「大正野球娘。(TVアニメ動画)」

総合得点
66.4
感想・評価
456
棚に入れた
1986
ランキング
2812
★★★★☆ 3.7 (456)
物語
3.7
作画
3.6
声優
3.8
音楽
3.5
キャラ
3.8

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田中タイキック さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0
物語 : 4.0 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 3.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

欧化な時代に桜花の下、少女たちは野球を謳歌する

2009年7月~ TBS系列にて放送
全12話

幕末動乱の明治を越え昭和までの15年間、日本史上最も短い『大正』
という時代は明治から続く近代スポーツの発展が顕著でありました。
こと野球に関しては現在まで続く甲子園大会や東京六大学野球、
さらには日本初のプロ野球チームが創設された時代であります。


そんな時代を生きるうら若き乙女達が何故か野球をはじめちゃったというアニメ
それが大正野球娘。


【そもそもなぜ野球なのか】
主人公の鈴川 小梅(すずかわ こうめ)は親友である小笠原 晶子(おがさわら あきこ)に突然、野球をしようと持ちかけられ勢いに押されるまま了承してしまう。
話を聞くに許婚である青年に「女性に学歴は不要」で「主婦として家庭に入るべき」と言われ、それに強く反発し彼が打ち込む野球というスポーツで一矢報い、彼の認識を改めさせようということだった。
なんとも男尊女卑な考えだが当時の社会では一般的な思想であり大正という時代が生きている設定でした。
ともあれ最初の動機がそんななので彼女たちは野球が好き嫌い以前に一体何なのかもまるで分からない状態からスタートしてしまう。
結果的にこれが大きく功を奏しました。
空っぽのほうが夢詰め込めるものです。


【物語の構成がよかった】
前述の通り野球に関して何も知らない彼女たちが知らないなりにメンバーを集め、指導者を確保し、部活動として認められ、ルールを覚えて練習する。
従来のスポーツ作品定番の流れを上手く取り入れたおかげか、
序盤で、すっかり彼女達に感情移入してしまいました。
中盤は手痛い敗北からの挫折と再起、部員たちの気持ちと意識のすれ違い、
それに加えて小梅と昌子はグラウンド外での物語も展開。
逆境、試練、問題を抱えながらも野球を通じて強くなりチームとして結束した終盤での彼女たちの勇姿には感動。
結果、12話という尺は助長すぎず彼女たちの成長を描くには最適な長さだと感じました。


【大正時代の魅力】
まずセーラー服と袴が混在している学生服が素敵。ハイカラってやつですよ。
大正ガールのファッションっていいですよね。
和の文化を重んじながらも西洋の文化を積極的に取り入れた感じ。
袴+ブーツってその最たるものだと思います。
同時にキャラクターは時代に合った奥ゆかしく気品のある女性像を徹底的に描いており。
「ごきげんよう」「~かしら」「~ですわ」「おジャンでございます」
こういう言葉がごく自然に出てくるところに魅力を感じます。
私はそこまで大正に詳しくないのですが時代考証はかなり正確らしく
その時代の空気感まで伝わるこだわりの画面作りがこの作品の魅力をさらに引き立てているよう。


【背景美術について】
温度まで伝わるような手描きの温かみある背景。
最近の作品に多くみられる写実的でリアルなデジタル処理をしている背景とはまた違った趣がありました。
美術監督は小林七郎さん。
小林プロダクションという背景美術専門の会社を立ち上げ実に40年以上も第一線で活躍されていました。
2000年代はJ.C.STAFF作品を中心に背景を手がけていましたが
残念ながら「探偵オペラミルキィホームズ」を最後に看板を下ろしてしまいました。
小林七郎さんについてはWEBに興味深いエントリーがありましたのでよかったら。

小林七郎、背景美術を語る
http://www.asahi.com/showbiz/column/animagedon/TKY201202120130.html



【総評】
野球描写は派手さは無いもののしっかりしています。
ずぶの素人がだんだん上手くなる過程を動きで見せられるアニメはそうそう無いと思います。
私のように草野球でちょっとかじったことのあるような人間にとっては感情移入しやすい描写が多々ありました。(フライの距離感ってわかんねーんだよなーとか本当にその程度の実力です)
逆にがっつり野球をやっていた方にとっては物足りない部分もあるのかも…
キャラクターに関しては成長をしっかり描いて、小梅と晶子の問題もしっかり回収しており、そのことは12話の尺で適切だったのですが
やっぱり他のキャラにも、もう少し突っ込んだ描写が欲しかったのが本音です。番外編で13話目があったらよかったのかも
いろいろな要素が70点くらいで収まってしまったように感じます。
それゆえに絶妙なバランス感覚は全編通して安定感抜群で「大正」「野球」「娘。」どれが不足してもこの完成度には至らなかったと思います。

良作以上、傑作未満

1クールでサクッと見れるの教えてよって言われたら間違いなくこの作品押しますよ。

投稿 : 2015/11/16
閲覧 : 433
サンキュー:

30

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