演劇で妄想なおすすめアニメランキング 3

あにこれの全ユーザーがおすすめアニメの演劇で妄想な成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年04月20日の時点で一番の演劇で妄想なおすすめアニメは何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

78.3 1 演劇で妄想なアニメランキング1位
心が叫びたがってるんだ。(アニメ映画)

2015年9月19日
★★★★☆ 4.0 (1197)
6262人が棚に入れました
監督 長井龍雪
脚本 岡田麿里
キャラクターデザイン 田中将賀
制作 A-1 Pictures
青春群像劇 第2弾 劇場版完全新作オリジナルアニメーション 

幼い頃、何気なく発した言葉によって、家族がバラバラになってしまった少女・成瀬順。
そして突然現れた“玉子の妖精”に、二度と人を傷つけないようお喋りを封印され、言葉を発するとお腹が痛くなるという呪いをかけられる。それ以来トラウマを抱え、心も閉ざし、唯一のコミュニケーション手段は、携帯メールのみとなってしまった。高校2年生になった順はある日、担任から「地域ふれあい交流会」の実行委員に任命される。一緒に任命されたのは、全く接点のない3人のクラスメイト。本音を言わない、やる気のない少年・坂上拓実、甲子園を期待されながらヒジの故障で挫折した元エース・田崎大樹、恋に悩むチアリーダー部の優等生・仁藤菜月。彼らもそれぞれ心に傷を持っていた。

声優・キャラクター
水瀬いのり、内山昂輝、雨宮天、細谷佳正、藤原啓治、吉田羊
ネタバレ

素塔 さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

始まりの言葉

言葉は誰かを傷つける。

このフレーズによって
すでに私たちは作品の世界に引き込まれている。

純粋で、ストレートであるがゆえに
傷つきやすい思春期の心の
その傷や痛みさえも美しく見せるものが青春だとすれば
青春という特権的な時間の中にのみ現れる
尖鋭化された、純粋な言葉へと
すでに定位はなされている。
言語一般に解消するのは誤りであると思う。

この作品で言葉は、テーマというよりはむしろ
もっと具体的な、マクロ的な機能を担って現れているようだ。
特に注目したいのは、ストーリーの展開の軸となる次の二つ、
「傷つける言葉」と「本当の言葉」。
これらを物語の展開に即して辿っていきたい。
そこには当然、この作品の主題も絡んでくるはずである。



{netabare}
「傷つける言葉」が現れるのは、物語の発端。
それが、ヒロインの成瀬順と田崎大樹とを結ぶ接点となる。

この二人は、反転させた相似図形のように
順は、メンタルな傷によるフィジカルな痛みを
田崎は、フィジカルな傷によるメンタルな痛みを抱えて
自分の殻に閉じこもって周囲から孤立している。

田崎は無神経かつ暴力的な言葉で順を傷つける。
その彼が、後輩の言葉で逆に傷つけられた時
「言葉は人を傷つける」ことを順が言語化する。
田崎にとってそれは、世界が一変するほどの衝撃だった。

田崎の「謝罪」から物語は動き出す。
彼の変化は、「傷つける言葉」を経験して
他者というものの存在を初めて意識したことによる。
はじめは拓実の苗字さえ知らなかった彼が
クラスの一人一人の個性に共感を示せるほど
今では周囲との関係の中に融和しているのである。

言葉を前景として展開されていく
この作品の中心主題とは、「関係の危機と回復」
そう捉えてよいのではないだろうか。
関係の危機に際して二人がとった対照的な態度が
このあとの展開の鍵となっているように思う。

順の場合、原因となった言葉を封印することで
不幸を回避しようとして、結果的に関係を遠ざける。
このネガティブな論法を、田崎はポジティブな行動で打ち破る。
彼は、言葉による関係の回復を証明してみせた。
それが彼の「謝罪」の意味である。

最初に田崎が殻を破り、関係の世界に踏み出した。
だから、本番直前に失踪という形でクラスの仲間を裏切り
順がふたたび関係の危機に陥った時、彼女のために
再起へのチャンスを懇願し、的確に方向性を示して
クラスの空気を一瞬で変えることができた。
田崎は先に進み、順が自分に追いつくのを待っている。



