不死身で陰謀なおすすめアニメランキング 5

あにこれの全ユーザーがおすすめアニメの不死身で陰謀な成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年03月29日の時点で一番の不死身で陰謀なおすすめアニメは何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

70.1 1 不死身で陰謀なアニメランキング1位
亜人(第2クール)(TVアニメ動画)

2016年秋アニメ
★★★★☆ 3.7 (510)
2521人が棚に入れました
高校生亜人・永井圭。下校時、交通事故に遭い、亜人であることが発覚。
以降、警察、及び、亜人管理委員会から追われる身となる。

圭が逃走中に接触を図ったのが、亜人テロリスト・佐藤だった。
佐藤は圭を教育するため、彼を亜人管理委員会に引き渡す。
が、試みは失敗。佐藤は圭と袂を分かち、独自に集めた亜人協力者と共に、グラント製薬爆破という大規模テロを引き起こす。

そして、現在。
亜人テロリスト・佐藤と亜人管理委員会との戦いは、新たな局面を迎える。
「第2ウェーブのテーマは、『浄化』だ」
佐藤による第2の犯行予告。それは、亜人関連要人15名の連続暗殺計画だった。
亜人対日本国政府、佐藤対永井圭の、国の存亡を賭けた最後の戦いが、幕を開ける……!

声優・キャラクター
宮野真守、細谷佳正、福山潤、大塚芳忠、平川大輔、櫻井孝宏、小松未可子、木下浩之、鈴村健一、森川智之、坂本真綾、洲崎綾、斉藤壮馬

えたんだーる さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

原作者を信用して観たら、わりと面白かったです。

いや、原作そのものは読んでいませんが原作者の過去の作品はそこそこ面白いと思っていましたので。

結局のところ、わりと「佐藤さん」で保ってる話ですよね。もちろん、永井くんがそこそこ頑張って対抗するって前提はありますけど…。

あ、1期目からの「ネタばれ風影絵」EDは好きです。曲自体はOP(第14~19話「僕は僕であって」、第20~26話「The end of escape」)の方が好きですけど。

投稿 : 2024/03/23
♥ : 27

Ka-ZZ(★) さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

佐藤さん…そりゃやりすぎでしょう…

この作品はちょっと異色な作品で、劇場版を上映した後にTVシリーズが放送されました。
劇場版は3部作で3作とも上映済で、TVアニメの方は本作品の第2クールまでが放送されています。
私は劇場版を視聴していないので何ともいえませんが、劇場版の第1部とTVアニメの第1クールが対になっているかが分かりません。
今回第2クールを見て続きが見たくて仕方なくなりましたが、劇場版の第3部と繋がっているのでしょうか。
それとも劇場版を3本視聴するべきなのか…
そう思えるくらいTVアニメの第2クールは迫力がありました。

佐藤と亜人の仲間たち vs 厚生労働省の構図は基本的にかわりませんが、回を追うごとに次々と権力者たちが引きずりだされていきます。

一方、立場的に微妙なのが永井と中野2名の亜人でしょうか。
佐藤の悪行を止めたい気持ちは2人にもあります。
ですが、組織だって活動している上、個々の能力でも適わない佐藤を相手にしても所期の目的は達成されません。
それに厚生労働省の戸崎からは敵のように見られていますし…

永井は本当に賢いと思います。
状況を冷静に俯瞰し、最善のカードを引き当てる事ができるのですから…
今回彼が選択したのは佐藤を止める事…
永井は紆余曲折あった戸崎と手を組むことになり…物語が動いていきます。

佐藤の言動…最初は全く分からない訳ではありませんでした。
亜人に対する人間の容赦ない仕打ち…
「死ねない」事を良いことに非道の限りを尽くされる…
その内容は思わず目を塞ぎたくなることも…

「死なない」からってやって良い事と悪い事があります。
そんな当たり前の事を分かってほしい…
そう思うのは自然の発想だと思います。

でも途中から良く分からなくなってしまいました。
だって佐藤のやっている事…明らかに常軌を逸していましたから…
佐藤は明らかにやってはいけない一線を越えてしまっていました。
結局自分がやられた事と同じ事を相手に仕返ししている事にどうして気付かないんだろう…

だから永井の選択…個人的には嬉しかったし応援したいとも思いました。
嬉しかったのは、実は中野と一緒で「すっげえキレイ」な下村さんの出番が増えるから…
応援は純粋に佐藤を止めたい一心です。

彼女は綺麗なだけではなく、仕事への姿勢も好みです。
恩人である戸崎を何よりも優先し、自分が戸崎の盾になる事を厭わない彼女…
そしてその気持ちはどんな状況に陥っても絶対に揺るがない…
こんな人が現実にいるなら、きっと心が揺れると思います。
ただ、戸崎が向いているのは残念ながら下村さんじゃないんですよね…

だから自分の気持ちが報われる事が無い事を彼女は知っているんだと思います。
知っていて自分を貫く事ができる…それって中々出来る事ではありません。
そう考えると下村さん…とても素敵な女性だと思います。

佐藤の手が緩められることは一切ありません。
そして要求もエスカレートしていくばかり…
そして迎えた決戦の時…この先の気になる方は是非本編でご確認頂ければと思います。
精一杯の頑張りと粋な計らいが彩りを添えてくれていました。

オープニングテーマは、angela × fripSideさんの「僕は僕であって」と、fripSide × angelaさんの「The end of escape」
エンディングテーマは、クリープハイプさんの「校庭の隅に二人、風が吹いて今なら言えるかな」
オープニングはどちらも同じ組み合わせですが、先に名前が記載されたユニットが楽曲を提供しています。
こんな夢のような組み合わせって実現するんですね。
angelaさんもfripSideさんもどちらも好きなので、どちらの曲も覚えました。
今度カラオケでは「The end of escape」に挑戦してみたいと思います。

第2クールは1クール計13話の作品でした。
正直最終回の最後を見るまではこれで終わりなのかな…と思っていました。
けれど、随分大きな爆弾を残していきましたね…
これじゃ続きが気になって仕方ないじゃありませんか…
できたらこの続きもTVアニメでじっくり視聴したいところです。

投稿 : 2024/03/23
♥ : 22

ninin さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

佐藤さん、あんた凄すぎるよ‥‥

原作未読 全13話 (14〜26話)

亜人の2クール目です。1クールから観ることをオススメします。

外見は人間だが死亡しても即座に蘇る「亜人」と人間との争いを描いた作品です。亜人で主人公の永井 圭(ながい けい)たちが、暴走して政府と対峙している亜人 佐藤たちをいかに止めるかがこのクールの核となっています。

悪とされる佐藤が先手先手を打ち、次にどんな手を使って来るのか楽しみでした。

悪役が映える作品は面白いですね。

1クール目にはなかった感情が永井に芽生えたところも良かったです。

色々なことがすこしずつ分かってきました。

毎週、続きがどうなるのか楽しみな作品です。CGやバトル、ちょっとグロなシーンなどありますので苦手でなければオススメです。

OP angela × fripSideがコラボして歌ってます。豪華ですね〜 かっこいい曲です。 EDのネタバレは健在でしたね。(結構好きです)

最後に、3クール目もありますよね。佐藤さん?

