まんがタイムきららフォワードで漫画原作なおすすめアニメランキング 5

あにこれの全ユーザーがおすすめアニメのまんがタイムきららフォワードで漫画原作な成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年04月20日の時点で一番のまんがタイムきららフォワードで漫画原作なおすすめアニメは何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

93.9 1 まんがタイムきららフォワードで漫画原作なアニメランキング1位
ゆるキャン△(TVアニメ動画)

2018年冬アニメ
★★★★☆ 4.0 (1815)
7194人が棚に入れました
1人でキャンプをするのが好きな女子・リンと、キャンプ初心者・なでしこの出会いからはじまるアウトドアコメディ。本格的なキャンプのノウハウをゆるく楽しげに描く。

声優・キャラクター
花守ゆみり、東山奈央、原紗友里、豊崎愛生、高橋李依、井上麻里奈、大塚明夫

TAMA さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

そば・うどんやなくて蕎麦鵜丼やったんよ!…ウソやで〜♪

やっちまった…。このアニメの影響で安いやつやけど…メタル賽銭箱!…ではなく、ミニ賽銭箱!…でもなく、『コンパクト焚火グリル』…買っちった!
うん、マッチポンプマッチポンプ♬


原作・未読。
アニメ・全話視聴。(全12話・30分アニメ)


あの感想書く前に一言。
『なでしこ』って化物ですか?マップで調べたんですが南部町から本栖湖の距離ってパないですよ!?車で約1時間の道をしかも普通のチャリで?
JKのパワー、スゲー…。


聞いた話なんですがこれって『志摩リン』の方がメインキャラなんですね。アニメ観てる限りだと『なでしこ』の方がってなりましたが。
ま、この場合ダブルヒロインって事ですかね。
…最初『志摩リン』って『シマリン』って認識してて本名を縮めたニックネームかな?と思ってました(汗)


現実世界だと地味な作業でテントや焚火等の準備とかメンドーなのに、なぜアニメで観ると「うわ、やりてー…」ってなるんでしょうね(笑)

私も一人でどこかあてもなく小旅行するのが好きなのでリンちゃんの気持ちが良く分かりました。しかも秋や冬場とかだと本当に人が居ないのでまったりしたい時は最高です!虫も居ない(ほぼ)!
…が、凍死する!って事もあります(笑)
皆さんももし冬場とかにやるなら万全な準備を!
バイクはクソ寒いよ〜…


作品を観てるとよく調べあげており、「あ、やりたいな」って気にさせられるんですよ。本格的なのは甘いもんじゃない!って分かるからキャンプ場等でゆるく、軽く『ゆるキャンΔ』する!って感じが本当に良かった。

主要キャラ達が凄くたっており、私は観てて飽きる事なく楽しめました。『千明』と『あおい』の野クルの2人の掛け合いは結構笑わせて頂きました!仲の良さ、付き合いの長さもあるのかな?
『リン』も最初は『あいつ』って言ってたのにある時から『なでしこ』って呼んだ時は「フフ…」ってニヤけました。
…女子ってよく食べるなと思ったけど『なでしこ』は胃袋ブラックホールなんでしょうか(笑)?本当にわんこなんでは!?


本編だけで無く、『やってみた系』や『へやキャンΔ』もまた物語を楽しくさせるスパイスになってましたね。…毎回ED後の『へやキャンΔ』は楽しみで仕方なかったですね。
後クセになったのは最近のツールを使ったりやメッセージアプリのやり取りですね。独特なやり取りでほんわかしました。
オススメはやはり『志摩リン』と『斉藤 恵那』ですね。…CV東山さん、よく表現したよ!


アウトドア用品店の話があるんですが『なでしこ』がテンション上がってた様になんであそこって気を惹く物が多いんでしょうね。それなりのお値段しますが…。『あおい』風に言えば何諭吉分お高く…って感じですかね。
興味ない人にはつまらないとは思いますが少しでも興味がある方にはちょっとしたお宝探しを楽しめると思います。…もちろん、諭吉が居なくなるかもしれませんが(笑)
『なでしこ』、まずバイトだな。


お気に入りは『あおい』ですね。独特なボケやツッコミに惹かれました。CV豊崎愛生さんの表現力も相まって茶目っ気あるキャラがますます魅力的になってました。しかし意外と皆をフォローしたりするキャラなのでそのギャップにやられました(笑)
後『あおい』のまゆげ…、たくあんに見えてもうた。(けいおん!みたいに)

後はCV伊藤静さんのキャラが酒豪なのはちょっと笑いました。…いや、だって伊藤静さんってリアルでも…(汗)
あ、いえ、なんでもないッス!


ゆっくりまったりキャンプする姿を観たい、何も考えず観たい、軽くアウトドア知識を学びたい等の方には是非オススメします!


あー…面白かった。

… !?

あれは『秘密結社ブランケット』!!
な、なに!?2期をやるだって!?

うわなにをするくぁwせdrftgyふじこlp…(#2より)

※【東山さんのWebラジオで知ったんですが『ゆるキャンΔイベント』でサプライズで2期決定を言い渡されたみたいです。キャストは何も知らされて無かったみたいでお客さんと一緒に驚いたらしいです☆】

投稿 : 2024/04/20
♥ : 26
ネタバレ

東アジア親日武装戦線 さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

日本の原風景を異国で観ると心に沁みて意味もなく涙腺が…りん曰く「それは斬新な昼ドラry」

☆制作スタッフ
▼原作:まんがタイムきららフォワード
▼原作者:あfろ
▼アニメーション制作:C-Station{netabare}
▼監督:京極義昭(初監督作品)
・実績
(演出参加)
『うさぎドロップ』『黒子のバスケシリーズ』 『ヤマノススメ2期』など
▼シリーズ構成:田中仁
・実績
(シリーズ構成)
『キラキラ☆プリキュアアラモード』『あんハピ♪』など
▼キャラクターデザイン/総作画監督:佐々木睦美
・実績
(キャラクターデザイン)
『Phantom 〜Requiem for the Phantom〜』(共同)『星刻の竜騎士』
▼プロップデザイン/プロップ作画監督:山岡奈保子
▼メカデザイン:遠藤大輔
・実績
(作画監督参加)
『とある科学の超電磁砲』『オオカミさんと七人の仲間たち』『ガールフレンド(仮)』『あんハピ♪』など
▼音楽関係
・制作:MAGES.
・OP曲:「SHINY DAYS」(亜咲花)
・ED曲:「ふゆびより」(佐々木恵梨)
▼CAST
レビュー本文に記載。{/netabare}

※長文注意

原作一部既読
リアルタイム視聴済

【視聴環境に関する特記】
"Yuru Camp"
Crunchyroll(配信元)
With English sub

タイトルのとおり、本作は米国赴任中にプレゼンルームに設置されている220インチWXGAプロジェクターで視聴。
サウンドシステムはBOSE5スピーカーサラウンド。
したがって、他の作品とは視聴環境もろもろが違うので、レビューにも影響している。

【物語・キャラ・声優】
1<きららワールドの構造分析>{netabare}
本作の世界観は、原作が連載されているきららのコンセプト、
①日常+空気感

そしてもはや王道テンプレとなっている
②JK(女子高校生)+Activity(活動性)のオーバーラップである。

①+②で、もうあの名作を思い出すだろう。
そう『けいおん!』だ。
しかし、ここで『けいおん!』の二番煎じだのというレビューを書く気は毛頭ない。
(寧ろ『BanG Dream!』は明確に意識、いや、嫌み的な意味でオマージュだな。)
当時、きららでは窓際作品であった『けいおん!』がなぜアニメで大ヒットし、延いては社会現象まで引き起こした理由を思い起こして欲しいのだ。
その答えは「空気感」という形而上な空間をアニメ媒体でしっかりと表現し、視聴者に今までにはない新鮮なカタルシスを伝えきったことに尽きるし、アニメ化に際し脚本構成を担当した吉田玲子さんの卓越した構成と京アニの演出と作画力の協奏に因るミラクルと言っても過言ではない。
『けいおん!』の大成功後、きららのコンセプトが明示的に「①」となったのは周知の事実である。
『けいおん!』終了後も多数のきらら作品がアニメ化されているが、感覚では掴める「空気感」を左脳に書き換える際にどうしても巧い表現が見つからないままであった。
いや、もっと正確に言えば「空気感」を言語的で認識したきっかけが『けいおん!』で『ひだまりスケッチ』のときから感覚としての把握はしていたのだ。
それを解決に導いてしてくれたのが本作なのであり、きららの記号「空気感(ゆるふあ)」の解とは

《異性関係が外形的なストイックであり、かつ非現実な平和過ぎる人間関係の空間》

である。

この状態を更に的を射る言葉が《ゆるい》である。
例えば、きらら作品では少し異色な『がっこうぐらし! 』で考えてみるが、ゾンビに囲まれた世界観はとてもシリアスであり、個々のキャラには試練が降りかかるが、主人公を取り巻く人間関係はシリアスではない。
これが《ゆるい》の核心であり、かつ《ゆるい》を具現化するストーリーの出口は《非ゼロサムのTrue end》であることが、きらら作品の原理原則なのだ。
他の作品は世界観設定自体が緩いので、これ以上の論証は不要だろう
「非ゼロサム」が解り難ければ「Win-Win」で置き換えても良いし、結果が生じる作品では「予定調和」である。

我々のリアルの日常は仕事、学校での人間関係の葛藤に明け暮れている。
ストレス(精神的疲労)の9割が人間関係という日常であるが、そのようなメンタルで人間関係に波風がない《ゆるい》作品を視聴すると精神的緊張緩和が生じるものだが、この心理状態が「癒し」であり「リラクゼーション」である。
ストレス社会に生きる我々は無意識に《非ゼロサムのTrue end》の「きららワールド」を求めているのであり『のんのんびより』の需要が多いのは分かり易い証左。
逆説的に見れば『はねバド!』のように人間関係が辛辣な作品は必ず賛否両論が生じるし、きららワールド的安全安心のヌースで進行していた『ヤマノススメ3期』でのギスギスに違和感を覚えるのである。

日常で散在味わっている人間関係のストレスを、楽しみや息抜きで観るアニメで態々味わいたくないのは当然の心理であろうし、精神衛生に悪いバッドエンドもまた然りである。
しかし、それゆえの固有のデメリットも生じる。
非ゼロサムのTrue endが約束されているため、安定感があり、賛否偏差振幅が少なく極端なアンチも生じない代償として、物語も平坦であることゆえ佳作にはなるが、絶賛される作品もまた生まれ難いことにある。

きららワールドの安定感に加えて「②」の王道テンプレが本作では加わる。
この点についてはまず、きらら作品を除いて説明しよう。
「②」で成功した最も有名な作品が『ガルパン』だ。
「戦車道」なるフィクションを用いて、部活で戦車戦というぶっ飛んだ設定とそれをJKがやるという異様さが話題となり、戦車戦の派手なアクションとギミックが効いたギャグが相乗し大ヒットしたのは誰しもが認める事実だろう。
『ガルパン』に限らず『よりもい』もまたJKと南極というぶっ飛んだ設定だ。
JKをファンタジー設定とした『亜人ちゃんは語りたい』も変わり種だが、男性教師のハーレムが無ければ、内容的にはきららで連載されていてもおかしくない空気感がある作品だ。
それぞれの作品については、当該作品のレビューで行うが、元来JKとActivity(どんな?)は潜在需要が高く、更に上記三作品のように設定の工夫次第では相当の需要が掘り起こせるのである。

では、きららワールドではどうか。
JS(女子小学生)JC(女子中学生)設定、JK日常、社会人の『NEW GAME!』、異世界の『うらら迷路帖』などの一部の例外を除き「②」である。
つまり、きららワールド+「②」はマーケティング的合理においても一定の読者層や視聴層を満たすことからベーシックであることが分かる。
しかし、前述したように平均点は可能であっても、高みは望めない。
つまり、きらら作品の枠を超えての評価は「②」のJK設定かActivity内容に大きな工夫が必要となる。
しかし、前述した『ガルパン』や『よりもい』ではきららワールドが成立しないジレンマが生じる。

「空気感」の分析は終えたので、世代別設定を考えてみる。
JS以下ではロリ色が強くなりその方面で熱狂的ファンもいるかもしれないが、マクロ的にはロリアンチとの差し引きを考えると赤字ではなかろうか。
きらら作品にはエロ要素は少ないが、所謂「百合」を連想させる作品は多い。
百合はネタとして成立しても、一般的には正常とは言い難い状態であり、かつ、幼女同士でそれを連想させるバックグラウンドに対し、ロリのイメージにネガティブな社会的合意の下ではではどうしても、マーケティング的リスクとなる。

ひとこと、言わせてもらえば『苺ましまろ』はJSの日常コメディであってロリを強調した作品ではないし、アニメ化にあたっては原作では飲酒喫煙JK設定の「伸恵」をJD(女子大学、短大生)設定に改変する批判かわしまでやっているが、妹達JSの設定にいちゃもんとしか思えない批判があったのだ。
その背景には、妹達を性対象とした二次創作の氾濫、児ポの規制を巡り議論が活性化しつつあった当時の社会情勢、一部のファンの常軌を逸脱した行動など種々に絡みあった複合要因がそういうレッテルを作り上げたものである。
社会的合意とは、情報リテラシーの貧困に付け入った感情的煽りも大きくて作用しており、さして厳密な根拠で成り立っているものではないのだが、あくまで否定する者が多数派か否かの相違だが、マーケティングでは決して無視は出来ないのだ。

次にJC設定。
これは、きららでは『ゆるゆり』がそうだし、『この美術部には問題がある!』のように他のレーベルでも中心素材として存在することから社会的には受け容れられてはいると思う。
しかし、創作のキャパシティや世間の認知度から考えると『月がきれい』のように思春期が芽生えるJC世代を描く特殊条件でもない限り、JK設定の方がより設定の範囲を広く出来るメリットがあり汎用性が高い。

最後に、社会人お仕事設定の『NEW GAME!』の成功は、主人公がハイティーンの未成年であることと、原作のポテンシャルを上手に引き出した動画工房の制作スキルに因るところが大きく、きらら作品としては異例と考えるべきだ。

ゆえに、JK設定は最大公約数的に受け容れられるポテンシャルが高いと結論出来る。

よって

《異性関係が外形的なストイック(禁欲)かつ、非現実な平和過ぎる人間関係の空間とJK-Activityのアコード》

が、きららワールドの基幹的王道となる。{/netabare}

2<きららワールドからステップアップ>{netabare}
本作が基幹的王道を保ちながら、従来のきらら作品の中では卓越した評価を得た理由を2方向に絞り分析をしてみる。
その際に重要な尺度となる作品が『ヤヤマノススメ』である。
折しも、本作の監督は『ヤヤマノススメ2期』で演出を担当している。
ここでは本作と『ヤヤマノススメ』を対比する形式で考察してみる。
①主人公の設定
(1)性格
ブリックス=マイヤーズ分類をファンダメンタルとして考察する。
パラメーターとはキャラ性格と近似する分類の参考併記である。
a.『ヤヤマノススメ』
「あおい」(主人公)パラメーターISTP
性格は内向的ネガティブ指向。対人関心は希薄。コミュニケーションを拒否しているのではなく、コミュニケーション表現に自信が持てず他人との距離感をつめられない。人間関係のスキル不足で他人との距離感の在り方を間違えることがあり不器用である。
女子力は高いし、ここで紹介する4名のキャラの中では最も女の子らしい。
「かえで」や「ここな」とは普通に付き合えることから、コミュ障というよりはコミュ力(りょく)スキル不足と言える。
(ひなたとはお互いの人的距離感の認識違いが摩擦の原因となった。)
傍目では冷静に見えるが、スイッチが入ると危険を顧みず頑張る傾向にある。
(富士山登頂の失敗はあおいの性格に起因する。)

