にも軍事/政治ネタがスパイスとして効いている、
思想ネタは素朴な啓蒙思想ながらも、そこがまた
オーソドックスな教育を受けた人の実直な筆致という雰囲気をかもしだしていて。
しかも『まおゆう』が書いている経済ネタは、
日本の経済学をやっている人のスタンダードを、
質高くふるまっていて、なおかつ、
経済政治ネタをファンタジーに混ぜるというジャンルをメジャーにした功績もあって。
したがって『まおゆう』こそは、
本来なんの接点もないまったく縁もゆかりもない別々の世界に生きている、
キャリア・ウーマンと、玉もあれば石も混じっている、そんな勇者魔王もの大好き男たちが、
この世界で唯一(いいえ、『竜の学校は山の上』、『狼と香辛料』と並んで唯三)遭遇しうる場所です。





では、参考までに、危険な回答を挙げておきましょう。
勇者魔王もの大好き男に「どの作品が好き?」と訊ねられたとき、
貴女がこう答えたとしましょう、
「『ソードアート・オンライン』のが好き♪ 原作もぜんぶ読んじゃった。」
その瞬間、勇者魔王もの大好き男の貴女への恋心は消えます、
なるほどSAOは、人気のファンタジーもの。勇者設定と、現代が混じっているという点で広義の勇者魔王ものには入るでしょう
勇者の設定は平凡ながら、ま、無難にまとめてあるものの、
しかし、現実と勇者の折り合いを書くというよりも、勇者の俺Tueeeee感だけが醸成される展開に加えて、
驚異的なハーレム展開。も少し、社会的な想像力にあふれた味わいが好きな勇者魔王もの大好き男にとっては天敵なんです。
また、もしも貴女が「勇者ヨシヒコが大好き♪ あたし勇者ヨシヒコ全部観たんだ♪」
と答えたとしても、ちょっと危険球となるでしょう、
なぜって、『勇者ヨシヒコ』は、深夜テレビとはいえテレビで放映され、
キャスティングなどからもテレビドラマファン層の女性を掴み、好意的に見れば批評精神も感じられます
ですが、『まおゆう』などと比べると、露骨なインテリ臭が少ないことに単なるB級娯楽と捉える向きも少なくありません
(ただ、勇者ヨシヒコは人によってやや反応は分かれるかもしれません)


またもしもたとえあなたが勇者魔王ものが大好きで、
「わたし、『魔王倒したし帰るか』が好き、SF的想像力もシビアでいいけれど、
最高に好きなのは人間描写♪ あの陰鬱とした描写がすっごくシビれるの。」
と、答えたとしたらどうでしょう?
なるほど、貴女の趣味は高く、
たしかに『魔王倒したし帰るか』は、SF的想像力にあふれているのみならず、
人間描写も最高にすばらしいんですけれど、
しかし、貴女の答えを聞いて、勇者魔王もの大好き男はきっとおもうでしょう、
(なんだよ、お高くとまった女だな、厭世的なメンヘラ女だったりしたらめんどくさそう)って。


貴女が、勇者魔王ものが大好きで、名作の名を挙げるにしても、
たとえば、九井諒子の『竜の学校は山の上』ならば安心でしょう、
なぜならば、九井諒子は、ふつうのOLにもマニアにもともに愛されるめずらしい作品で、
貴女がその名前を挙げても必ずしも、あなたが勇者魔王ものおた宣言をしているとは受け取られないでしょう。

