「デジモンアドベンチャー02(TVアニメ動画)」

総合得点
66.1
感想・評価
260
棚に入れた
1771
ランキング
2935
★★★★☆ 3.6 (260)
物語
3.6
作画
3.5
声優
3.5
音楽
3.8
キャラ
3.6

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ネタバレ

くろゆき* さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0
物語 : 4.0 作画 : 4.5 声優 : 3.5 音楽 : 4.5 キャラ : 3.5 状態:観終わった

幸せであるというのは、恐れなく自分を知ることですね。

デジモンアドベンチャーの続編である本作は、作品の路線が前作とは大きく異なっており、前作と同じ楽しみ方を求めた方は落胆すること請け合いです。

続編である、ということを意識し過ぎたのか、本作は全体的にストーリー重視であり、それに加えて前作との整合性に傾倒しています。しかしその結果、子ども向けとして肝心の【デジモン同士の戦い】と、そこでカタルシスを感じる為の作りが致命的なほどにショボくなってしまいました。
序盤のアーマー進化の時点で、エンタメ作品として雲行きが妖しかった。1話のフレイドラモン登場回は良かったものの、続く2話でホークモンとアルマジモンを同時に登場させてしまったが為にどちらを目立たせることも出来ず、しかも同じ失敗を3話でもパタモン、テイルモンで行ってしまっています。

基本的に選ばれし子どもらのデジモンは、初進化時が一番目立ち、それ以降は活躍しにくくなります。なので、初登場時ぐらいはばっちり目立たせないといけません。
しかし、このアーマー進化でそういった演出が見られなかったのはちょっと残念でしたね。
デジモンバトルのショボさはなにもここだけじゃなくて、例えばパイルドラモンにしてもそうです。このデジモンは初登場時、進化の演出自体も大変優れているのですが、いかんせん必殺技が地味。腰のブラスターをぶっ放すのは良いのだけど、肝心の光線が細くて強そうに見えないだけでなく、光線のSEすら「ズドドドドド!!」といったド派手なものでなく、「バババババババ」という感じの地味なマシンガンみたいなものでした。

個人的に、これはダメです。前作は成熟期の段階からグレイモンやカブテリモンが派手な必殺技を使っていたので、どうしてもそちらと比較してしまうとインパクト不足は否めません。
おまけにシチュエーションが悪い。これはストーリーの方にて後述しますが、選ばれし子ども側が前作のように敵をスカッとやっつけれる状況が中々用意されない為、せっかくの戦闘シーンでも盛り上がらないんです。
インペリアルドラモンなんて、主人公側で唯一の究極体であるにも関わらず初登場時に破壊したのはダークタワーのみで、それ以降はポケモンに例えるとただの空を飛ぶ要員でした……。

ファイターモードもその扱いは五十歩百歩といったところ。初登場時は敵を圧倒してとはいえ敵はそもそも一段階下の完全体だし、その次となると結局、倒した敵は最終回のべリアルヴァンデモンだけです。ドラゴンモードとの戦闘力の差もいまいち判然としませんでしたし。
更に残念なのがこのインペリアルドラモン、必殺技である【ギガデス】の使用回数がたったの一回。せっかくの究極体なのに、その存在をかなり持て余していました……。

さてストーリー面ですが……重視していたワリには微妙な出来。シナリオだけ見れば悪くないんだけど、シリーズ構成のバランスがいまいちといった感じでしょうか。

児童向けの勧善懲悪モノであった前作と比べて本作は、闇と光に焦点をあて、とりわけ闇の方に突っ込んだお話が展開されています。分かりやすいところでは、闇とはどういうものかといった部分をキャラを通して描いています。
一乗寺 賢、ブラックウォーグレイモン、及川 幸男。この三者を通して、闇だからといってなんでもかんでも否定してはいけないことと、誰しもが闇を抱えているといった二点を主張しています。

この辺はよく描かれており、とくに一乗寺 賢のエピソードはかなりの出来でした。ただ、地味。こういった掘り下げの重要なキャラのドラマというのは、きちんと段階を踏んでいかないと深みとか説得力は出てこないから、やるなら丁寧に運んでいく必要があるけれど、そもそも子ども向けアニメでそのようなちょっと大人向けなテーマをドラマだけで魅せるには無理がある。それを魅せるにはやはり、ドラマとは別の面白みを一緒に提供しなければなりません。
前作ではそれがデジモンの戦闘シーンだったのですが、本作では上記のように戦闘面で期待できないので、結果的に中々退屈な回が多いんですよねぇ……。

前作よりも名場面と呼べるシーンが増えたのは確かなんだけど、全体で評価するとなると不評寄り。
んで、シリーズ構成の悪さですが、一番最初に疑問だったのが、ブラックウォーグレイモンの登場の早さ。これはあまりに早すぎた。この時点で大輔側の戦力はパイルドラモン一体。勝てるワケがない。
しかもその後シルフィーモンやシャッコウモンが加わりますが、それにしたって完全体じゃあ究極体は倒せません。案の定、シルフィーモンは登場した次の回で速攻ブラックウォーグレイモンにやられます;
そのくせ、このジョグレスまでの経緯にしても京とヒカリに絆が生まれるまでのお話は1話であっさり終わったのにタケルと伊織ペアには3話かけていたりと、バランスに疑問を感じます。せっかく3話かけても相手がブラックウォーグレイモンではどうしようもありません……。