「ひなた」(準主人公)パラメーターESTP
あおいの幼馴染みで親友であるが、時折あおいを弄りの対象としている。
性格は外向的ポジティブ指向。対人関心は高い。行動的で社交的であり、他者とも円滑な人間関係をを築き、観察力も鋭い。反面、負けず嫌いで独占欲が強い。
この作品の1期第1話で、ひなたのことを忘れていたあおいに声をかけている。
おそらく、ひなたはあおいに対しては精神的優越を抱いていると思う。
あおいは自分の性格に起因するコンプレックスから、ひなたに依存しつつも常に自立を目指しているが、ひなたは内心あおいの自立を歓迎していない。あおいへの独占欲が強いのであり、実際はひなたがあおいに依存しているのだ。
これは『よりもい』の「キマリ」をあおいに「めぐみ」をひなたと置き換えるとイメージし易い。
これが、ひなたとあおいに生じていた距離感齟齬の根本原因で、実際はあおい→ひなたの距離感より、ひなた→あおいの距離感の方が近いのである。

b.「a」の総括
「あおい」と「ひなた」は自他共に認める親友であり特別な関係だ。
互いの距離感は他の登場キャラよりも遙かに濃密である。
『ヤヤマノススメ』では「あおい」を主人公、「ひなた」を準主人公とし、お互いの行動や言動がお互いの行動を規定し合う《因果的人間関係》を柱に物語が動く。
確かに2期までは「空気感」が溢れた構成で、きららワールド的雰囲気を醸していたが、きららワールドと、きららワールド【的】は違う。
ゆえに「空気感」に束縛されず、自由自在なシナリオで因果的人間関係をシリアルに描写した展開も可能なのだ。
これ以上書くと『ヤヤマノススメ』にレビューする内容がなくなるので一応シメ。

c.『本作』
「りん」(主人公)パラメーターINTJ
性格は内向的ポジティブ指向。対人関心は希薄。洞察力は鋭い。
彼女の性格を一言でいうならホワイトナルシストだ。
要は、他人との関わりよりも自分のスケジュールを優先するタイプであり、コミュニケーション能力は普通にあるが、それを人間関係の向上に用いるのではなく、自分の行動原理を貫くことに用いる為に、他人に誤解をされ易い。
ソロキャンを好むのは、仲間に振り回されたり、気遣うことなくマイペースでキャンプを満喫する自分スタイルが確立されている為であり、仲間の存在そのものを否定したり排除をしたりする意図ではない。
ただ、人間関係においては遠からず近からずの距離感をキープするのは彼女の「哲学」であり、それを浸食する行為には激しく拒否感を示す。
彼女の数少ない友人「恵那」は彼女の哲学の良き理解者であり、距離感の取り方を心得ているから親密な関係となれたのであろう。
また、彼女と「あおい」の「内向性」における決定的な相違は、自我が自立しているか否かである。
彼女の内向性は「哲学」を通すための必要条件である故にポジティブなのだ。
「あおい」には「理想」はあっても「哲学」はないから、性格の素のままに内向的である。
そして彼女の絶妙なキャラ設定こそが、きららワールドを維持しながら本作をステップアップさせた原動力でもある。

「なでしこ」(主人公)パラメーターESFP
性格は外向的ポジティブ指向。対人関心は高い。他人への配慮が出来る反面、他人の評価を気にするデリケートな面がある。
キャンプ飯では女子力の高さも披露した。
彼女は、今を存分にエンジョイすることに人生意義を感じ、誰とでも分け隔てのないコミュニケーションが取れる長所を生かし、その楽しさ自分のみならず周囲にもワクワクを分けることが出来るパワフルな性格である。
しかし、時としてハイテンションが裏目に出て周囲がついていけず疲労感を与える傾向がある。
洞察力が鋭い「りん」が彼女を避けるのは、この部分を自分にとって一番受け容れ難いことと判断しているのかもしれない。
また、彼女は、「りん」の用意周到で計画的な性格とは真逆の、直感を信じて取り敢えず行動を起こすタイプだ。
しかし、のほほんとしているようだが、実は意外とナイーブなのである。
一見、そのゆるい性格が『けいおん!」の「唯」と似ているようにも見えるが「唯」ほどアリガタク脳天気な性格ではない。
「りん」をグルキャンに何とか引き入れようと試みるが「りん哲学」の厚い壁に阻まれ避けられる挫折感は、元来陽性の性格が実は傷ついている彼女の内面を覆い隠しているに過ぎないのだ。
しかし、彼女と「りん」の心理的駆け引きが本作に奥行きを与えているのもまた反面の事実である。

d.「c」の総括
さて、上記「b」で《因果的人間関係》を説明したが物語初期の「りん」と「なでしこ」は【知人(友人とまでも言えない顔見知り)】ではあるが、お互いの心の内面まで共有する【親友関係】ではない。
つまり二人は《相関的人間関係》であり「りん」に関して何かと付き合いの多い「恵那」を除き「なでしこ」「千明」「あおい」の野クル部員との距離感は全て等しく保っている。
なお、きららワールドでは各キャラクターの距離感は『ヤマノススメ』のような親友設定はほとんどない。
その理由として、一部のキャラに濃密な人間関係を設定し「ゆるふあ」だけで物語を進めて行くと、どうしても視聴者が現実的矛盾を感じてしまい、物語そのものに醒めてしまう二律背反が生じる。
この解決方法の一つが、各キャラ間の人間関係の設定を希釈化させることでシリアス回がなくても物語が進行するトリックを用いている。
『ヤマノススメ』は親友キャラ設定があるので、シリアスシーンを挿入しないといずれは現実的矛盾に突き当たり、物語の進行が八方塞がりになったかもしれない。
よって、あえて3期は現実的矛盾回収期としたのだろうが、今後4期、5期と続けるのならば合理的な判断だった思う。

本作の人間関係はシリアスシーンを回避するきららワールド設定であるから、平坦な物語であり「きらら需要層」向け満足作品であったはずなのだが、従前のきららファンのみならず多くのアニメファンを魅了した。
命題「①主人公の設定」の解は、実は既に「りん」と「なでしこ」の横に記述してある「主人公」。

そう《W主人公》設定にある。
しかし、それだけではなくW主人公を使い熟している。

本作は、二人の主人公が一話で複数の平行ドラマを奏でる重層構造であることにお気付きだろうか。
「なでしこ」と「他のキャラの会話劇」と、「りん」は「モノローグ(独白)劇」の二本立てとし、きららワールドのお約束「相関的人間関係」の設定制約を逆手にとり「因果的人間関係」では実質不可能な主人公の使い分け、物語の進行に平行と交差のミックスアレンジを行うことでシリアス回を回避し、かつ、物語全体に深みとイナミック感を醸し出した。
なお、これを達成し得たのはW主人公の物語構成のみではなく「りん」CV東山さんの演技力、そしてトリックスターとしての「恵那」の絶妙なキャラ設定、このすべて調和したからこそ成し得た偉業である。
「恵那」のキャラが本作のトリックスターであることが明確となったのは10話である。
この話は「恵那」がグルキャンに参加するとのLINEのやり取りで始まる「りん哲学」変節の伏線回だが、物語後半ギリギリまで「恵那」の真の役割を明かさなかったのは本当に見事な構成だ。
更に、10話の伏線を成立させるために、登場キャラによる群像劇と平行して「りん」との距離感を詰める「なでしこ」のボディタッチ効果(心理学用語:他人との心理的距離を徐々に詰める概念や技法。実際にやると牢屋に行くことになるので絶対にやらないこと。)に話数を使い丁寧に描写し10話に至るまでの伏線の伏線とした重層構造が「りん」のグルキャン参加が自然な状況で収束する、Win-Winで終わるドラマチックな"True end"を完成させることが出来たのだ。
まさに、きららワールドの呪縛であった『けいおん!』的展開から、一段高みに導いたお見事の表現に尽きる匠の演出であり、勝利である。{/netabare}

3<きららワールドと成功方程式>{netabare}
既に「1」で
《異性関係が外形的なストイックかつ、非現実な平和過ぎる人間関係の空間とJKActivityのアコード》
が、成功の前提条件であることは論証したが、あくまで成功の確率が上がるという意味であり、成功するには"Activity"の設定にも工夫が必要である。
しかし、意表を突くにしても、きららワールドには《非ゼロサムTrue end》の原則があり『ガルパン』のようなハードバトルや、『シュタゲ』のような伏線回収が複雑な凝ったSF設定をきららワールドを適用するのはあまりにハードルが高すぎるし、苦労の割に結果が伴うとも思えない。
メカはどうだろう?
きらら作品から離れて、JKとサイドカーレースを組み合わせた『つうかあ』で考えると、設定の意外性は確かにあるが、勝負事と非ゼロサムTrue endの整合は難しいし、失敗リスクの方が高い。
メカと勝負のコンビはやはり、きららワールドから離れたシリアス性を出さないと、浮き世離れした中途半端なモノにしかならない。
また、JKとバイクの『ばくおん!!』も意外性があり、ツーリング群像劇のコンセプトは「ゼロサムTrue end」を満たしているが、機械であるメカは冷たいイメージもあり、温もりや優しさが成分の「ゆるさ」とは相性が良くなく、この作品も成功したとは言い難い。
そこから消去法で考えると、魔法や異能力ようなファンタジー、部活やクラスメート同士の日常コメディがどうしてもベーシックスタイルとなるし、また、実際、アニメ化されたきらら作品のほとんどはそうである。

しかし、JKと意外性の組み合わせで成功している作品もある。
本レビューで何度も引き合いに出している『ヤマノススメ』だ。
私が何度も『ヤマノススメ』を引き合いに出しているのは、この作品と本作には共通点が多く存在しているからでもある。
メカは冷たいイメージに対して、自然は優しいイメージである。
そして「意外性」とは、突拍子もない組み合わせのみではなく、所謂「ニッチ(少数派)」も含まれる。
『ヤマノススメ』1期のとき、JKと登山は十分に意表を突いた。
「ニッチ」と「自然」、これこそが、きららワールドにも十分適応する要素であり、事実、きららワールド的な作風であった『ヤマノススメ』特に2期の人気は高い。
本作においても、冬キャンプというニッチ市場とJKの組み合わせは意表を突いており、その意外性だけで、従前のきらら固定ファン層以外も視聴意欲をそそられたと思うし、マーケティング上はまず、話題性こそも成功の諸端なのである。
更に、本作では自然の優しさに加え「2」で分析したように、きらら作品の中でも『けいおん!』以来の秀逸な構成と演出である。

本作の優秀さのロジックは、もう十分に御理解頂けたと思う。{/netabare}

4<部門別評価>{netabare}
①物語
既に説明のとおり、本作はきららワールドという足枷があったにも関わらず、シナリオ、構成、演出、内容のどれをとっても優秀である。
しかし、冬キャンプのロマンを前面に押し出した結果、リスクの説明が殆どなされていないなど、課題点も残している。
製作企画段階で人気が出た場合の「聖地巡礼」対策にはキャンプモラルのみならず、凍傷や最悪の場合は凍死リスクがあることも視聴者に注意喚起すべきである。

ゆえに、
★★★★★★★★★☆4.5
(★は一個0.5点)


物語の評価基準は特に設けていないが、TV版では『エルフェンリート』『魔法少女まどか☆マギカ』が満点レベルの代表作である。
更に、評価では何度でも視聴する気にさせる再現性感覚も付加される。

②キャラ
「りん」「なでしこ」「恵那」は前述の説明のとおり。
「恵那」で特筆するのは、人格を固定したトリックスターの設定は高等技法であることだ。
例を上げれば『シュタゲ』の「桐生萌郁」もトリックスターだが、固定人格を設定していないし、通常、トリックスターはそういう設定をするのだ。
野クル仲間の「千明」と「犬山あおい」(『ヤマノススメ』の「あおい」と混同するので苗字も掲載)は「なでしこ」と「りん」の非対称を示す上で結構重要なキャラであり、二人の主人公の一人「なでしこ」側の物語展開ではしっかりとキャラ設定の役割を果たしているし、物語の緩急をつけるギャグキャラとしても、酒乱がばれて部員達に弄られボケ役を務めた顧問教師「美波」とともに物語の底上げに貢献している。
減点要因としては、きららワールドである故に、各キャラが良い人過ぎる、あまりにも非現実的な設定で苦笑いが生じた点と、「千明」と「犬山あおい」のキャラ立てでキャラの差別化を図るために少し無理をしていること。

ゆえに、
★★★★★★★★☆☆4.0
(★は一個0.5点)

③声優
本項は極めて主観が生じる項目であり、余程のミスキャストがない限り3評価とし、特筆すべき点や、減点するに値する演技があればそれぞれ加減修正している。
「りん」CVの東山奈央さんは「モノローグ」という困難な演技と、性格的に難しいキャラの魅力を最大限に引き出したのは5点評価に値する。
「なでしこ」は性格分類でも述べているが、人懐っこさとその内面に潜むナイーブな感性だがCV花守ゆみりさんは概ね、そつなくこなしたと思う。
しかし「なでしこ」の性格を完全に理解していたかというと疑問がある。
「なでしこ」役になりきるにはハイテンションの中に一瞬垣間見る不安な心理を織り交ぜる程度の技量が必要だ。
「犬山あおい」CVの豊崎愛生は『けいおん!』の主役「唯」役を務めたベテランだが、流石に関西弁はM・A・Oさんや『咲全国編』の愛宕洋榎、『若おかみは小学生!』ウリ坊CV松田颯水さんのようなネイティブと比べると作為的な印象で胡散臭かった。

ゆえに、
★★★★★★★★☆☆4.0{/netabare}

5<あとがき>{netabare}
きららワールドの構造分析は『けいおん!』以来からの個人的懸案であり、今回、本作の成功と合わせて行った。
その目的達成のため『ヤマノススメ』から数多くの引用をしたが、本レビューにおいての『ヤマノススメ』は比較検討素材の範囲での活用であり、作品の質そのものを比較したものではないことを特記しておく。

今後のきらら原作作品は、本作をベンチマーク、今回の分析を柱にレビューと評価をすることとなる。
きらら原作作品の次回レビュー予定は『はるかなレシーブ』。{/netabare}

【作画】{netabare}
上記【視聴環境に関する特記】記載のとおり、220インチプロジェクターで視聴した作品であるが、これだけの大画面となると作画が余程しっかりしていないと視聴に耐えられない。
正直、本作を制作したC-Stationは元請け作品の実績が殆どなく、私も作画力に対する見識もなかったため、第1話が始まるまで不安であった。
フルHD配信作品でも、ここまで大画面となると通常はカバーされる作画の粗やバースや色彩異常があると誤魔化しが効かず、30インチ程度のテレビで視聴するような訳にはいかないのである。
しかし、本作は220インチプロジェクターでも破綻することは一切なく富士山麓周辺や長野の美しいロケーションを映し出した。
この事実だけで、作画のクオリティーは高いと結論できる。
背景、美術が220インチでも十分に映えたのは、京アニやPAワークスに見られる緻密で写実的な背景画風というより、印象派に近い画風であったことが粗を抑える効果とともに本作特有の世界観をより美しく表現されたものと思う。
我が国の自然、特に本州の自然は雄大さや、ダイナミックさを追うよりも繊細な美麗さがしっかりと表現された方が視覚的印象に近いだろう。
背景を担当した制作会社を調べてみると、プロダクション・アイという背景専門の制作スタジオで、なんと1970年から一貫して多数の作品の背景美術を制作しているのだ。
『科学忍者隊ガッチャマン』以来のベテランの老舗であると同時に『劇場版Fate / stay night』の背景美術も担当している。
我が国アニメの背景美術にありがちな、制作費の都合に因る支那スタジオへの外注ではなく「メイドインジャパン」のクオリティを遺憾なく発揮しており流石であると同時に、制作費も十分確保して高クオリティーを図った作品でもあったのだ。

更に特筆すべきはプロップとメカニカルの精密描写である。
本作は、銃や兵器が登場する作品同様、キャンプ道具などにプロップ、メカデザイン専任のアニメーターを置き、キャラ以外の描写にも拘りを見せている。
背景美術とキャラのブランケット衣装やキャンプ用品プロップなどは、キャラ以上に本作の世界観を演出するとても重要なポジションだ。
『ヤマノススメ』の演技経験がある京極監督は本作が初監督だが、監督を始め制作スタッフが本作制作にあたり実際にキャンプ体験をするなど、プロ意識もさることながら気合いも入っており、そして制作スタッフの実体験は確実に作品に反映した。

