ペンギンで女子高生なおすすめアニメランキング 3

あにこれの全ユーザーがおすすめアニメのペンギンで女子高生な成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年04月25日の時点で一番のペンギンで女子高生なおすすめアニメは何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

93.4 1 ペンギンで女子高生なアニメランキング1位
宇宙よりも遠い場所(TVアニメ動画)

2018年冬アニメ
★★★★★ 4.2 (2763)
9620人が棚に入れました
いつだってボクらの一歩は好奇心から始まった。
見たことのない風景を、
聞いたことのない音を、
嗅いだことのない香りを、
触れたことのない質感を、
味わったことのない食物を、
そして感じたことのない胸の高鳴りを、
いつの間にか忘れてしまった欠片を、
置き去りにしてきた感動を拾い集める旅。
そこにたどり着いたとき、
ボクたちは何を思うのだろう。
吠える40度、狂う50度、叫ぶ60度、
荒れる海原を超えた先にある原生地域。
地球の天辺にある文明を遠く離れた遥か南の果て。
これは《南極》[宇宙よりも遠い場所]に向かう
4人の女の子たちの旅の物語。
ボクらは彼女たちを通して、
明日を生きるキラメキを思い出す。

声優・キャラクター
水瀬いのり、花澤香菜、井口裕香、早見沙織、能登麻美子、日笠陽子、Lynn、金元寿子、本渡楓、大原さやか
ネタバレ

scandalsho さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

会話のテンポやキャラの動きが抜群!

最終話まで視聴しました。
この作品はマジでヤバいです。
軽く死ねます(笑)。

物語として抜群に面白い。
背景は綺麗。
登場人物は表情豊か。
良く動くキャラ。
そして、何と言ってもこの作品の1番の魅力は女子高生4人組のテンポの良い会話。
さすがの豪華声優陣。

こんな作品に出会えるから、アニメは止められない!

OPの曲と画だけで引き込まれる作品。
OPの4人の女子高生の笑顔が眩しい。
OPだけでも思わず泣きそうになってしまう。

見ているだけで心が躍る名作。
未来に語り継ぐべき名作。
誰にでも安心して勧められる名作。

お気に入りの棚へ直行です!

【以下は、各話レビュー的な「何か」です】(笑)
{netabare}
【第1話】
起承転結の「起」としては上々。
一気に物語に引き込まれた。

何かしなきゃと思いつつ、なかなか行動に移せなかった主人公。
立ち上がりは明らかに『けいおん』っぽい印象。
唯ちゃんもこんな感じだったよね。確か・・・。

南極に行くことを夢見ている少女との出会い。
そして、コンビニ店員の少女の意味深な行動。

広島に出発する前、家族にも見付からないようにこっそりと、部屋を綺麗に掃除してから出発するところは感動した。

主人公(玉木マリ)の決意が伝わってくる名シーン。

【第2話】
コンビニ店員の日向(ひなた)が加わり、報瀬(しらせ)のポンコツぶりが明らかになった第2話。

ラストに出てきた少女が4人目のメンバー?

キャラは良く動くし、背景も綺麗。
会話のテンポも抜群。さすが豪華声優陣。
ますます目が離せない作品になってきた。

【第3話】
結月登場。物語が大きく動き出す。

相変わらず、会話のテンポが抜群。
さすが、豪華声優陣!

【第4話】
いよいよ、南極チャレンジの隊員としての訓練が始まる。

相変わらず会話のテンポが抜群。
キャラの動きは軽快だし、表情も豊か!

一つの目標に向かって、一致団結している姿が美しい。

これはきっと、名作になるに違いない!

【第5話】
結月はしっかりプロの仕事を披露。
対して報瀬は再びポンコツぶりを披露。

少し気にはなっていたんだよね・・・。
めぐみちゃん。
キマリの『絶交無効!』はとても良いセリフだと思った。
皆が少しずつ成長していく物語。

【第6話】
相変わらず、良く動く。表情豊か。会話のテンポが抜群。
そして、良く出来た物語。

シンガポールに到着した4人。
何故か、ひなたの様子がおかしい・・・。

ここから始まる『ちょっぴり心温まる』コメディ回。

【第7話】
真顔に戻った香苗のセリフ『3年前、あの時約束したように、あの時のメンバーは全員帰ってきました・・・。』
この時の、メンバー全員の表情が非常に良かった。

本来ならばいるはずの貴子の姿がそこにはない・・・。

そして、報瀬の挨拶。
どこか貴子の面影を残す報瀬の挨拶。
メンバー全員が盛り上がらない訳が無い。

相変わらず表情豊かで会話のテンポが良い。

プロとしての仕事を見せる結月とは対照的な報瀬のポンコツリポート再び!

さあ!いよいよ出発だ!

【第8話】
観測船に乗り込んで、いよいよ出発!

船内でのリアルな日常が笑える。

船酔いで苦しむ4人。思わず心が折れそうになる。
「選択肢はずっとあったよ。でも選んだんだよ、ここを」
「選んだんだよ!自分で!」
キマリの言葉に、初心を思い出し再び奮い立つ4人。
日向「良く言った!」
結月「どこいくんです?」
日向「・・・、トイレ」
しっかりオチ付きで。
こういう所がこの作品の魅力。

【第9話】
この作品は、本当に1話1話が神がかっている。
物語の構成が絶妙だ。
笑いと感動が上手く散りばめられている。

前半はコメディ。
4人に財前、弓子が加わった6人でのテンポの良い会話が笑いを誘う。

中盤~後半は感動的な話が続く。

《吟と報瀬のくだり》
吟が、『報瀬は自分を恨んでいる』と考えるのは当然だろう。
最終的に貴子の捜索終了を決めたのは、隊長であった吟なのだから・・・。
報瀬が、『吟のことを恨んでいるかどうか分からない』のも理解できる(気がする)。
母と吟の繋がりを、小さな頃から見てきたのだから・・・。

《砕氷船のくだり》
南極観測について、日本が諸外国からひどい扱いを受けて・・・。
という話は、以前聞きかじったことがあったけど、アニメとはいえ、映像付きで見せられると迫力がある。
報瀬は、幼い頃、吟からこの話を聞かされていた。
『何度も何度も何度も・・・。諦めかけては踏ん張って進んだの。』
だから、報瀬は諦めずに南極を目指した・・・、という話との繋がりが美しいとさえ思った。

《『ざまぁみろ!』のくだり》
報瀬の『ざまぁみろ!』
今回の観測隊メンバー全員の『ざまぁみろ!』
それぞれの思いが詰まった『ざまぁみろ!』

南極観測で諸外国からひどい扱いを受けた先人たちも、恐らく『ざまぁみろ!』と叫んだであろう。
そんな事まで想像させてくれる、名シーン。

【第10話】
ツボ魔人の回。
んっ?違った!

『友達ってなんだ?』の回。
小さな頃から芸能活動をしていた結月は、友達の作り方が分からない。
そもそも、どうなれば友達なのか?
「私、一度も言われていません。”友達になろう”って」

だから、『友達誓約書』なんておかしな物を作ってしまう。
子供の頃から”契約”の世界にいた弊害だろう。

結月以外の3人も、傍から見ている我々視聴者も、苦楽を共にする中で、彼女たちが『親友になれた』と思っていた。
結月自身には全く悪気も悪意も無いので、キマリが泣いちゃう気持ちもよく分かる。

色々考えさせられる回でした。

【第11話】
日向の過去~心の闇編。

いつも底抜けに明るく、ムードメーカーの日向。
だけど彼女には、ついつい忘れそうになるけど、『高校を中退した』という過去があって・・・。

普通のアニメなら、『仲直り~ほのぼの的』な展開になるだろう。
しかし、この作品は一味違う。
本物の親友達が、親友の気持ちを、痛烈な言葉で代弁する。

いやぁ、凄い回だった。
素晴らしい物語だった。
こういうのを”神回”と呼ぶんだろう。

第1話からの物語の全てがネタ振りになっている、完璧な物語。
第1話から完璧に安定している作画から生まれる、豊かな表情。

この作品はどれだけ笑わせて、どれだけ泣かせてくれるのか・・・。
未来に語り継ぐべき作品となるのは、もはや間違いないでしょう。

【第12話】
ついに報瀬の母が行方不明になった、その場所へ・・・。

まさか、11話に引き続いて12話も神回とは!