投稿 : 2024/03/23
♥ : 25

79.1 2 不死身で陰謀なアニメランキング2位
ゴールデンカムイ(第二期)(TVアニメ動画)

2018年秋アニメ
★★★★☆ 3.8 (450)
1984人が棚に入れました
北の大地・北海道に渦巻く野心!!
アイヌから奪われた金塊を巡る生存競争サバイバル、新章突入ッッ!!

アイヌの埋蔵金を求めて旅を続ける、「不死身の杉元」の異名を持つ日露戦争の英雄・杉元佐一とアイヌの少女・アシリパ。
だが、埋蔵金の在り処を示した刺青を持つ24人の脱獄囚を追う中で、新たな事実が浮かび上がる。
埋蔵金を奪い、アシリパの父を殺した人物とされる「のっぺら坊」こそが、アシリパの父だというのだ。
事の真偽を確かめるには、網走監獄に収監中の彼に会うしかない。
「脱獄王」の白石由竹やキロランケを仲間に加えた二人の旅は、小樽から札幌、夕張へとその歩みを進めていく。

一方、彼らと埋蔵金の争奪戦を繰り広げる第七師団の鶴見中尉や新選組「鬼の副長」土方歳三の勢力も、それぞれの野望を胸に次なる行動に打って出る……。

明治時代後期、北の大地に勃発した一攫千金サバイバルは、さらに苛烈さを増していく!

声優・キャラクター
小林親弘、白石晴香、伊藤健太郎、大塚芳忠、中田譲治、津田健次郎、細谷佳正、乃村健次、菅生隆之、内田雄馬
ネタバレ

フィリップ さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

さまざまな角度から表現される「純粋な生」の形

アニメーション製作:ジェノスタジオ、
監督:難波日登志、シリーズ構成:高木登、
キャラクターデザイン:大貫健一、
原作:野田サトル

あまりにも中途半端な終わり方だった1期目。
期待した2期は、いきなりグロテスクなネタからの始まり。
江戸貝弥作を観ていて頭に浮かんだのは、
アルフレッド・ヒッチコック監督の『サイコ』、
トビー・フーパー監督の『悪魔のいけにえ』、
ジョナサン・デミ監督の『羊たちの沈黙』という
ホラー・サスペンス映画だった。
この映画の共通点は、アメリカの有名殺人犯、
エド・ゲインをモデルにしていること。
江戸貝弥作の人物像は、明らかにエド・ゲインそのままと言っていい。
私としては、アンソニー・パーキンスの不気味な演技や、
チェーンソーを振り回すレザーフェイスを想起しただけに
少し拍子抜けしてしまったが、衝撃的といえる回だった。

このことに気づいて色々調べてみると、
ゴールデンカムイの登場人物の多くは、
実在の人物をモデルにしていることを今更ながら知った。
舩坂弘軍曹は分かるが、家永カノの殺人ホテルや尾形百之助、
白石由竹まで参考にしている人物がいたことには驚いた。
荒唐無稽なようで、かなり現実に即した設定になっている。

2期の見どころは、網走刑務所でのシーンになるが、
個人的に好きだったのは、谷垣源次郎と尾形百之助の過去の話だった。
谷垣は1期で東北マタギをやめて、軍隊に入ったことが明かされるが、
その理由について語られることはなかった。
それが明らかになる18話では、アイヌの終活についての話から始まる。
アシリパの祖母が死装束を作っているという。
アイヌでは若い者に送ってもらわないと死後の世界に行けないと
考えられている。だから自分の子供のいない人でも、子供を必死で育てる。
谷垣はアシㇼパの祖母に食べさせてもらった恩から、
自分も子供のひとりで、アシㇼパを無事に村へ帰すことが
役目だと思っている。
谷垣は自分の役目をずっと探していたのだった。
そのときに、過去にあったことを思い出す。

東北マタギだった谷垣にとって、狩猟は命懸けの仕事。
想定外のことが起こったときのために、
非常用携行食のカネモチを持参するのが常だった。
カネモチは米粉に水を加え、味噌か塩を混ぜて捏ね、
葉で包んでいろりの火で蒸し焼きにする。
谷垣は自分用として、クルミを混ぜたものを作っていた。
そんな作り方は邪道なのだが、谷垣のこだわりの一品だった。
{netabare} このカネモチを小道具にした、谷垣と妹の夫、賢吉に対する
憎しみと赦しの物語は見ごたえがあった。
賢吉は自分の役目のために命を懸けて行動した。
その姿を見た谷垣は、自分の生まれた役目について、
誰かのために生きることを考え続けている。

谷垣と対照的なのが尾形だ。
妾の子供だった尾形は幼少時に母親が苦しみながら
生きてきたさまを間近で見続けてきた。
夫に家に帰って来て欲しいと願い、毎日あんこう鍋を作る。
そんな母が嫌だった尾形は、銃で鳥を撃つようになる。
鳥鍋を勧めても母はあんこう鍋ばかりを作り続けるのだった。
やがて尾形は、心を失った殺人者になっていく。 {/netabare}

この物語を観ていると、どれだけ心が歪んでいても
「純粋な生」の形を見せられているような気になる。
過去がしっかり描かれ、ひとりの人間の形が
浮かび上がってくるのがいい。
明治初期の時代背景からすると、このような生き方は、
それほど特別なものではなかったのかもしれないとまで思えてしまう。
アシㇼパの父が娘に対して望んでいたことも明らかになり、
さまざまな人々の想いが交錯していく。

アイヌの金塊の行方。
登場人物たちは何を悟り、何を選び取っていくのか。
原作ファンからは評判が芳しくないようだが、
アニメだけを観てきた者からすると、
1期と2期でとても上手くまとめられていたと思う。
網走刑務所まで描いてくれたことで、物語は一区切りついた。
今後は原作を追っていくつもりだ。
(2019年1月8日初投稿)