また、本作は米国での視聴だったが、米国は我が国よりもアウトドアが盛んである。
220インチ視聴はアニメ好きなアメリカ人や他の外国人スタッフとの共同鑑賞だが、プロップ描写には多くの外国人が絶賛していたことと、富士山周辺の背景美術に魅了され、実際、来日未経験のイスラエルやアルゼンチンの企業から米国に赴任していた当時の同僚が来日して、富士山周辺でキャンプをしている。
それほど、本作の背景美術とキャンプ用品描写は日本人のみならず、外国人のエモーションにも響いたのである。

キャンプはニッチ市場であるゆえに『けいおん!』のような大規模な社会現象に至るまでではないが、それでも本作視聴を契機にアウトドアを始めたインドア層がいるようである。
アニメの影響力は侮れないねw
作画は良し悪しも大切だが、それ以上に視聴者の心に訴えてこそ作品に魂が宿っている「本物」だろうと、本作で実感した次第であるし、アニメの本領「動き」以外の背景美術やプロップ描写でこれだけの評価をした稀有な作品でもある。
無論、キャラ作画においても不安定感はないし「りん」の無表情と「なでしこ」のオーバーな表情演出は二人の性格の相違を視覚的に表現したものであり、先の分析においても十分に納得がいく。
ただし、キャンプ飯の作画の出来は悪くはないが、もう一歩であった。
しかし、本作のコンセプトで料理アニメの『食戟のソーマ』や『異世界居酒屋「のぶ」』並のクオリティを求めるのは流石に酷であろうし、料理描写は及ばなくても、それをフォローする背景美術が秀逸であり、大自然のなかで美味しくいただく雰囲気は良く表現されていたことから、今回は減点の対象とはしない。

ゆえに
★★★★★★★★★☆4.5


作画に関してはプロフ記載のとおり明確な基準を設けている。
『劇場版 響け! ユーフォニアム(シリーズ)』、TV版『進撃の巨人』(2013)劇場版も含むが「5」。左記作品並みか超える高水準でない限り「5」の評価はない。
以下、減点方式。更に、作品の世界観とのマッチングも加点減点の対象とする。{/netabare}

【音楽】{netabare}
まず、特筆するのはED曲の『ふゆびより』である。
本作のゆるさと冬キャンプを巧みに表現した秀逸な歌詞とアコースティック中心のメロディは、音の解像度がシビアなBOSEサラウンドでは、普通に聴くよりもよりクリアに再現されるのだ。十分に合格ラインだろうし、名曲でもある。
OP曲『SHINY DAYS』は逆にBOSEサラウンドと相性が悪いのかインピーダンスが雑に再生されてしまった。
曲自体は冬キャンプへ向かうワクワク感が十分に表現され、OP演出としては良いと思う。
また、この二曲だけでも十分にBGMとして機能しているが、何とも言えない虚無感と郷愁を誘う劇伴も秀逸であることも特筆に値する。

ゆえに
★★★★★★★★☆☆4.0{/netabare}

【結び】
本作は、国外、国内を問わずに多くの方々に勧めることが出来る。

投稿 : 2024/04/20
♥ : 101
ネタバレ

shino さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

アーユーハングリー!?

きららフォワード連載、
女子×アウトドアの日常系ストーリー。

山梨県近郊を舞台として、
女子高生たちがアウトドア生活を送る様を、
緩やかに描いています。

焚火をして、お鍋をして、
満点の星空を眺め、友達と夜更かしをする。
サイクリング、ソロキャンプも楽しそうだ。
街の喧騒を離れ、気忙しい毎日を忘れ、
日頃の疲れを癒してくれるのでしょう。
主題歌が爽快で素敵な楽曲ですね。

冬キャンプは空気が澄んでいるので、
景色が遠くまで綺麗に見えるのです。
賑やかな夏も好きだけど落ち着いた冬もいい。
{netabare}夜の富士を背景に鍋料理と、
この作品、美味しそうなご飯がやばい。{/netabare}

泰然自若と生きる、なんて素敵な時間でしょう。

最終話視聴追記。
彼女たちと旅を楽しむ緩やかな時間、
時間とは相対的なものなのでしょう。
{netabare}日常のすぐ隣にある癒しの世界で、
少しだけ生き方を変えてみようか、
立ち止まってもいいじゃないかと励まされる。{/netabare}

秋の紅葉、雪景色、満点の星、
どんな言葉より、一杯の珈琲には敵うまい。

投稿 : 2024/04/20
♥ : 131

67.9 2 まんがタイムきららフォワードで漫画原作なアニメランキング2位
あんハピ♪(TVアニメ動画)

2016年春アニメ
★★★★☆ 3.6 (515)
2373人が棚に入れました
不幸を背負った生徒ばかりが集められた高校のクラス・天之御船学園1年7組を舞台に展開されるアンハッピーなスクールコメディ。悲恋のヒバリ、不運のはなこ、不健康のぼたんら不憫な生徒たちが、幸福になるため特殊な高校生活に奮闘する姿を描く。

声優・キャラクター
花守ゆみり、白石晴香、安野希世乃、山村響、吉岡茉祐、原由実、森永千才

TAKARU1996 さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

日常系アニメから観る幸福心理学~「共同体感覚」形成に至るまでの物語~

2016年6月24日 記載
今回のレビューは少し専門的な話についての主張が目立つかと思います。
予めご了承ください……





突然ですが、今まで私はアニメを観て元気づけられるという考えには些か懐疑的な人間でした。
それは私自身が作品に対しての感受性が強すぎるきらいがあるというのが主な原因です。
観ている最中は現実逃避の作用も存分に含んでいるせいか、確かに楽しい面持ちでいつも観る事が出来ます。
しかし、それによって元気をもらえるかと言えばそれはまた別の話
キャラクターの言動から何か大切な考えを手に入れたり、観ている最中に楽しさを頂戴したりする事はあれど、「元気」という物を貰った作品には今まであまり出会った事がなかったかもしれません。
寧ろ、あまりにも面白かったり作中の世界観が美しかったりすると、逆に現実の方が嫌になる事の方が多いんですよね。
そんな時は自らの割り切って観る事が出来ない不器用さを恨んだ物
こういった苦悩を一身に背負っていたせいか、アニメによって元気づけられたという他者からの感想は実の所、話半分で聞いてた節も今までありました。
そんな救いようのない私ですが、しかし今回、そんな救いようのない私の持つ考えを少しばかり解き解してくれたアニメが出てきたのでかなり驚いています。
この2016年春アニメにおいて1回目の精神革命
このアニメを観た後では、そう口にしていた友人の想いも分かってしまうというまさに優れ物
「元気」という精神安定剤を処方してくれたこの作品には本当に日々の生活を助けられたと、今になって感じるのは多分、気のせいではないでしょう。
という訳で、今回はそんな、ある意味で私を救ってくれたアニメ『あんハピ♪』についてレビューしていきたいと思います。
長々と駄文を書いていきますが、心優しい方はどうかお付き合いください。




【あらすじ】
負の業=不幸を背負った人間というのは一定数存在するのがこの世界
上手くいかない事ばかり、何をやってもドジばかりの恵まれない人生を送る人々というのは数限りなく存在する物
そんな人々の中でも、不幸に関しては右に出る者はいないと豪語できるような生徒達が名門校であるここ、天之御船学園1年7組に集められました。
中でも異彩を放っているのはこの5人
花小泉杏…この世の全てに運が無い、動物好きのポジティブガール
雲雀ヶ丘瑠璃…対物性愛のパラフィリア、オジギビトに恋する花の女子高生
久米川牡丹…虚弱体質ここに極まれり、ネガティブ1人救命病棟
萩生響…方向音痴で1番を狙え! 負けず嫌いで目立ちたがり屋の騒がし乙女
江古田蓮…女性なのに「女難」の相? 面倒臭がりお気楽寝坊助天然素材
彼女らは担任である小平先生の提案で、「幸福」(しあわせ)になる為の高校生活を送っていきます。
果たして5人はこの学園で幸福の路に至れるのでしょうか…?




【第1部】
ではここからレビューに入っていきたいと思いますが、今回は少し変則的なやり方で記述していきたいと思います。
というのも今回のは前回までのよりも遥かに分量が多くなりそうだと言う事を察した為で、従来の書き方では見ている人も混乱するだろうと思ったからです。
なので、このレビューは第1部にこのアニメの内容について感じた事、考えた事、想った事を記した感想、考察を書き、第2部に全体の総括も含めた私個人がこのアニメ自体に対して感じた事を書くという、2部構成にしてみました。
「よく分からない変な奴の戯言なんていらねえよ」という人は前半だけ。
「考察とか日常アニメなのに馬鹿じゃねえ?」という人は後半だけでも充分でございます。
読んで下さるだけで、私としてはお礼して一軒一軒参りたい位に大変ありがたい。
初めての試みではありますが、何卒よろしくお願いします。

さて、アニメが始まる前の私にとって『あんハピ♪』という作品自体はまんがタイムきららのCMで見かけてた程度の認識だったのですが、いざ観てみるととても面白い。
「不幸属性」なんて言葉も随分と浸透した世の中になりましたが、その要素を日常系に織り交ぜた作品というのはよくありそうで実の所、あまり見かけないように感じます(まあ、その方面には聡くないので私が知らないだけかもしれませんが……)
そして何より、この作品が凄い所は決して「不幸」をストーリーにとってつけた適当な要素にはしていない所です(詳細は後述)
原作者の琴慈先生は新進気鋭の女性漫画家さんで、高校生の時分に月刊Gファンタジーからデビューしたそうですが、この作品を書くにあたって心理学でも勉強したのでしょうか?
専門書を参考にしたのか、それともたまたまなのかは分かりませんが、観ていると随所にこれは……と感じる部分がいくつも出てきて、本当にこれが日常系アニメかと驚いたのが記憶に新しいです。
その驚いた部分も含めて、ここからは私の感銘を受けていった所、「不幸」をストーリーに上手く組み込んでいると思えた所を紹介していきましょう。


(1)花小泉杏は間違いなくアドラー心理学(個人心理学)の体現者
私が『あんハピ♪』の中で最も衝撃を受けたのは、主人公であり生粋の癒しキャラでもある花小泉杏、通称ハナコの言動、行動の全てです。
この娘の凄さというのは1話を観ただけだとふーん、そうか……位の感覚にしかならないのですが、今作の凄い所は2話、3話と話数を追っていく内にハナコは凄いと自然に思わせてくれる所
私はこのアニメを観ていく内、彼女の生きていく力という物を日に日に感じていった次第です。
(1)ではそんな愛すべき主人公の魅力について存分に語っていきましょう。

時に、人間というのは思うようにいかない事や失敗、不運が積もっていく日々を過ごす内、自然と2つのグループに分かれる物だと私は常々考えていました。
①嫌な事が積もり積もっていく内に、無気力状態、不安が続き、下手したら鬱状態になる人々=ネガティブグループ
②逆境にめげず、一念発起、心機一転、頑張ろうと前向きに捉えられる人々=ポジティブグループ
ハナコの凄い所はこの2つのグループに属さない類稀なタイプだと言う事
観ている人からすれば「ポジティブグループ」に属するのではないか?と疑問に思う所かもしれません。
上記のあらすじでもハナコの事をポジティブガールと評したので、その疑問に思う感覚は正しいでしょう。
ただ、正確に言うとこの表現は少しだけ間違っているんです。
他に表現しようがなかったので妥協して「ポジティブ」という言葉を使いましたが、私が思うに、この娘は「ポジティブ」という概念を大きく飛び越えています。
なぜなら、ハナコにはそんな大層な頑張ろうという意志なんて持ち合わせてすらいないからです。
ポジティブな人というのは不運に陥った時、それを乗り越えて頑張ろうとする前向きなタイプの人間だというのは上記で書きました。
しかし、こういったタイプの人であっても不運に遭った事自体を肯定するというのはなかなか出来る事ではなく、だからこそ不運な場面を踏み台にして次こそは……とそれを反動力にして前に進んでいくのです。
そこに「頑張り」という努力が見え隠れしているのはお察しの通り
しかし、ハナコは少し違います。
彼女にとって毎日の不運はただ日々を楽しく彩る為の調味料であって、乗り越えるための踏み台ではないんです。
たとえ嫌な事があったとしても、毎日を面白く生きる事はハナコにとって努力する事でも一念発起する事でもない、全く苦にならない試練に過ぎず、そこには日常を楽しくするための努力や訓練や修行なんて入る訳もない。
客観的に見たら不運な生活を送っていると思われる彼女でも楽しく生きるという事は、実になんでもない事なのです。

しかし、ここで1つ疑問がわきます。
何故ハナコはいつも楽しそうなのでしょうか?
彼女のように自分の不運が日々の当たり前になるという事は一般人からしてみれば大変なストレスです。
「なんで自分だけこんな目に……」
「他の人は上手くやれてるのに……」
そう考えてしまうのも人間として致し方ない事
自らの不運を嘆くか、不運の道を歩んでいない他人に対して羨望、嫉妬の視線を向けてしまうのが人間としては当然の事です。
そんな気配を微塵も感じさせないハナコの生き方はどのようにして形成されたのだろう?
そんな事を考えながら観ていった中で、私は1つの答えに辿りつきました。
ハナコは「不運」に遭った事自体を「幸福」だと感じているのではなく、「不運」を受け入れた先にある彼女の解釈が結果、彼女を「幸福」にさせているのだと。

ここで挙げられるのが章の見出しで紹介したアドラー心理学
ジークムント=フロイト、カール=グスタフ=ユングと並ぶ心理学三大巨頭の1人にして、時代の先駆者アルフレッド=アドラー
この心理学はそんな彼が20世紀初頭に提唱し、欧米各国に高く評価されました。
さて、アドラー心理学の特徴として挙げられるのが、人間は誰しも同じ世界に生きておらず、自分で「意味づけ」した世界に生きているという考えです。
同じ経験でも、それ次第で世界に対しての感じ方は変わり、それに対しての行動も変わってくるという理論
「認知論」と端的に表されるそれは、客観的事実よりもその事実に対してどのような意味を与えるかが重要であって、受け取る人によって意味は如何様にも変化するという事です。
ハナコはこの「認知論」を上手く日常生活の中で使って、不運な出来事に良い意味付けを与える事で日々を幸せに生きていると私は解釈しました。
だからこそ、犬を救う為に川へ落ちて結果、手を噛まれたとしても犬が助かった事に幸せを感じるんです。
たとえ頑張って取り組んだ宿題が出来なくてもみんなで一緒に遊べたからよかったと胸を張って豪語できるんです。
そして特に驚いたのが、6話でヒバリの家庭事情について彼女が考えていたのとはまた違った別の意味を教えてあげた事
ハナコがヒバリの考えを180度変えてしまうコペルニクス的転回を行った、いわゆる「認知論」の発展形を行ったシーン
未視聴組の方も見ているかもしれないので詳しくは書きませんが、さらっと交わされたあの会話に私は彼女の凄さが隠れていると感じました。
ここまでの考えを総括するなら花小泉杏は「不運」ではあっても「不幸」ではない。
だからこそ、このアニメの名前は『あんハピ♪』
UNHAPPYでもANNE HAPPYの語呂合わせが成り立つのでしょう。

そのような生き方をしているハナコの考えを基にこのアニメのPVを振り返ってみると……
最後で彼女が口にする「私はすっごくついてるよ!!」という言葉
とても力強い台詞なんですよね。
自らの辿ってきた道を全肯定しているハナコだからこそ言える発言
花小泉杏という1人の少女の性格を端的に象徴した、とても想いの入った口上とも言えるでしょう。
もし未視聴組の皆さんがこのレビューを見ているのなら予め忠告しておきます。
このハナコの発言をしっかりとよく覚えていてください。
私のつたない文では何とも彼女の凄さというのは分かりにくいかもしれませんが、明文化できなくとも観ていく内にきっと、分かってくるかと思います。
どんな想いで、この言葉を声に出していたのか……
どのような信念でもって、彼女が日々を生きているのか……
それを想像した結果、この花小泉杏という女の子は私にとって最も魅力的なキャラになりました。
分かっていてもなかなかできる事じゃないその生き方を私はこれからも尊敬していきたいと思います。