「本当の言葉」が現れるのは、物語の最終盤
順と坂上拓実との間に交わされる対話の中である。

拓実が失踪した順を探し当てた場所は
「すべての事のはじまり」の場所である
今は廃墟となった、山の上のお城(ラブホテル)だった。
不幸が繰り返された結果、原点に回帰して
すべての根源を断ち切りたいという無意識の願望が
おそらく順をここに誘ったのだろう。

二人の間に交わされる対話は、物語の最重要場面だが
短い時間の中に内面の動きが極度に凝縮されているため
観る側の解釈による補足がどうしても必要になる。
例えば、関係という補助線を引きつつ
二人の言葉を糸口に、経過を注視していくと
順と拓実との間で「本当の言葉」が交わされ、連鎖的に
二人の心に劇的な変化が生じてゆく過程が見えてくる。


まず、順から拓実へ。

無残な廃墟と化したホテルの部屋は
順の心の内部を象徴するものだろう。
童話風なステンドグラスの窓は、はじめは薄暗く
対話が進行するにつれて、徐々に明るい光が差し込んでくる。
宗教的な空間を想起させるこの場所で
彼女の魂の再生が行われることを暗示している。

絶望に駆られ、すべてを呪詛する順に
拓実は、「本当の言葉」を聞かせてくれ、とせまる。
順が怒りに任せて叩きつけた罵倒の言葉は
確かに「本当の言葉」だったかも知れないが
あっという間に種切れになった。
物語の少女とは違い、現実の彼女は
言葉で誰かを傷つけたことは一度もなかったからだ。

自分のおしゃべりが原因で家族が崩壊したという
あまりにも不幸な体験が再現しないよう
痛みを伴う強烈な自己暗示をかけて言葉を封印した。
その際、誰かを傷つけてしまうから、という
単純化した論理を用いて自分を戒めてきたのだろう。

その順を「傷つける言葉」へ誘導することで
意図せずして拓実が行ったことは
対話によって患者をトラウマの根源に導いていく
精神分析の治療法を想起させるものだ。
ただし、治癒は一方的なものではなく、相互的に進行する。
先に変化が生じたのは、拓実の方だった。


拓実から順へ。

順は、拓実の名前を繰り返して三度、呼んだ。
その時、思いがけず拓実の目から涙がこぼれ落ちた。
この呼びかけが、彼の心の一番奥深くにまで届いたのは
それが順の「本当の言葉」だったからだろう。

彼が順に打ち明けたのは、心に澱んだ虚しさだった。
自分には誰かに伝えたいことが失われてしまっている。
伝えたいことがない、という空虚感は
裏返せば、他者との関係の希薄さを意味している。
つまり、彼もまた順と同じように
心の殻に閉じこもってしまっていた。

伝えたいことで満ちあふれる順の心の躍動に触れ
何より、関係を諦めない順を通して
自分が渇望していたものを知ることができた。
本当の言葉を伝えることとは、言葉を介して相手を受け入れ
自らも相手に受け入れられようとする、関係への願いである。

いま、それが実現していた。
猛烈な勢いで罵倒されてもうれしかった。
名前を呼ばれた時には
空虚だった自分の存在が満たされる気がした。
そして彼の中に、伝えるべき本当の言葉が生まれた。
お前に会えてよかった、という感謝。
これが、ようやく拓実が伝えられた「本当の言葉」だった。


ふたたび、順から拓実へ。

拓実のストレートな心情の吐露が
すべての原点にまで遡って、順の中の固定観念を
転倒させることに成功する。

私のおかげ? 私のせいじゃなくて?