投稿 : 2024/03/23
♥ : 76
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

濃ゆい男祭りにさらにキワモノ共を投下

2018.12.30記


原作未読 1期視聴済


2018年春クールのベスト。私にとって『ゴールデンカムイ1期』をこのように位置づけてます。
冒険、グロ、エロ、メシ、歴史、アイヌの文化、サバイバル、狩猟、奇怪な登場人物たち、、、成分豊富な幕の内弁当みたいな良作でした。

1期終了時に3か月後開始の2期の案内があったこと。2期第1話分を第13話と表記していること、実質の分割2クールになりますので、1期第1話“ウェンカムイ”からの視聴は必須になるかと思います。

2期は1期の面白さをそのままに、周囲のキャラにも目を向けた仕様です。新キャラの登場もあり、この作品だからこそ受け入れられるようなキワモノ2トップ、江渡貝くん、鯉登少尉あたりが活躍します。殺人ホテルの主人家永はちゃっかり準レギュラーに収まってますね。総じてキャラクターは豪華絢爛、キャラ立ちもしてるので名前を忘れることもなさそうです。
やや“狩猟”成分が減ってても、それでもグルメは健在。1期では敵対していたあの人この人と食卓を囲むシーンもあったり、相変わらずの面白さを維持してます。1期終了時に定まった目標、

「目指せ!網走監獄」

のっぺら坊はアシリパさんの父親なのか?金塊に群がる男連中のこれまた男臭い物語は続きます。季節は春夏に移り、冬の厳しい北海道でのサバイバルはいったん休止。OPも新芽が芽吹く春夏Verへ。
キワモノ2トップに笑って、シリアスなキャラ回{netabare}(谷垣、尾形){/netabare}に震えて、網走への珍道中は退屈知らずです。谷垣は胸ボタンバァーンの擬似ケンシロウではありませんでしたね。1期最終盤登場のインカラマッも2期で活躍します。
キャラに引っ張られる部分もありましたが、1期で感じた“似非ヒューマニズムを廃した生命のリアリズム”が健在だったことはなによりでした。

“相変わらず面白い”

むしろギャグはより変態的に、シリアスはより人の内面の深掘りに向かって、それでなお相も変わらずバランスが取れている満足の2期でした。
尻切れトンボ感のあった1期最終話と比較しても一段落ついた時点での終幕は好感です。


杉元が干し柿を食める日々が果たして到来するのか?
もう後戻りできない修羅の道に入って抜けられないのか?

当然3期ありますよね?
引き続き期待して待つことにします。



以下余談
■ポーランド人×樺太アイヌ
ポーランドはロシアに蹂躙されてた時期が長く、ちょうどこの時代も政治犯やらの名目で極東に多くのポーランド人が送られていた時期。抵抗の歴史はワルシャワに行くと肌で感じることができます。ショパンの「革命のエチュード」もロシアにやられてた時期に曲にしたものですね。
{netabare}迫害を受けたポーランド人の息子にあたるのが、アシりパの父ウィルクである。娘をレジスタンスのリーダーにという思いは出自を考えれば。国が無くなる経験が血肉に染みついてる者の行動としては理解できる。{/netabare}

■ロシア内のパルチザン
ロクでもない輩と思ってよし。ゴールデンカムイで展開されている年代(明治40年頃?)から10年くらいした後、尼港(ロシア領ニコライフスク)で日本人入植者を虐殺した尼港事件が起こります。
「大正9年5月24日午後12時を忘れるな」
元は帝政ロシア時代の政治犯だったり凶悪犯が母体の連中。国内を掌握しきれていないレーニンが帝政ロシアの残党を掃討することを目的に釈放し武器を与えたならず者集団です。
{netabare}ゴールデンカムイは今後舞台を樺太に移してパルチザンとの連携を示唆していますが、発生から100年を迎えんとするこの時期、日本人は尼港事件を忘れてはいけないんだろうと思います。{/netabare}



視聴時期:2018年10月~12月 リアタイ視聴

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2018.12.30 初稿
2020.12.04 修正
2021.10,16 修正

投稿 : 2024/03/23
♥ : 65

scandalsho さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

BL回あり、温泉回ありと盛りだくさん!

原作未読。最終話まで視聴。

第2期というよりは分割2クールの後半。
ハラハラドキドキの第1期と比較して、コメディ要素が多くなった印象。

杉元と白石のおバカぶりは相変わらず。
鶴見中尉とその部下たちは、変態度が増し増し。

更にBL回あり、温泉回ありと盛りだくさん。
度々、腹を抱えて笑い転げちゃいました。

そして、これらとは対照的に、シリアスな急展開でエンディング。

第3期を期待して待ちたいと思います!

投稿 : 2024/03/23
♥ : 34

77.5 3 不死身で陰謀なアニメランキング3位
王様ランキング アニメ(TVアニメ動画)

2021年秋アニメ
★★★★☆ 3.7 (456)
1440人が棚に入れました
国の豊かさ、抱えている強者どもの数、そして王様自身がいかに勇者のごとく強いか、それらを総合的にランキングしたもの、それが“王様ランキング"である。主人公のボッジは、王様ランキング7位のボッス王が統治する王国の第一王子として生まれた。ところがボッジは、生まれつき耳が聞こえず、まともに剣すら振れぬほど非力であり、家臣はもちろん民衆からも「とても王の器ではない」と蔑まれていた。そんなボッジにできた初めての友達、カゲ。カゲとの出会い、そして小さな勇気によって、ボッジの人生は大きく動きだす———— 。
ネタバレ

剣道部 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

ボタンの掛け違い

[文量→特盛り・内容→考察系]

【総括】
良いアニメだと思います。

基本は、「少年の成長と旅立ち」という、超王道のストーリー。一見すると、NHKやジブリでも通用しそうな、安心安全の世界観。

ただそこに、多くの不幸や悲しみ、残酷な現実なども混ざり合い、単なる児童アニメにはない深みがあります。大人でも楽しめるというか、大人だから楽しめるというか。

本作は考察しがいがあるアニメなので、久々に考察系で真面目に書いてみました。主に、人物描写について思うことを書きました。相変わらずクソ長いので、大変申し訳なくは思います(苦笑)。

《以下ネタバレ》

【視聴終了(レビュー)】
{netabare}
本作の特徴として、登場人物が「全員不幸を背負っている」「全員他者のために動いている」ことと、それが、「どれもこれも上手くいっていない」ことがあると思う。

