自主制作アニメ映画ランキング 3

あにこれの全ユーザーがアニメ映画の自主制作成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年03月29日の時点で一番の自主制作アニメ映画は何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

57.0 1 自主制作アニメランキング1位
おかしなホテル(アニメ映画)

2008年4月28日
★★★★☆ 3.3 (38)
196人が棚に入れました
三原三千夫・自主制作アニメ『おかしなホテル』。
ドアから現実には有り得ない、おかしな物が出てきたら・・・?
ネタバレ

isso さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

どんどんやって欲しい。

短い作品ですが、自分なりの解釈を。。
見てから読んだ方が楽しめると思います。

{netabare}
最初に登場するサラリーマンはステレオタイプな日本人のイメージ
ということで、日本の国そのものの象徴かなと思いました。
立入禁止の看板を酔っぱらいながら押し倒していくのは
どんどんあらぬ方向へ突き進む国家を暗示しているかの様です。
途中巨大な手につかまるのは右傾化への皮肉かと(右からくるしね)

戦車が通って兵士が出てきて後ろから撃たれるのは
国歌が流れることからもアメリカの風刺なのは間違いないと思います。
前に向かっていたのに後ろから撃たれるのも紛争地域に介入して、
育てた組織が、結果的に自国にテロという形で返ってきたり。。みたいな
ことなのかな(深読みしすぎ?)

娼婦、ライオン、象はちょっとわからないですね。。

最近の時事で娼婦絡みといえば慰安婦問題ですが、2008年の作品なので
そこまで盛り上がってなかった気もするし。。
タクシーからライオンが出てくるのはなんだろう。。
娼婦→金で欲を買う
ライオン→生態系の頂点、脅威→戒め?
金で欲を買ったら何倍にもなって返ってきた。とか
いずれにせよ批判、皮肉だと思います。

象を白人?ともとれるおっさんが鉄砲を撃ちます。
発展途上国を搾取する先進国、搾取した先進国、みたいな
ことかな。
それか、ストレートに自然、人間、の対比か。

そもそもホテルの壁にかかっているのも男女がまぐわっている絵で
色欲とか強欲を感じてしまいました。

ラストでまたサラリーマンが出てくるのは、懲りない歴史、
学ばない人間への痛烈な批判だと思います。
{/netabare}

日本の場合、こういった風刺は
音楽ではもはや不可能で(音楽は日本だと基本芸能、サザンの歌が限界)
映画でもなかなか企画が通りづらい現状があると思います。
このような個人(プロのアニメーターの方ですが)
が製作したものが意味をもってくると思います。
おおいに評価したいです。
これからも期待します。

投稿 : 2024/03/23
♥ : 2

67.9 2 自主制作アニメランキング2位
COCOLORS(アニメ映画)

2017年2月17日
★★★★☆ 3.7 (17)
90人が棚に入れました
延々と降り続く灰が、空と地上を覆ってしまった世界。人体を融解させるというバクテリアを含んだ、その有害な灰を吸い込まぬよう、人々は巨大なマスクと防護服で全身を覆い、地下深くに作られた街で暮らしていた。しかし、灰はしだいにその街をも侵食していき、やがて人々は絶望に飲まれていく。そんな世界に暮らす少年、アキとフユ。2人は地下に暮らしながらも外の世界を空想し、未だ見たことのない空に憧れを抱いていた。やがて外の現実を知る時、成長した少年達は何を思うのか。

声優・キャラクター
高田憂希、秦佐和子、岩中睦樹、市来光弘、桑原由気、高井舞香

けみかけ さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

今年最大の衝撃!歴史的傑作ディストピアSFはいま世に放たれた!!コカラスを観てください!!!という話

『ジョジョの奇妙な冒険』のOP映像や来期放送『ポプテピピック』、来年公開の『ニンジャバットマン』の制作拠点である神風動画
その神風動画の別ラインである神風動画弐式が手掛けた完全オリジナルの45分中篇映画
タイトルは「ココロ」と「COLORS」を掛け合わせて顔色、声色、音色を連想させる造語で『コカラス』と読みます


人体を溶かしてしまう死の灰が降り注ぎ、謎の超兵器が街を焼き払うディストピアが舞台
この世界では死の灰の脅威から身を守る為、生まれついた直後からヘルメットと防護服を着せられる
地下の世界で細々と暮らす人々は、限りある資源を求めて健康な若者たちを「回収班」として地上に送り出しっていった
地下の世界の少年、“アキ”はホラ吹きなことで仲間達からカラカワレていたが、彼の無二の親友であり生まれつき小さな声しか出せない少年、“フユ”だけはアキの話を信じていた
フユはアキのするデマカセな外の世界の話を繊細な絵に起こしていたが、絵の具にする材料を欠いていた
やがて彼らは成長し、アキは回収班として外の世界から絵の具の材料を調達してきた
フユの絵は日に日に色彩を増していったが、最後に残された地上の空の色だけは決まらずにいた
やがて彼らは少しずつ知ることとなる
自分達が何者なのか、
外の世界では何が起きているのか、
いずれこの先どうなっていくのかを…