しかし、たとえば、星新一的なセンスの光る『王「本気で魔王倒す」勇者「えっ?」』にせよ、
生態系のメタファーと既存のファンタジーへのアイロニーが融合した『勇者のくせになまいきだ』にせよ、
それまでにないテンポと批評性を魅せる『30秒勇者』にせよ、
テンポの良いRTSの楽しさとドット絵のかわいさで魅せる『100人勇者』にせよ、
ファーストフード店のバイト店長の日常を伺わせるな『はたらく魔王さま!』にせよ、
ソーシャル・ゲームの感覚をうまくズラした、『いけ!勇者』にせよ、
2chSS発の『勇者「冒険の書が完結しない」』、はたまた『母「でかけるの?」勇者「あぁ、ちょっと世界を救いに」』にせよ、
そういう作品の名前をいきなり挙げるのは、ちょっぴり微妙。
ましてや貴女が、「2ch系SSの勇者魔王ものが大好き♪ わたし、もうほとんどのSS、読んじゃった♪」
と答えたならば、どうでしょう?。
これはかなり博打な答え方で、
なるほど、2ch系SSは、『まおゆう』も『魔王倒したし帰るか』も産んだ多数の傑作勇者魔王ものSSを抱えた場所ゆえ、
あなたがそう答えた瞬間、勇者魔王もの大好き男がいきなり超笑顔になって、
鼻の下がだら~んと伸びちゃう可能性もあるにはありますが、
しかし、逆に、(なんだよ、この女、勇者魔王ものおたくかよ)とおもわれて、どん引きされる可能性もまた大です、
なぜって、必ずしも勇者魔王もの大好き男が勇者魔王もの大好き女を好きになるとは、限らないですから。
しかも、この答えには、もうひとつ問題があって、
男たちは、女を導き高みへ引き上げてあげることが大好きゆえ、
もしも貴女が、「2ch系SSの勇者魔王ものが大好き♪」なんて言ってしまうと、
そこにはもはや、男が貴女を勇者魔王ものを教育する余地がまったく残されていません、
したがって貴女のその答えは、
勇者魔王もの大好き男の貴女への夢を潰してしまうことに他なりません。


ま、ざっとそんな感じです、貴女の目には男たちはバカでスケベで鈍感に見えるでしょうが、
しかし、ああ見せて、男は男で繊細で、傷つきやすく、女に夢を持っています、
貴女の答え方ひとつで、男の貴女への夢は大きくふくらみもすれば、
一瞬で、しぼんでしまいもするでしょう。





では、スキットを繰り返しましょう。


「わたしは、『まおゆう』が好き♪
原作も読んだし、アニメも見ちゃった。昔はDQとかFFとか遊んでたし、
経済政治ネタも、大好き♪」
そして、その瞬間、勇者魔王もの大好き男の目がらんらんと輝いたなら、
貴女はこう重ねましょう、
「それからね、いま、わたしが読んでみたいと思っているのは、
九井諒子さんの作品、素敵な作品をたくさん書いているって噂を聞いたから。
あなたがもし持ってたら、わたしに九井諒子さんの作品貸してよ♪」
これでもう完璧です。


そうなったらこっちのもの、
デートの日には、アイメイクをばっちり決めて、かわいい下着をつけて、
アプワイザー・リッシェか、ジルスチュアートの可愛いワンピを着てゆきましょう。
その日から、勇者魔王もの大好き男は貴女の虜になるでしょう。
では、釣り師としての貴女の、愛の幸運と幸福をお祈りします!

{netabare}

上記は、「なんなんだ」と思われたかもしれませんが、ネット上で有名なテンプレートの改変ネタになります。男が落ちるかどうかは全く保証いたしかねますので自己責任でよろしくお願いします。
さて、
もともと書いていた感想は下記になります。

タイトル:
わたしを原作厨だと嫌ってもらってもかまいません……でも…わたしのことは嫌いでも、まおゆうのことは嫌いにならないでください…!

本文:

 一話視聴しての感想は、たいへんあざやかなものでした。

 …
 ………
 …………
 …原作を読むべし。以上…!