例えるなら、オー・ヘンリーの「賢者の贈り物」のようなものだろうか。尤も、「賢者の贈り物」に比べれば、清廉でもないし、幸福でもないけれど。

私は、本作の面白いところは、人物描写の巧みさにあるように思っていて、どの人物も実に「人間らしい」のだ。

日頃から、高い教養と倫理性、社会的制限の元に生み出されたキャラクターを見慣れている我々現代人は、ついついキャラクターに整合性を求めてしまう。しかし、本来の人間は「支離滅裂」なことが普通なわけで。近代の純文学などでは、そういう人物描写がよくみられた。

利己的で、情動的で、短絡的な人間。それでも、100%の悪人とは断罪しきれない人間。大宰作品なんかが分かりやすい。

本作のキャラクターが、なぜ、他人のために動いているのに、誰も上手くいってないかというと、「他人のため」がいつの間にか「自分のため(自己救済)」になってしまっているからではないだろうか。多分、本人すら気付かないうちに。

皆さんの身の回りにもいませんか? 人を救うのが趣味や生き甲斐みたいになっていて、それはとても素敵なことなんだけれど、ちょっとウザがられている人。

簡単に言えば、「余計なお世話」。

論語に、「己の欲せざる所は人に施すこと勿れ」という有名な一節がある。幼小中学校の先生は当たり前のように「自分がやられて嫌なことは人にやるな」「もし自分がやられたらどうか考えてみなさい」と言うが、これは間違いとまでは言わないが、正しくはないと思っている。

本来は、「人の欲せざる所は人に施すこと勿れ」だ。「己の~」は、あくまで価値観が自分の側にある。自分が良いか悪いかはさておき、本来は、「その相手」がどう感じるかを見とる洞察力や想像力こそが、正しい意味での優しさなんだと思っている。

本作の登場人物は、正にこの「余計なお世話」が多い。特に、

ミランジョがボッスを子に転生させようとすること。ボッスがミランジョの魂を救おうとすること。

の2つは分かりやすい。どちらも別に、(今となっては)本人は特に望んでいない。そして、ミランジョがボッスを転生させたいのも、「自分がボッスと共に永久に生きたい」からだし、ボッスがミランジョを救おうとするのは、「自責の念」からだ。彼らはそれを死の間際に気付くけれど、それまでは「相手のため」を免罪符に、悪行の限りを尽くす。

なぜこうなったかというと、ボッスもミランジョも、過去に大きな悲しみを背負っており、そうして胸に空いた穴を、「何か」で埋めなければならなかったから。2人にとってそれは、「互いを救う」ことだった。(宗教なんかもそうだけど、本当に怖いのは、ご立派な大義名分の為にどんな手段でも正当化してしまう、どこまでも盲目的で利己的な人間なんだと思った)

これは、本作のヒロインとも言える活躍をした、ヒリングにしても、少しそういう部分が見える(ちなみに、私が本作で一番好きなキャラはヒリングです)。

序盤、ヒリングがボッジに冷たくあたっていたのは、「無能」な「我が息子」が王位につくことで、かえって苦しむのではないかという、親心(愛情)から。実に母親らしい思考。ただ、ボッジは単純に王になることを応援して欲しかった。

一方、ダイダは、母から「王への期待」をかけられているが、それは、「ボッジの代わり」であり、「ボッジを救う手段」だと(ヒリングの深層心理に)気付いていた(だって、ヒリングの性格上、もしボッジが優秀だったら、実子という理由だけではダイダを王には推薦しないだろう)。

正に、「代打」だと自分を卑下していたのである(本当は優秀だから、期待され、手をかけられなかっただけだが)。

だから、必要以上にボッジを見下し、いじめたのだ。あれは、母親の愛を独占したいという寂しさや、母の深い愛を受けるボッジに対する劣等感からの行動なのだろう(基本的にいじめっ子は、親からの愛情が不足している者がなりやすいという研究結果もある)。

ヒリングがあそこまで息子に大きな愛情を抱いたのも、実は、夫であるボッスからの愛情不足があるのだと思う。2人の夫婦間系は破綻までいっておらず、表面上は良いのもしれないが、実は、冷え込んでいる。

だって、旦那は仕事(王様)ばかりに熱心で、自分以上に亡妻を愛していて、更に心のど真ん中には別の女(ミランジョ)がいる。旦那はそれを上手く隠しているつもりだろうが、女性はそういうところに敏感だ。

ヒリングは根が良い人なので、そういう「満たされない思い」を「子に愛情を注ぐ」ことで埋めていたし、ダイダも、「足りない母の愛」を「ミランジョに頼る」ことで埋めていた。こういう歪なバランスの上で安定している関係は、何か1つのキッカケで崩壊するものだ。

だからまあ、最終話でダイダはミランジョを妻とし、ヒリングはドルーシと良い感じになったのだろう。ダイダのような男が、母性的なものを求めて姉さん女房をもらうのも、ヒリングのような女性が、無骨だが一途に自分だけを思う男性に惚れるのも、ままあることだろう。

この辺の背景を絡めないと、最終話の突然の展開に驚き、場合によっては嫌悪を抱くかもしれないが、私は、本作を「弱き、哀しき、不完全な」大宰的なキャラによる話と捉えていたため、そういう「利己的で、情動的で、短絡的な人間」を愛おしいと思った(これは、近代文学好きならではの歪んだ思考ですねw)。

私は、人間らしい人間が好きだ。そして本作のキャラクターは、実に人間らしい。

話は少しずれてしまったが、ドーマスがボッジに寄せる思いと行動も、デスハーやデスパーがオウケンに寄せる思いと行動も、本人の願いとは少しずつズレているように感じ、

「本質的に優しい人間達の、他者を思いやる尊い行動が、悲しみを背負うことで僅かに感覚を狂わせ、まるでボタンを掛け違うように、悲劇を生み出してしまった話」

のように感じた。これが、本作における主たる感想である。

さて、そんな中、主人公のボッジだけは、「他者の理屈」で動いている。アドラー心理学によると、「共感とは、自分の価値観に合うものを見つけるのではなく、他者の価値観で物事を見聞きすること」だそうだ。

ボッジは、耳が聞こえないため、幼少期から周りを見渡す洞察力に長けていた。そして、口がきけないため、自分の思いを表現することが苦手になった。さらに、力が弱くいじめられたため、他者の弱さに寛容になり、共感的に他者を受け入れる素養をもった。

穿った見方をすれば、それが彼なりの「処世術」だったのかもしれない。

そんな彼が歪まなかったのは、彼が多くの愛情に包まれていたから。父、母からの愛情。継母からの愛情。師匠からの愛情。そして唯一足りなかった、友からの愛情。

それらは一部を除き、本質的な意味では「無償の愛」とは言えなかったが、ボッジはそれを最大限好意的に受け入れている。一昔前、「鈍感力」という言葉が流行ったが、その力が強いのだろうか。