(2)雲雀ヶ丘瑠璃は「現実的」人物の代表
(1)で紹介したハナコと対極的な人物だと私が考えているのが、工事現場の看板、オジギビトに恋する雲雀ヶ丘瑠璃その人です。
ハナコといつも一緒にいる仲良しの女の子
よくキャラクター同士の会話中で対比されることが多いこの2人ですが、私にはそれすらももしかして作者的に意味があった事なのかもしれないと深読みしてしまいます。
(2)ではそんな苦労人の彼女である雲雀ヶ丘瑠璃、通称ヒバリについて書いていきましょう。

ハナコがあのような性格で人生を渡ってきたのだとしたら、1番不幸と言える境遇を歩んできたのはヒバリだと考えるのが妥当かもしれません。
ふと思い返して観てみると、このアニメは第1話時点でこの娘の歩んできた境遇というのを私達が自然と察せる作りになっています。
特異体質故の他の人とは違うという苦悩
自分が人間としてどこか欠陥を抱えているんじゃないかという不安
最初の頃はそれらが凝縮したような性格だったと、今にして思えば懐かしく感じてしまいます。
そう、彼女が歩んできた過去を踏まえてみると、この『あんハピ♪』という作品は決して「世界」その物が優しいという訳ではないのです。
個人的に思う、他の日常系アニメとこのアニメが根本的に違う箇所は、世界が圧倒的なまでに「現実的」な所
途中の話で起こったりする笑えないハプニングもそれを暗に示していると言えるでしょう。
物事は楽しい事ばかりじゃない。
外の世界には苦しい事や辛い事、怖い事も無数に存在している。
アニメ自体は敢えて意図的にぼかしている部分も多いので、私達が気に病んだり深く考えたりする事などはあまり多くありません。
しかしもし「圧倒的なまでの現実」という面において、私達の世界と『あんハピ♪』の世界がそんなに違わないと言えるのだとしたら……
もしかすると、そういった道のりを真っ正直に歩んできた雲雀ヶ丘瑠璃という少女は視聴者側にとっては最も近い存在と言えるのかもしれません。
しかし、前述しましたが、このアニメはそんな「圧倒的なまでの現実」を示すにふさわしいであろう、ヒバリの過去についてはあまり事細かに描いていない。
あくまでさらっと描写の中に入れるだけ。
どんな出来事が中学時代前の彼女に起こっていたのか?
どのような心無い言葉を浴びせられたのか?
どのようにして彼女は今までの日々を生きてきたのか?
それはあくまで、私達の想像でしか補えないのです。

では何故、そういった描写をあまり直接的に描かないのか?
「幸福」へ至るのが最終目的ならば、「不幸」とは一体どういう物か作中外で痛いほど学んできたヒバリの苦難をはっきり、詳細に見せる事によって、そんな彼女の「成長」という物を描く事も出来たはず。
これはもしかすると、漫画やアニメ制作側の大人の事情が絡んだ結果なのかもしれないので、私の答えが的外れな可能性も無きにしも非ず……と言うかその可能性の方が高いんですが(笑)
私は敢えて別の答えを作中で見出してみる事にしました。
それはヒバリの過去という物自体が既に終わった産物である事を琴慈先生は主張したいのではないかという事
端的に言えば、過去は過去、今は今という所です。
寧ろ、この作品は「今」の描写をしっかりと描く事によって、「過去」に対する彼女の考えを変えるのが狙いなのではないでしょうか?

ここでまた出てくるのがアドラー心理学
著者のアルフレッド=アドラーはひたすら、自身の著書の中で「意味づけ」によって未来は変える事が出来ると主張してきましたが、逆にそれによって過去すらも変える事は可能だと説いていました。
なぜなら、過去も所詮「意味づけ」によって成された記憶が形作った幻想であり、それを思いだす人の「今」が変わる事で昔に対する感情は変化していくとアドラーは考えたからです。
この考えを踏まえると、雲雀ヶ丘瑠璃という不幸な少女をずっと苦しめてきた嫌な過去に折り合いをつける、もしくは別の解釈を与える為に、現在の生活を豊かな物にする事
それによって、彼女が過去に対して抱く想いもまた違った物になるだろうという解釈に落ち着くのです。
これこそ彼女が「幸福」に生きる事が出来るようになる上で最も重要な事
そして、それを成し遂げる為の序章が形成されたのが中盤で行ったお泊り会なのだと私は思います。

その回でハナコとボタンが行った現時点のヒバリに対する肯定
それは単なる慰めによる元気だけでなく、彼女に新たな想いをもたらしたと言えるでしょう。
無理しなくても良いという感情、ここにいても良いという安心、そして現在こそが「幸福」だと言う確信
彼女はこの時、確かに自分の生活を「幸福」だと感じる事が出来たのです。
勿論、これで昔の情景に対する「意味づけ」が変わった訳ではありません。
その収束に至るまでには恐らく、かなりの長い過程が必要となるのは確実
しかし、この先もし、その結果に至る為のきっかけとなった最初の場面を挙げるとするならば、私はここだと思います。
ヒバリは学園に入り、2人の親友が出来て良かったという「幸福」を改めて実感したのかもしれません。
逆に言えば彼女達がいなければ、ヒバリは永久に過去の牢獄に捉われたまま現在を生きていた事でしょう。
これもそれまでのハナコが人知れず与えてきた影響その物がヒバリの中で実を結んだ結果なのか?
解釈次第ではそのように捉える事も出来るかも……?
ただ1つ断言できるのは、このヒバリという少女こそ、他者との関わりの中で最も著しい変化をもたらしてくれる存在と言える事でしょう。
彼女がこの作品の中で歩んでいく精神的成長がとても楽しみです。

主要キャラ5人の中で恐らく最も繊細で、だからこそ、最も苦しい思いをしてきたヒバリ
彼女が真の意味で「幸福」になったその時こそ、『あんハピ♪』という作品は終了の時を迎えるのかもしれません。


(3)鷺宮先生は公正世界信念信奉者
さて、今までアドラー心理学に言及して『あんハピ♪』のキャラを紐解いてみましたが、この作品にそれ以外の心理学的要素を見つけたのは物語も後半の9話に入ってからの事
その回では鷺宮先生という勉学クラスを受け持つ先生が出てきます。
彼女の考えこそ、ズバリ「公正世界仮説」という社会心理学の用語を踏襲した物です。
詳しくはWikipediaでも参照してほしい所ですが、簡単に書くと。
努力した者には報酬が与えられなければならない。
悪事を働いた者は罰せられなければならない。
上記が如く、報われなければいけないという考えに基づいた仮説の事です。
この世はそんな公正な結果が返ってくる「公正世界」であり、そうでなければならないと言うような考えを「公正世界信念」と言います。
よく日本でも「因果応報」「自業自得」「身から出た錆」などといった四字熟語・諺がありますが、これらは全てその信念を支持した物
昔からそのような教えを受けてきた影響か、日本人は特にこの考えを尊重する傾向があると言われています。
さて、そんな当たり前の事のような考えを上手く1つの単語で示したこの仮説ですが、この信仰と呼べるまでの思考は行き過ぎると少し危険な物を孕んでもいるのです。
それは断定的にしか物事を考えられなくなる所
例えば、勉強の成果が発揮されるテストに日頃から真面目に取り組んできた人があまり良い点を取れず報われなかったとします。
人間には緊張も含めたその日のモチベーション等の不確定的要素がいくらでもある為、テストの結果など、どのようにも結果が変わってくる物
少しでも柔軟な思考を持つ人なら、その可能性には易々と行き当たるでしょう。
しかし、公正世界信念に支配された人は「頑張りの努力が足りなかっただけ」「体調管理の努力を怠っただけ」と不確定的要素を簡単に一蹴して、その理由を1つだと断定する事しかしません。
様々な可能性が蠢き合う世界で物事を多極化して考える事が、自分では気付かなくとも、この信念を熱狂的に信仰している人には出来なくなるのです。
また、貧困や差別で何の罪もない人が苦しんでいる場合、この信念を正当化する理由として「その人達には実は苦しむだけの理由があるのだ」と考えます。
本当に何の理由もない人が独裁によって苦しんでいるのではないかという可能性を全面的に遮断するのです。
自分の信念を肯定する、その為だけに……
その他にも、犯罪を犯して捕まった人を「お前は罰せられなければならない」と徹底的に糾弾します。
勿論、犯罪を犯した場合、刑によって罰せられるのは必定であり、当然の事
しかし、そこに至った背景や動機を踏まえた上での柔軟な考えをする事が出来なくなるのがこの考えの欠点でもあるのです。
最近だとネット上で徹底的に糾弾してその人が犯した罪以上の罰を簡単に与えてしまう、行き過ぎた公正世界信念信奉者が数多くいるように思います。
頭の固い人と言うのは意外にこのような志向を持っている人が多い傾向にあるようです。
テストの場合だけならまだいいでしょう。
しかし、他の場合のように困難な問題に対して答えを1つにぶつけてしまうのは、視野を狭めてしまい、間違った物に辿りつく可能性も否めません。
「公正世界信念」によって様々な可能性を考慮し、理性的に、尚且つ柔軟に発想する事が出来なくなる事
これこそがこの考えにおいて最も危険な部分と言えるかもしれません。

話を戻しましょう。
このアニメに出てくる鷺宮先生は自分では自覚していなくとも、行き過ぎ一歩手前の公正世界信念信奉者と言えます。
なぜなら1年7組を
「不幸という注意力不足に甘んじて努力していない、何のとりえもないクラス」
と勝手に結論付け、彼らを他のクラスと比較して下に見ているからです。
確かに勉学クラスや体育クラスと比較してみると、幸福クラスが何故あるのか?という疑問に至るのはある意味、当然の事
このアニメを観ただけでは、視聴者の思いを代弁してくれているようなキャラと勘違いしてしまうのも致し方ないと言えましょう。
しかし、よくよく考えてみると、彼女がここまで幸福クラスを敵視する理由は実の所、アニメだけではあまりはっきりしないのです。
疑問が頭に留まり続けた私はとりあえず原作を買って読んでみる事にしました。
成程、読むととても納得です。
簡単に説明しますと、まず、アニメであまり語られていない設定として幸福クラスと他クラスの関係が挙げられます。
ぶっちゃけて言うと、この学園において幸福クラスは他クラスから酷く見下されているのです(地味に重要)
勉学もスポーツも何一つとりえのない、しかも不運なんていらない属性付きの負け組クラスというレッテルを貼られ続け、辛酸を嘗める思いでいた幸福クラス
しかし、ある時期から彼女達の大躍進が始まったのです。
「遊んでいるだけ」の(ように見える)幸福クラスの生徒が、大学の指定推薦選抜枠を「努力」しているはずの通常クラスから奪ったという事実
2年の秋以降になると、何故か幸福クラスから勉学・体育クラスを差し置いて学年トップクラスの生徒が何人も現れだしたという結果
このような実態を数多く見るのは客観的に考えると誰でしょうか……?
そう、それはまさしく教師
尚且つ勉学クラスの担任である鷺宮先生はこのような不合理の事態に多く直面してきたと言えるかもしれません。
要するに、この先生は幸福クラスの生徒の方が他クラスより優れているという事実を否定する為、現在の生徒に試練をぶつけて自らの考えを正当化しようとしているのです。
努力は叶わなければいけないと豪語する彼女だからこそ、結果は出てるが努力していない(ように見える)幸福クラスを否定しようと勝手に下に見て、あわよくばそれ自体を無くそうとしたという事でしょう。
これも努力は絶対に報われなければいけないという自身の「公正世界信念」が彼女をそうさせていたのかもしれません。

成果を認めたくないが為、また勉学・体育クラスの努力を無駄にさせたくないが為、幸福クラスに否定的だった彼女
好きな方には大変申し訳ないのですが、正直言って、教師としてはちょっと酷いと思ってしまいました。
しかし、この作品は『あんハピ♪』
それだけでは終わらない事は自明の理と言えるでしょう。
そんな頭の固い考えを持った先生が作中でどのように帰結していくのか?
それは是非、ご自身の目で確かめてみて下さい。


(4)この物語の真の目的とは……?
よく日常系アニメとはどのような作品を指すのかと言う疑問に対して、必ずと言っていい程、返される答えがあります。
日常系アニメとは「日常」という一般的シチュエーションの中に価値を見出して評価する類の作品を指し、つまらなくも愛おしい日々を考え直す為のアニメである。
そういった定義が電脳世界ではもはや常識となっているでしょう。
私もその考えに対しては概ね納得なのですが、しかし、この定義を踏まえた上で、前から疑問に思っていた事があります。
それは「日常系アニメ」の定義については分かったけれども、こういった作品のそれぞれにテーマと言うのはないのかという疑問
いや、勿論、把握しています。
こういった作品を求める人は決してそのような「テーマ」だとか「伝えたい事」だとかは考えていないという事も、寧ろあると邪魔に感じる人が大勢いるという事も十分わかっています。
しかし、こういった作品に疎い私は前から気になって気になってしょうがありませんでした。
日常系アニメに対する基準は全て満たしている物ばかりの昨今
レベルは日に日に高くなってくる物で、こういったジャンルに詳しくない私でも観れる作品が最近はとても増えてきたように感じます。
ただ、既存の作品は上記の定義に乗っ取って作られた物は数多くあれど、それを満たしておけば満足だろ感のアニメも個人的には少しあるように感じてしまいました。
勿論、それが悪いと言う訳ではありません。
寧ろ、需要層からしたらそっちの方が安心、安定した気楽に観れる最高のバランスと言えるでしょう。
ただ、私はこういった流れの中、思うのです。
「日常系アニメ」の定義と作品に込められているテーマ
この2つの歯車が上手く絡み合い、良い塩梅で両立した作品が誕生した時こそ、新しいタイプ、新次元の「日常系アニメ」と呼べる物が誕生するのではないか……?
この私の我儘な要望に『あんハピ♪』はきちんと応えてくれました。
もしかすると、私がこの『あんハピ♪』というアニメを受け入れられたのは日常系アニメにあまりない「テーマ性」という物を結構、重視していたからなのかもしれません。
そこで、最後の(4)ではこのアニメの目的、テーマについて書いていこうと思います。
ここまで読んで下さって誠にありがとうございました。
後、もう少しだけお付き合いくださいますよう、お願いします。

『あんハピ♪』と言うアニメが真に伝えたい事は何か?
『あんハピ♪』のテーマは「幸福」についてです。
観た人の誰もが「幸福」について、「幸福」とは何なのかという事だと答えられるでしょう。
しかし、これを論証していくのにはとても頭を抱えました。
なぜなら、ただこれだけだとあまりにも論理づけて考えるには抽象的だからです。
テーマ自体は単純明快なのですが、それについての詳しい証明はとても困難な代物
「幸福とは何か?」という疑問は人類が古代から普遍に抱いてきた哲学であり、だからこそ、そこに至るまでの答えがいくつも存在する産物
簡単だからこそ難しい。
多くの答えがあるからこそ、いくつもの考えに直結する。
誰の考えを参考にしたか、それとも自己流の哲学か、考えるだけでも一苦労
それが「幸福」という抽象的な単語なのです。
しかし、最終話まで観終えて、琴慈先生の伝えたい事がようやく少し分かってきたような気がします。
ここに出てくるのはタイトルで述べているのでお判りの方もいるかもしれません。
彼の心理学には今までの証明でも大分助けられました。
そう、アドラー心理学の最終目標「共同体感覚」こそ、原作者の琴慈先生が考えている「幸福」なのだと私は提唱します。

