「新世紀エヴァンゲリオン(TVアニメ動画)」

総合得点
90.7
感想・評価
6253
棚に入れた
25241
ランキング
49
★★★★★ 4.1 (6253)
物語
4.1
作画
3.9
声優
4.1
音楽
4.3
キャラ
4.2

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ネタバレ

ヒロトシ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8
物語 : 3.0 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

壮大な思考実験をベースにした90年代を代表するアニメ

エヴァについては答えが無い作品だと私は思っています。なのどれが正しい、どれが間違っているという探求は無意味な行為ではないかと。少々過激な表現ですが、そう思っています。ですので、こういう考え・視点もあるんだなあという程度のもので本レビューを読んでいただければ幸いです。色んな考え方あった方が楽しいんで、チラ裏的な感じで。

エヴァンゲリオンの核になるのは、碇シンジという少年。彼を理解してあげるという所から、エヴァの面白さというのがスタートしていくんじゃないかなと。で、この理解という単語において、思い描いたのが、哲学者のヴィトゲンシュタインで、彼の著作『私的言語論』というのがあるんですが、その著作の中で、『箱の中のカブトムシ』という思考実験を紹介しているんですね。

で、ヴィトゲンシュタインは何を言っているのかというと
私的解釈で申し訳ないですが、以下の文章に要約出来ます。

人は何故他人を理解できるのか。人はそれぞれ自分ならではの世界を持ち、哲学を持ち、視点を持っている。では何故、人は時に他人を理解したような、或いは共有したような感覚を持つのか。それはひとえに自身の経験談から推測して、他人を理解するという自己満足を得ているに過ぎないのではないか。あくまで自分が想像した心理を他人の状況に置き換えることで、人間は他人を理解したという意識が働くのかもしれない。

てーことが言いたいんじゃないのかなと。
分かりやすく例を出しますと

例えば自分の目の前で子供が転んだとします。
ひざを擦りむいていて、血が滲んでいます。
そんな子供の姿を見て、大半の人間はきっと『痛そうだな』と
思うはずです。でも、ちょっと待ってください。

その子供が感じている『痛み』ですが、果たして貴方は本当にその子供の『痛み』として理解しているのでしょうか?貴方は理解しているのではなく、過去に自分が膝を擦りむいた経験に基づいて、現在、目の前の子供が抱えている『痛み』を理解しているのではないでしょうか?それって果たして『理解』って言えるんでしょうか。子供が女子か男子か、先天的に痛みに強い(鈍いともいえるか)体質なのか。それこそあらゆる点で怪我をした子供と貴方(貴方が最後に膝を擦りむいた時期も勘案しないといけません)のスペックを1%の差異もなく繋ぎ合わせないと、真の意味で『理解』とはいえないのでは―

ヴィトゲンシュタインは痛みを例に出して、前述した概念の解釈を試みようとしていました。これを本作に置き換えて考えてみますと、エヴァンゲリオン(特にテレビアニメの後半部分)とこのヴィトゲンシュタインの思考実験はシンクロしているようにも感じ、エヴァが良くも悪くも90年代アニメの象徴的存在になったのは、主人公を通しての視聴者を巻き込んだ実験的な理解共有をアニメで行った事がそう思わせる要因なのかもしれないと思い始めました。

碇シンジは物語終盤、自分の置かれた過酷な状況に嫌気が差し自分の殻の中に閉じこもり、同時に自分の今の状況を誰かに理解して欲しいという思考を持つようになります。それに呼応するかのように、テレビアニメでは最終的にシンジの内面をクローズアップした展開に切り替わっていきます。これまでのシンジが歩んできた苦難の道を当然視聴者は知っています、なのでシンジの苦悩についても、理解を覚える人も少なくないはずです。だけど、それは果たして本当にシンジの苦悩を理解していると言えるのだろうかと。これまでの展開と、シンジの姿から推測して視聴者は理解をしたつもりになっているのではないかと。箱の中のカブトムシを念頭に置いて、エヴァを視聴するとこういった問題が頭をもたげるようになってきましたね。

終盤はシンジの心象風景がやたら目立つシーンが多くなっていきますし、シンジの表には出さない思考がこの時点で暗にだが描写されるようにもなっていき、視聴者に提示されるようにもなります。普通は分からない他人の内面を覗き見るような展開で淡々と進んでいくストーリーは、当時のアニメとしては奇抜すぎたかもしれません。しかし実験としてならば、人の内面を覗ける状況を意図的に作り出してやれば、100%とまではいかないけど常識を超えた理解を架空と現実といえども、発生させられるのではないか。狙いとしてはそこにあったんじゃないかなあと。陰謀論も甚だしいですが、そう考えると面白いですね。

劇場版をエヴァ完結と捉える人もいますが、これまでの推測から考えた場合、私としてはテレビ版できちんとエヴァは完結していたと思っています。

物語として面白いか、面白くないかと聞かれれば、それこそEVAという作品をどう捉えるかで全然違ってきます。あんまり深く考えなくても伝わる面白さというのは充分に持っているとは思いますしね。深くつっこんでみようと思うと、それこそキリがないですねw いずれにしろ、視聴者それぞれ均一的な価値観で語ることが出来ない作品ですので、他人とあーだこーだ議論を重ねるかよりは、まず自説をぶち立てて、他に挙がっている意見と照らし合わせていって、自分なりに組み上げていくというのが一番良いのかなと。

投稿 : 2013/06/02
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サンキュー:

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