確かに、多くの愛情を受けた子供は、他者を受け入れ、自分を見失わない。多くの挑戦と失敗が出来る。

それはそうのだが、如何せん、ボッジの境遇の辛さと、彼の人柄の良さが乖離しすぎていて、ここに「ご都合主義」を感じてしまった方も多いのではないだろうか。私はそうである。

私は本作を「純文学のような人間らしいキャラに魅力がある」と評したが、そういう意味で、一番「人間らしくない」のがボッジである。

たくさんの人物の歪みや悲しみを、まるでスポンジのように一手に引き受け、包んでしまう優しさ。それはもう、「王の器」を飛び越えて、「神の器」とすら思ってしまう。

ボッジが子供だったのもいけなかったのかもしれない。本来、子供なんて自分の理不尽を周りに撒き散らすのが役割で、それを受け入れるのが大人の役目なのに、本作はその逆。そこが、自分的には一番受け入れ難い部分だった(よって☆4)。

それだけに、ボッジがドーマスに見せた、恐怖と怒りの感情は、大変見応えがあったし、ボッジを「人」らしくしてくれた。ああいう場面が、もう少しあっても良かったと思う。

いや、なにも「歪んだ主人公」を見たいわけではない。性急すぎるのだ。ボッジの最終形態は今のボッジで良いとして、「強さ」も「優しさ」も、もっと時間をかけて獲得して欲しかったのである。

私は本作を観始めた頃は、「ジブリに、2時間映画にまとめてほしい」と思ったが、途中から、「世界名作劇場みたく、1年はやってほしい」と思うようになった。

本当は、ボッジとカゲの友情を丁寧に描き、たくさんの街を旅し、幾人もの「善」や「悪」に触れながら、葛藤し、次第に成長するボッジが観たかった。

尤もそれは、「今後」に描かれる部分だろうし、むしろそれかそが作品の主題で「王様ランキング」に関わるのだろう。

そういう意味で、作品のエピソード0(旅立ちの前)だけでここまで描き切れている本作は非常に優秀な作品だし、今後に期待がもてる作品だと思う。
{/netabare}

投稿 : 2024/03/23
♥ : 30

nyaro さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

現代版「柳生兵庫介」。もともと王様ランキングの勝利条件が活人だったんでしょう。

 評価が難しいです。王様ランキングはどこへ?というのはまったく気になりませんでした。このレベルで引っ掛かる話では無かったです。まあ、途中で作者が表現したい内容に気が付いて路線変更したんでしょう。

 テーマは「活人剣」=無刀取り=政治の哲学として、個人の力ではなく人を活かすことこそ最強という話なんでしょう。

「活人剣」は津本陽氏の「柳生兵庫介」という小説で読んだくらいなので詳しいわけではありませんが、上泉信綱から石舟斎という系譜で誕生した徳川のお家芸の剣技、柳生新陰流の「無刀取り」です。

 逃げる=負けない剣、細い剣=急所を突く、そして、相手の力を利用する。西洋的な世界観の中でボッジの強さは極めて東洋的なので、物語中ずっとそのことを連想していました。まあ、それだけならありふれていると言えばありふれてるんですけどね。ただ、いろんな強さがありました。

 巨人というのはゴヤの絵画とかマーラーの交響曲にもありますが、極めて西洋的な印象を受けます。ダイダラボッチもありますけど…本作はまあ西洋の巨人でしょう。力=パワーです。そしてパワーは権力という意味もあります。
 不死というのはゾンビもあるし、人魚もありますが、私はターミネーターを連想しました。特にターミネータ2ですね。非人間的なところもT1000みたいでした。

 魔女、暗殺、剣技、怪物…強さの種類上げればキリがないですが、そう言った強さの中で、最強なのは活人剣…人を許し活かして行くことだと思いました。

 障碍、非力設定はその為でしょう。「力ない物は活人の道しかない」ではなく「活人こそ最強」だから「肉体の力は関係ない」です。だから、それぞれの内面を描いているようですが、そこにはテーマ性が見えなかったのかもしれません。

 結末もそれぞれの人が説得されて来たわけでなく「活人」されたわけです。しつこく魔法で傷を治す描写があったのは、このことを表現していたのかもしれません。倒すのではなく懐へ、です。
 王様ランキングという題名、1話の剣の戦いのプロセスとボッジの特徴からいって、この「活人」が描きたかった、主要なテーマだというのは間違いない気がしてきました。キービジュアルも裸ですからね。無力=無刀=最強を表しているんでしょう。

 ただ、それを各国を回って王様同士が比べっこして…とやるとあまりに露骨で寓話的になるので嫌だったんでしょう。あるいはデスパーやミランンジョ、オウケンを動かしているうちに話が変わったか。あるいはダイダとヒリングを動かしているうちに母について書きたくなったのかもしれませんね。 

 オウケン=王権、ダイダ=代打、ヒリング=ヒーリング治す、デスハー=ハーデスのアナグラム、ミランジョ=鏡女ですから名前の付け方単純ですよね。で、オウケンということは多分、初めは違う役割だったんだろうなあ、と思ったりもしました。

 最後魔人がどっかに行きます。つまり、無敵だけど人類の善悪に関わりないですね。彼に人間ではないし政治にも関係ありません。だからどうでもいいということでしょう。

 構造として中身は津本陽氏の「柳生兵庫介」というより柳生一族の「活人剣」がテーマで、舞台設定をシンデレラ、アナユキ、シンドバッドなどのディズニーにしたのでしょう。そこに母の愛がのっている感じです。
(追記 類似性は劉備玄徳でもいいですけどね。活人剣と明確に言っているのでやっぱり柳生でしょう)


 ただ、なぜボッジが活人の達人になれたか、です。耳が聞こえない部分=彼の無垢さ…それはイグノランス…愚かさにもつながります。ただ障碍者だから、ピュアというのはちょっとイヤです。「聲の形」の西宮硝子が障碍者だから不幸だ、少し馬鹿に見えると言っているのと一緒です。

 彼には本質が見えるのでしょうか。それとも母親の愛情を受け取った結果なのでしょうか。その辺、彼の純粋性については明確に読み取れませんでした。強さと表裏だとは思いますが。
 王様ランキングの初期の話からぶれたと思うのは、ここもあって活人の意味が読み取りづらいと思います。