この時、順のトラウマの原因が、父親の言い放った
「お前のせいだ」という言葉だったことが明らかになり
自らにかけてきた、卵の呪縛から解き放たれる。
殻が破れた瞬間に見えてきたものはやはり
これまで育んできた仲間たちとの関係だった。
だから、彼女の中に感謝と後悔が自然に湧いてくる。
「みんな」が待っている場所へ行く。その決意とともに
物語は一気にフィナーレへと加速する。

その前にあと一つ、伝えなければならない
「本当の言葉」が順には残されていた。
それを伝え終えたあとの表情には、傷心よりもむしろ
自分に対して一つの決着をつけられた清々しさが勝っていて
順が生まれ変わったことを強く印象づける。
失恋は終わりではなく始まりとなった。
彼女は新しい世界へ踏み出していく。



フィナーレでは「言葉」は前景から退き
代わって「歌」が、順が踏み出した新しい「世界」の
メッセージを高らかに歌い上げる。

ここに、雀犬氏のレビューから一文を引用させて頂こう。

「この映画で最後に見せたかったものは
 自分の殻を破り外の世界に飛び出した成瀬順に対する
「新しい世界からの祝福」だと思われる。」

これは、ラストの田崎の告白に関してのご指摘だが
この卓見はフィナーレの全体にまで敷衍することができる。


思い返せば、ミュージカルの発端にあったものは
順がケータイで紡いだ物語と、拓実のピアノとの二つ。
そのいずれもが、閉ざされた内部に封印されてきた想いを
外の世界へ向けて解き放とうとするものだった。
それが周囲の多種多様な心を取り込んで、膨れ上がり
一つの作品にまで結晶する。

ラストの全員合唱のシーンにオーバーラップする
日常の片隅の、さりげない情景の数々。
日々繰り返される、何気ない
そしてかけがえのない「日常」の愛おしさ。
彼らの過ごしてきた日々が集約されている
誰もいない教室を写した一カットにはいつも胸を打たれる。

明らかにここには、「世界」の意味するものが
具体的なイメージとして重ねられている。それは
一人一人の内面の「小さな世界」を包みながら
同心円状に、クラス、学園、地域へと広がっていく
コミュニティと呼ばれる、古くて新しい私たちの「世界」だ。

集団のエネルギーの総和である、ミュージカル。
無数の関係の集積として成立する、コミュニティ。
アナロジーで結ばれたその二つの場が向かい合い
同一の空間を形成するのが、この作品のクライマックスである。
そして、物語の最大の焦点であった順と母の和解は
二人がそれぞれ、一方の場所からお互いを見出し
言葉を介さずに理解しあうという、象徴的な描き方がなされている。

個々人の葛藤が、共同性の中に止揚されるこの図式は
祝祭というものの本質的な機能に即している。したがってそれは
個と集団との対立のない、調和的な世界であって
甘さとして指摘できる部分だが、こうした批評的な掘り下げは
本作にはあまり似つかわしくないようにも思う。
「あの花」とは異なる、これがこの作品の独自性なのである。

青春のリアルな感触を伴った本作の魅力は
逆説的だが、一種のユートピア性にあるのではないだろうか。
同じ印象をかつて自分は、「耳をすませば」から受けた。
私たちの日常と隣り合った、いわば親密なユートピア。
アニメーションはこれを志向し、私たちもそれを憧憬する。
アニメがもたらす幸福感の源の一つが、確かにここにはある。
{/netabare}



言葉は誰かを傷つける。

そのことにまた傷つき、立ち止まり、それでもなお
「本当の言葉」を交わしあいながら、彼らは前へ進んでいく。

危機に瀕した関係を回復する「謝罪」も
相手を肯定し、関係を深化させる「感謝」も
新たな関係への願いである「告白」も
彼らの言葉は、ありったけの真情をこめた叫びのように
未知の可能性に向かって発せられる。

だから、青春の言葉はいつでも
「始まりの言葉」なのだ。


(初投稿 : 2020/08/02)

投稿 : 2024/04/20
♥ : 23
ネタバレ

ato00 さんの感想・評価

★★★★★ 4.9

この作品は、私の最高評価アニメ映画です。<地上波放送記念;少しだけ長めに修正>

すごい。
すごいとしかいいようがない。
話の途中から感動で涙がボロボロです。
その上ラストにさらに感動を。
さわやかな青春の鼓動に心を動かされまくりました。

{netabare}ヒロインは、幼少期のある言葉により傷つき言葉を失った順。
主人公拓実、元カノ菜月、野球部元エース大樹を含めた4人が地域交流会の委員へ。
彼らもまた、悩み傷ついた心を持っていたのです。
最初はギクシャクしますが、順の心からの行動によりうち解ける4人。
クラス全員を巻き込んでミュージカルの準備が進みます。
しかし、地域交流会前日のある事件により、順に変化が・・・{/netabare}