確かに報瀬は、南極行きが決まってからも、南極に到着してもずっと、日本にいた時と同様に、普通に過ごしていた。
南極まで来ても、母親の死が実感出来なかったせいかも知れない。

しかし、ここまで積み重ねてきた報瀬の日常が、この日ついに覆される。

そこには、母親の大事なPCがあった。

ロクインPASSは報瀬の誕生日。
母親にとって、報瀬がどれほど大切な存在だったのかが、我々視聴者にも伝わってくる名シーン。

報瀬はメールの送受信を・・・。
すると、この3年間、報瀬が母親宛に送り続けていた大量のメールを受信する。
報瀬が母親の死を実感し、受け入れることが出来た瞬間を描いた名シーン。

【第13話】
神回、感動回の連続のこの作品。
「13話こそ泣かずに視聴しよう」なんて私の思いは、軽々と粉砕していきます(笑)。

最終回なので、EDが特別なのはありがち。
EDのスタッフロールが【藤堂 吟 能登麻美子】から始まる。
「あぁ、特別なEDが始まるんだ!」
否応なしに期待に胸が高鳴る。

キマリの「ここで別れよ」は、とても良かった。
普通なら北海道に帰る(だろう)結月と別れて、報瀬と日向、キマリの3人で帰ることになったはずだ。
しかし、それでは結月のみに”ボッチ感”が出てしまい、我々視聴者にとって、悪い印象が残ってしまう。
それでは、ここまで積み重ねてきた4人の友情物語が台無しになってしまう。
それを避けるための、自然な演出。
お見事です。

日向とキマリがアルバイトをしていたコンビニの張り紙も、とても良かった。
本文中にも、全く手抜きが無く、実にリアル。
『三宅日向 南極に行ってます!』
「コンビニ自慢の看板娘、三宅日向さんが・・・」
「当コンビニは、4人を応援しています!がんばれ!女子高生リポーター!!」
店長の心温まるメッセージ。
11話に登場した、日向の”元”友人達とは違う、本当の愛情が感じられてとても良かった。

ラストのめぐみちゃんマジか!?
北極って!?
{/netabare}

投稿 : 2024/04/20
♥ : 239
ネタバレ

素塔 さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

小淵沢報瀬の青春

新たな青春のバイブル。
そう呼んでも過言でないほどの熱烈な支持を集める「よりもい」について
今さら何かつけ加えることがあるのだろうか?
あるとすれば多分、「よりもい」のネガティブ補正だろうか。
誤解を招きそうなのであらかじめ断っておきたいが、
批判的なことを書いて評価を落とす、などという意味ではない。

南極を目指した四人の少女たちの友情と成長を描くメインストーリーは
ネガティブなものがポジティブに昇華される、いわゆる王道展開になっているが、
充実したストーリーを1クールに圧縮した結果、異常に密度が高くなり
ストレートでわかりやすいメッセージが頻出する一方、
心情には含みのある表現が多く用いられる。そして、複雑なニュアンスは往々
ポジティブな方向に解釈される傾向があるようだ。

作品の中心を貫く軸は、小淵沢報瀬の喪失と再出発の物語である。
彼女の葛藤のリアリティーこそが本作の真髄だと自分は考えている。
その心理プロセスをたどり、ニュアンスを正確に読み取るためには
あえてネガティブを強調した解釈が必要なのではないか。
それによって本作が、底の浅いポジティブ礼賛とは一線を画した
確かな内実を備えていることが確認されるだろう。
「よりもい」の本当の深さを測定するために投げ下ろされる
測鉛のようなものに、この作業がなればよいと思う。


{netabare}
何度も何度も挑戦を繰り返し、困難な現実を突破する。
こんな極度に明快で前向きなメッセージがこめられたエピソードが
何重にもオーバーラップされながら畳みかけてくる。
(氷を砕き前進する饅頭号、南極観測の歩み、縄とびの習得・・・)
その結果、その直後の報瀬による南極到着の第一声「ざまあみろ!」は
痛快な勝利の雄たけびとなり、観測隊総員の凱歌となる。
ポジティブな方向への補正がはたらく、典型的な例である。

この場面をどう捉えるかによって、全体の印象は異なってくるだろう。
本人がこのときのことを全く憶えていないという驚愕の事実が第12話で明らかにされる。
長年の願望がかなえられた瞬間の記憶がない、この異常さをどう考えるべきか。
報瀬にとって南極とは何なのか。この大前提に立ち戻って
彼女のモチベーションに潜んでいる屈折を凝視しなければならない。

「淀みの中で蓄えた力が爆発して、全てが動き出す!」
走り出した青春の目的地。宇宙よりも遠い場所。
青春の可能性が結晶した、輝かしい南極のイメージの陰で
報瀬の南極は正反対のベクトルを指している。そこは何としても、
青春を丸ごと棒に振ってでも行かなければならない妄執の場所だ。

自分は覚めない夢の中にいる。報瀬はそう表現する。
もう母が帰ってくることはない。頭ではそう理解していても心が追いつかない。
喪失の苦しみが癒えることなく固着してしまった、宙づりにされた日常。
帰らない母を待つ日々が、永遠に同じように続いていく恐怖のなかで
南極へ行く。このドラスティックな計画だけが唯一の心の支えになった。
目標が困難なことはむしろ好都合だった。どんなに周囲から嘲笑されても
あるいは行く手を阻まれても、それがいっそう心を奮い立たせる。
負のエネルギーを推進力に変換して前進する疑似ポジティブ。
そうしたメカニズムをここに想定するのが自然なのではないか。

南極に着いたらきっと感動して泣くだろう。だがそうはならなかった。
気持ちの整理がつかないまま、一番表層にあった感情が爆発した、
その結果が「ざまあみろ!」なのだろう。
身についた虚勢が、反射的に出たのだともいえる。ここにあるのは
虚像の南極にすがりつくことで危うく精神の平衡を保ってきた痛ましい姿だ。
南極を目指す真の動機は、現実逃避だったとさえいえるだろう。


最後の目的地への出発をためらう報瀬。その背中を押したのは隊長の
「思い込みだけが現実の理不尽を突破し、不可能を可能にし、自分を前に進める。」
という言葉だった。もちろん、ポジティブに受け取るのが普通だろうが、
ここも逡巡する報瀬の心情に引きつけてネガティブ補正を加える。

出発をためらう理由として、最後の場所で何も変わらなければ
永遠に喪失感の中に取り残されてしまうという恐怖が打ち明けられる。
そのもう一つ奥にはおそらく、南極という目標が失われ
喪失を埋め合わせる支えがなくなってしまうことへの恐れがある。

宿舎の部屋の床に、一枚一枚、紙幣を並べながら
一心に南極を目指してきたこれまでの過程を振り返るシーンがある。
無我夢中で突き進んできた日々の結実である百万円は
はたして彼女に前進する勇気を与えるだろうか。自分にはそうは思われない。
南極行きの資金を蓄えることからして、あまり正常ではない。
ほぼ実現不可能な事柄を計画的に準備するというのはどこか倒錯的だ。
追いつめられた報瀬の現実逃避と見るほかない。

母の不在は、際限のない遅延にほかならず、
待ちつづける心が崩壊しないためには、自分の方から出向いていくしかない。
そのとき「お母さんが待っている」という思い込みが仮構される。
言い換えればそれは、南極に行きさえすればすべてが変わると信じることだ。
だが南極に来ても何も変わらなかった。
むしろ到着してからが、本当の葛藤のはじまりだった。

それでも、最後の旅に出発する決断をしたのはなぜか?
自分の「思い込み」と孤独な日々に決着をつけるため。そう考えたい。
そして、南極に来た本当の「意味」を見つけるためではなかったか。
この作品が一歩を踏み出す勇気を描いていることは間違いない。
たとえ結果が恐ろしくても、進まなければならない時がある。
それを決断するのは自分だが、その勇気を与えてくれる大切な存在があること。
やがて開示される本作の主題が予見されているように思える。