「共同体感覚」についてアルフレッド=アドラーは自著の中でこのように書いています。
-----------------------------------------
われわれのまわりには他者がいる。
そしてわれわれは他者と結びついて生きている。
人間は、個人としては弱く限界があるので、一人では自分の目標を達成することはできない。
もしも一人で生き、問題に一人で対処しようとすれば、滅びてしまうだろう。
自分自身の生を続けることもできないし、人類の生も続けることはできないだろう。
そこで、人は、弱さ、欠点、限界のために、いつも他者と結びついているのである。
自分自身の幸福と人類の幸福のためにもっとも貢献するのは共同体感覚である。

『人生の意味の心理学』第1章 人生の意味「人生の3つの課題」より
-----------------------------------------
他者を仲間として認める事で、人はその大切な人達に貢献する事ができ、その貢献感を持つ事によって、自分に価値があると自己肯定できるようになり、こうして新しい感覚が誕生する。
それこそが「共同体感覚」といった人間の新しい発想です。

彼は自らが提唱した新感覚において重要なのはこの3つだと述べています。
①「自己受容」……ありのままに自分を受け入れる事
「私」という存在は替えがきかない物であると理解し、自分に価値があると判断する、実は非常に難しい事
自分を受け入れる為には「自分は特別に良くなくても、悪くなくてもいい」と考える事が重要です。
「普通である事の勇気」こそ、自己受容には不可欠と言えるでしょう。

【『あんハピ♪』の場合】
これで真っ先に思い出したのが「自分が嫌になる」と口にしたりしたヒバリの事です。
彼女はどちらかというとネガティブグループ寄りの人間
失敗したり、嫌な事を思い出したりせずとも自分という存在に疑問を抱いてしまう自信の無い娘です。
詳しくは(2)でほとんど書きましたが、9話はそんな彼女が少し自分を認める事の出来たきっかけの回と言えるでしょう。

②「他者貢献」……自分が役立たずでなく、役に立てている、貢献していると感じる事
自らの行動が他者や共同体に影響を及ぼし、それが有益である事に限り、自分は自分を認められる
①につながるこの行為は実に様々な意味合いを含んでいると言えるでしょう。
極論を言うなら、「生きている事」自体が既に誰かに貢献しているという結果にもつながります。
例えば赤ちゃん、例えば恋人、好きな人、そして親友というのもまた然り

【『あんハピ♪』の場合】
この『あんハピ♪』というアニメに「助ける」「頼る」という単語が会話の節々からよく登場していた事に皆さん、気付いていたでしょうか?
「もっと頼ってください」「助かったよ」といった言葉を自然に吐く彼女達
いつもはヒバリがハナコやボタンをサポートし、ヒバリが失敗した時は日頃助けられている2人が彼女を支える。
話数が進んでいくにつれてヒビキとレンも織り交ざり、助け助けられの関係は5人の輪の中で着々と広がってきていたのが確認出来ました。
また、ハナコに関しては7話の時点で場の雰囲気を構成するのに必要不可欠だった(貢献している)事が把握出来ます。
この他者を助けあう事で成り立つ段階は作中で既に実証されていると言えるでしょう。

③「他者信頼」……他者を仲間と信頼出来る事
「信用」ではなく「信頼」です。
条件付きで信じるのではなく、無条件で人を信じる究極的利他行為

【『あんハピ♪』の場合】
もう、これについては『あんハピ♪』全12話を観ていくしかありません。
これに関しては徐々に徐々に分かっていくと思います。
何気ない学園生活で自然と築かれていく5人の関係に着目して下さい。

さて、この3つの考えこそ「共同体感覚」形成の第一歩となるのに重要な事
主要メンバーの5人含む幸福クラスの生徒達は学園に所属している過程で自然とこれらを学んでいきます。
そして、これこそが「幸福」に至る最善の路と成り得ると私は考えました。

実は元々、アドラー自身も多くの子供に上記のような考えを宿らせる教育改革こそが世界を平和的に変革する有効な手段だと考えていた節があります。
彼は児童相談所を設立し、教師には生徒の対応について助言し、子供と親のカウンセリングを行いと様々な教育活動に奔走する日々を送ってきたそうです。
彼自身は「共同体感覚」に包まれた世界は幸福になると生前、ずっと信じ続けていました。
しかし、結果は2度の世界大戦の勃発
彼の考えが世界中に浸透したのもごく最近の事(日本においてはついこの間まで全く存在を知られてすらいませんでした)
彼の理論で戦争が回避される事は生きている内には果たされる事なく終わってしまったのです。

しかし、そう考えると、アドラーの遺志は現在ではどのような形で継承されていくのでしょうか?
現実の世界を何とかしようと今でも動いている人がいるでしょう。
努力して変えようとして挫折し、諦めてしまった人もいるでしょう。
自分自身だけでも変革しようと取り組んだ人もいるかもしれません。
だとしたら、仮初の世界でだけでも形にして継承しようとした人がいても……
不思議ではないですよね?
琴慈先生はアドラーの無謀とも夢物語とも言える遺志を継いだ世界を作りたかったのか?
そうだとするともしかしたら、天之御船学園はアドラーの考えていた理想郷形成の重要拠点と言えるのかもしれません。
遊びに見える授業は見ず知らずの他人→仲間意識を持った友達→共同体感覚を共有した運命共同体に至る為の通過儀礼に過ぎない。
空想のような、楽園のような学園生活にこそ、真の「より良く生きる」知恵が隠されている。
最終話まで観て私が至った結論です。

とまあ、ここまで専門用語を用いて難しく語ってきましたが、単純に考えるなら、大切な事はたった1つだけ
皆から遅れても、遠くで自分を待ってくれる友達がいる幸福
これほど幸せな事が、一体どこにあると言えるのか?
この作品が伝えたいのは、恐らくこれが全てです。



【第2部】
最後に個人的にだらだらと全体の総括を書いて、このレビューを締めたいと思います。
今回本作の良さに気付いたのは、タイミングが良かった。
その一点に尽きる話でしょう。
恐らく、「毎日が楽しい」「日々が幸せ」と胸を張って言える人、また言わなくても内心でそう感じている人はこの作品を観て「面白い」と感じる事はあれど、私みたいに感銘を受ける事はないかもしれません。
逆に最近、精神的に参ってる人、鬱屈した思いをずっと抱えている人は思わぬ所で衝撃と言いますか、何か残る物を全12話の中から間違いなくもらえます。
そんな私自身も正直に言って、1話を最初に観た時はブラックコメディというか、シュールギャグ要素しか感じられませんでした。
結構ギャグセンスが自分に合っていたのか、個人的にはその時点でも十分面白い作品だったので、とりあえず視聴継続という形で録り貯めていたのです。
転機が訪れたのは5月に入ってからの事
現実世界で今まで考えないようにしていた事を考えなければいけなくなり、個人的不運が重なり、課題に追われるようになり、人間関係に疲れたりと多忙な日々を過ごす内に、意識が朦朧としてきてしまいました。
後で調べてみると、精神状態があまりよろしくないという結果が待ち構えており、また、他人と付き合うのがちょっときつくなってきた私は少しばかり家でひきこもりの生活を送ったのです。
限界を感じたその時の私は期間中、アニメを利用して憂さ晴らしならぬ現実逃避に勤しんでいました。
そんなダメ人間として毎日を過ごしている内に、更に気分が憂鬱になって……
精神的に脆弱な自分
気分転換として外でリフレッシュしようと思っても、そもそも外出する事すら億劫で、怖くて、嫌で、困難な状況でした。
そしてまたそんな自分が嫌になり、また気分が憂鬱になるという負のスパイラル、逃れられない始末
いや、あの時は本当に辛かったです。
私の駄文であまり苦しさが伝わらないのが幸いといった所です。

話を戻しましょう。
そんな時、たまたま観ていたのが忙しくてすっかりご無沙汰状態だった『あんハピ♪』の3話~7話でした。
ぼんやりと観て、時折笑って、またぼやっと観ている内にEDが流れていく。
そのような緩やかで安らぎに満ちた時間の流れに身を任せていると、とても心地よくて温かくて。
眺めていると、あっという間に過ぎていく日々に私は酔いしれていたんです。
賑やかで忙しないけどもどこか温かいOP
作中で時折こちらをハッとさせるようなキャラの言葉と行動
そして、切なくて、だけどとても優しい曲調のED
自然と涙が出てきました。
何回も何回もその4話分だけ視聴しました。
その度に涙が溢れて止まりませんでした。
何故急に涙が出てきたのか……?
細かい理由は、今一つ断定ができず、考えても未だに分からないままなのですが、こういうのは理屈じゃないのかもしれません。
感動アニメで大げさに笑いたくなったり、ギャグアニメで大っぴらに泣きたくなる時もあるんです!!
人間の性格は曖昧な代物であると改めて痛感させられた一時でした。

まあ、そんなこんなでこの『あんハピ♪』という作品には大分助けられました。
正直言って、あまりこういった萌え日常系アニメを観ない自分が1番驚いています。
まさか原作を買うまでに嵌るとは思わず、しかも漫画と比較するとアニメが殆どオリジナルでまたまた驚きました。
原作を生かしつつ、魅力を更に引き出した展開を生み出したスタッフの方々には敬意を表したい位です。
恐らく、このアニメが観れた理由の1つとして、スタッフの頑張りも確かにあるのだと思います。
私の苦手な百合要素という物がギャグやその他の演出で見事に上手く軽減されていたというのは地味に大きいです。
その点においても安心して観れた数少ないアニメなので、百合が嫌いだからちょっと……と言う方でも恐らく大丈夫な作品だと思います(あくまで個人的主観)

さて、大分長々と語ってきましたが、これにてレビューを終了したいと思います。
ただ、最後に1つだけここまで丁寧に読んでもらいました心優しき皆さんに細やかなご忠告を。
今回の私の考察は決して鵜呑みにしないようにお願いいたします。
何分、浅学非才な身の上、間違えて使っている箇所もあるかもしれないというのは勿論なのですが、まだ観ていない人達にとっては面白さの幅を狭めてしまう事になりかねないからです。
私のレビューで辺に斜に構えて観てしまい、アニメ本来の楽しさを損なわせてしまうのは書いたこちらとしても大変申し訳ない。
「考察」の部分を長々と書いてしまった時点で私の主張には説得力の欠片もありませんが(笑)

ただ、この『あんハピ♪』というアニメは本当に「優しい」んです。
「圧倒的なまでの現実」という優しくない世界の中に成り立っている本作でありますが、それは作中外での事
天之御船学園という「秘密の花園」で展開された世界は面白く、楽しく、そして少しばかり愛おしく感じます。
この自らの心に芽生えた感情をまとめて「優しい」という一つの言葉で表現する事が出来る。
そんな風な事をこのアニメを観ながら私は感じました。
また、今作は作中要素だけでなく、私達に対しても同じく「優しい」と言う事が出来ます。
なぜなら、このアニメは作品自体が視聴者に対してどんな風に観てもいいんだよ……と感じ方の範囲を広くしているからです。
「このキャラクター達、みんなおかしいな」と笑い転げても良し
「〇〇ちゃん、ホント可愛い」と人知れず萌えても良し
「なるほど、そういう事か」とキャラクター達の台詞に感銘を受けても良し
これらの反応は全て、このアニメによって私達が楽しませてもらってる事の証明であり、私達に頑張ろうと思わせるだけの活力も与えてくれます。
しかし、今回ので見方が固定化してしまったら本当にもったいない!!
そういう訳で、私の個人的戯言に捉われることなく、ごゆるりとアニメをお楽しみくださいますよう、お願い致します。
では上手くまとまった所でレビューもそろそろ終える事にしましょう。
ここまで長い駄文に付き合って下さり、誠にありがとうございました。
皆さんこれからもどうか、素晴らしき日々をお過ごしください。


楽しかった 時間だけ憶えておけばね
まだまだ面白くなるよ
毎日が 一緒なら まるでカレイドスコープ
回しちゃって 世界はキレイなんだってば そうでしょ?
思い出も未来もまぜて
私たちきっとなんとかなるよね…って思ったの!
『あんハピ♪』EDテーマ「明日でいいから」より抜粋


下記に書いたのは、まんがタイムきらら編集部さんがTwitterに載せていた呟きの数々
中々に良い事が書いてあるので、興味のある方はどうぞ。

1話
たとえば、列で割り込みをされたときの宝くじが当選
一見ツイてなく思える出来事が、実は幸福の種だったりする。
幸せを呼び寄せる秘訣はきっと、ポジティブなその笑顔

2話
どうなれたら幸せだと言えるでしょうか?
幸せのゴールはどこでしょうか?
たぶん、その答えは一生出ない。
けれどその時その瞬間に笑顔でいられたなら、それはきっと幸せの証

3話
新たな環境に新たな人々
新生活が始まって、右も左もわからない中で戸惑っている方もいらっしゃるかもしれません。
けれど、どんなコトも楽しんだ者勝ち
いつでもその気持ちを忘れずに。

4話
人のやさしさを目にすると、自分までやさしい気持ちになる。
あたたかく、幸せな気持ちに
もしかしたら知らないうちに、あなたも誰かを幸せにしているのかもしれません。

5話
実家を出ると、親と過ごせる時間はあと何日分だろうかと考えてしまう。
ひとつの楽しいことが終わると、こんなに幸せな気持ちには人生であと何回なれるだろうかと考えてしまう。
ひとつひとつの出来事を、どうか大切に。

6話
楽しいことやうれしい気持ちは、わかち合うと大きくなる。
大変なことやかなしい気持ちは、わかち合うと軽くなる。
級友でも同僚でもネット上の誰かだとしても、わかち合える仲間がいるのなら、それはとても幸せなこと

7話
身体が弱ると心も弱る。
心が弱ると何をやってもダメに思えてくる。
けれど、そんなときだからこそ気づけるものだってある。
友達のありがたみ、家族のやさしさ、そして何でもない日常のいとおしさ

8話
昨日の事はもう変えられなくて、今日という日は今日しかなくて、明日の事は誰にもわからない。
けれど良い事も悪い事も、何が起こるかわからないからこそ、毎日には頑張る価値がある。
あなたの頑張りは、無駄じゃない。

9話
誰にだって失敗はある。
大事なのはそれをどう乗り越えるか。
……なんてありがちな言葉よりも、落ち込む気持ちを笑顔で吹き飛ばしてくれる友達さえいれば、心はスッと軽くなる。
大丈夫、失敗したって、いいんだよ。

10話
小学生の頃、無限に思えた40日間
海にプールにアイスに虫取り、盆踊りに花火に肝試し
お酒なんか飲まなくても自然と気分は高揚して、やり尽せない沢山の楽しいことに無邪気にはしゃいだ日々
そう、それが夏休み!

11話
どれだけ楽しい時間にも、必ず終わりはやってくる。
逃れられないその時に悔いを残すことだけはないように、一分一秒を大切に、今はただ一緒に笑っていよう。
だって、楽しかった思い出は、ずっとずっと残り続けるから。

12話
何かの終わりに寂しさがこみ上げてきたなら、それはその何かがかけがえのないものだった証
だから寂しさに後ろを振り返らず、前だけを見つめていこう。
まぶたを閉じればすぐに浮かぶ、いつだって幸せそうなその笑顔と。

TVアニメ『あんハピ♪』ご視聴ありがとうございました!
OPの歌詞の「幸せはどこにあるのだろう?」という問いかけの答えはまだわかりませんが、それは案外どこにでもあるのかもしれません。
見つけよう、という気持ちさえあれば。
皆さんの毎日が、これからもどうか幸せなものでありますように。

13話(嘘予告)
積み重ねた思い出のひとつひとつが、今のあなたに宿ってる。
昨日までの自分があるから、今日の自分がある。
胸を張って、明日へ。
TVアニメ『あんハピ♪』第13……え!? もうないのかーーーー!!!!
コミックス1~6巻、Blu-ray&DVD1巻、どちらもよろしくお願いいたします!

まんがタイムきらら編集部Twitterより引用


【参考文献】
アドラー『人生の意味の心理学』2016年2月100分de名著,NHK出版,2016年.


