「コードギアス 反逆のルルーシュ(TVアニメ動画)」

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ネタバレ

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★★★★★ 4.3
物語 : 4.5 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

撃っていいのは撃たれる覚悟がある奴だけだ!

中高生の視聴者が喜ぶような要素(学園、ロボット、ハーレム、頭脳戦、特殊能力、中二病等)を盛り込み、分かりやすいテーマとメッセージ性を持っている作品である。
本作の最大の良さは「メッセージに関する伏線」の効果性を実証したアニメだということである。
ストーリーに関する伏線が少ないため、展開を読むのが困難であるが、メッセージに関する伏線に気が付いて収拾することができれば、マオ編とユーフェミア編の段階で終盤の展開をある程度は予想できる。
「ストーリーに関する伏線」と「メッセージに関する伏線」の違いが分からない方がいると思うので、ここで説明したいと思う。
まず、「ストーリーに関する伏線」とはストーリーがどのように展開していくかを示すものである。
基本的に分かりやすく強調されており、ストーリーが進むにつれて伏線は回収される。
また、伏線に気が付かなくても、ストーリーは展開していくため、重要度は高くない。
例えば、サスペンスドラマで犯人(ラスト)を示唆するような証拠(伏線)が散りばめられている状態。
最終的に主人公の刑事が全て説明してくれる。
一方、「メッセージに関する伏線」とは自分で頭を捻って考えなければ理解できないものであり、ある1シーンが用意された意味を考え、常に疑問を抱きながら見る必要がある。
普通は一度の視聴で全ての伏線に気がつくのは不可能である。
結局は自己満足的な要素が強いのだが。
本作はメッセージに関する伏線が多いので、そこに注目して視聴すれば、より楽しめる作品だと思う。
楽しめる要素が沢山あるのだが、本作はシナリオ運びがどうも雑に感じる。
というのも、ルルーシュの背景設定やその目的を考えれば、テンポ良く話を進めるべきだったと思う。
例えば、2話でクロヴィスの殺害に至る、全体的にこれくらいの進行速度が良かったのではないかと考える。
元々、谷口さんはキャラの重苦しいドラマ等ではなく、キャラの勢いで話を展開させていくのが得意なので、キャラの内面を無駄に掘り下げる必要はなかったと感じた。
しかし、本作は制作背景上、2クールアニメで4クールアニメの脚本をやっている。
したがって、途中から展開が遅くなっていく。
1クール目の終盤は違和感がより強くなっていた。
何故かというと、1クール目の終わりに区切りがなかったからである。
これはメリハリがある谷口作品には珍しいことだ。
この辺りに4クールアニメの脚本の弊害を感じた。
このようになった原因は本作の制作背景にある。
当初、本作は土6枠の4クールアニメとしての制作が予定されていた。
この頃から2クール制作→2クール休止→2クール放送の構成は決まっていたようだが、それがどのような事情によるものなのかは明かされずに深夜枠となってしまった。
深夜アニメは夕方アニメ等とは違い、売れなければ続編を制作することはできない。
そのため、本作は1クールの中盤辺りまでは2クールアニメの脚本となっている。
こうした背景があるので、違和感が酷いのだ。
冒頭が2クールアニメの進行速度なのにもかかわらず、途中から4クールアニメのペースになるので、シナリオの停滞具合が気になって仕方がない。
ルルーシュを魅せるシナリオにはなっていても、ルルーシュの復讐劇が充分に描かれていない。
これが問題である。
ルルーシュの復讐劇で何を期待できるかというと、整合性のとれたシナリオ展開やギアスによる駆け引きである。
ロボアクションはスザクの役割なので、シナリオは慎重に且つ大胆に、そのようなルルーシュの戦略でカタルシスを与えねばならないと思う。
しかし、本作のシナリオはその場その場の盛り上げにアイデアを詰め込み過ぎている。
そのせいか、キャラがブレまくっている。
主役のルルーシュですら。
例えば、ルルーシュの知能。
シナリオの状況というか、脚本の都合によってルルーシュの頭のキレ具合が変化する。
ルルーシュを追い詰めたい時はルルーシュが馬鹿になり、逆に、ルルーシュをかっこよく魅せたい時は賢くなる。
キャラのぶっ飛んだ台詞、素晴らしい音楽、これらによって巧妙に隠されているが、このブレは見逃しがたい。
特に酷いのはユフィによる虐殺の回である。
シナリオを進めるためとはいえ、ルルーシュの発言は頭が悪いというか、唐突過ぎると感じた。
この展開は擁護しようと思ったらできなくもない。
ルルーシュは自分を「生きていると嘘をついてきた」と捉え、自己嫌悪していた少年である。
しかし、彼はギアスを得てからも嘘をつき続けている。
弱い自分を仮面で偽り、相手を騙して策に落とし、嘘に嘘を重ねる。
そのような彼が平和な世界を築くという夢を叶える一歩手前で自分の嘘から出た真によって追い詰められていく。
というのは面白いのは確かなのだが。
また、ルルーシュとC.C.による同じようなやり取りが3回程行われるので、ややうんざりしてしまう。
二人の共犯関係という名の絆を強調させたかったのかもしれないが、回によっては対立一歩手前であったり、信頼関係であったりした。
特に、違和感があったのが25話である。
ルルーシュがC.C.に疑いの目を向けていたというのに過去を知った直後には「お前が魔女なら俺は魔王になってやる」発言。
これには苦笑せざるを得ない。
さらに、ヴィレッタは記憶を取り戻すのが唐突過ぎる。
このような点があるから、ご都合主義だと言われるのだろう。
1話1話の完成度は高いのだが、全体的に見ると纏まりの無さに愕然とする。
ルルーシュの発言は台詞自体はハッタリが効いているし、中二病的なかっこよさがあるのだが、冷静になって考えてみると支離滅裂である。
そして、ブリタニアへの復讐劇をあまり描かなかった結果、最終回は中途半端になってしまった。
続編があるのは良いし、謎が回収されないのも当然納得した。
しかし、続編があるとはいえども、区切りとなる最終回にするべきだと思う。
例えば、ルルーシュが捕まって終わる、これだと続編を見なくてもルルーシュの復讐劇は失敗に終わったことで一区切りつく。
ルルーシュとスザクの対峙で終わるあのラストでも良いのだが、その場合はブリタニアという国を記号化し、ルルーシュとスザクの正義に焦点を当ててストーリーを展開する場合に限る。
ただでさえ、2クールの中で区切られている部分がなく、節目にカタルシスを感じることができないのだから。
谷口さんらしい台詞回し、音楽、キャラの表情等は一級品である。
ロボアクションは動きよりもギミックが面白かった。
特に、紅蓮二式の右腕は発動時のSEといい、凄くかっこよかったと思う。
売れる理由はもう充分に理解できるのだが、DVD等で一気に視聴してみると、脚本と設定の不協和音が気になってしまう惜しい作品である。

投稿 : 2014/08/18
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