思い込みに決着をつけるために、その思い込みを貫く。
これが報瀬の出した結論だったように思える。
「お母さんが待っている」という彼女の思い込みは実は正しかったのだ。

旅の最後の目的地、内陸基地で母のパソコンが見つかった。
宿舎の部屋で起動させる報瀬。メールの受信がはじまる。
すべて未読の、1000通以上の、母に宛てた自分のメール。

事実だけを見れば、母の死が確認された、ただそれだけだ。
報瀬の内面に即してみれば、ようやく母の死が現実として受けいれられて
覚めない夢から脱け出せた、というような説明になるだろう。
しかしこのシーンの衝撃的な迫真感を解するにはそれだけでは足りない。
逸脱を覚悟のうえで、イマジネーション主導の主観的解釈を試みる。

メールのタイトルが一つの例外もなく「Dear お母さん」であること、
ここには多分、作り手の意図があるはずだ。

Dear お母さん Dear お母さん Dear お母さん Dear お母さん Dear お母さん・・・

次々に表示されていくタイトルの連続は
いつしか心のなかで繰り返される呼びかけに変わってゆく。

・・・Dear お母さん Dear お母さん Dear お母さん Dear お母さん! お母さん!
お母さん! お母さん! お母さん! お母さん! お母さん! お母さん!・・・

呼びかけても、呼びかけても、呼びかけても、応答しない母に
報瀬は必死になって呼びかけつづけている。何十回と、何百回と。それでも応答はない。
嗚咽がこみ上げ、ついには耐えきれずに本当の叫びがほとばしる、
「お母さん!お母さん!・・・」

この経過は、臨終の疑似体験そのものではなかったか。
彼女はいま、この瞬間、母の死に直接立ち会う経験をしているのだ。
心の内部の現実はしばしば、通常の現実を凌駕する現実感をもたらすものだ。
これは欠落したままだった「本当の喪失」が現実になった瞬間である。
喪失の先へ歩き出すためには絶対に必要だったこの段階を通過させ
宙づり状態の喪失から報瀬を解放するために、貴子は待っていたのだと想像したい。


「本当の喪失」の経験という大きな結末を経て、
本作の主題に結びついたもう一つの結末に目を転じていこう。
あえてネガティブな心理を強調し、報瀬が目指してきたものが
喪失を埋め合わせるための「虚像の南極」だったことをしつこく示そうとしたのは、
この主題をより明瞭に浮彫りにしたかったからだ。

ここまで何度となく「本当の」という形容を使ってきたと思うが、
「よりもい」は四人の少女が、それぞれの「ほんとう」を探し、見出してゆく物語だ。
「ほんとうの友だち」を求めつづけて、ついに見つけることができた日向と結月。
「ほんとうの青春」を求めつづけて、ついに見つけることができたキマリ。
言い換えれば「よりもい」で描かれる四人の成長を促した決定的な契機、それが
「ほんとう」の発見なのだ。

報瀬の物語の結末にあるのも、もう一つの「ほんとう」の発見だ。
最後の旅の途上で、南極は好き? と問われたキマリがこんな風に答える、
一人だったらわからないけど、みんなと一緒だったから南極が好きになった、と。
そう告げられたとき、報瀬は自分が南極に来た本当の意味を知ったのだ。

 Dear お母さん。友達ができました。
 ずっと一人でいいって思っていた私に、友達ができました。
 ちょっぴり変で、ちょっぴり面倒で、ちょっぴりダメな人たちだけど、
 一緒に南極まで旅してくれる友達が。
 ケンカしたり、泣いたり、困ったりして、それでも
 お母さんのいたこの場所に、こんな遠くまで一緒に旅してくれました。
 私はみんなが一緒だったから、ここまで来れました。

報瀬にとっての「ほんとうの南極」がここにあった。
これをメールで母に伝えずにいられなかったのには明確な理由がある。
それは、自分が見つけたこの南極が、母が愛した南極と全く同じだったとわかったからだ。
日本への帰路に就く日、隊員たちの前で報瀬は南極への想いを語る。
かつて自分が南極に抱いていた複雑な感情と、いま感じている気持ちと。

 そして、わかった気がしました。
 母がここを愛したのは、この景色と、この空と、この風と、同じくらいに
 仲間と一緒に乗り越えられるその時間を愛したのだと。
 何にも邪魔されず、仲間だけで乗り越えていくしかないこの空間が
 大好きだったんだと。

過酷な自然と向き合いながら、仲間と過ごしたかけがえのない時間。
母がこの場所を愛したその同じ想いを直接、経験し、体感し、実感できたのは
自分にもまた、一緒に乗り越えてきた仲間たちがいたからなのだ。
報瀬はこうも願っていた。母が言ってた南極の宝箱をこの手で開けたい、と。
その願いはいま、すべてかなえられた。
自分たちの、四人の南極を手に入れたことによって。

 お母さんが見たのと同じ景色が、私にも見えますか・・・。


広大で、無機的で、どこまでも非情な世界。
すべてが剥き出しで、純粋で、裸のままの自然は
うわべやごまかしをきっぱりと捨て去ることを要求してくる。

この背景の中でこそ、四人の成長は鮮烈に視覚化されて直かに心を撃つ。
壮大なパースペクティヴの中に置かれることで
どれほどささやかに見えても、それが本当のものであるならば
そのかけがえのなさは輝きを放ち、この先に待っている日常へとつながってゆく。

バッサリと髪を切り、形見のパソコンも南極に置いていく報瀬。
つまりは断ち切ったのだ。百万円を南極に残した真意もここにあるだろう。
空虚な心を何かで埋め合わせる必要はもうなくなった。
代わりではない「本物」を手に入れたから。
「私はここが大好きです。必ずまた来ます、ここに!」

最後に現れるオーロラは、初見時はややくどいようにも思えたが、
これが報瀬と母との物語を締めくくり、同時に南極の旅の本当の意味を要約した
象徴的なシーンであることが、いまならわかる。
それはまた、三年の歳月と一万四千キロの距離を越えて
母娘の会話がつながった瞬間だった。

「本物はこの一万倍綺麗だよ」「知ってる…」
{/netabare}


話が大きくなって恐縮だが、「探求譚」という伝統的な物語のジャンルがある。
その源流は中世ヨーロッパの聖杯探求譚、さらには遠くギリシャ神話にある
アルゴー船の金羊毛探求譚にもさかのぼれるだろう。
この探検船の乗組員は「アルゴノート」と呼ばれた。
(因みにWikiで検索する際は原語の「アルゴナウタイ」の方が詳しい。)

それぞれの「ほんとう」を求めて、はるかな南極の地まで旅をした四人の少女。
こんな風変わりな現代のアルゴノートたちが新しく生み出した物語、「よりもい」は
古い古い物語の系譜の、遠い遠い末流に連なるものではないだろうか。
青春アニメの枠の中だけに収めてしまうのはちょっと惜しい気がする。

(2020/12/6 : 初投稿、2022/7/28 : 改題)

投稿 : 2024/04/20
♥ : 47
ネタバレ

フィリップ さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

NYタイムズ紙が選ぶ2018年ベストTVショー・国際部門に選出(それぞれが一歩踏み出す物語)

女子高生が南極に行くという突拍子もない話を丁寧に描ききった名作。
1話目を初めて見たときから、これは良い作品になるのではないかと感じていたが、その通りに、最初から最後まで夢中にさせてくれる優れた作品だった。

様々な悩みを抱える多感な高校生たちが、何かを変えるために南極を目指すというストーリーが新鮮だったし、ほかにはないオリジナリティをもっている。そして、主人公の4人たちがお互いを思いやり、自分たちの悩みを昇華させていく各話の見せどころがしっかりと描かれており、胸に迫ってくるものがある。

見終わったあとに、自分も何かに挑戦してみたくなる素晴らしい作品だ。
(2018年3月29日初投稿)

(2018年5月17日追記)
{netabare} 100万円の札束を落としたことがきっかけで、それを拾った少女とともに最後はタレントまで巻き込んで、南極行きを成功させる。
これを字面だけ見たら、「そんなことあるわけない」のひと言で終わりだろう。
だいたい携帯で決済ができる時代に札束を持ち歩くことがどれだけ現実離れしているのかは、作り手も十分に承知している。観ている私も「オイオイ」と突っ込みながらも、100万円という現金からつながっていく展開と関係性がとても面白かった。