この作品、元々はどこの資本も無く始まった純粋なオリジナル企画だった模様で、橋口コウジ氏の考案した世界観を元に横嶋俊久監督が自由に構想した結果として仕上がった脚本を元に2016年頃から制作を開始したそうです


2016年10月と2017年2月には映像こそ完成していたものの音作りに時間を割けないという理由から、無音の映像にバンドと声優が生演奏、生アテレコをするというライブパフォーマンス形式での上映が公演
その後、半年以上の沈黙を破って遂に音声を収録した完全版が2017年12月2日に、あの新海誠を初めとした数々の伝説を世に送り出してきた下北沢トリウッドで公開となったわけです


まずこの映画の率直な観所としては橋口コウジ氏、自らが原図を手掛けたという濃密な背景で描かれるディストピアの風景が上げられるでしょう
明暗のクッキリとした地下の街並み、乱雑としたフユのアトリエ、そして荒廃とした地上…
とにかく密度が凄い
ワンカット、ワンカット一時停止してピンチアウトで拡大して観たくなるほどの情報量を誇る背景画です
そんな濃密な画を、3Dなのか手描きなのかまったくと言っていいほど区別の付かない繊細なトゥーンシェードで画面に起こしたことはそれだけで芸術と呼ぶに相応しい出来です
大友克洋、士郎正宗、今敏、弐瓶勉などがお好きな方は絶対に観て欲しい


ガムランみたいな音楽を含め、少なからず『AKIRA』を意識されているのでは無いか?と思います
むしろ現代の『AKIRA』と言っても過言ではないでしょう!


次にキャラクターのアイデアが非常に面白い
全てのキャラが生まれつきヘルメットをしており、黒くくすんだヘルメット越しではお互いの表情がほとんど読み取れない
つまりこのキャラ達、画面上では表情と呼べる仕草はほとんど皆無
にも関わらず、しっかりと芝居がかっている風に観えるのが不思議で面白い
それは身振り手振りの仕草だったり、声優の演技だったり、はたまた彼らの頭部に付いたライトの明滅であったりと、“顔が無くても芝居は成り立つ”とは能の舞を観ているかのような気持ちになり、これまで自分が観てきたアニメとはなんだったのか!?と、今作の演出にはハッとさせられます


そして何より、お話の観易さがこの作品の一番の決め手ではないかと思います
ディストピアが舞台の、悲しいSF、と聞くと一瞬身構えてしまう人も少なからずいらっしゃるでしょう
が、この作品は表面上は二人の少年の友情を物語っているに過ぎず、あまり小難しく考えずともお話に没入出来るところが素晴らしい
もちろん設定や世界観、登場人物達の謎めいた言動を深く考えれば考える程“世界の謎”の部分が解けていき、より深みを感じることが出来るのも魅力ではあるのですが、そういうのは2回以上観てから考えれば良いので、まずは圧倒的迫力の画面!臨場感ある音楽!!声優の芝居!!!お話の切なさ!!!!!を感じていただければ幸いに感じます


設定や世界観に関するオイラの考察は、いずれ何らかの形でアップしたいと思います


先に述べた通り、この作品には大きな資本の手が入っていません
で、あるが故に現在ソフト化や配信は未定となっており、下北沢トリウッドでの独占単館上映となっとおります
正直に現時点で今年観たどの映画よりも刺激的で衝撃的で感動的でしたこの傑作を、人に薦めないのはヲタクの恥というもの
シモキタに足を運べる人は是非観に行っていただきたいと願うばかりです


最後に個人的にお気に入りなカット
御神体から溢れた黒い液体に飲まれたアキが、墨汁で出来た海のような暗闇の中へ沈んでいくシークエンスの3Dとも2Dとも形容しがたい煙のようなエフェクト
あれホント綺麗でした

投稿 : 2024/03/23
♥ : 14
ネタバレ

ねごしエイタ さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

よくできていた。けど、悲しい!

 死を及ぼす危険な灰が降り注ぐため、地上を捨てて地下で暮らす人々の中で、アキ、フユといった子供たちを中心に時が流れる世界の物語だったです。皮膚を表に出せないため、スペースシャトルの宇宙服みたいな防護服をつけての生活を余儀なくされていたです。

 アニメなんだけど、どこかリアルな漫画が動く、キャラ、作画背景という印象です。

 地上を見たことのないフユのつくる版画?が、どこかよくできていたです。

 見続けている内に、可愛そうな状況になっていったです。地上を見たいという少年の思い{netabare}が、2人を突き動かしたです。挫けそうになっても、いなくなった仲間たちが後押しをした。人生最後の瞬間に叶った光景。{/netabare}何ともやるせなく悲しかったアニメだったと思うです。
 この終わり???納得できるかなぁ????だったです。