ホント言葉って怖い。
不用意に発した言葉は容易に人を傷つける。
でも、自分の溢れる気持ちを言葉に乗せれば、どんな心も溶かすことができる。
そして、奇跡だって・・・

一瞬も目を離せない119分間。
4人全員に感情移入して感動の嵐でした。
よって、私の最高評価の作品とさせていただきます。

投稿 : 2024/04/20
♥ : 63
ネタバレ

shino さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6

心を開いて

とてもおしゃべりで、
夢見がちな女の子がいた。
成瀬順、おしゃべりが大好きなかわいい子。

幼い頃、何でも言葉にする、
{netabare}彼女のせいで事件が起き、両親は離婚。
深く傷ついては、自分のせいだと塞ぎ込み、
その事が原因で、彼女は言葉を封印する。
静かな生活を送り、周囲からは浮いた存在となる。{/netabare}
色んな気持ちを心に閉じ込めて生きいている。
そんな経験を持つ彼女を中心とした青春群像劇。

人を傷つける言葉がある。
でも人を救う言葉もある。

想いを声(言葉)にすることの、
大切さと難しさがここでは語られている。
話し言葉でもいい、歌でもいい。
きちんと伝えることが大事なんですよね。

勇気を持って心を開けば、
きっと素敵な物語が始まるのです。

大きく心は動きませんでしたが、
晴れ晴れとした気持ちになれました。

投稿 : 2024/04/20
♥ : 88

63.0 2 演劇で妄想なアニメランキング2位
花とアリス 殺人事件(アニメ映画)

2015年2月1日
★★★★☆ 3.6 (142)
535人が棚に入れました
2004年に岩井俊二自身が原作・脚本・監督を務めた、ふたりの少女を描いた映画『花とアリス』の新たなストーリーをアニメで描くことになる。

『花とアリス』の前日譚となり、史上最強の転校生のアリスと史上最強のひきこもり 花が出逢ったとき、世界で一番小さな殺人事件が起こった、とのストーリーになるという。ふたりの出会いの物語だ。

アニメ映画では、鈴木杏と蒼井優を彷彿させるデザインのキャラクターが登場し、さらにふたりがこの声を演じることで10年ぶりに競演するのもみどころだ。

ちなみに映画は先に声を録音するプレスコを採用している。

声優・キャラクター
蒼井優、鈴木杏、勝地涼、黒木華、木村多江、平泉成、相田翔子、鈴木蘭々、郭智博、キムラ緑子

けみかけ さんの感想・評価

★★★★★ 4.9

【今作があればもう日本には“アニメも邦画もイラネ”ってなる!!!】「いやぁ~どぉだろぉかぁ~σ(^^;)」【第3の映画誕生の瞬間を目にした!!!】

『Love Letter』や『スワロウテイル』で有名な天才邦画監督、岩井俊二が初めてアニメ長編に挑んだ意欲作
『サイコパス』の本広克行など、最近有名映画監督がアニメに乗り込んできたことをオイラの友人は「アニメが売れると分かってシャシャり出てきてる」と批判しました
ソイツの気持ちもワカランでも無いですが、今作に関しちゃ技術的にも物語的にも完成度的にもとても素晴らしい歴史的傑作に仕上がったと思っています
どうか【食わず嫌いだけはしないで欲しい】という気持ちで今作を応援させていただきたい


事の始まりは2003年にネスレKitKat(キットカット)のホームページ上で配信された連続webドラマ
所謂「続きはwebで」と銘打ったCMドラマです
蒼井優が演じる天真爛漫な元気娘“アリス”
鈴木杏が演じるアリスに振り回されがちな内気で惚れっぽい“花”
この二人を軸に描かれる受験生応援&青春恋愛ドラマでした


webドラマが思いのほか人気だったので2004年には続編となる長編映画が公開
映画の1年後には今作のプロットが出来ていたらしいですがお蔵入りになってしまい10年の月日が経った・・・そしてまさかの10年越しの復活、それもアニメで、という斜め上に意表を突いたのが今作なんですね