ストーリーでは、決して消えることのない闇に立ち向かうにはどうすれば良いのか? という問いに対して、本作では【夢を持つこと】が答えとされています。これ自体は好感が持てるし、最終回の展開はかなり感動できるものでした。選ばれた子どもがもつ【勇気】や【希望】ではなく、選ばれなかった子どもでも持てるものですからね。それに、【夢】さえ持っていれば【勇気】を振り絞れるし未来に【光】が差すし【希望】も持てる。同じ夢に向かって【友情】を結べる存在が生れるだろうし【知識】だって身に着ける。自分に【誠実】になれるし夢への気持ちはいつだって【純真】。そして、そんな自分に【愛情】をもつことだって出来てしまう。内容だけなら前作を凌ぎます。

ただ、マズイと感じたのがデーモンと暗黒の海の存在。この二つの存在とも、子供らは克服できていません。デーモンには結局勝てなかったし、闇を掘り下げてくうえで必須であったはずの暗黒の海にしても、負の塊と説明されただげで、ヒカリが連れていかれたり賢が迷い込んだりと本編に関係しているにも関わらず、いまひとつ物語に絡んでこなかった。デーモンの扱いによって【乗り越えられない闇】が本編に生まれてしまったのは、どうなんだろう? って思ってしまいますね; そのくせ、デーモンらが出てきた意味がないですし。賢の持つ暗黒の種が目当てだったそうですが、だから? ってぐらい蛇足でした……。

あと、なんだかんだで前作と設定が矛盾しまくってるのも気になります。子ども一人一人にパートナーが生まれるとか、子どもがみんなデジタルワールドに渡れるとか、無茶苦茶ですわ……。


次にキャラクターですが……大輔以外が、なぁ;
酷いのがタケルとヒカリでしょう。性格の変化はまぁ仕方ないかなぁと思います。いくらなんでも改悪され過ぎですが、前作の二人がまっとうに成長していれば、そもそも新しい選ばれし子どもなんて必要ありませんから。
だってアポカリモンという絶望を打ち破ったという経験があるし、タケルは【友情】のヤマトを兄にもち、【勇気】の太一を慕っていたんですよ? 三年もあればこの二人の紋章を受け継ぐぐらいワケないです。前作のピエモンとの戦いではタケルの勇気を感じられましたし。ここに丈の【誠実】も継承し、ヒカリがデジモンへの【愛情】と【純真】、そこに【知識】を受け継いでいれば、この二人で物語は動かせます。

というか、そうして欲しかったかも。前作でタケルやヒカリが闇にトラウマを持ってしまうのはまぁ仕方ない。だからこそこの二人は、賢と最も交流を深めなければならなかったし、及川とも対立する必要があったし、ブラックウォーグレイモンを知る必要があった。
それが、前作の反省からか、主人公を目立たせようというスタッフが考えた為に、タケルらに必要だった経験を全て大輔が経験するこtになり、結果的にタケルとヒカリはとんでもないお荷物となってしまいました。
ヒカリはヘタレなうえにテイルモンの事情からアーマー進化しかほとんど出来ず役立たず。タケルは闇を憎む一方で、そのくせ闇への対抗意志が弱い。特に絶句したのが、まだタケルと伊織がジョグレスしていない頃、ブラックウォーグレイモンとの対峙でタケルはエンジェモン以上の進化を望みます。そこまでに伊織との絆とかジョグレスの話をしてたのでてっきりジョグレスするのかと思っていたのですが、タケルの口から出た言葉は「ジョグレス――いや!」とジョグレスを拒絶してホーリーエンジェモンへの進化を求めたのです。これには呆れました。
しかもいつの間にか、ジョグレスできないのは伊織に自信がないから、みたいな空気になりだして、タケルが伊織に「大丈夫、もっと自信をもって」と励ます始末……。どの口がそれを言うのか;

こういったこともあり、相対的に大輔がメキメキとカッコ良くなっていったワケです。これなら正味、タケルとヒカリは要らなかった気が……。そうすれば伊織と京のジョグレスになり、主要デジモンはジョグレスすると二体だけになるから、おそらく伊織&京のジョグレス体も究極体に進化出来たでしょう……。
伊織と京にしても、いまいち成長できないキャラでしたね。まず二人とも、とても二つの紋章を受け継いだとは思えません。京からは【純真】しか感じられないし、伊織は【誠実】だけな印象。それは多分、デジメンタルの入手エピソードが関係してます。京が純真のデジメンタルを入手した時のお話は、京が素直な気持ちを曝け出す回だったし、通常進化の回もそれに似たお話でした。
伊織は普段の言動が真面目で、自分にも相手にも厳しいところは誠実そのもの。しかし、愛情も知識も、入手したのは2話目。まだ伊織や京がどういうキャラか分からないところでデジメンタルを入手してもいまいち納得できないし、おまけにその後のキャラを追っていっても分かりません。京の愛情がどこにあったのか。伊織は可哀想なことに、光子郎が前作以上に狂言回しっぷりに徹しているので、知識面を披露する機会に恵まれませんでした。

前作の選ばれし子どもらを通して紋章を受け継ぐという、初期の頃の流れは良いのですが、2話の時にそれが省略されていたのが残念でした。
加えて、本作はキャラが一人になるという機会が少なかった。これもまた、キャラが成長しなかった原因でしょう。前作では途中、何度か子どもらはバラバラになり、その度にパートナーデジモンとともに苦難を乗り越えて自分らしさを獲得してきました。しかし、本作にはそれがありません。だから、強大な敵を前にして一人が怯めばみんな諦めモードになります。精神がおそろしく弱いんです。
大輔だけそうならなかったのは、多分、みんなが不信感を募らせる中で一人だけ賢を信じ、その気持ちがジョグレスという結果で報われたからかと思います。ここでもまた、大輔一人が突出しているんですね。

投稿 : 2020/07/14
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サンキュー:

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