 えー、さて。
 
 何度でも申し上げますが、原作は稀有な傑作です。「ひぐらし」以来のインパクトを受けた作品だと言ってよいです。
 みなさん、原作を読みましょう。原作しかありません。もちろん、原作はメジャー向けコンテンツとしては洗練されていないので、合わないという人もいるのはわかっていますが、それでも、わたしは100%原作推しです。

 原作はこちらで、合法に、タダで読めます!
 ttp://maouyusya2828.web.fc2.com/menu.html

■アニメと原作の違い

 アニメと原作は何が違うか。
 まず、当たり前ですがテキストの分量が違います。アニメでは大量にテキストが端折られている上、話がスローリーな印象になります。原作のよいところは、大量の情報量が、ドバーっと、流れてくる感じなのですが、アニメ版は、視聴者層に配慮したのだろうとは思いますが、たいへん、はなしの密度が薄い感じに仕上がっております。とりわけ、一話でカットされている部分としては、魔族側にはどういった限界があるのか。魔王がどれだけ不完全か、といった点がきちんと言及されておるわけです。制作陣はテキストの中身をきちんと理解できる程度の尺の長さで展開したかったのでしょう……。

 第二に、アニメ版は、おっぱいがやたらと揺れますが、原作は、おっぱいが揺れません。わたしは微エロおっぱいアニメなどという、中途半端なものにあまり良い印象はありません。どストレートエロアニメなら、むしろOKですが、おっぱい関係ねーだろって話で、おっぱいをいっぱい強調されるのはむしろ、たいへん悪い印象を残すのであります。なんでおっぱい揺らす必要があったのかと小一時間……いや、まあだって、この話でおっぱいが揺れる必要ビタいち無いっつーか、そういうところで勝負かけてないだろ。これは。メインヒロインがお色気要員モノ、というのは、まぁ、伝統的にあるんだけど、私は、これは悪しき伝統だとしか思ってないので、ガチでやめてほしいのです。
 
 第三に、まおゆうは、ギャグとかそっち系のノリは正直ちょっと寒いんだ…!知ってたよ…っ!わたしだって知ってたよ…っ!だから、お願いだから、ギャグ系の部分とかをクローズアップしないでほしいな、と思ってたら、余裕バリバリで、コメディ内輪ノリ部分を前に出してアニメつくってきたよ、こいつら…っていうね。
 まあ、なんつーか、ある種のオタクの同人ノリそのものなんだよね、まおゆうのギャグセンスって…。だから、ちょっと、文化の外側にいる人間からすると、けっこう厳しいんだわ、コレ。

 ざっくりまとめると、

 「経済うんちく:いちゃいちゃ:ギャグ」の比率が違うわけです。2話現在までの感じだと、

【原作】 20:4:1
【アニメ】 10:8:3

 ぐらいの違いがあるわけで、なんつーか、なんで、わたしはこんな二流のラブコメを延々と見なければならないのか…ごごごごごごごごっごっゴッッゴッゴッゴッゴッッッ…!!!!!
 という原作厨としての静かな怒りが沸いてくるわけであります。

 …
 ……

 いやー、もう、そういうわけで、1話にして早くも、わたしが原作厨となる展開で確定いたしました。その点、わかりやすくてよかったです!
 まあ、予想された展開ではあったわけですが、いやぁ、完全にこれは原作厨になるしかありませんねぇ…。

■じゃあ、どうすれば納得したのか。

 いや、まあ、元も子もないことを言えば、アニメ化していいものになるわけがないだろうな、とははじめっから予想していたので、しょうがないことだとは思ってるんです。だからね、制作陣をdisるつもりは、実はこれっぽちもないんです。しょうがないっちゃぁ、しょうがないよね。
 アニメ化自体をしなかったほうが良かったかどうか、という点でいえば、原作ファンからすれば、この作品が少しでも世の中に広まること自体は大歓迎なので、いかに納得出来ないクオリティであるとは言っても、アニメ化されること自体は悪くないとも思ってるんです。
 1クールでやるにせよ、2クールでやるにせよ、原作のテキスト量からすると、どう考えても20分前後で一話構成で、ある程度メジャー向けのコンテンツとして再構成するのは、かなり骨が折れるでしょうし、まあ、もちろん、制作陣は、いろいろと難しい限界のなか頑張ってるとは思うので、その点をdisろうとは思いません。おっぱいアニメにしたこと意外は。