さて、なんでよりにもよってアニメ?
となるところですが、コレ物語が中学3年生の花とアリスの“出会い”が描かれるという前作の前日譚になってるんです
つまり10年越しに【鈴木杏と蒼井優】を10代の【花とアリス】に若返らせる為に「残された手段はアニメしかねー!」ってワケでオリジナルキャストを尊重した結果の決断なんですね


だから演出方法は基本的に実写と同じで、実写では普通に出来るカメラワークを純粋にアニメへ落とし込むためには・・・って努力がアニメ初挑戦の岩井監督ながらとにかく凄い
3本柱となる技術がロトスコープ、トゥーンシェード、背景をパーツ化してのモーフィング


監督自らデジタルコミック作成ツールを使って絵コンテを起こす

蒼井優ら前作オリジナルキャストが集結しプレスコ録音

実写ロケハン&ロトスコ撮影専門キャストで演技撮影

撮影した実写を元にロトスコープ作画&トゥーンシェード3DCGによるアニメート
(ロトスコとCGはカットごとに使い分けてます)


すんげぇ手間が掛かってるんですよ
2013年の『悪の華』が全編ロトスコだったり、最近でもトゥーンシェードのアニメが注目を浴びたりしてますが、今作は現代映像技術で出来ること全てを投入した結果といえる
魅せる動きのカットはスーパースローで、という演出の再現は基本中の基本
すごいのがアニメではまずやらない、ってか出来ない“フォローパン”を背景の立体化も含めた技術で完全にアニメートしてること
この背景自体も美監が滝口比呂志でコミックスウェーブフィルムも関わっていたりとあの『言の葉の庭』のスタッフが集結し“超美麗”っす
つまりあの『言の葉の庭』の美麗背景がシームレスに動いてるんですよ!?
その映像はまさに目からウロコ


もちろんこの作品を手放しで賞賛する気はオイラにも無く、まだ課題が残ってたりもします
『悪の華』では実写キャストにとにかく似せよう、というスーパーリアル調なキャラデザが賛否両論となりましたが、今作の場合は岩井監督の“ヘタウマ”な絵コンテが全てのベースになっている為、表情の描き込み等が乏しいのがタマにキズ
この岩井監督の絵を、「可愛い」と取るか「単に下手」と取るかで賛否は真っ二つでしょう
目が単なる棒線になってしまっているカットとか(こんな感じの→ |0| )、みんな同じ顔してるモブキャラとか、端的に粗末でもっと作り込めたな・・・ってカットが多々あったのは残念ですかね
もっと作画監督とか立てても良かったのでは?と


さてここまでは技術の話ばっかでしたが、物語的にもホント素晴らしい


転校生のアリスはクラスメートから何もしてないのになぜか無視をされ続けている
どうも1年前に同じ教室で“ユダ”なる人物が殺され、ユダの呪いが封印された座席に転校してきたアリスが座って封印を破ってしまったらしい
アリスは謎だらけのユダ殺人事件の詳細を唯一知る人物で、1年前から不登校を続ける花に接触を図る・・・


ユダとか殺人とか謎だらけのキーワードが物語を力強く引っ張り、コージーミステリとしてとてもよく出来ています
さらに中盤からユダの謎が徐々に解け、やがて思春期特有の淡い感情が生んだ小さな事件であることが明かされる・・・


プレスコによって伸び伸びとした演技が出来たキャスト陣が個性溢れる濃ゅいキャラクター達をより生き生きとさせており、小気味良いマシンガントークのさながら撃ち合いがテンポよくお話を進める
よく「非声優をアニメに出すな下手だから」とかいう人がいますが、それはアテレコの話であってプレスコの今作はむしろ本領発揮なワケです
そういった意味でも安心して楽しめると思います