PS.
実は他にも久米川牡丹の性格は劣等コンプレックスの名残かもしれない…や萩生響は優越コンプレックスを抱えている…など色々考えが膨らみましたが、証明出来なさそうなので断念してしまいました(江古田蓮だけ見つからず…)
またこれも余談ですが、当初はアドラー心理学でなく某哲学者の理論を取り上げようとしていたので、今回のレビューは随所にその痕跡が見られる文章となっております。
興味のある方は調査、考察してみても良いかも!!



2016年9月24日 再追記
本来ならこの欄で書くべき事ではない気がするのですが、自分の思い出し用として、此処に記載しておきたいと思います。
今日、私は人生初のアニメイベントなる物に足を運んできました。
この項目に書いてある時点で既にお分かりの通り、それは『あんハピ♪』のトーク&ライブイベント『Clover Fes.』です。
しかし、実を言うと、会場に赴く前は応募した事を私自身、後悔していました。
それは私の好き嫌いに依る、言わば個人的感性から生じた物
こちらとしてはそのせいで楽しめなくなる事が何より嫌だったのです。
しかし、その心配も全くの杞憂であった事が終わった今となっては、はっきりと断言できます。

不安な気持ちや悲しい想いを全て溶かしてくれたこのイベント、控えめに言って最高でした(何分、初めてなので比較の仕様がないのはご容赦を)
プリキュ○ネタのアドリブを全員が入れまくって、最終的にはプリ○ュア声優でヒビキ役の山村さんが悪乗りする変身魔法少女モノ朗読劇
相手チームの妨害工作をしたり、泣きの一回で土下寝をしたりと、互いに勝利に執着して争いつつも、決して悪い印象はなく、最後には笑って終わった球技大会ゲーム
私がこの『Clover Fes.』で1番よく分かったのは、こういったキャスト陣全員の「仲の良さ」その物でした。
こういった関係は話数を重ねていくにつれて、強くなっていったと語ったのはハナコ役の花守さん
その「想い」がそれを伝えた彼女自身の誕生祝いに繋がっていったと思うと、こちらとしてはとても温かい物を感じます。

そして、最後の挨拶
キャストのほぼ全員が涙を流しながら、オーディションを受けた時の話や『あんハピ♪』に対しての想いを語っていたのが至極、印象的でした。
花守さんが「ハナコはいつも泣いたり弱音を吐いたりしないから、あんハピの現場ではいつも明るくいようとしたんですけど……花守はやっぱり、花守でした……」と涙交じりに語っていた事
チモシー役の森永さんが息を詰まらせながら「私、チモシーと言う役が初めてこの声で加われたキャラクターでした。受かった時は凄く嬉しかったんです。受かる前はこの地声のせいで、色々アンハッピーな事にあったりしたんですけど……でも、それでこうしてあんハピに関わる事が出来て……私、この声で良かったです……本当にあんハピは最高の作品です!!」とボロボロ想いの丈をぶちまけた事
山村さんが「自分が1番年長者だから、しっかりしないとっていう想いがプレッシャーになっていて……でも、結局、年長者らしく振舞えなくて……でも、あんハピのみんなはそんな自分も優しく迎え入れてくれました。ヒビキは方向音痴だけど、方向音痴でも幸せの方向へ向かってます。だから幸せの方向に関しては方向音痴じゃないんです……」と言葉を詰まらせながら綴った事
他のメンバーも自分が泣きつつも、話していた人の為にタオルを持ってきて、細やかな心遣いを行っていた姿
全てが心の奥底に重く圧し掛かってきました。

振り返ってみると、この『あんハピ♪』と言う作品は、成るようにして成ったと改めて感じます。
キャストそれぞれの方達が作品の良さを十分に理解し、愛していた事
スタッフがその良質さを真正面から受け止めて、更に良い物にしようと邁進していた事
そして、それに伴って教えられる大切さを肌身に痛感し、「優しい」雰囲気に色付けされる制作側
『Clover Fes.』はそれらがはっきりとこちら側にも伝わってきた……
作品と同様、とても「優しい」イベントでした。
こういった相互関係を感じられて、私はこの『あんハピ♪』と言う作品をもっと好きになれたと心から思います。

関わってくれた全ての方達にお礼を言いたいです。
ありがとう『あんハピ♪』
そしてこれからもよろしく『あんハピ♪』


2017年4月7日 再々追記
放送開始から今日で1周年
あれから少しばかり時間が経過した現在でも、活動が続いていると言うのは、1ファンとしては大変嬉しいものです。
公式twitterは適度に更新、即ち情報を発信しており、エイプリルフールには劇場版の嘘情報を流して描き下ろしの絵を加えたりしていました。
また、公式が新生活にむけて送った激励には、私も少しばかり元気を貰った物
この現状は何度も申すように、1ファンとしては非常に嬉しく、めでたい物
これからも今のような稼動が続いて、『あんハピ♪』の「優しい」輪が段々と大きく、次第に広く、浸透していく事を願わずにはいられません。

新しい生活に戸惑っている方、不安や葛藤の日々を過ごしている方
この時期と言うのは、長い人生においては自分を知れる良い機会
自分を見つめ直せる良い機会
その節目として、本作は実に相応しい
初めての方には、安らぎと癒しがもたらす「幸福」を……
1度鑑賞済みなら、何度も至れる安心と回帰の「幸福」を……
一家に一作、お薦め出来るこのアニメ『あんハピ♪』
辛い日々の中、今日から、ゆっくり1話ずつ、視聴してみるのは如何でしょう?
私も今日からまた『あんハピ♪』観直していく事と致します(絶賛リピート中)

嬉しいな 意外なつながりよありがとう
まだまだ冒険があるさ
毎日を一緒にね ずっとね遊ぼうよ
とりあえず 世界はナゾなんだってば そうでしょ?
じゃあ解いてみたくなる そうでしょ?
とりあえず 早々 眠れ 眠れ

楽しかった 時間だけ憶えておけばね
まだまだ面白くなるよ
毎日が一緒なら まるでカレイドスコープ
回しちゃって 世界はキレイなんだってば そうでしょ?
思い出も未来もまぜて
私たちきっとなんとかなるよね…って思ったの!
『あんハピ♪』EDテーマ「明日でいいから」より抜粋



2019年1月22日 最後の追記
『あんハピ♪』最終巻読み終わりました。
中々封を開けられなかった漫画は、一度開放すると、一気に読む事風の如し
彼女は少し笑顔になれて。
彼女が初めて涙を見せた。
でも、全員が幸福な日々へ至れた最終回

ファンレターを送ろうと思います。
最初で最後かもしれないファンレター
思いの丈をそこで多くぶち撒けます。
ここではもう充分語り尽くしたので、最後にこれだけ書いておきましょう。

『あんハピ♪』と出会わせてくれてありがとう。
これから先に待つ新たな幸福を求めて。
私は精一杯、生きていこうと思います。

投稿 : 2024/04/20
♥ : 28
ネタバレ

剣道部 さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0

unhappyでも杏はhappyに感じる♪

[文量→中盛り・内容→感想系]

【総括】
一見、典型的な「きらら系日常アニメ」に見えますが、なかなかスパイスの効いてる作風で、私は結構楽しめました♪ 日常系ながらしっかりとしたテーマ性があるので、「頭カラッポ」よりは、「(あくまで)ちょっとだけ何かを考えながら」観てほしいアニメっすね♪

あと、OPの「PUNCH☆MIND☆HAPPINESS」は、これぞ電波系萌えソングって感じで、かなりオススメ。曲だけでも聞いてみて下さい♪ 元気が出ますよ!

【視聴終了(レビュー)】
{netabare}
「幸福とは心の状態を言う。物事をどう見るかだ。幸福とは満足しているということだと思っている」
by ウォルト・ディズニー

「幸せだから笑うんじゃないよ。笑うから幸せになるんじゃ」
by ちびまる子ちゃんのおばあちゃん

「幸せを手にいれるんじゃない。幸せを感じることができる心を手にいれるんじゃ」
by 甲本ヒロト

……まあ、つまりはそういうアニメです。

登場人物達はそれぞれに多種多様の「不幸」を抱えています。でも、主人公の杏はケラケラ笑っています。他の皆も、なんのかんの言いながらも楽しそうです。幸せなんて所詮、本人が幸せと思うかどうかで、周りがとやかくいうことではありませんよね。

自分の「不幸」な境遇に苦しんでいる人。ちょっとだけ救われるかもしれません。

百合好きな方、ちょっとだけ満足できるかもしれません。

ただの日常系に飽きた人、意外とテーマ性が強い日常系アニメです。

オススメしますよ♪
{/netabare}

投稿 : 2024/04/20
♥ : 38

蒼い星 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.2

平々凡々。

アニメーション制作:SILVER LINK.
2016年4月 - 2016年6月に放映された全12話のTVアニメ。

原作は、琴慈による『まんがタイムきららフォワード』にて、連載中の漫画。

【概要】

名門・天之御船学園(てんのみふねがくえん)。

この学校には勉学クラス(1組から3組)とスポーツクラス(4組から6組)があり、
各自の長所を伸ばすという教育理念があります。
そして、どっちでもない生徒(学内ではおちこぼれ?)は、
不幸の業を背負った存在として7組に集められて、
通常の授業とは別に開運を目的としたカリキュラムが組まれています。

そして、今年この学校に入学した5人の女子高生。
花小泉杏、雲雀丘瑠璃、久米川牡丹、萩生響、江古田蓮。
それぞれに不運の属性を背負った彼女たちが幸せを求めるといったころを中心とした日常コメディです。

【感想】

電子書籍サイトで立ち読みしてみたのですが、原作はかなり絵が可愛い感じですね!

5人の女の子が中心 & 微百合 & 日常 と、きらら系アニメのテンプレ設定に、
幸薄い女の子たちの幸せ探しをストーリーの主軸に練り込んだお話でありますが、

不幸の定義ってなんでしょうかね?このアニメに出てくる少女たちは、
日常生活においてTRPGでいうダイス判定的なアンラッキー体質ではありますが、
十分に幸せな日常を送っていると思います。

経済的に恵まれた生活をしており、ぼっちでもなく複数の友だちとキャッキャウフフ出来る関係であり、
人に危害を加える卑しさに満ちた嫌な人間が一人たりとも存在しない安全な世界。
そういう意味では現実社会の一定数の人間よりは、完全に幸福であると言えるのです。

『あんハピ♪』の英語タイトルは“unhappy go lucky!”らしいですが
もうひとつ!“Anne Happy”即ち、主人公・花小泉杏の幸せでもありまして、
日常でアンラッキーに多数見舞われながらも幸せに暮らしている杏、
そして彼女をとりまく4人の少女たちとの友情を見守る物語なのです。

さて、このアニメはちょっとクールな感じのする原作よりも、
作画と演出の効果でほんわかムードなのですが作品として面白いかは微妙ですね。
○○に恋してる女の子ネタとか虚弱少女の自虐ネタとか、
キャラ付けが面白くもなくギャグとして、まったくもって笑えません。
3人組が5人組になってからはキャラの良さが引き出せるようになって、
それなりに良い話もあって時々は笑えるのもあるのですが、
日常アニメを代表するような人気作と比べたら、やはりシナリオの打率は低いです。

この手のアニメは、あずにゃんやチノちゃんみたいな、
諸兄のハートを鷲掴みにするようなキャラがいないと爆発力に欠け、
そういう意味ではエースキャラがいなかったのがきついかも?
主人公の杏は天使みたいな心の持ち主なのですが。

作画もダメってわけじゃないのですが原作の絵に比べると、良いとは言い難いような?
モブの顔がのっぺらぼうなのが印象悪いですね。と思ったら、そこは原作通りなのですね。

“感動”“癒やし”“萌え”“ギャグ”

ヒット作になるべく、これらみたいな何か強力な武器をこれといって持たず、
とにかく地味で平凡な全十二話であったというのが正直な感想ですね。
某マスコットキャラの歌とか結構好きですけどね、作品の平均的なポイントは上がらないです。

2期が無いと出番なさ気な金髪少女・狭山椿は見た目が私好みで可愛いのですが、
このままだと2期決定は相当厳しいのが残念でもありますね。


これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。

投稿 : 2024/04/20
♥ : 37

74.2 3 まんがタイムきららフォワードで漫画原作なアニメランキング3位
はるかなレシーブ(TVアニメ動画)

2018年夏アニメ
★★★★☆ 3.5 (444)
1633人が棚に入れました
東京から沖縄に引っ越してきた高校2年生、大空遥。いつでも明るく前向きな遥だが、彼女にはコンプレックスがあった。
それは普通の女の子より身長が高いこと。

一方、遥を空港に迎えに来た彼女と同い年の従姉妹、比嘉かなたにも悩みがあった。
かなたは身長が伸びなかったせいで、大好きなビーチバレーを諦めてしまった過去を持つ。
そんな凸凹な2人が、ふとしたきっかけでビーチバレーのペアを組むことに……。

広い砂のコートに味方はたった1人だけ。何よりもパートナーの存在が大切なビーチバレーで、2人はどんなプレーを見せるのか!?
真夏の太陽が照りつける沖縄のビーチで、今、少女たちの汗と情熱が輝き始める!!

声優・キャラクター
優木かな、宮下早紀、種﨑敦美、末柄里恵、島袋美由利、伊藤かな恵、木村千咲
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

はるかな“る”レシーブ

2018.09.26記


原作未読 そもそもきらら系なるものを本作で知るに至った私


この夏、『ISLAND』『ぐらんぶる』と合わせて“海”“太陽”を感じさせてくれた作品。
徹底ぶりなら断トツで、ぜひ真夏に観てほしいなと季節指定をしたいくらいの海と太陽っぷりでございます。

舞台は沖縄。ビーチバレーを題材としているためそのまんまビーチが物語場面の多くを占めることになります。つまり背景はほぼ砂浜と海と空と太陽。
当然、毎回水着回となるわけですが、このへんは様々な角度からの熱の籠ったレビューが百花繚乱状態ではあり、下・・・いや舌っ足らずの私がひと皮剥けたレポートをできるか自信がないので、いったんそちらにお譲りしたいと思います。 ゴホン・・・


あらためまして、実はこれ苦手な部類のキャラデザインでした。
萌え萌えきゅんきゅん過ぎてもしんどいなぁと思いながら、とかくビジュアル重視な進行なら完走も覚束ないだろうよ、という視聴前のスタンスです。

しかして、なんのトラブルもなく毎週楽しみにしながらの完走です。
音楽に引っ張られました。特に試合時の劇伴は一聴の価値ありです。
ビーチバレーやってる時の作画もアングル含め、ボールの回転や砂の飛び散り具合などこだわりを感じました。
そして、意外と(失礼!)ストーリーもまじめで組み立ても無理がない。


登場人物はメインの二人、親の海外赴任の影響で東京から祖母のいる沖縄へ越してきた主人公大空遥と、祖母と同居する従妹の比嘉かなた。
遥は第一話冒頭の空港にて自身の長身を気にしている描写があり、かなたは背が伸びなかったことを気に病んでいるのがわかりやすい。闇はこっちが深そうだ、という凸凹コンビの活躍が描かれることになります。

『世の中には二種類のスポーツがある。個人競技と団体競技だ。そして、団体競技の中でも二人でしかできないスポーツ。それがビーチバレー。広い砂のコートにたった二人だけ。だから私たちはかけがえのない一人を選ぶ。』

第一話アバンで提示されたのは競技の性格と本作のテーマ。
はるかとかなたがお互いにとってかけがえのない一人になっていく過程をわりときちんと描いてます。
スポ根の定義によりますが、努力・友情・勝利の友情部分にスポットをあてた印象、かつそんなにどぎつさもないし、ライバル含めての人間関係もギスギスしてません。絵面と合ってます。
友情を前面に出すとともすればクサくて見てられなくなることもままありますが、本作では自然に受け止められました。これは、“二人でしかできないスポーツ”ビーチバレーの特性をうまく活かしたからだと思います。複数人数の団体競技や個人競技で友情特化型の物語にしてしまうと、だいぶ違った印象になるでしょう。