 まあ1回目ということで、評価はマイルドにしています。読み取れない部分もあったかもしれません。

 いずれにせよ2クールで作家性がある完結するアニメを作ったことは素晴らしいと思います。話も単純では無かったので面白かったです。
 再視聴はどうでしょうか。ちょっと長いし原作者が良く勉強しているのかもしれませんが、かえって見たことがあるようなエピソードも多いのですぐは辛いですね。半年、1年たったら見るかもしれないし、放置かもしれません。





以下 2話までの第1印象です。

寓話や感動ポルノでなければいいのですが。結末で評価は決まりそうです。

 現時点ではなんとも言えない作品みたいですね。この悲惨な話はこの絵柄じゃないとみられないでしょう。

 みにくいアヒルの子+手塚治虫(どろろ、ブッダ等々)や999的な母との別れからのスタートでした。

 障碍やダイバーシティ、王様ランキング制度の無意味さみたいな題材の寓話あるいは感動ポルノならがっかりですが、王子とカゲがそういう既存の価値観を超越してくれたところで活躍してくれるなら面白そうです。

 途中経過より見終わった後でないと価値がわからなさそうですね。最後を楽しみに視聴継続します。

投稿 : 2024/03/23
♥ : 20

kittys さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

いろいろな評価がありますが.....

現3話まで視聴しています。

王様の順位を決めるアニメですが、流行りの最強系ではありません。
むしろ最最最最弱からのスタートです。

結果として昇りつめて行く作品ですが、王様の成長はすこぶる悪く急成長するものでもありません。

では何が面白いのか。結論はまわりの人間関係や敵勢力の立ち位置あります。
ですので、派手なアクション、洗練された作画が好きという方は合わないです。

簡単にあらすじを説明すると王様はしゃべることができず、聞くこともできないのでコミュニケーションを取ることもままなりません。そして力も子どもなので皆無です。

しかし、まわりをどんどん味方につけていきます。理由はぜひ見てください。

噛めば噛むほどいい味を出して行くアニメです。まだ3話なのですが次の4話を見たくてたまりません。

王様ランキングのまわしものみたいなコメントですがそれくらいよかったので素直書いたつもりです。ぜひ一緒に楽しみましょう。

投稿 : 2024/03/23
♥ : 3

63.8 4 不死身で陰謀なアニメランキング4位
ケモノヅメ(TVアニメ動画)

2006年夏アニメ
★★★★☆ 3.7 (187)
944人が棚に入れました
食人鬼を狩るため古より続く戦闘集団「愧封剣」。その師範代である桃田俊彦は、事もあろうに愧封剣館長殺害の疑いをかけられた食人鬼の上月由香と恋に落ち逃亡してしまう。俊彦の弟の桃田一馬は、逃げた二人の追跡と愧封剣の館長職を継いで愧封剣の運営に乗り出す。元愧封剣メンバーの大葉久太郎の助力を得て組織の近代化を進める一馬だが、最近の食人鬼の激増による連戦で疲労の頂点にある隊員達と、 これを機に影の存在であった愧封剣を社会にアピールしたい一馬の間で亀裂が生じはじめる。

声優・キャラクター
木内秀信、椎名へきる、吉野裕行、柿沼紫乃、筈見純、内海賢二

takumi@ さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

エロティックバイオレンスホラーラブコメディ~?とある家族の壮絶な愛の味

2006年8月から11月までWOWOWで有料放送されていたせいで
知名度が低いのか。
あにこれでもレビュー数がとても少ないのが残念でならない。
監督は湯浅政明氏。全13話。70年代によくあったようなOPの演出と
ジャズのビッグバンドっぽい音楽、気性の激しさを感じるフォントがカッコいい。

【愛と欲と哀しみと】

食人鬼を狩るため、いにしえの時代から続く戦闘集団「愧封剣」
「愧封剣」という技は元々、「己の心の中にある鬼を封ずる技=救済でもある」
ということが1話で語られるのだが、この言葉に納得しながらも、
観終えた翌日の今日もまだ、余韻に浸りながらこの意味を考えていたりする。

「愧封剣」の師範代である桃田俊彦は、食人鬼の上月由香と恋に落ち逃亡。
しかし単なる逃亡劇にとどまらず、恋愛だけではない家族愛、親子愛、
そして無償の愛へと話が発展していく壮大さは見応え充分。

食うものと食われるもの、いわば天敵なのだが、見方をガラリと変え
食欲と性欲という密接に繋がった本能を主軸においた場合、
この作品はまさしく「愛と欲望の物語」なのだということに気づく。

しかし、愛や欲望なんて言葉にしてしまうと、ただただ相手の身体をむさぼり
溺れていくイメージが強くつきまとってしまいそうだが、、
それだけではない重みや、複雑な哀しみがこの物語にはあって、
各登場人物たちの過去や心情、事情などが明らかになっていくにつれ、
観れば観るほどに、どんどん惹き込まれていった。


【魅力ある登場人物たち】

ネタバレになるのであまり詳しくは書けないが、
食人鬼のボス的存在の男も、なかなか男気があって魅力的だったし
6話や最終回で見せた異常なほどの大男、”ぼんちゃん”の気の優しさや、
ぼんちゃんのパパで、この物語の大きな鍵を握る大葉氏の狂気も
必要不可欠な存在であり、人間離れしながらも人間的なところは
あまりに哀れすぎて同情してしまうほどだった。
また、本能に素直で正直で、不死身かと思うほどの強靭な身体能力と
精神力の持ち主である俊彦は由香や利江でなくとも、
惚れてしまうセクシーさがあってすごくいい。

でも、俊彦の腹違いの弟で、父亡き後の「愧封剣」のため奔走した一馬や
一馬を支えつつ、許婚だった俊彦への自己犠牲的な深い愛情を示した利江、
そして彼らの父親たちの複雑でせつない想いにも泣けてしまった。
もちろん、由香と俊彦の深い絆と信頼、愛情にも・・・
それを象徴する、最終回のエンディングに登場する一枚の写真には、
「愧封剣」の真の意味を感じ取ることができ、こみ上げるものがあった。 


【印象に強く残った食事風景】

また、9話での老夫婦のエピソードもなかなか良かったし、
塩湖での、つかのまの幸せなひとときはちょっと幻想的で、
心に刻み付けたいシーンだった。 
それだけに、その直後の光景は衝撃大きかったのだけどね。。
ただ、6話の由香の誕生日と9話での老夫婦との食事のシーン、
利江の父親を訪ねていった時に出されたコーヒーなど見るに、
料理や飲み物は、その味そのものはもちろん大事だけど
それ以上に、「美味しいね」と微笑み合える関係と信頼のほうが
重要なんだなとあらためて考えさせられた。