そして、現実では女子高生は南極に行くことはできない。
ツアーなどで行く方法はあるが、昭和基地に行くためには、南極観測隊の乗組員になるか「しらせ」の同行者になるしかない。同行者は、研究者や新聞記者、教員などの人々で構成されている。これまでの最年少参加者は設営のエンジニアで20歳の男性だという。

しかし、これはそれほど重要な部分ではない。
そもそもこの作品は、「女の子たちが頑張る青春ストーリーがつくりたい」「行ったことのない場所を描いてみたい」というのが出発点。それをいかに「本当のことらしく」「テンポ良く」描いていくのかというのがポイントで、そういう意味では、この作品は十分に成功していると思う。

4人の友情関係に至る部分に説得力がないという意見もあるが、全くそうは思わなかった。友人になるときの描き方は難しいもので、これは本当に人それぞれだと思う。気の合う者同士だと一瞬にして何年も交流があったような深い関係になることもあるし、長い時間をかけて構築していく関係性もある。お互いの性格や、その時に何を欲していて、何を目指しているのかということも影響すると思う。
そういう意味では、4人は自分たちが欠けているものをそれぞれ補って、ひとつのことを共に目指していける絶妙なキャラクター像だと感じた。
報瀬とキマリが仲良くなる描き方はとても腑に落ちたし、結月がほかの3人と一緒なら南極に行くと宣言する話はとても好きだ。3人と結月との関係性の深め方は、私にとっては説得力があった。全体的にコメディタッチの部分とシリアスな部分の匙加減が心地良く、楽しく見せるための工夫がなされていると感じた。

全話を13話で終わらせなければいけないというオリジナルストーリーの関係上、カットしなければいけなかった部分は多々あっただろう。しかし、女子高生が集まって、南極まで行って帰ってくる。しかも、行方不明になった母親への想いを決着させるという大きな問題をはじめ、4人の問題を何らかの形で解決させることをこの話数で完結させたのは、本当に素晴らしいと思う。無駄と思えるシーンはなかったし、やり切っている。

南極のシーンや仕事ぶりをもっと見たかったという意見もあるが、この話は、そこがテーマではない。女子高生たちが自分たちの悩みを昇華させて一歩踏み出すことが最も重要で、それをやるために余計なものは全てカットしている。しかし、もちろん南極についてかなり突っ込んで調べていて、公式サイトをチラッと覗いてみただけでも、この作品のためにどれだけ綿密にしっかりと取材を行ってきたかということを垣間見ることができる。

また「環境汚染をすすんで行っているバカな話だ」という間違った批判は放映直後からあった。赤いシロップで線を引いてソフトボールで遊ぶ最終回のシーンのことだ。これは、実際に観測隊がレジャーで行っていたことを取り上げている。何もない場所なので、どんなことをするにしても面白いイベントにしようとしていたという実際の楽しみ方がよく分かるシーンだ。シロップで氷上に線を引いたところで環境汚染になる可能性は極めて低いそうだ。

しかし、もちろん、試合が終わった後、そのシロップの部分は全て掬い取って、皆でかき氷としていただいたのだという。やはり、少しでも環境に影響を及ぼす可能性があることはやらないように最大限に配慮していることはHPでも紹介されている。研究者たちも赴いている地で、さすがに変なことをやるわけがない。アニメでもそこまで描写していれば良かったのだが、かき氷を食べるのはその前のシーンでも登場しているし、わざわざ再度やる必要もないという判断だろう。

ラストの100万円を置いていくところ、めぐっちゃんが北極に行っているところなどは、驚かせてくれたが、このまとめ方も悪くなかったと思う。特にこの100万円は、始まりであり、終わりでもあったというのは清々しい。現実的には100万円を持って帰るのは当然のことだが、南極に行くためにずっと苦労して貯めたお金がきっかけだったが、それを何とも思わなくなるほど大切なものを得たということだ。そして、再度、南極に来る理由にもなるだろう。
めぐっちゃんのシーンは色々な考え方があるが、めぐっちゃんの性格などを考えたのと、尺の問題だったかなとも思う。あの5話に決着をつけようと思うと、なかなか難しい。苦肉の策だったようにも思えるが、私にとっては大きな問題とは感じなかった。

全体を改めて思い起こしてみると、1話からのテンポ感、どこをどのように時間をとって見せていくのかというバランス感覚が絶妙で、とても完成度が高い作品だと思う。見せるところはしっかり見せ、感動させるところは、じっくりと描き切り、笑って泣ける作品に仕上げた。このストーリーを13話でやり切ったということに敬意を表したい。 {/netabare}

(2018年12月10日追記)
NYタイムズ紙が選ぶ2018年ベストTVショー・国際部門の10本に選出

12月4日のニュースなので、もう知っている人も多いかもしれないが、よりもいがNYタイムズ紙が選ぶ2018年ベストTVショー・国際部門の10本に選出された。これはドラマも含まれた中からというから大したものだと思う。選評の訳文は以下のもの。

日本の南極の研究機関への科学的探検に参加した4人の10代の少女についての、大胆で楽しいアニメシリーズは、かなり特定の視聴者向けの番組に思えるかもしれません。しかし、脚本の花田十輝、監督のいしづかあつこによる『宇宙よりも遠い場所』は、年齢や文化の境界を越えて翻訳されるべき面白く感動的な成長物語です。この作品は、友情がどのように青年期の不安や悲しみを克服できるのかということについての絶対的に本物の描写をしています。

選出された10本には、ヒュー・グラント主演のイギリスの実話ドラマ『英国スキャンダル』や2011年から続くスウェーデン・デンマーク合作の『ザ・ブリッジ』、世界的に評価されているスペイン・ドラマ『ペーパー・ハウス』などの人気作が名を連ねている。全体で600本を超える作品のなかから厳選されたとのことで、アニメは、よりもいだけだ。NYタイムズは世界的に知られる新聞だけに、これをきっかけにより多くの人々に視聴されれば嬉しい。

投稿 : 2024/04/20
♥ : 181

69.2 2 ペンギンで女子高生なアニメランキング2位
恋愛暴君(TVアニメ動画)

2017年春アニメ
★★★★☆ 3.3 (404)
2107人が棚に入れました
ある日突然、男子高校生・藍野青司のもとに任意の二人を強制的にキスさせるという
不思議アイテム「キスノート」を持った死神風の少女・グリが現れ、
“24時間以内にキスしないと書いた者(グリ)は死に、書かれた者(青司)も
一生童貞のまま生涯を終える"と告げ・・・。
愛のキューピット(?)グリと青司とその仲間たちが“キスをする相手"を求めて
繰り広げるハイテンションラブコメディにあなたもきっと恋がしたくなるはず(!?)。

声優・キャラクター
青山吉能、小野賢章、沼倉愛美、長野佑紀、原由実、檜山修之、大塚芳忠、子安武人、堀内賢雄、内匠靖明、高橋李依

えたんだーる さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

1話:「このパクり具合からすると…」

オマエ、作中でそれを言うのか(笑)!
(何が「パクり」かは第1話でご確認ください。)

という訳で真に「ラブコメディ」。いや、「むしろコメディのためにラブはある」みたいな異常作品。他作品に優先して観るほどではないですが、けっこう笑えます。

いや、原作マンガはまったく存じませんでしたが…。切っても惜しくはなさそうなのに、なんとなく観るかも。

→とりあえず完走しました。また改めて更新します。

投稿 : 2024/04/20
♥ : 28
ネタバレ

明日は明日の風 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.5

変化球なラブコメ…最初の設定は何処へ? 