とにかくずっと笑っていられる、そんな生暖かい目で観れる青春ミステリー傑作と呼べるでしょう
『氷菓』とか好きな人は絶対観るべきです、素晴らしかった


何気に作画協力に磯光雄が携わっていて“磯さんの生存が確認出来た(笑)”ことも個人的には面白かった


今作で用いられた技法は決して安易に作品を量産出来るものではありません
しかしながらこの技法の確立によってアニメでも実写でもない【第3の映画】が生まれたんじゃないか、とオイラ思ってます
岩井俊二ってだけでアニヲタドン退き、アニメってだけで大衆ドン退き、ってことで今作はイマイチ注目度が低いようです
けみかけは『花とアリス殺人事件』を全力で応援していきます

投稿 : 2024/04/20
♥ : 39
ネタバレ

shino さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6

少女A

監督原作脚本、岩井俊二。

映像化された「花とアリス」の前日譚。
花とアリスはいかにして出逢ったのか、
2人の少女が世界一小さな殺人事件の謎を解く、
出逢いと冒険の物語。

純朴で些細な日常を描く物語ですね。
監督らしい美麗な背景と光のレイヤー、
台詞の間や物に触れるちょっとしたしぐさ、
実写をトレースしているだけあって、
人の歩行に関しては感銘を受けます。
ゴミ出しのおばさんまで正しく歩いている。
心情の多くを語らせない演出家ですので、
その余白に感性を近づけなければいけない。
極めて文学的な作品だとも言えます。

新世代の芸術家に関して特集が組まれると、
その才能が何に影響されたのか興味は尽きません。
彼もまた多くの方に影響を与えた一人でしょう。

{netabare}私は「物語」があることに衝撃を受けましたが、
そもそも「物語」の排除が、
岩井作品の真髄ではなかったのかと。{/netabare}

不思議な魅力を持った作品です。

投稿 : 2024/04/20
♥ : 53
ネタバレ

さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

キャラが良い

あらすじ
{netabare}有栖川徹子が転校した先の学校では「ユダが4人のユダに殺された」という逸話が残されていた。

そして、そのクラスでは彼女を取り巻く雰囲気がどうも冷たい。

納得がいかない徹子は、訳を聞いて回る。すると、
「ユダって去年の3年2組にいた生徒。ユダには4人の妻が居たの。そのことをそれぞれの妻に秘密にしていたの。ある日その秘密が4人の妻の知ることとなったの。彼は毒を盛られたの、アナフィラキシーという名の毒。誰がもったかは分からない。」
という話を聞いた。{/netabare}


まるでアナザーみたい

と思っていたら後半で謎が解けて大爆笑。
前振りの仰々しさからは想像できないほど中学生の範疇を遺脱していないちっぽけないたずらだった。


特に印象深かったのはやはりキャラの濃いい登場人物たち。

主人公
有栖川徹子{netabare}(旧姓:黒柳)
かなり気性が荒く深く考えず突っ走る傾向がある。
印象的なセリフはからかってきた男子を顔面パンチした後に発したセリフ「転校生なめんじゃねぇぞこら、場数が違うんだよ、わかってんのかおら!良い気になってんじゃねぇぞ、コノヤロー」
大人しくしていれば可愛いのにな・・・

もう一人の主人公
荒井花
引きこもりの少女。年は徹子よりも一つ上。ユダの幼馴染である。
惡の華の中村さんに近いものを感じたけど、違った。
思ったよりしっかりしていて、自分のしたことに負い目を感じている律儀な様子や、好きな人に毎年誕生日プレゼントとバレンタインのチョコレートをあげるひた向きさと恋心による嫉妬心が描かれていて可愛いなと思った。

徹子の母(cv相田翔子)
若作りをしている。というか実際に若い。
イケメンを食い物にしていそうな女性。女の友達はいないらしい。
仕事で小説を書いている。
声の人のイメージそのままと言う感じだった。

徹子の父(cv平泉成)
平泉成さんが声をあてているのに漂うエロ親父臭、思わず笑ってしまった。
ところで、ユダ父の上司も平泉さん?
徹子の勘違いで病院までついてきてしまった徹子にご飯おごってくれたり、駅まで送ってくれたり、殺伐としたこの作品で唯一癒しを与えてくれた良いキャラクターだった。

陸奥睦美
教室の床に魔法陣を描いたり、怪しいおまじないを駆けたり、授業中に錯乱したり、イタイ子なのかなと思ったら思ったより現実を見据えていてまともな子だったので笑った。{/netabare}