また、日常回をほぼ飛ばして「関係の構築」「上達のためのetc」「試合」に時間を割き、全12話でひとつの結末を迎えるシンプルな構成も良かったです。

音楽はとてもノリが良い感じ。OPのケツドラムみたいな打ち込み音は“THE夏”感満載で好印象。劇半も基本的にはラテンと沖縄音階を引用し、いわゆる“踊れる”仕上がりです。イメージしたのリゾートのクラブあたりでしょうか。端的にこう思いました。


 あぁーー IBIZA 行きたい


キャラもはるかなペアよろしく、複数のペアが登場し、そこでの一対一の関係やストーリー進行上の役割付けなどこれまたいい感じ。

・なるあやペア
・エクレアペア
・あいまいペア
 {netabare}インドアとビーチの違いの説明役。それと身長がなければ超えられない壁があるという残酷な現実や、リベロとしての自負がある舞とパワーアタッカーというこれまでの存在意義を捨ててポーキーという武器を磨いたかなたとの対比など、かなたを引き立てる役回りを担ってました。{/netabare}
・ようかんペア
  {netabare}作中省略されたはるかなペアの上達ぶりを説明する役回りを担ってました。マリッサとの練習が活かされてる描写ではチーム力が底上げされていることを、はるかのブロックにクレアの面影を見たり、連続ブロックポイントをあげた描写でははるかのブロックがいかに強力かを見せつけ、決勝のあのシーンの伏線となりました。{/netabare}


表だったペア以外の組み合わせも着目というか本流だったりしますね。
 ※さらにネタバレ要素有りのため視聴前は未開封推奨

■はるかとクレア
{netabare}似たもの同士。はるかに稽古つけるのって常にクレアというのが良いです。
始めての練習でいの一番に取り組んだのがブロックなんですよね。オフシーズンのマリッサを呼び戻したのもクレアだし、かなたの復帰が嬉しかったとはいえ、新造コンビの上達を誰よりも願って身を割いてくれたからこそ、決勝対決となった試合ではるかがブロックで試合を決めたことと、決勝戦後のエクレアのシーンが引き立つわけです。{/netabare}

{netabare}さらに、ビーチパーリーの時に二人きりになってエクレアのシュシュをはるかに託すところ。東京からの転校生で唯一人地元民ではないはるかに託すなんて仲間になったんだなぁというのと、クレアからはるかへだからこその重みを感じます。
第一話アバンに戻ると、このクレアから託されたシュシュをつけてるカットから始まり、前述のナレーションが流れるので軽く鳥肌が立ちます。{/netabare}

{netabare}蛇足ですが、某吹奏楽アニメのオーボエ吹きの子にすっかりやられた身としては、よくしゃべる役柄を演じられてる種﨑敦美さんを終始尊いと感じながら視聴してました。{/netabare}


■かなたと成美
{netabare}むしろ本作はこの二人のレシーブ(取り戻す)物語なんじゃないかと思ってたりします。
かけがえのない一人に背を向けたかなたと背を向けられた成美の二人の心情描写により多くの時間を割いてました。作中のシリアスパート担当の二人です。{/netabare}
{netabare}彩紗にかなたと組むことを止められたはるかがその提案を断るのを後ろで聞いていたかなたさん。もう一度ビーチバレーに向き合うことを腹に決めある決意をします。それは成美とのコンビ時代の水着(小学生時代ってことですよね)を着てリベンジマッチに挑むこと。これは背を向けたあの日から始めよう、サーブレシーブから逃げたあの日からもう逃げないとの意思表明でした。決して成美との決別ではなく、成美への信頼の表れなんでしょう。対して成美はかなたの水着姿に軽く動揺し、さらにサーブレシーブを取りにいったかなたの姿に複雑な反応。ただ二人とも前を向いて動き出しました。
それと、wikiチラ見したら彩紗がインドアからビーチに転向した理由って身長もあったみたいで、はるかへの提言にも背景があったということです。
{/netabare}

{netabare}ここからかなたは背を向けた負い目を克服していく。
成美は背を向けられた悲しみを乗り越えていく。
「二人で一緒に目指そうよ、日本一」
「かなたがそう言うなら、信じてみようかな」
「ほんと?約束だよ!」
「うん」
半年後、正月の那覇空港で「約束を守る、今度ははるかと」と告げるかなたへ、成美は振り返らず約束の小指を立てて搭乗口へ向かう。

約束。それは形を変えてコートを挟んで同じ舞台に立つその日まで。。。

この二人が主人公と勘違いしてもおそらく誰も文句は言いません(笑)
{/netabare}

{netabare}こちらも蛇足なんですが、 成美役の島袋美由利さん。同クールのなにかと比較対象に挙げられた『はねバド!』の荒垣なぎさ役もやってました。二人とも似たような役柄なのにはっきりとわかる違いをつけてきました。ちょい注目です。{/netabare}


最後に、、、
このように一対一に焦点があたりがちな作品の中で、しーちゃんは繋ぎ役としての任務を全うしました。しーちゃん登場回からEDの絵が少し変わります。寝ていたはるかを起こして、おそらくループしてくか次に渡すのかするのでしょう。彼女の役回りを示唆する絵にクスッとした次第です。



夏を存分に感じるのもOK!
水着姿や百合にブヒるのもOK!
だがそれだけではない、意外と丁寧に描かれた作品です。

まぁそういって熱弁振るってる私がそうとうブヒってるんだろうな ww


続きも充分あり得る最終回でした。
もし2期をやるならきっと観ると思います。


-----
2019.03.09追記
《配点を修正》


放送から半年ほど経ってふとあまり耳慣れなかった声優さん達どうしてるかな?とwiki見てみた。※TVアニメ(2018秋、2019冬)の出演

優木かな(大空遥役)・・・なし
宮下早紀(比嘉かなた役)・・・「荒野のコトブキ飛行隊」のモブ
末柄里恵(エミリ役)・・・なし
木村千咲(しーちゃん役)・・・なし
島袋美由利(遠井成美役)・・・2019春に主役級内定。モブ出演多数(寄ジュリ、吸血鬼さん、ツルネ、学園BASARA、ゴブスレ、コトブキ、revisions)

2018夏のお気に入り作品。出演声優さん達のご多幸をお祈りしているわけですが、なかなか業界の厳しさが垣間見える結果ではありますね。
そしてやはりというか島袋さんは順調にキャリアを重ねているようです。

投稿 : 2024/04/20
♥ : 65
ネタバレ

shino さんの感想・評価

★★★★☆ 3.5

青いままでいこう

きららフォワード連載。

世界が美しいのは四季があるから。
季節感溢れる作品はいつも素敵です。
健康的でさわやかな水着少女と、
澄みわたる真夏の青空、海、砂浜、
ビーチバレーで青春を謳歌するひと夏の物語。
そして妙にリアルなもぎたてフルーツ。
渇いた心に夏の水分補給、
夏の数だけ青春はあるのでしょう。

9話視聴追記。
得意の分野ではないのに観ています。
これ程のビーチに人がいないのが謎ですが、
綺羅やかな青春、サイダーのようにはじける、
やはり夏らしい作品は美しくて好きだ。

最終話視聴追記。
全編やや駆け足に感じますが、
{netabare}終わるならここしかないでしょう。
これが逆の結果でも面白いと思います。{/netabare}
良い思い出はアニメの中に。

そこそこ楽しめました。

投稿 : 2024/04/20
♥ : 66
ネタバレ

フィリップ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.1

ビーチバレーという難しい題材

アニメーション製作:C2C
監督:窪岡俊之、シリーズ構成・脚本:待田堂子
キャラクターデザイン:小田武士、原作:如意自在

きらら系スポーツ漫画のアニメ化。
沖縄を舞台に真剣にビーチバレーに取り組む
女子高生たちが全国大会に向けて頑張るストーリー。

沖縄の透き通るような海辺。
のんびりとした雰囲気の漂う家並み。
そこに東京から少女がやってくる。
遥という名前の彼女は、いとこのかなたの心を動かし、
ビーチバレーの世界へ飛び込むことになる。

視聴前から思っていたのが、これはかなり難しい題材を
アニメ化したなということだった。
スポーツの魅力という部分ではバレーボールとほぼ同じで
『ハイキュー』に似通ってしまうこともあるし、
プレイヤーが2人しかいないため、
試合を描いたり、その面白さを表現するのは、
並大抵のことではないと感じていたからだった。

そして私は1話目からつまづいてしまった。
全国大会で優勝した、かなたの元パートナー、
遠井成美と素人の遥が試合をすることになるのだが、
この展開や演出に無理がありすぎる。
成美とかなたの因縁があったとしても、
もう少し納得できる話にできなかったかと思ってしまった。
これだと、いじめにしか見えない。

また、私がこの作品で注目していたのは、
身長が伸びなくてビーチバレーを諦めてしまった
かなたがどのようにしてビーチバレーに向き合うのかだったのだが、
ここについても納得できる答えは示されなかった。
身長の低いかなたが、ほかのチームと互角に戦うためには、
何らかの武器が必要になってくると思うのだが、
最後までそれは提示されず、何となく克服してしまう。
かなたのこれまでの悩みはいったい何だったのか、
私には全く分からなかった。

スポーツというのは気持ちが吹っ切れたからといって、
それだけで、すぐに何かが解決するようなことはない。
技術や体格、運動能力の差がはっきりと表れるのが
スポーツの残酷な面であって、素晴らしいところでもある。
相手を信頼するということだけで手に入れらるような種類のものではない。
そういう意味では、何かを必死になって手に入れなければならなかったのは、
初心者の遥はもちろんだが、かなたのほうが重要だったと思うのだ。

{netabare}そもそも競技者が2人しかいないビーチバレーにおいて、
1人がアタックを打たないで、ポーキーばかりで
(握り拳から中指を出す形で打ち、ブロックをかわして、
その後ろに落とすビーチバレーの技のひとつ)
相手を翻弄することなどできるのだろうか。 {/netabare}
『ハイキュー』の日向と影山とまでとはいかないまでも、
何かの武器を手に入れるという手法をとれば、
まだ納得できた。例えば、かなたの読みが練習によって
素晴らしくなり、身長が低くてもカバー力が半端ではないという
設定でも良かったかもしれない。
しかし、今の描き方だとスポーツものとしては
甚だ説得力が足りないと言わざるを得ないだろう。

また主人公の遥という人間像が見えてこない。
彼女は、なぜここまでビーチバレーに夢中にならなければ
ならないのかが分からないのだ。
これは、この作品の大きな欠点のひとつといえるだろう。
中盤で登場した大城あかりについても消化不良だ。
唯一、シークワーサーの歌だけは良かったが、
パートナーもいないで部に参加して、何を楽しむのだろうか。
彼女の登場は、遥とかなたの試合を応援する
第3者の視点という役目を負わされているだけのように思える。

{netabare}指摘を始めるとキリがないのだが、
遥とかなたのペアはなぜ全国2位の
紅愛と恵美里に勝つことができたのかも分からなかった。
ドライブサーブが打てるようになったから?
運動神経の良い子が1年で急成長するのは、
あり得ることなのだが、そこに説得力がない。
また試合のシーンが致命的に面白くなかったため、
物語に入り込むことができなかった。 {/netabare}

マイナスポイントばかりを挙げてきたが、
キャラクターの作画は安定して良かったし、
沖縄の海や風景も丁寧に描いていた。
OPとEDは爽やかで聴きやすい曲だ。
劇伴は『プラチナ・ジャズ』シリーズで知られる
ハウスDJのRasmus Faberが担当しているだけあって、
全体的にまとまっていて、カッコ良かったと思う。
胸が揺れたり、お尻をアップにするシーンの作画が
安定していて多かったのも男子にとっては美点といえるかもしれない。
しかし、やはりスポーツアニメとしては、
個人的には残念な出来という評価になってしまった。
私のような視点で楽しむアニメではなかったということだろう。

投稿 : 2024/04/20
♥ : 55

71.5 4 まんがタイムきららフォワードで漫画原作なアニメランキング4位
スローループ(TVアニメ動画)

2022年冬アニメ
★★★★☆ 3.5 (268)
779人が棚に入れました
海辺でひとり、亡き父に教えてもらったフライフィッシングを嗜む少女・ひより。 いつもどおりに釣りをしていると、いきなり海に入ろうとする天真爛漫な少女・小春と出会います。 一緒に釣りをする事になった2人でしたが、実は親の再婚相手の娘どうしで…? ひょんな出会いから「姉妹」になったひよりと小春と一緒に、「釣り」をしながらスローに過ごしてみませんか?
ネタバレ

nyaro さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

初めは偏見で過小評価してましたね。日常+ノウハウの良作でした。

 総括ですね。スク水女子がいきなり海に飛び込んだり、釣り針をひっかけたり、再婚同居とか鬱まっしぐらな設定で驚きましたし、ちょっと「アレアレ…おかしいですよ?」という感じでマイナスイメージが先行してしまいました。「また日常系かあ」という偏見も確かにあったと思います。が、結果的にレベルの高い日常モノ+ノウハウものだったと思います。

 完全にストレスレス設計ではなく、若干のスパイス的な負の感情があったし、登場人物の年齢層性別に幅があって、それが自然なストーリーになっていたのも、新鮮で良かったですね。で、癒しパートではしっかり癒されますし。

 ノウハウも料理と釣りでどっちつかずじゃね?という心配も大丈夫だったですね。まあやっぱり興味がもてたのは釣りの方かなあ。

 一方できらら系の特性で物語が中途半端でも気になりませんし、伏線とかテーマ性とかそういうのが無くても満足できました。初めの方は集中して見られなかった部分もあるので色眼鏡を外して再視聴してもいいかな、と思ってます。

 釣り版のヤマノススメですかね。日常+ノウハウにちょっと負の感情とスト―リーがある…みたいな面白さがちゃんとある、という良い意味で言ってます。是非ヤマノススメ同様2期が来るといいですね。



以下 視聴時のレビューです。


1話です。{netabare}初め、海で毛バリなんか使うかよ、と思って調べたら最近は使うみたいですね。勉強不足でした。虫を食べる渓流の魚向けだと思ってたらメバルは確かに釣れるみたいです。

 作品です。きらら系ということで、日常な気もしますがヤマノススメみたいに若干ストーリー性を感じます。完全な癒し系ではないということでしょうね。少し暗い要素も入っていますし、いきなり再婚で同い年の姉妹ができるというのは普通メンタル的にハードな設定だと思います。

 ただまあ、あまりシリアスにはならない気がします。コハルとヒヨリで小春日和ですね。これがまあストーリーの性格になるんでしょう。

 ヤマノススメみたいな話だとすればちょっと展開が楽しみです。ただ、1話の様子からして料理も釣りも専門性が中途半端かなあ…まあ、見てみないと分からないですけど。

 キャラデザの横顔、鼻のラインが極端に凹になっているかなり昔の感じですね。髪型は輪郭を隠すような最近の流行ですね。制服がリボンとネクタイなのって普通の高校だと有りなんでしょうか(調べたら選べる高校も多いみたいですね。これも勉強不足でした)。私服のセンスは…うーん…

 とにかく気軽に見られそうですし、なんとなく引っかかりがあるアニメなので今期の視聴候補ですね。

 なお、冒頭のスク水シーンは一応スルーしておきます。つかみ…なんですよね? {/netabare}

2話 ひよりちゃんってコミュ障じゃなかったでしたっけ?

{netabare}  ひよりちゃん、友達のお父さんと気軽に話せたり、積極的に釣りに誘ったりどうもコミュ障には見えませんね。いいですけど。
 キャラデザで睫毛に白いのが混ざるのが気になりますね。光沢なんでしょうけど白髪に見えます。

 思ったよりも釣りの話がありましたが…ちょっと物足りないかなあ…4種類の毛ばりの動きのところとかもっと見せ方が…それと釣りの技術に関してループとは何なのかどういう技術が必要か、釣れるポイントとかウンチクがもっとあってもいいですけど。

 OPで「料理・エフェクト作監」で鷲北恭太とおっしゃる方ががクレジットされていました。食戟のソーマの料理の作画ををやった方らしいですね。ということは料理には力が入るのでしょうか。{/netabare}

3話 ひよりちゃん、語りすぎ?