このタイトルを見たとき、けっこうハード(重厚な)なラブコメなのかな?と思っていたら、別の意味でハード(ヤンデレ)でした。

主人公の青司がヒロインたちの騒動に巻き込まれる、いわゆるハーレム系なんですが、ヒロインたちが強烈すぎです。
メインヒロインのグリ。{netabare}天使と悪魔のハーフという、設定そのものが変化球。天使なのに確かに見た目が悪魔っぽいからなにかあるのかな?と思っていたら…。でも悪魔バージョンのビジュアルはなかなかのものでした。{/netabare}この子の存在そのものが騒動に巻き込む原因ではあります。

もう一人のメインヒロイン茜。こっちの茜は超ヤンデレ。青司のためなら殺傷も厭わない…行き過ぎであると思った。青司が本気で好きなのはよく分かるんですけどね…。それにしても今年、茜が多すぎな件。まぁ、いろんな茜がいるから良いのですけどね。

茜の腹違いの妹柚。茜好きすぎだけど、実は一番まともな(?)子だった。従妹の樒。ちょっと恐い、サイコすぎ。この子が最後にまともには…まぁいいか。

グリが天使悪魔なら、ヒロインたちは本人もバックがとんでもないという、変化球。話の内容よりも、キャラを追いかけた方が楽しめるように思いました。最後の感動系、この作品に必要かどうか、難しいところです。ドタバタ系のラブコメが好きな人にお勧めします。

投稿 : 2024/04/20
♥ : 27
ネタバレ

こた さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

なかなかに良いアニメに出会った?

この手のアニメは失速するのが常なので期待はしておりませんでした……が。
次回最終回というところまで観終えて失速は感じさせられない、なんとなんと!!(ノ゚ο゚)ノ
思い返してみると、最初からけっこう衝撃ありました。
ヒロインと主人公が「キス」というのは、たいてい御法度だと思ってた。もしくはラストのシーンにもってくるとか。
{netabare}それがいとも簡単に段階を乗り越えてしまった……驚 {/netabare}というところから始まり、それからは何となくグリちゃん面白い子だな~かわいいな~(しかもヤンデレっ娘と百合っ娘つき)という感じで、まあでも大体飽きてくるだろうなと思いつつ、それが暇つぶしにはグットチョイスな作品だったのである。
OPの感想は、正直「なんかびみょ…」だったのだけれど、サビ入ると「なかなかにいい!」ってな感じで好きです(Wake Up, Girls!だったか!)。

なかなか良い作品(グリちゃんがかわいい)ですのでおすすめですよ。

(ふぅ、賢者タイムにでも観るか( ̄。 ̄)―)←冗談です

追記
ヒロインのキャストさん方これからブレイクしてほしいですね!

投稿 : 2024/04/20
♥ : 36

75.8 3 ペンギンで女子高生なアニメランキング3位
白い砂のアクアトープ(TVアニメ動画)

2021年夏アニメ
★★★★☆ 3.6 (443)
1336人が棚に入れました
「――見えた?」くくるは、そっと、がまがま水族館のヒミツを教える。「ここではときどき、『不思議なもの』が見えることがある」夏の日差しが降り注ぐ、沖縄。那覇市内からバスに乗り1時間あまり揺られた先に、その水族館はある。沖縄本島南部、美しいビーチのすぐ脇にある、ちいさな、すこしさびれた「がまがま水族館」。18歳の女子高生・海咲野くくるは、そこでまっすぐ、ひたむきに仕事をしていた。祖父に替わって「館長」を名乗るほど、誰よりもこの水族館を愛している。ある日くくるは、水槽の前で長い髪を揺らしながら大粒の涙をこぼしていた女の子・宮沢風花と出逢う。風花は夢だったアイドルを諦め、あてもない逃避行の先に、東京から沖縄へやってきたのだ。がまがま水族館に流れる、ゆっくりとした、やさしい時間。居場所を求めていた風花は、「水族館で働きたい」と頼み込む。出会うはずのなかったふたりの日常は、こうして動き始めた。しかし、がまがま水族館は、「不思議」と一緒に、「閉館の危機」という大きな問題を抱えてもいた。迫りくるタイムリミットを前に、ふたりは立て直しを目指して動き始める。かけがえのない場所を、あたたかな寄る辺を、守るために。

声優・キャラクター
伊藤美来、逢田梨香子

nyaro さんの感想・評価

★★★★☆ 3.4

沖縄の自然とオカルト、風花を中心にアイドル設定が活かせれば…

 まずこの作品のいいところですが、とにかく絵が綺麗です。特に前半の沖縄でも自然が豊かなエリアの美術は非常に美しかったです。くくるの沖縄風の家屋も素晴らしいと思いますし、キジムナーそして水族館の過去の人間が見える設定も沖縄の神秘性と悲しい過去、死んでいった人なども、アニメの雰囲気も上手くだせていて良かったと思います。

 つぶれそうな水族館という舞台と、夢破れたアイドルの組み合わせが良いです。その組み合わせでどんな出来事が起きて、くるると風花が自分を発見し、成長しながら、現実と折り合いあるいは夢に再挑戦するんだろうという期待がありました。
 ダブルヒロインのキャラ造形・キャラデザが非常によかったです。

 ということで、初めの設定やアニメとしての作り込みは非常に期待値がもてる前半の前半部分でした。

 が、くるるの学芸会が始まりオヤ?となります。エピソードが単発の思いつきレベルばかりで、非常にチグハグでした。あとから思えばくるるは本作を回すための狂言回しで、本作をアニメとして成立するためだけのコマ…尺稼ぎのためにいる気がします。破水のところなど何してんの?という感じでした。
 ですので、キャラに魅力がないし、やっていることに成長が感じられません。言動も騒がしいだけで不快に感じます。

 一方で、風花の方はまだいろんな考えや、過去からの出来事がキャラに厚みを持たせていましたので、そちらに期待が残りました。


 が、後半が始まると、アレ?水族館に就職って…アイドルの意味は?となってしまいました。結果的に最後の方で自分の選択がありますが、あれ風花の成長は?その考えに至る描写はあった?という感じでした。

 そしてくるるとその周辺のキャラは話を作るため、成長したねと最後に言わせるための不自然なパワハラ展開でイライラします。

 前半の沖縄の自然や風花の悩みや自分を見つめ直す部分の描写など、視聴継続の判断要素だったいいところを全て消してひどくした感じです。

 風花のアイドルから沖縄に触れて、自然と係わりたい。水族館という不自然と沖縄の自然をどう整合性を取りながら、自分の成長と夢を実現して行くのか?という部分を、アイドルか女優に戻ってからの出来事や成長・自分探しで見つけて行けばお話になったのになあ、と思います。最後の23、24話辺りの決断をセリフじゃなくてストーリーで見せるべきでした。特に環境をいいたいなら、風花にもっともっといろんな体験をさせるべきでした。

 くるるはサブにしてコメディの担い手として狂言回しにしておけば話が成立したのになあ、と思います。

 なんといっても水族館の内部の事情が体育会系の理不尽な物ばかりで水族館のウンチクも弱かったです。それとせっかくの沖縄ですから、ファンタジーを少し本筋に活かしても良かった気がします。


 初期設定と作画・美術が良かっただけに非常にもったいない作品だと思います。そしてアクアトープなんぞや?ですね。小説も漫画もそうですが、アニメも当然、題名には命をかけましょう。


 そうはいっても、最後まで見れたし、なんとなく気になってこうやって再レビューしたりするくらいな作品だとは思いますが、やっぱり再レビューしても不満が大きいかなあという作品でした。

 PAは「サクラクエスト」とか「色づく世界の明日から」が作れる力がある会社なのに、どうしてこうなっちゃうんでしょう??


 リアルタイムで視聴しながら書いた各話ごとのレビューや追記など、ごちゃごちゃしている作品をまとめ中です。主旨はほぼ変えていません。本作は21年12月までに書いた内容を、23年6月にまとめました。
 評価は3.6→3.4と下方修正しています。



 追記 他のレビュアーさんから、アクアトープのトープは場所の意味と教えていただきました。

 なるほど、水族館のこと?あるいは白い砂ですから、アクア=水=海の境目である白い砂=沖縄の砂浜、つまり人間と魚の共存ということで、自然が美しい沖縄の環境とか水族館などを象徴した言葉にしているのでしょうか。

 ならば余計に前半でアクアトープという言葉を提示して、後半に風花に考えさせればよかったのにと、思います。

投稿 : 2024/04/20
♥ : 40
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でこぽん さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

優しい未来を目指した 心が落ち着く物語

このアニメを見ると、なぜか心地良く、心が落ち着きます。
おそらくそれは、キジムナーのせいかもしれません。
物語全体が優しい色で覆われているようです。

そして、この物語が目指すものは、「優しい未来」のような気がします。
人や全ての生き物にとって優しい未来をつくること。
そしてその未来をつくるのは、水族館を訪れる幼い子供たち。
今は小さくて何もできないけど、海洋生物に興味を持った子供たちが大人になったときには、きっと優しい未来をつくってくれる。
その願いを込めた物語のようです。

そんな未来を想像すると、心が楽しくなりませんか?