作画に関して
背景は言の葉の庭で美術監督を務めた滝口比呂志氏。
特徴的な赤と青の光の入れ方に再現された街並みと光の反射が美しい。
なお、人物作画は惡の華で用いられたロトスコープと3DCGが切り替わりで使われている模様。

岩井俊二監督ってアニメも出来るんだなと思った。

投稿 : 2024/04/20
♥ : 16

67.7 3 演劇で妄想なアニメランキング3位
御先祖様万々歳!(OVA)

1989年5月1日
★★★★☆ 3.8 (40)
163人が棚に入れました
高級マンションに住む高校生・四方田犬丸(よもた・いぬまる)は、ホームドラマな日常に退屈していた。 そんなある日、マンションのベランダから黄色い一輪の花を目撃する。その後、玄関のチャイムが鳴るが面倒臭がって出ない両親に 変わって犬丸は、しかたなく出ることにした。玄関の扉の覗き穴を見るとそこには、先程見かけた黄色い花がいた。 そして、迷いに迷った挙句、犬丸が扉を開けると黄色いドレスの少女が現れ、彼女に抱きつかれる。その少女は、四方田麿子(よもた・まろこ)と名乗り 自分が犬丸の孫娘であり彼に会いたいが為に未来からやってきたと言う。こうして、四方田家の日常と家庭は破天荒な形で崩壊していく事になるのだった。

声優・キャラクター
古川登志夫、勝生真沙子、緒方賢一、鷲尾真知子、玄田哲章、山寺宏一、永井一郎
ネタバレ

takumi@ さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

ある都市型核家族のブラックコメディ

攻殻機動隊などでおなじみの押井監督作品。
あまり知っている人がいない作品なので残念だが
1990年にリリースされた全6話のOVA。
ジャンル分けするなら、ブラックコメディといったところだろうか。
観る人によっては賛否がハッキリ分かれると思う。

自分はまず、90年代前後のシンセを多用したOPの編曲に耳が反応。
作画は、個人的にはさほど好みではなかったものの、
物語に引き込まれ、気づいたらそんなこともすっかり頭から離れていた。
そして今思えば、美しい絵でないほうが
このストーリーには生きるというか、合っていたというか。
絵に邪魔されることなく、話が展開していけてたなと思う。

物語の中心となるのは四方田家の家族3人。
ローンに追われ、家族が重荷になっていった父。
高層マンションに引っ越してきたのは近所づきあいが嫌いだったからという母。
生意気盛りながら、世の中が怖くて外に出て行けない17歳の息子 犬丸。

どうやらこの家族、退屈な日常にお互い作り笑いをしながら、本音を見せ合えてない様子。
そこへピンポーンっと突然訪ねてきたのが、未来からやってきた犬丸の孫娘だと名乗る麿子。

それがすべての始まり。

家族は{netabare}こじれてバラバラになり、互いに裏切り、再会しては絡み合い、{/netabare}
転げ落ちるように転落と崩壊の一途を辿るのだが
麿子の存在によって、それまでの仮面を捨てて本音をぶちまけたり、
無様な姿をさらけ出せたのも事実で、運命共同体の成せる業なのか
{netabare}犯罪に手を染めながら結びついていくところが{/netabare}なんとも皮肉。

また、未来から麿子を捕まえにきたというタイムパトロール 室戸文明の
正体がわかるシーンや、探偵の長丁場や、彼らの歌も見処のひとつ。

特に探偵 多々良伴内(声=山寺宏一氏)が唄う『興信所は愛を信じない』
谷村新司ばりに唄い上げた後、
「山寺 歌うますぎる~!」というガヤが入ってて大笑いした。
あと、犬丸が唄う『立ち喰いそば』も、
昭和っぽい悲哀がこもっていて、なかなか味わい深かった。
 
ペプシマンならぬ「Cokeマン?」って格好の室戸文明の登場の仕方も
「待ってました!」と声をかけたくなるような大袈裟なところがあり、
海辺でピアノを弾き語りしても、カッコ良さ100%になれず、
そんなコミカルさに中年の哀愁が漂っていた。
そしてこの室戸にこそ、この作品を制作している間の本音含めて、
押井監督の想いのすべてが込められてる気がする。

全編通して、登場人物それぞれのセリフは長く、舞台演劇口調。
しかも、大きな舞台じゃなく小劇場ノリなところがツボ。
ナレーションもどこか落語や講談のような語り口。
好みは分かれると思うけれど、舞台演劇を長年見慣れている自分としては
舞台の演出そのままをアニメで観れた感覚が、新鮮で面白かった。

果たして、麿子の本当の目的は何だったのか?