【この作品の魅力】

映画やドラマのパロディも、シーンやセリフの中にちらほらあり、
ギャグとシリアスのメリハリあるバランスが絶妙で、
スパイスの効いたロマンスと辛口なアクションの匙加減にしても、
人間のエゴや愚かさ、本当の悪とは何かを、これでもかというほどに醜く描き
悪夢としか言いようのないグロテスクさとエロの曖昧な境界線までをも
露にしようとした試みにはほんと、飽きさせないなんてもんじゃなく、
恐れ入りましたという感じ。
また、アクションで特に発揮するカメラワーク、音楽の使い方も良い。
特にサンタラの唄うエンディングテーマ『好き』は、この物語のために
書き下ろされたとしか思えない歌詞で、その言葉選びも秀逸。
ちなみに全13話のサブタイトルを見ると、甘い、辛酸、苦味、しょっぱい、
隠し味や蜜の味、などの味覚を表す言葉が含まれているのだけれど、
最終回のタイトルは「味は関係ない」と締めくくっているのも、
いろいろな含みがあって素敵。

どれひとつとっても個性が強くて、おそらく万人受けはしないのだろうけれど、
個人的には今まで観てきたアニメの中のベスト10に入る作品になった。

そして湯浅氏の作品での特徴かなと最近気づいた雨の多用、
激しいアクションシーンで、しかも人の感情の昂ぶりや怒りに比例するがごとく
効果的に使われており、雨の降り方も強弱つけてあって、
そういうさりげなく繊細な部分も好みだ。

つくづく、アニメって総合芸術なんだな、と改めて気づかされたことが
観て良かったなと思ったし、嬉しかった。


最後に、記憶に残ったセリフのひとつ・・・
「気持ちだけで話すな。現実を見ろ!」

自分自身にも時々言い聞かせたい言葉だった。


【観終えたあとに考えていること】

それにしても、人を食べる・・いわゆるカニバリズムとは何だろう?
密林の奥地の人食い族には、どんな秘密と真実があるのだろう?
遭難などして飢餓状態にある時の、生き延びる手段だったり
宗教的なものの他に、確実に太古の昔から存在する事実。
学生時代、この「カニバリズム」について少しだけ探求してみたことが
あっただけに、今回の物語はすごく興味深かったわけなのだけれど、
側面的なことしか、まだ答えが出せていない。
もしかしたら、SMというフィルターを通すと案外、
わかりやすい答えが叩き出せるような気もしている。

究極の自己愛か、本能100%の真の性愛なのか食欲なのか。
冒頭で若い男が「食った(寝た)女の話」を友達に自慢するシーンが
描かれていたが、本当に「食う」のはそんな生ぬるいものじゃないなと
観終えてみてそれだけは今、感じている。

投稿 : 2024/03/23
♥ : 42
ネタバレ

ぶらっくもあ(^^U さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

俺達に明日は無い?

2006年8月よりWOWWOWにて発表されたオリジナルアニメ 
原作&監督 湯浅政明氏&マッドハウス 音楽若草恵氏

この作品キャッチフレーズが、

エロティックバイオレンスホラーラブコメディー、

当初キワモノ?疑ったけど、
とんでもない、すなおにマイリマシタ<(_ _)>、

考えてみればアニメという媒体は、
作画や背景(絵画)基より本(小説)演劇演技(声、表現)
もう総合芸術であり文化でもあるという事、
あらため認識させられた、
{netabare}
食人鬼(通常形態は人間で興奮すると鬼になり人を襲う)というものが古来存在し、これを専門に狩る集団家系(愧封剣)の跡継ぎ長男が惚れた女は食人鬼だった、裏切り者の名を受けて全てを捨てて(←ごめんね~)食人鬼である恋人連れて禁断愛の逃避行、二人の運命や如何に?
{/netabare}
逃避行という事で、
ゲッタウエイ、ってより俺たちに明日は無い、かな?
そんな洋画観てた時代の日本、昭和40年代、
オープニングから即惹きつけられてしまった、
音楽、タイトルバック、フォント、
モロ昭和40年代感バツグン日活映画か~?みたいな、
これが劇中BGMからエンディングまで雰囲気一貫性見事で、
当時の退廃的或いはフラワーヒッピーサイケデリック、
そんなの流行ってた時代の感覚再現度凄い、
この世界観再現できる監督も凄いけど、
若草恵氏の音楽がこれしか無いってくらい合ってる、

画も背景もヤバい、好き嫌い無論あるだろうけど、
作品としてこの画でなければなんだね、
意図的ラフな線や背景や構図も随所けっこう緻密だったり、

ストーリーも基端逃避行って事で、
テーマがはっきりしてて判りやすいし、
全13話中にはけっこう素直に心響くエピソードもある、
芸術=わけわかんね~、って事もない、
{netabare}
最終回はス〇クキメてんじゃないかってぐらいぶっ飛び過ぎてたけど、
{/netabare}
万人受け難しい人選ぶ作品と言われれば、
それまでなんだけど、
監督湯浅政明氏という事で、
四畳半神話大系逆辿りで本作触れる方も多くそれも正解、
経緯どうあれ一度は触れて観て戴きたいものだなと。

投稿 : 2024/03/23
♥ : 23

ねこmm。 さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

骨まで愛して  【ねこ's満足度:80pts】

『マインドゲーム』の湯浅政明監督による初テレビシリーズ。

人を喰らう性質を持つ”食人鬼”の女・由香と、食人鬼を狩る集団”愧封剣”の師範代・俊彦。
そんな二人が出会い愛し合うことから始まる、大人のためのエンターテイメント作品です。

もうOPからガツンとやられました。カッコイイ!!
独特な作画や演出。抜群のテンポに色気溢れるジャズィなサウンド。
センスの塊のようなその世界に、瞬く間に惹かれてしまいました。

ストーリはシリアスかつコミカルに。
序盤は由香と俊彦による愛の逃避行劇が主となりますが、話はそんな簡単にはおさまりません。
様々な登場人物による欲望や願望が複雑に絡み合い、甘く切ない人間ドラマが展開されていきます。

公式ジャンルは”エロティックバイオレンスホラーラブコメディ”。
そのすべてがバランスよく配合されていて、全13話あっという間に完走してしまいました。
コミカルなやりとりが秀逸な6話と、それとは対照的に哀しい結末を迎える9話は、特にお気に入り。
どちらも、この作品の魅力が十二分に詰まったエピソードだと思います。
ただ、最終話だけはちょっとやりすぎ……かな?(その分評価は控えめ)
予想のはるか斜め上をいかれて、わたしの脳がついていけなかっただけかもですが(笑)。