主人公は高校生の海咲野 くくる(みさきの くくる)。明るく元気な女の子です。
そして、ヒロイン(?)は宮沢 風花(みやざわ ふうか)。とても美しい少女です。

物語は、くくるが高校を卒業するまでの前半部と、くくるが社会人になった後の後半部とに大きく分かれています。

■前半部:
くくるは夏休みの間は「がまがま水族館」の館長代理をしています。
両親を亡くしたくくるにとって、この水族館は人生そのものと言える大切な場所。
でも水族館は老朽化で閉館が決まっています。
くくるは何としても水族館を存続させようと奮闘します。

風花は元アイドルグループのメンバーでしたが、優しすぎる性格が災いしてアイドルグループを辞めてしまいます。
傷ついた心を癒すべく沖縄に行ったときに、彼女は偶然「がまがま水族館」に立ち寄ります。
そこで彼女は、不思議な体験をするのです。
それは、まるで魚たちが風化の傷ついた心を慰めているようでした。

壁一面の水槽に囲まれている水族館の中は、まるで神秘の世界への入り口。
私達も今度水族館へ行ったときには、風花のような不思議な体験をするかもしれませんね。

ここで風花は、くくると出会います。
くくるを応援しようと決めた風花は、くくるの家に住み、「がまがま水族館」で働くのです。

{netabare} くくると風花は、がまがま水族館を存続させるために懸命に頑張りました。しかし水族館は老朽化により閉館してしまったのです。

このときのくくるの悔しさがとても切なくて…
くくるは元気な時が一番輝いています。だから早く元気になってほしいです。{/netabare}

■後半部:
月日は流れ、高校を卒業したくくるは、新しくできた大きな水族館「アクアリウム・ティンガーラ」へ就職します。そして営業部へ配置されます。
くくるにとって生き物を飼育しない営業部は不慣れな仕事ばかり。くくるは仕事に押しつぶされそうになります。

そんなときに、いつも真っ先に助けてくれるのが風花。
風花は、くくるの姉のような存在です。いつの間にか、くくるにとって最も大切な人へと変わっていました。

自分を助けてくれる人がいつも横にいてくれたら、どんなに辛くとも頑張り通すことができます。
風花の励ましで元気を取り戻したくくるは、与えられた仕事を懸命にやり抜きます。

{netabare}17話では、くくると風花が懇親会を企画します。
皆にくつろいでもらおうと頑張ります。
贅沢な料理はありませんでしたが、二人の皆への感謝の気持ちがこもってました。
幸せの基準は人によって異なりますが、
こんな接待を受けたら幸せな気持ちになるでしょうね。{/netabare}

くくるにとって最も不慣れだった営業の仕事は、いつの間にかくくるにとって最もふさわしい仕事に変わりました。
営業部だからこそ、全ての飼育員と仕事で話をする機会ができました。
営業部だからこそ、催し物企画でお客様と身近に接することができました。
営業部だからこそ、自分が推し進めたい企画を実現することができました。

嫌だ嫌だと思い続けて仕事をするのと自発的に仕事をするのとでは、同じ仕事でも人生が180度変わります。
そして社会人になったら誰でも、くくるのように挫折感を味わうことがあります。
でも、前向きに仕事を続けていれば、きっと報われる日が来るでしょう。


くくるが企画した白い砂の上での結婚式の様子は、とても素敵で頬笑ましい内容でした。{netabare}
装飾品が殆どなく、裸足で行う素朴な結婚式。
でも、壁一面と天井には沢山の魚たちが優雅に泳いでおり、まるで海底にいるような気分になります。
こんな神秘的な結婚式は、参加された方の心に一生残るでしょうね。{/netabare}


前半部の主題歌「たゆたえ、七色」は、とても心地よい歌でした。


私は若い頃に六年間、沖縄に住んでいました。
青い空に白い雲、そして真っ青な海
サトウキビ畑にシーサー
どれも懐かしいです。

投稿 : 2024/04/20
♥ : 59
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やぎゃあ さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0

テーマ(コンセプト)がやや迷子

【作画(キャラデザ、背景など)の評価】
私はP.A.worksの作画の虜で、同社の作品は内容に関わらず視聴することにしています。

本作も作画は大満足。特に海を見ていると沖縄行きたくなりました。
キャラデザも女性は可愛く、男性はかっこよく描かれていたので満足です。


【物語のざっくり評価】
要所要所では明るい展開がありますが、大部分はわりと重苦しいです。なんとなくスッキリしない展開がずっと続いていた印象を受けました。P.A.Worksの十八番の「お仕事アニメ」と思って手を出すには・・・お眼鏡にかなわないかも?

全体的に『厳しい現実を味わうのも一興』ということを描いている作品でしたね。


【キャラの評価】
キャラクターの深堀が物足りない部分が多かった印象です。おそらく尺が足りなかったんでしょうかね・・・。せっかくの個性が埋没しちゃっているキャラが多かったように思います。

例えば {netabare}おじぃに関しては、個性的で好きなキャラではありましたが、その伝説っぷりは全然伝わってこなかったです。空也にしても、なぜあんなにも女性嫌いになり、なぜ夏凛さんだけには少し気を許せるのか・・・もう一捻りドラマを描けたのでは。味のある個性を持っていたのに活かしきれていないのが惜しかったですね。{/netabare}

あと私の価値観と相容れないキャラや、人としてどうかと思うキャラがいたのは残念でした(後述)。

ちなみに、外見はみんな甲乙つけがたいですが、内面で見るなら、観光協会の夏凛さんと定食屋のうどんちゃんがお気に入りです。

頑張り屋だけどちょっと空回りしている くくるも好きですし、面倒見のいい風花も悪くはなかったんですが・・・、くくると風花の関係性が終始気持ち悪く感じてしまいました。くくる単体、風花単体でなら何ともないんですが、この2人が揃うと・・・何とも言えない気分に。


【物語の総評】
描こうとしているテーマ(コンセプト)がやや迷子になっていたように感じました。特に1クール目と2クール目では、別作品でも見ているのかと感じたほどに。

純粋な恋愛観を描きたいのか、複雑な恋愛観を描きたいのか、青春を描きたいのか、仕事観を描きたいのか、人生観を描きたいのか、ファンタジーを描きたいのか・・・。すべてを良いとこ取りしようとした結果、すべてが中途半端になってしまっていたように感じました。

中途半端なままだと「その要素入れる必要あった??」という印象で終わってしまいます。いろんな要素を取り入れるからには、そこに「明確な意図」があってほしい・・・かな。

P.A.Works作品の中で、
複雑な恋愛観なら「凪のあすから」、
青春(努力&友情)なら「TARI TARI」、
青春(恋愛)なら「色づく世界の明日から」、
仕事観なら「SHIROBAKO」「サクラクエスト」「花咲くいろは」など、

とパッと形容できますが、本作は何と形容していいものか・・・。

心温まる話、グッとくる話、クスッとくる話など・・・要所要所では楽しめたエピソードはちゃんとありました。ただ、ややコンセプトが迷走ぎみなせいで、全体的に見ると「何を伝えたいのだろう?」と感じてしまう部分が多かった・・・かな。

あと私が一番引っかかったのは、この作品は全体的に「不可解な価値観」が漂っているように感じた点ですね。(詳細は2クール目以降のレビューにて)


【作者に対して一言】
{netabare}くくるの人生を決めるのは「くくる自身」じゃないでしょうか。周りの大人たちが「くくるにはこれが必要だ」「くくるにはこういうことをやらせたい」と、くくるの成長像を勝手に描くのはやや傲慢だと感じました。

もちろん、自分の人生の進路が「希望通りにならない」のは仕方のないことだと思います。くくるの希望はともかく、くくるの適性から必然的にマッチングされた配属であれば、何も問題ないです。すべてが思い通りにいくわけではないことも含めて人生ですし。