 ただ、個人的に、わがままだけを言わせてもらえれば、
 やはり情報量は変えないでほしかった。
 一つの方法としては、たとえば、魔王は、ゆっくりとしゃべるんじゃなくって、早口でどばーっとしゃべるタイプのキャラにしてほしかったなぁ。まぁ、もっとも、早口系の講義とかって、ごく一部の人にしかウケないので、コンテンツ事業者としては、筋のわるい選択だろうから、それは駄目だとは思うけどね。だから、その手法をとらなかったのは仕方がない。
 もう一つの、製作コスト&リスクがあがってしまうやり方としては、語り口の構成そのものを大きく変化して、別物スレスレというところまで再構成するというやり方だと思う。

 現代日本において、比較的大量の情報をパッケージングしつつ、ある程度メジャーに受けている手法っていくつかしかないわけですよ。
 1.サンデルの白熱教室スタイル
 2.NHKスペシャルスタイル(及び、その簡易版としてのクローズアップ現代)
 3.discovery Channel スタイル(及び、その派生系)
 …とか、パッと思いつくのがこのぐらい。民放のクイズ番組とかは、すごく情報量を少なくしてるし、「ためしてガッテン」とか「ホンマでっかTV」とかは、ネタそのものが、視聴者層にウケそうなものをピックアップしているので、ちょっと経済ネタをのっけるには不適切。旧「週間子どもニュース」も時事ネタという強みがあるので、ちょっと違う。
 で、とりわけ、「中心となる物語」をきっちりと構成しつつ、情報を伝えていくという編集方式だと、NHKスペシャルのやり方が一番近いと思うわけです。
 なので、もし、わたしが番組内容の再構成を大胆に許されるのならば、魔王と勇者の会話を、NHKスペシャルっぽい番組構成で、再構築しちゃいたい。まあ、作りこむの大変そうだけれども、情報量を少なくして、劣化版つくるよりは、そういう冒険をしてほしかった次第です。
 まー、予算も人材も、たっぷりと必要になっちゃうから大変なんだけどね。

 予算、人材、納期。そして、何よりもスタッフの情熱の総量が、プロジェクトのなかで充分そだっていなければ、そういう贅沢な再構成はできないでしょう。
 メディアミックス展開というのは垂直立ち上げをうまくやらなければいけないだろうから、時期的な問題も、もちろんあるでしょう。
 非常にハンドリングの難しいプロジェクトだったとは思います……が、こういう形のアニメに仕上がってしまったのは、やはり残念な気分です。 


■なお、そもそも、まおゆうの何がいいのか:最後に。

 ちなみに、原作のこの作品がすばらしいと思っているか、というと、短く言うと、
<経済学の考える、幸福のあり方>
を、おそらく、日本のコンテンツにおいてはじめて真正面から、充分な分量で書いた作品だと思うからです。

 もっとも、石ノ森章太郎の『マンガ日本経済入門』とか、経済ネタのマンガがいままでなかったわけではないけれども、はっきりと言って、まおゆうの作者のママレさんは、石ノ森章太郎とは明らかに見ている世界が違う。経済の話をする、というのは、頭をしかめて、むずかしく天下国家のことを論ずるという以上に、「わたしたちの世界はどのようにして成立しているのか」という世界観を与えてくれるものです。



 いまだに、不勉強な人だと、「新自由主義批判」とかをして何かを批判したような議論をしている人が日本には耐えないけど、あの手の議論は何度きいても寒々しい。新自由主義批判とかをしてしたり顔をしてる連中の経済談義なんかより、まおゆう原作のほうがよっぽどまともであり、啓蒙的意義が深いです。