ちなみにエログロ描写に関しては、その特徴的な絵のせいかそれほどでもないです(わたしだけ?w)
ただあくまでも”食人鬼”ですので(笑)。その手のものが苦手な方はご注意を。

投稿 : 2024/03/23
♥ : 30

65.5 5 不死身で陰謀なアニメランキング5位
ライディング・ビーン(OVA)

1989年2月22日
★★★★☆ 3.7 (23)
60人が棚に入れました
アニメクリエイター兼漫画家の園田健一が原作をはじめ全体の構成を務めたストリートアクションOVA。 夜のシカゴを激走する700馬力の真紅の車バフとそれを追うパトカーの一団。バフに乗っている大男はビーン・バンディット、法外な金額で依頼人を望みの場所へ連れてゆく運び屋「ロードバスター」だった。今夜もビーンは二人組の強盗を逃亡させるが、その二人の片割れセマーリンは翌日、変装してビーンのもとに来訪。大富豪グリムウッド家の警備員モーリスと名乗り、同家の令嬢チェルシーを屋敷まで運んでほしいと願う。ビーンとそのパートナーである射撃に長けた美女ラリーはこの依頼を5万ドルで引き受けるが、その直後にモーリスは謎の襲撃で弾丸を身体に受けてしまう。やむをえずチェルシーをバフで屋敷へ連れて行くビーンとラリー。だがやがてモーリス=セマーリンは回復。すべてはビーンを誘拐犯として仕立て上げるための作戦だった……。 本作の実制作はアートミックとAICが担当。

ユニバーサルスタイル さんの感想・評価

★★★★★ 4.9

ハードボイルドな世界で展開される痛快アクション

往年のアメリカ映画のようなストーリー展開ですが、実写に負けないぐらいの迫力あるカーチェイスは一見の価値ありです。


金さえ払えばどんな場所へも依頼人を送り届けることで裏社会では有名な運び屋「ロードバスター」。

愛車バフを乗りこなし仕事をこなす荒くれ者のビーンと、依頼を受け彼を射撃でサポートする冷静沈着な美女のラリー。

このコンビがある依頼を切っ掛けに警察とマフィア両方に狙われる羽目になり、事の真相を突き止めるため奔走する・・というのがあらすじです。


何よりこのアニメの特徴は、ド迫力なカーチェイスが本編のほとんどを占めていること。

ビーンの愛車バフは元々の超馬力に加え、特殊なギミックが凝らしてあってどんな道でも突き進んでいきます。

このバフの形振り構わない暴走っぷりは圧巻の一言です。
また、激しい動きを手元のシフトレバーの捌きで表す所もマニアックで良いです。


男も女も堅気でないためか、一般人離れした能力と精神力を発揮しています。

一見普通の女性に見えたラリーもやはり裏稼業の人間だけあって、いざというときには人殺しも厭わないようなハードボイルドな作品世界が展開されています。


小気味良いサウンドとアクション、シナリオが綺麗にまとまっていて意外な完成度に驚きました。

最初はビーンの尖がった顎に目が行くかもしれませんが、見ていく内に全く気にならなくなります。

当時隆盛を誇っていたAIC・アートミックのタッグは伊達じゃないです。納得のクオリティだと思いました。

投稿 : 2024/03/23
♥ : 4

Dkn さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

目をつぶれば洋画吹き替え。バブルアニメーションの真骨頂。

ガンアクション&カーアクション

改造車のカーアクション、挙動特殊で思わず笑っちゃいますw

銃火器のこだわりも素晴らしく、調べてみるのも面白いです。

大平晋也作画ぁ~(*´ω`*)かっきょいい


声優が今じゃ絶対実現不可能(色んな意味で)

田中秀幸、松井菜桜子、小山茉美、富山敬、林原めぐみ、本田知恵子、筈見純、
屋良有作、飛田展男、小林通孝、塩屋浩三、田中和美、小杉十郎太、丸尾知子

今やナレーションでしか聞かない方も、聞けない方もいますね。

塩屋浩三さんがガードマンA役・・贅沢。

元々はガンスミスキャッツという原作があり、そこから派生した作品の映像化。そっちのレビューも書きたい。
ブラックマジック M-66と同じく、作者がアニメーション制作にガッツリ関わる稀有な例。

この時代はまだアニメーションと漫画の性質というか、垣根があまりなかった時代ですね。
時代を経てそれぞれのプロフェッショナルに分かれましたが、
日本のアニメーションに漫画が深く関わってることを表しています。

「ROAD BUSTER」「KING OF THE ROAD」「BEAN BANDIT BOOGIE」「BAD GIRL」
・・等テンション上がる曲揃い踏み。

ライディングビーンのSoundtrackは映画の劇伴みたいでカッコイイんですよ。
テンポの良い曲調で、まさに車を運転するとき最適な曲。
アニメを知らない友人を乗せた時、他のインストゥルメンタルや洋楽に混ぜてかけます。
これなんの曲?カッコイイね!と言われるの待ちです(笑)

VHS持っていますが、Blu-ray出てるんですね!サムネがパッケージだったのか~~。買いてぇー。

投稿 : 2024/03/23
♥ : 4

ゼルミナ さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

切れ味鋭い!スパッとスカッとする45分!

2020再鑑。手元にあるベータマックスはどうしたら(笑)

ワイルドだが子供には優しい主人公と、気風が良い金髪お姉さんのバディもの、というハリウッドにもありそうなノリにまずキュンと来て欲しい(笑)

主人公が「運び屋」という事で、愛車には様々なギミックがあるのだが、これがアニメ的に凄い見せ場になってて楽しい。
物語の図式は単純だが、断じて単調ではなく、小山茉美が演じるライバルキャラが頭脳戦キャラなので、主人公サイドと上手く対になっていて飽きさせない。
そもそも声優陣の芝居が素晴らしいの一言。
要所に入る洋楽とあいまって、気分はもうハリウッドよ!(笑)

あまり良い言い方ではないかもしれないが、
「シティーハンター+ルパン三世」といった趣の超ストレート娯楽アニメ。
スカッとしたい時にどうぞ!


OP後のラリーの着替えシーンにドキドキしてた少年も今や中年に成り果てましたとさ(笑)
つか、ホルスター締めるカットとか、セクシーだけどイヤらしくはなく、しかもカッコいいという…園田健一のアニメって割と着替えシーンでるけど、どれも良いんですよ~
着替え、シャワー=エロ、って図式がもしあるとしたら、今すぐ撲滅したいぞ、ホントに(笑)

投稿 : 2024/03/23
♥ : 1
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