ただし「くくるが望んでもいないこと」を「くくるの適性も考慮せず」、「第三者の思惑」で押し付けるのは傲慢じゃないでしょうか。くくるが最終的にどう思うかは、ただの「結果論」です。その過程が傲慢だと感じました。

ちなみに、おじぃとティンガーラ館長の思惑(意図)をもう少し詳しく描いて欲しかったです。尺の都合だと思いますが。{/netabare}


(以降、各話視聴時の不定期レビューです)

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<10話視聴時点の感想>

正直 今の所は盛り上がりに欠けるなぁと感じています。ただ10話視聴した時点で2クール目があると知ったので・・・最終評価は先送りします。おそらく劇的に展開するのは2クール目からでしょうから。

{netabare}1クール目はおそらく『のれんに腕押し』という状態を描いているのでしょうね。くくるがあれこれ試行錯誤しようが『がまがま閉館』という絶対的な未来は揺るがない、と。鳴かず飛ばず、打てども響かず。

ただ見方を変えると、ここまでの話で『明確な山場』が無いような気がするんですよね・・・。くくるが「手痛い失敗」をするわけでもないので、挫折や後悔や反省をするわけでもなく、故に壁を乗り越えて「成長する」という展開もない。

何かを試してはカレンダーと睨めっこし、また何かを試す・・・。ただひたすらに『何をやっても、何も起きない』という展開で悶々とするだけ・・・。たぶんこれが盛り上がりに欠ける理由なのかなぁ、と。

おそらく、すべては1クール目のラストで絶望を突きつけるためのお膳立てなのでしょうね。なので1クール目は終始スッキリしない展開が続きそう。たぶん劇的な展開は全部2クール目に回しているのかな?と予想してます。{/netabare}

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<1クール目ラストと2クール目予想>

まだ残り何話か残っているでしょうが先の予想を少し・・・。

{netabare}製作スタッフのプロジェクト名が、2クール目の展開を示唆している気がします。

アニメの制作チームが『Project ティンガーラ』を名乗っていて、作中で新しく建設中の水族館の名前も『アクアリウム・ティンガーラ』って言ってましたからね。喧嘩別れしたティンガーラの研修生とそれっきりなんてのも不自然ですし・・・本作の本当の舞台はそっちなんでしょうね。

ということは、『がまがま水族館はもう・・・』ってのが1クール目までの話なのかな?{/netabare}

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<11〜12話/13〜17話の感想>

{netabare}やはり がまがまは閉館する運命だったんですね。ずっとモヤモヤする物語でしたが、くくるがそれを受け入れる過程はグッとくるものがありました。

2クール目があると知った時点で、1クール目は『視聴者にとって我慢の時』なんだろうなぁと受け止めていましたが、ようやく新しい風が吹き、重かった空気が流れて行くのを感じました。

そして、2クール目からの展開が予想外すぎて笑ってしまいました。嫌味な意味ではなく「なるほど〜、そうきたかぁ〜w」的な感じで。舞台がアクアリウム・ティンガーラに移るとは予想していましたが、まさか飼育員ではなく企画の仕事だったとはw ストーリー展開もだいぶSHIROBAKO路線になりましたね。P.A.Worksの十八番と言ったところでしょうか?w

1クール目とは打って変わり、物語がテンポよく動いていてます。今の所は好印象です。

がまがまで出会った研修生との再会、彼女との衝突と和解、新しい職場での奮闘・・・テンポ良すぎて私が予想していた内容はあっという間に消化してしまい、もうこの先どういう展開になるのか読めませんw {/netabare}

先の展開が楽しみです。

ただ余計な一言を付け加えると、1クール目と2クール目は別物のアニメを見ているような印象を受けていますw

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<ストーリー全体で気がかりな点>

まだ2クール目中盤ですが、一旦この作品の気がかりな点をまとめておきます。

(※長文注意)
{netabare}私は “自分の人生の進路を他人に委ねる考え方” が好きではないので、登場人物の『進路の動機』は気に入らないです。この点は一貫して残念なアニメ。

仮に、夫婦や、きっと将来を添い遂げるんだろうなと想像できるほどの関係など、「自分の人生を委ねるに値する人間関係」において委ねることは、何も違和感は感じないですが・・・。

例えば、カイは {netabare}恋わずらいで くくると同じティンガーラに就職先を決めた点。バイト時代はまだわかります。しかし『人生の進路』ともなれば話は別です。“あの子と離れたくないからついて行こ〜”って考え方が本気で苦手。

特にカイは漁師の息子で、釣りも好きで、海も好き・・・であれば『恋わずらい』という要素を抜きにすれば漁師を継ぐのが自然。でも水族館に就職した。なぜ?それは『恋わずらい』のせい。

潔く告白はできないくせに、勝手に『くくると人生を共に歩む』という願望を抱き、就職先にまでくっついて行くという粘着さが気味が悪い。いや、その重大決心ができるならせめて告白せぇよ!w 話はそれからでしょ。就職先が同じじゃなきゃ恋愛できないなんて世界じゃないでしょうに・・・。婚約者どころかまだ恋人ですらないのに、自分の人生を「くくる基準」で決めているところがキツイ・・・。

ならば、もしも カイの知らぬ間にくくるが別の人と恋をし結婚してしまったら、『カイの人生って何なの?何でお前ここにいるの?』ってなっちゃうじゃないですか。

こういう「恋愛観」と「人生の進路」を結びつける動機は苦手。{/netabare}

あとは、風花も同様です。というか風花の方が極めて重症。ことさらに {netabare}「くくるのため」「くくるが心配」「くくると一緒なら」という感情で行動し、きわめつけは“くくるがティンガーラに行くって言った時から決めていたんだ”は寒気がしました。

ならば、もしも くくるが企画の仕事にうんざりして仕事辞めると言い出したら、風花もまた辞めると言い出すんですか?・・・そこまで行くともう気持ち悪いですよ。これもやはり『風花の人生って何なの?』案件です。

あと全然しっくりくる理由もなく くくると風花が物語冒頭からひかれあっていることに、百合っぽさが感じられて嫌です。特に2クール目で、おじぃからくくるの住所を聞き出して「隣の部屋に黙って引っ越してきた」のはもはや鳥肌もの・・・。

例えば「社員寮でたまたま隣室になった」という設定だって、同じ展開は描けたであろうに・・・。むしろ社員寮という設定の方が、仕事の合間にみんなで集まるという展開にも綺麗に筋が通るでしょうに。私は戦慄しましたが、作者としてはそこに強いこだわりがあったのでしょうね・・・。

例の母子手帳が登場した時に『あ!もしかして二人がひかれ合っている理由は、生き別れの姉妹なのか?』と期待しましたが、あれは普通に死産した双子の姉らしいですからねぇ・・・。なら なおさら二人の意味深なひかれ合いは何なのよ?って。『百合要素を入れたかった』以外での説明がつかなくなってませんか?w{/netabare}

率直に言って、こういう人たちの『人生観』は私の肌には合いません。いや、特殊な価値観(百合)については別に棚上げしても構わないですが、『恋愛観と人生観を直結させるストーリー』は苦手です。特に青春ラブストーリーでは『好きな人と同じ学校に行きた〜い!』という動機で描く作品がありふれてはいますが、正直 私の性に合わないです。

恋愛にしろ友情にしろ特殊な価値観にしろ、『自分の人生の進路』を他人を基準にして決めてしまう人には共感できません・・・。それが他人ではなく、『将来を誓い合った間柄』か『それに相当する強い関係性』であれば許容しますけど。

ちなみに異性愛だろうと同性愛だろうとそこは構いません。私にとっては『ちゃんとお互いの人生の責任を持てる関係性か』が重要なんです。それであれば、お互いを基準にして進路を考えるのは構わないです。

そういう展開を描きたいなら、その展開を迎える前に『そういう関係性をちゃんと築いてくれ!』って言いたいんです。設定上そうなんです、じゃ通らないです。視聴者がそれを受け入れるようにストーリーを描いてもらわないと・・・。