{netabare}  話そのものは家族の問題に焦点を当てて、かつ、釣りの話、料理の話とあって、そこそこ面白いですし、作品に求めるニーズも満たしていると思います。イワナの作画綺麗でしたね。イワナって湖とか海に降りるとマスになる…と思ってたんですけど湖で釣れるんですね。

 ただ、ひよりちゃん、語りすぎですね。というかそのほかの人たちも内面をセリフで垂れ流している気がします。セリフじゃないにしても分かりやすい表情とか。語るのではなくて演出を使うとか…説明セリフばかりだとやっぱり心情の表現が物足りなくなります。深さのチューニングが中途半端でせっかくの子連れ再婚という設定がかえってノイズになっている気がします。特に父母のキャラが薄っぺらいからなあ…そこがなあ。

 そもそも、家族の問題なら事件…つまりエピソードで見せた方がいいと思うんですけど…あっさりとこれでみんな仲良しならその設定は不要でしたね。仲良しJK同士が料理と釣りに…でいいと思います。設定活かすならこの後何かあるならいいですが。

 なお、梅干しのウンチクは良かったですね。こういう感じが沢山あると面白いと思います。バナナって何があるんでしょうね。気になります。

 まあ、継続視聴…でしょうね。 {/netabare}


9話です。ダーク設定がいい隠し味になっているのかも
 
{netabare} 初めはきらら系の日常に親の再婚とかきついダーク設定いるかなあ、と思ってたんですけど、そのおかげでキャラが描けていて、癒しパートがなかなかいい感じですね。だらだらした日常ものよりも、少しだけの辛さや涙が心の琴線に触れるせいでしょう、いい隠し味になっている感じです。

 話も海にいったり、渓流にいったり、釣り堀だったりと薄く広く話が展開するので飽きない感じですね。ちょこっと入るウンチクもなかなかいいレベルだと思います。キャラも増えちゃったけど、きらら系には珍しく家族…老若男女でてるのもいいですね。ちょっと新しいかもしれません。

 思っていたよりも面白いかもしれません。ちょっと消化枠として、ながらっぽくまとめて流してみてたらいつの間にか集中してみていました。引き込まれる何かはあるのでしょう。それがダーク設定とか家族の部分なのだと思います。9話、面白かったと思います。{/netabare}



11話 再婚と恋のキャラを話として上手く回収しましたね。

 10話のてんからという単語を始めてしりました。そしてやっと毛ばり以外のまともな釣りも出てきましたね。ちょこちょこと面白い知識がはいってきました。1話2話辺りはノウハウものとしてどうかなと思いましたが、なかなか機能していますね。

 イソメきましたね。いや無駄にリアルすぎるでしょう。なんでここだけ作画いいんだよ…そして寄生虫ですか…うーん。食欲が…で、その後釣った生サバの調理とか…胸がいっぱいです。ただ、文化祭回ってシリーズで一番面白い場合と、騒ぐだけ騒いで面白くない場合がありますが、本作は面白いほうでしたね。

 本作は可愛いとかそういう作画ではありませんが、給仕のコスプレのヒヨリちゃん、可愛かったです。


 11話です。あーモヤモヤですね。友情の優先順位的な嫉妬ですね。可愛いエピソードですけど、やっぱり心の闇的な感性が原作者にはあるんでしょうか。これは実際感じたことがある人じゃないと描けない気がします。

 日常系としては、どこかダークな雰囲気が漂いますね。そこが面白いんでしょうね。再婚話、恋ちゃんとの思い出を絡めて上手くまとめました。なかなか良かったですね。

 ここまでは日常系の要素もノウハウとしても面白かったうえに、ちょっとした友情家族のストーリーもなかなか良くできていました。ちょっと新しいですね。
 なお、やっぱり東山奈央さんの声はいいですね。追加声優って…でもOPはとばさず聞いてます。


 

投稿 : 2024/04/20
♥ : 23

えたんだーる さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

きららの皮をかぶった軽く闇(やみ)な人間ドラマ(釣りもやってます!)

まんがタイムきららフォワードに掲載の漫画原作は、連載は読んでいますが単行本は持っていません。

タイトルの「スローループ」はフライフィッシング(毛針を使った釣り)の用語から。フライ(毛針)のついた釣り糸を目的の場所に向かって送り出す(キャスティング)時の方法ですね。

キャラクターデザインは、原作からかけ離れてはいないものの過去のきららアニメっぽさに寄せた感じになっています。私はアニメのキャラデザの方が好きかもしれないです。

さて、そんな『スローループ』ですが…。

母親を亡くしている小春と父親を亡くしているひよりが親同士の再婚で血のつながらないしまいになってしまうという、ときどきラブコメ(の場合は男女ですけど)で見かけるような設定になっています。二人の名前をつなげると「小春日和」になるのはもちろん狙っているんでしょうけどね。

小春とひよりの他に、ひよりの幼馴染みである恋ちゃんを含めた三人がメインキャラとしてED主題歌でもフィーチャーされています。このときの三人でスクリーンを見ているみたいなアニメーションがけっこう好きです。

本作では基本的には、父から教えてもらったフライフィッシングにこだわりを持つひより、釣り用具店の娘として釣りに詳しい恋ちゃん、そしてそんな二人を通して釣りに興味を持ち元々得意であった料理で釣った魚を捌いてゆく小春、といった構図でほのぼのとしたストーリーが展開していきます。

ですがその裏では三人それぞれになんとなく闇を抱えて生きています。そんな三人がそれぞれの闇と向き合いながらお互いの距離を縮めてゆく、『スローループ』はそんな物語…。

個人的にはネタバレとは思わないのですが、三人の闇については一応改行を多めに挟んだ以下で言及しておきますね。





ひより: 実父にはとても可愛がられて育ち、そんな実父を亡くした傷みから立ち直りきっていません。母の再婚自体は祝福しているものの、再婚相手を自身の父親としては認められていなかった感があります。

小春: こちらも母と弟を亡くした経緯がかなり悲しい物であり、ひより同様父の再婚相手を自身の母親としては認められていなかった感があります。

恋: 父親同士も釣りを通して仲が良く、ひよりとは小さな頃からの長い付き合いであったはずなのに、ぽっと出の小春に「ひよりの隣」というポジションを取られてしまったという嫉妬めいた感情が生まれてしまっています。

投稿 : 2024/04/20
♥ : 21

ねるる さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.8

スパイス要素が響いてこない、日常系釣りハウツーアニメ

原作未読。

釣りハウツー作品。釣りの中でも毛針を使う"フライフィッシング"を題材とした、ゆるゆる日常系アニメ。

物語は、基本的に釣りをして、釣った魚を調理して食べる。という構成になっています。調理した料理は美味しそうで、魚料理が食べたくなります。
ただ、生徒が釣った鯖を文化祭でお客さんに提供するのは衛生的にあかんと思いました。寄生虫怖い。

特徴的なのは、メインキャラ2人が、片親同士の再婚で姉妹になったという設定なことです。物語が進む上で、亡くなった父親への思いや、新しく家族になっていく微妙な気持ちが描かかれますが、鬱っぽく描かれている訳ではないので、物語上のちょっとしたスパイスなのかなと思いながら見ていました。
当の本人たちは会った瞬間からすぐ打ち解けてるので、全然鬱っぽく無いです。むしろ必要なのかな?と思うくらいの明るさです。

日常系の割にはギャグシーンが少なく、ゆるさとほのぼの特化で、スパイス要素である家族についての話も響かなかったので、特に面白いと感じることはありませんでした。Theフツーという印象。

キャラクターについてもメイン2人である、ひよりの抑揚少なく喋る感じや、小春の子供っぽくて陽キャ過ぎる所があまり好みではなかったです。

題材であるフライフィッシングについては、毎話専門的な用語も多くでてきて、丁寧に説明している印象を受けました。ハウツーものとしては良かったと思います。

キャラクターに愛着もてれば、ゆるく見るには良い作品なのかなと思います。

投稿 : 2024/04/20
♥ : 17

67.8 5 まんがタイムきららフォワードで漫画原作なアニメランキング5位
球詠(TVアニメ動画)

2020年春アニメ
★★★★☆ 3.2 (250)
668人が棚に入れました
埼玉県、新越谷高校。この春入学した武田詠深(たけだ・よみ)は、そこで幼なじみの山崎珠姫(やまざき・たまき)に再会する。中学時代、受け止められるキャッチャーがいないために鋭く変化する「魔球」を投げられず、野球への気持ちをあきらめかけていた詠深。だが、強豪チームで実力を磨いていた珠姫は、詠深の変化球を受け止めることができた。幼い頃の約束を果たし、再びめぐり逢った二人は、クラスメイトの川口姉妹や仲間たちと共に停部中の野球部を復活させる。目指すは全国!新生・新越谷高校野球部の挑戦がここから始まる――。

声優・キャラクター
前田佳織里、天野聡美、野口瑠璃子、橋本鞠衣、永野愛理、北川里奈、富田美憂、宮本侑芽、本泉莉奈、佳村はるか、白城なお

Dave さんの感想・評価

★★☆☆☆ 2.0

アニメが決して妥協してはいけない部分

1. 作画が致命的
きらら作品って、キャラクターがかわいくてなんぼでしょ。そのうえでのストーリーだったり、演出だったり、個性だったり。そのベースがなかったら、潜水できない潜水艦ばりに本末転倒な気がします。

2. コロナのせいだとしても
CMのコミックス見ると、原作はそこまで酷いわけじゃない。なるほど、新型コロナの影響で本来の作画体制が取れなかったから?だからこの時期の作画崩壊批判はやめてあげてほしいという声優さんもいたけれど、実際にこのような残念作画を見ると、それなら延期すべきと思わざるを得ない。
厳しい言い方だけど、「コロナだからコックがいなくて、まずい飯だけど食べて!」って一流レストランが言ってはいけないように、クオリティを大幅に落としてまで世に送り出すのはプロとして失格ではないだろうか。画はだめだけどそのほかの点は…って、それならアニメである必要がないでしょう?ノベライズでいいじゃん。

3. スポコンに不可欠な「熱」がない
まあ、それ以外の点も特に褒められたものではないです。声優さんもきゃぴきゃぴトーンが耳障りで決して上手には思えないし(但しこれだけ画が酷いと、豪華一流声優が担当したところで印象が変わったかは怪しいものですが)、キャラ立ちも悪い。スポーツもので変なお色気を出してこないのだけは高評価ですが、いまいちグッとくる熱さもありません。きちんと努力もしている描写があるのですが、その描き方があっさりしていて、例えば有名作で言うと鬼滅の刃の炭治郎の訓練のような、思わず応援したくなるような感じがないのです。

料理人が味だけは妥協してはいけないように、アニメは画だけは決して妥協してはいけない、という本質を教えてくれる作品でした。

投稿 : 2024/04/20
♥ : 19

るるかん さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.5

野球観戦感覚で見ればいいんだね

最終話
{netabare}
中村と芳乃のシナリオは良かった。中村は強豪校からの転校生で、4番として、なかなか思うように活躍できない状況だったから、新越谷が勝つなら打たせてあげたいなぁ・・・って思ってました。
しかし、強いチームになりましたね。もともと才能のある選手の集まりっぽかったし、異を唱える気はない。今後、ドカベンの明訓高校みたいな常勝チームになるのでしょうか?
女子野球って司令塔はマネージャーがやるもんなんですかね?芳乃が全てを背負い過ぎてて、気の毒に感じたけどね。
結局、勝利で終了。めでたしめでたしでしたが、野球の試合における駆け引きを見せたいのであれば平凡だし、日常パートの色付けは、はっきり言って下手くそで試合の構成はまずまずとしても、女の子がやっている野球を魅力的に見せるストーリーにはなってないのが残念です。試合メインの女子高校野球を楽しみたい人にはいいでしょうね。
野球じゃなかったら、最終話まで付き合わなかっただろうなぁ・・・っていうのが私の正直な感想です。{/netabare}

11話
新越谷の監督って野球経験者な割には選手任せですね。僅差で点を取られたくない場面で必殺変化球を温存するのは疑問符だけど、これからより強くなる過程だと思えばアリなのかも・・・。優勝候補に勝負球を温存したまま善戦してるわけだから、かなり強いよねぇ。相手チームの主力の方がキャラデザ良いし、存在感あるなぁ。この試合の結末は原作を読んでない私にはちょっと楽しみです。せめて何かに特化した控え選手が2~3人いたら面白くなったのになぁ。

9~10話
梁幽館との試合に入ったが、新越谷は優勝候補と遜色ないチームになってるんですね。野球の試合をただ楽しむならいい感じだと思うけど、惹き付けられるシーンはあまり無いかな・・・。

ハチナイのソシャゲに二度目のコラボが始まったけど、球詠の選手は地味でキャラデザが良いハチナイキャラとの差が如実にでますね。でもゲーム内の方が断然画が綺麗です。私のチームには球詠ナインは必要ないし、欲しいとも思わないけどね。

全体的にパッとしないまま終わりそう。OP,EDは稚拙な詞と旋律で全く良くないし・・・ダーマエが作ってんじゃ仕方ないか・・・。なんかあまり心を擽られないシナリオで、贔屓じゃないチームの試合を観てるようです。どっちが勝ってもいいかな。

7~8話
いたって普通。初戦の影森高校の選手って試合に出る意味あるの? 練習より試合がしたいという気持ちは分かるけど、楽しい練習だけしたいなら、大会にでる必要ないのでは?何を意図してそういう思考の選手が投手をやっているのか理解に苦しむ。次の試合の方が面白いかな・・・影森に負けたら驚きだが、まぁそんなわけないでしょう。さっさっと勝って次いこう。
5~6話
野球経験者の集まりだから、練習・戦略次第で強くなるってことですね。野球の試合が観たい人にはいいのかもしれないですね。画的にもシナリオにも特筆することはなく、普通に強くなるのかな・・・?っ感じです。

3~4話
新越谷のメンバーは未経験者レギュラーは1名ですかね?ぶっちゃけ話は面白くないし、キャラデザと作画の両方が酷くて、コミックだけにしておいた方が良かったんじゃないかと思うくらいです。女子野球部のアニメに体型やユニフォームなどのリアリティーを求めてる人なら満足できるのかな? あまりに地味で華やかさがなく、シナリオや作画も微妙では、アニメにした意味が無いのでは・・・?原作は人気あるのか分かりませんが、原作ファンの方はがっかりされてるのではないでしょうか。

1~2話
導入は普通です。野球ですから最後まで見られる作品だと思いますが、キャラデザは色合いの関係もあって地味に感じますね。野球描写はハチナイよりいいかもしれないけど、あとは今後の展開次第でしょう。

因みに、ハチナイのソシャゲ内のストーリーはとてもしっかりできていて、ロングランできるならやってもらいたいくらいの内容です。ハチナイ1期は導入部で終わっているので、球詠もそうなるのでしょうかね? どちらの続きがアニメで観たいかと言われたら絶対にハチナイですね。キャラデザも内容もハチナイを越えないでしょう。でも野球は好きだから球詠も楽しみです。コミックの方がキャラがかわいい感じですね。

投稿 : 2024/04/20
♥ : 19

既読です。 さんの感想・評価

★★★★★ 4.8

どうした!4話!改め全話目をつむろう!無限ループなう!

2021年1月27日

原作も含め、めっちゃ面白いです。
好敵手もカッコ良くて、是非2期3期希望です。

2020年11月8日

もう3週目突入。

待田堂子さん脚本とは相性が合うのか?

「THE IDOLM@STER」
「Wake Up, Girls!」

観る度にハマってしまいます。

安直じゃない?

いやいや、かなり安直でした!

でも、こんなアニメは大好物です!

シーズン化希望です!



以下は初観時の感想です。
お粗末です。

こんな作画崩壊は初めて。

でも、内容は面白かったです。

画で言えば大腿がしっかり描かれて
話も安直にしないのが良かったです。

スポーツものって

「ハイキュー」も「あひるの空」も
もっと言えば「スラムダンク」も
1試合で12話使うし
モブに光当てすぎるしで
なかなか話が進まないのですが

その点、球詠はテンポ良かったです。

シーズン化して欲しいです。

投稿 : 2024/04/20
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