*

 なお、ネットでまおゆうを批判している人の大半が、日本の七〇年代~九〇年代的な左翼系知識人の影響下にある人が多くてげんなりー。そういう人のしている批判は、「新自由主義的な世界観そのものがダメ」っていうだけの話なので、わたしのなかでは、「ああ、残念だな」と思っておわるだけなのですよ。
 まおゆうの議論の中身についての、ごくまっとうな批判は、開発経済学、数量経済史的な観点からなされるべきだと思っているわけで。開発経済学や、数量経済史的に込み入った話をすれば、まおゆうは、かなり沢山ウソをついているし「しょせんはファンタジー」であるのは、事実ではある。まぁ、あと政治思想史的なところもちょいと触れてるけど、そこはすごいちょっぴりすぐるので、まぁーそこはご愛嬌。
 だけれども、こういうコンテンツでこれだけ頑張ってみせてるのは、偉いよ。ほんと。

■狼と香辛料と何が違うかって?いや、ぜんぜん違うでしょ。

 なんか「狼と香辛料が~」って人多いけど、
 スタッフ同じなのこれ?そこらへんは、よーしらんけど、
 狼と香辛料とは、ぜんぜん違うはなしでしょう。

 あっちは、小売の行商人の話。こっちは、経済の計画をやる話。
 学部で言えば、商学部と経済学部。
 業種で言えば、商社と、(財務)官僚の違い。

 確かに、同じ「お金」の話だけど。狼と香辛料はゲームのプレイヤーの話だとすれば、まおゆうはお金をめぐるゲームの設計者の話です。


■追記:昔の原作初見時の感想など

PCのアーカイブあさってたら、昔の原作初見時の感想出てきたからせっかくだから、はっとこうか。

・おもしろいのだけれども、途中からちょい微妙
・やはりフェミニズム系の文脈の抑えのあまさがけっこう気にかかる。あと物語のご都合上あるていど仕方ないのはわかるけれども、「教育/啓蒙」がちょっと簡単に成功しすぎている。まあ、いいんだけどね。個人的には、もうすこし登場人物をすくなくして、じっくりと何度も失敗するような話ができるとベター。ひぐらしはそこらへんもよくできている。まあ、ひぐらしは、小さなとこで公務員やってた人のリアリティがやっぱよく出てるんだよね。
・モデルはほんとうに中世のヨーロッパそのものだよな、と。あと、わたしのような読者にとって、やはりおもしろみに欠けるのは、近代人が、前近代のことを書いているだけという部分。「近代」に至る過程であらわれた革命的な発明の<コタエ>を全て知っている。本当にまだ見ぬものを発明するための努力自体が書かれていないのが残念。まあ、そういう話の急速さを楽しむことこそが、この作品の魅力でもあるので、無いものねだりもいいとこっつーか、作者と前提を共有していないコメントなのは承知ですが。ここらへんは知性が超越しすぎている……というか、フォン=ノイマンですらもうちょっと悩みが多かったはずで、天才発明家というのは、こういうものではない。もちろん。。これは「魔王」だからいいんです、と言ってしまえばそれまでなんだけれども、解へ至る道程を模索するエネルギーが、足りない。やたらとあっさりとしすぎている。迷いが少なすぎる。人間は何かにつけ、もっと、もっと悩んできたと思うのだけれども…というのが主たる不満。コタエがコタエである、ということを半ば自明のようにざくざくと書いていけるのは、後世の人間が啓蒙として書いているから、ということに他ならない状況がある。それは、どうよ、と。
・啓蒙小説なのだと割り切って読めばいいのだろうし、啓蒙小説としては極めてすぐれているのは間違いない。というか、こういうものが出てきていること自体はガチで歓迎したい。
・いろいろと表現にきにかかる部分は多いというか、ライトノベル的な文脈にのりすぎというか、中二的妄想もうすこしどうにかならんか、と思うが、まあこういう世界感が好きな人なんだろうし、ある種の読者はこういうものこそ好きなのだろうし。
{/netabare}

投稿 : 2014/02/15
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