ちなみに、夏凛さんや うどんちゃんの『人生観』は好きです。

夏凛さんは{netabare}最初から水族館で働きたい想いを持っていたけど、いろんな事情があって諦めてしまったものの、移動水族館を手伝ったのをキッカケにその想いが再燃し、一大決心してティンガーラに転職したってのは共感できます。この動機なら応援したくなります。{/netabare}

うどんちゃんも{netabare}『料理の腕を磨いて自分の店を持つ』という目標に向かい、実家?の店を飛び出して新天地で様々な料理を覚えようと努力している姿勢は応援したくなります。{/netabare}

2クール目から明確に「お仕事アニメ」路線に舵を切ったと感じていますが、お仕事アニメに必要なのは夏凛さんや うどんちゃんのような人。カイと風花の設定は足かせになっている気がします。

あとは『進路』の話からは脱線しますが、知夢さんの設定はちょっと苦しい・・・。現実的に考えてしまうと、{netabare}『子供がいることを隠して働いている』方がよっぽど職場に迷惑をかけると思います。・・・現にそういう脚本に仕立て上げてますし。

この流れは『くくると知夢を喧嘩させたい』という結果(結論)から作り始めてしまった『逆算式シナリオ(結論ありき)』に見えましたね。だいたい『逆算式』で脚本を作ると、設定やそこに至る過程が強引になりがちです。

特に『自分の上司にだけ打ち明けている』って状況がよくわかりませんでした。上司がそれを受け入れてくれている前提があるなら、なおさら職場全体で共有した方が良いかと・・・。みんなでフォローするように指示を出すのも、角が立たないように職場を上手く回すのも上司(管理職)の役目でしょ。

知夢さんは過去の職場運に恵まれなかったことが「トラウマ」になっていたことは描かれましたが、だからってシングルマザーを隠す理由にはならないかと。それに、今の職場も以前と同様にギスギスしているって状況ならまだしも、今の職場は嫌味な上司でもなかったですし、嫌味な同僚でもなかったので、余計にしっくりこなかったんですよね・・・。

同僚視点で「理由のわからない仕事拒否」「何でか知らんけど特別扱いされている」なんて人がいれば、それを快く思わない人が出てきてしまうのはそりゃ当然でしょう・・・そう、くくるのように。くくるだって理由を知ってれば噛み付いたりしなかったでしょう。

トラウマを理由に隠したところで状況が好転するわけもなく、隠したがっていた動機には釈然としませんでした。喧嘩する理由を無理やり作ったように見えました。

喧嘩前後のシナリオは腑に落ちなかったですが、シングルマザーの設定が明るみになった以上は、ここから良い感じのキャラに育って欲しい。{/netabare}
{/netabare}

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<18話〜最終話の感想>

2クール目から雰囲気変わっておもしろくなり始めたと感じましたが・・・ちょっと期待しすぎたかな。

(※長文注意)
{netabare}要所要所で感慨深かったり微笑ましくなれる話もありましたが、要所要所で気持ち悪いと感じる展開が出てくるんですよね・・・。2クール目に流れ変わったと思いましたが、明るい雰囲気だったのは最初だけで、やはり大部分は重苦しい感じでしたね。

18話で朱里(バイトちゃん)の心境の変化を描いたり、19話で風花の心境の変化を描いたのは、キャラクターの深堀になっていて良かったと思います。

ただそれ以降が・・・。

心が折れて働けなくなってしまう人の気持ちはわかります。だからくくるが がまがまの最後を見届けることができず、そうまでして没頭した仕事もうまくいかず、心が折れて失踪する展開はまだ理解できます。

風花がくくるを親友として心配する気持ちもわかります。

ただ、うみやんからくくるの居場所を聞いた途端に、風花まで仕事を休んで飛び出す展開がやはり気持ち悪い・・・。うみやんの奧さんに保護されて民宿で羽を休めていると知って「ちゃんと安否確認できた」のに、自分の仕事を放り出す意味がわからないです。

それはそれで「風花の仕事に対する責任感」はどうなってんのよって・・・。これが『目撃情報のみで未だ保護されておらず、その後の行方もまたわからない」って状況が続いてたのなら、わからんでもないですが。

風花は序盤からここまでかけて「生き物の命」「生き物との関わり方」を学んできたはずなのに、突発的にシフトに穴開けるほどの事態ですかって・・・。何でちゃんとシフトを調整して有休とってから迎えに行かないのでしょうか。「生き物の命」と「くくるに “今すぐ” 会いに向かう」ってのを天秤にかけるのはおかしくないですかね?・・・もうその感情は「友情」ではなく「依存」じゃないでしょうか。

そしてUSTDプロジェクトの応募前は「くくると2年間も離れたくないからUSTDに応募できない!」、でも意を決して応募したのに、合格したらしたで「くくると2年間も離れたくないからやっぱり断る!」・・・もうどこまで気持ち悪いキャラとして描けば気がすむのでしょうか。

ここまでいくとさすがに、よくある友情や恋愛からは『逸脱しすぎた心理』ではないでしょうか?このアニメ、『強烈な共依存関係』を描きすぎですよ・・・。風花というキャラクターは、決して悪い人ではないのはわかりますが、この重度の依存関係がとにかく気持ち悪かったです。


あと最後の最後で唐突ですが、『副館長もとにかく嫌い』ということを書き忘れてました。このキャラは論外すぎて今まで触れるのを忘れてましたw

仕事に対して厳しい上司は嫌いじゃないです。むしろ「正しい厳しさ」を持ったキャラなら大好物です。ただ部下をプランクトン呼びするのは「厳しさ」ではなく「侮蔑(ぶべつ)」です。相手を見下す行為であり、上司である以前に人として失礼にもほどがあります。後から銀行員時代がどうのこうのと深堀しようとも、失礼すぎて関わりたくないです。

くくるのウェディングプランが一蹴されてしまった時に「これは想定内だ」と言いましたが、あれこそが「正しい厳しさ」でしょう。

あの言葉の真意は「相手からの厳しい指摘や要望を受けて初めて、自分のプランの見通しの甘さに気づくものだ。だから最初は一蹴されて当然だ。それを受けてお互いが納得いくプランを練り上げれば良い」という意図でしょうからね。

副館長はプランの落ち度に気づいていて黙っていたのではなく、副館長自身もどこにダメ出しされるかなんてわからんでしょうからね。「相手の話を踏まえて、お互いが納得のいくプランを練り直す・・・それが企画の仕事だ。落ち込んでいる場合ではない」と教えてくれているだけで。

この一幕で「副館長の良さ」が表現できるはずだったのに、それ以前のプランクトン呼びで全てを台無しにしてたように感じました。


あと空也とおじぃはもっと魅力的なエピソードが欲しかったなぁ・・・。すごく勿体無い。空也の立ち回りは割と気に入っていたんですが、全然活躍の場がなかったですね。ビーチフラッグの話しかまともにスポット当たらなかったのが残念。おじぃも結局何がそんなに「伝説の飼育員」たらしめていたのか深堀が不十分かと・・・。


と、ここまで結構な酷評をしてしまいましたが、夏凛さんと うどんちゃんの夢が結実したのは良かったです。そっちの展開をもっと厚く・熱く描いて欲しかったです。

特に夏凛さんは、飼育員に空いた1枠を巡り、元来飼育員だったくくるにその席を譲りかけそうになるも、意を決してちゃんと名乗りを挙げた流れはすごく良かったです。ちゃんと「譲れないもの」のために筋を通したのは格好良かったです。

くくるも、結婚式の企画成功を経て企画の仕事に魅力を感じ始め、後ろ向きではなく前向きな想いで企画の仕事を続けると言ったのは、すごく良かったです。ここはくくるの成長が表れていてグッときました。

ちなみにまた小言になっちゃいますが、おじぃとティンガーラ館長が、くくるの希望や適性をそっちのけで「企画」の仕事を経験させようとした意図を、もっとちゃんと深掘りして欲しかったです。飲み屋でのちょっとした会話だけじ物足りなかったです。

飼育員の経験を長く培ったくくるを差し置いて、夏休みにバイトしてただけのカイや風花を飼育員にするなんて、「第三者の意図」が無ければおかしいですからね・・・。おじぃと館長の話をもっと聞きたかったです。
{/netabare}

投稿 : 2024/04/20
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