信じていた繋がりが、ある日突然消えてしまった時の喪失感にもめげず、
「家族」より「孫」という生温かいものを最後まで信じたかった犬丸の
切なくも悲しい希望に、ちょっと胸が痛む。

う~ん・・・深読みすればするほど、
物語の迷宮にハマっていくのが迷惑のような嬉しいような。

もしかしたらこれは、途中で何度か登場していた、
あくびばかりして退屈そうな犬を連れた雲の上の神様の
いたずらなのかもしれない。

けっこうわかりやすい物語ではあったのだが、
いくつかの謎を残して考えさせるあたりが、やっぱり押井監督だと思う。

投稿 : 2024/04/20
♥ : 27

Anna さんの感想・評価

★★★★☆ 3.2

ぐだぐだ感満載!演劇的演出と台詞回しに衝撃!

『機動警察パトレイバー』や『攻殻機動隊』で有名な、押井守が原作・脚本・監督を担当。1話30分、全6話のOVA作品です。

両親と高校生一人の、ごく普通の一般家庭である四方田家。そんな普通の毎日を破壊するかのように、高校生四方田犬丸の孫と名乗る17歳の少女が家を訪ねてきた。
彼女は大きな黄色い帽子をかぶり、近未来からタイムマシンに乗って来たと言う…。彼女の存在によって、家庭は崩壊の危機に…!!

演劇的な演出や台詞回しで進行し、驚かされました!
ただ、まったく持って、売る気がないのが伝わってきます!もうぐだぐだで…。
そのぐだぐだ感が逆にこの作品の魅力みたいです。
妙な間や演出でかなり笑わせられます!
キャラクターも胡散臭くて妙な人物ばかりで…!
もう、製作も声優さんもかなりすき放題です。

このような作風に興味のない方は受け付けないかもしれませんが、何も考えず楽しめて、個人的には面白かったです!

投稿 : 2024/04/20
♥ : 4

ソーカー さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

究極の押井イズム、ぶっとんだ家庭崩壊演劇

退屈な日常を送る主人公「四方田犬丸」のもとに孫娘を名乗る「麿子」が現れる
それをきっかけに四方田家は凄まじい家庭崩壊をしていく
全6巻のOVA作品で、非常にブラックな喜劇です

この作品はもう押井臭が本当に半端ない
うる星やつらのパロディ要素もかなりありますしね
しかし、非常に良くできていて押井監督のアニメの中では最も好きです
ただやはりこれを「面白い!」と言える人は
普通のアニメを見飽きたアニメ狂か、よく訓練された押井信者ぐらいなものです

というのも、このアニメは「演劇」なわけです
長ったらしい台詞と長回しのカットが実に特徴的。
キャラデザは人形のようですが、見事に虚構の家族を演じきっているのです
そこに非常にシュールな笑いを誘う。(笑えるかどうかは別として)
現実なのか虚構なのか、よく分からないぶっとんだ展開もミソで
「家族」の虚構性を実に上手く表現している。

「麿子」をきっかけに家庭がガンガン崩壊していくのに
「麿子」のおかげで家庭が結束していくというところも面白い
まぁ最終的には後味の悪いラストで終わってしまうのですがw
「家族」って一体なんなのだろう?という疑問が付きまといますね

OPもEDも劇中歌も気合い入ってますw
ダイジェスト版で『MAROKO 麿子』というアニメがありますが、
大事な部分がカットされているので、見るならOVA版の方が良いです
興味があるならぜひ一度ご覧アレ。

投稿 : 2024/04/20
♥ : 14
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