投稿 : 2024/03/23
♥ : 8

waon.n さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

顔を見せない制限により様々な「色」を見せる。

 『COCOLORS』は心とカラー(色)を組み合わせた造語です。
 まずは、顔が見えないアニメを作ってみようという発想からスタートしたようです。
 日本語には、顔色や声色、音色といった「色」という文字で心を表現する言葉が存在しています。絵においては背景の「色」によっても人の心情を表現したりすることがあります。まとめて心の色とでもいうのでしょうか、これらをモチーフにしたのがこの作品なのだと思います。

 タイトルにもありますが、登場人物は全員かおをヘルメットで覆いどんな顔色をしているのかが分かりません。当然みている側はそのそれぞれのキャラがどんな顔をしているのだろうかと自然と想像してしまう。いや、させられてしまいます。ここにハマると一気に作品の中にのめり込むことができるのです。
 とはいえ、無策にヘルメットで顔を覆うだけでは、駄目だったでしょう。上手かったのは序盤でキャラの味付けがどんなものか紹介されていくシーンでキャラの感情を引き出し声色や仕草での心情の表現がしっかりと行われていたことで、今きっと悔しい表情をしているのだろう。と自然とこちらが想像してしまうように誘導することに成功しているのです。

 世界は灰に覆われ、物語に登場する人間達は地下へと潜り灰の届かない場所での生活を余儀なくされているのです。理由は語られていませんが、物語の主軸ではなく気になりません。
 彼らの生きる地下の街は薄暗いなかにも人々の生活がしっかりと刻み込まれていおり、活気が感じられるためどこか明るさを感じられます。この地下の街の背景美術は細かく丁寧に描かれているため、いつかじっくりと観たいと思いに駆られます。
 回収祭という祭りが開かれる際にはお神輿を担ぎ地下の街を回り、それを見物する人たとなど賑わいを感じさせてくれます。この時、ヘルメットや体に模様をつけるのですが、まるで表情を表しているように見えます。この時の主人公やその仲間の顔がどのように見えるのか、またそのヘルメットのなかではどんな顔をしているか、やはり気になってしまいます。
 さて、地上はどうかというと、一面白い灰に覆われ一見すると明るいのですが、太陽は雲に遮られやはりどこか暗い雰囲気。そして、人がまったくみあたりません。完全に廃墟となってしまった世界。
 地上と地下二つの世界(黒と白)の対比があるためより地下での色みが意識に残ります。そしてこの作用は作品の後半に入ると一気に効果を発揮してくれます。

 全編を通じてカラーを抑えた印象になっていますが、世界観の構築とコンセプトによるものだろうと思います。世界観は前述しましたので割愛して話を進めます。、コンセプトとして顔色が分からないので、どこかで代わりに表現しなければならないわけです。その一つとして、心象風景の色があります。
 色の使い方が変わるシーンがいくつかあり、そこまで多く取り入れているわけではなかったと思いますが、とても印象に残ります。それはどこか彼らの心の色が見えた気がしたからなのかもしれません。

 作画についてですが、神風動画といえば、3Dと2Dをうまく融合して表現する日本独特の作画が素晴らしいことでも知られています。
 私が書いたレビューのなかに大友克洋の短編集をまとめた『SHORT PEACE』があり、その時のレビューでも書いたことですがこの2Dと3Dを融合させたような作画は今後とも伸ばして頂きたい。そしてこの作品もこの技術がすばらしい。どちらの良さもでています。
 世界観設計が『翠星のガルガンティア』、『FREEDOM』の橋口コウジさん。3Dアニメーションが『JOJO1部・3部』を担当した石黒英彦さん。このお二人を掛け合わせるとこんな作品ができちゃうんです。緻密に描かれた背景とそこから奥行きがあり、絵のタッチが残るような丁寧な3D制作……本当にスゴイです。

 声色。ですが、これは演技する声優の方は大変だったのではないかと思いますが、とても良かったです。主人公のアキを演じる高田憂希さん、シュウ演じる岩中睦樹さん。今後、もっと活躍して欲しいです。

 音楽もシーンにしっかりと合った音色だったのだと思います。
 一度目では物語に合った音楽って本当に二回目以降でないとあんまり分からなかったりしてしまうので、正直語れるほどではありません。
 ただ、全編を通じて40分とそこそこの上映時間のなかで多くの楽曲が組み込まれていたと思われます。普通の映画より多かったような印象です。
 これも音色を意識した演出なのでしょうか。

 キャラクターの話をすると、一番特徴があるのが、フユですね。
 顔も見えなければ、声も出せない。表現する方法が特殊な笛で3種類しかないというもの。この設定はかなり思い切ったと思います。
 なので、このキャラには他のキャラよりも多くジェスチャーのように動きによる演出が施されているように感じられました。俯いたり見上げたり、動身振り手振りがあったり、その速度が変わったり。
 こういった動きによっても表現される「色」を出せているというのもアニメの面白さを改めて認識させられた瞬間でもありました。

 物語についてはなるべく避けてレヴューしていますが、たった40分ちょっとの映画でもっと語りたいと思わされていることに驚愕しています。
 また、観たいと思いますし、まだ観たことない方々にも観ていただきたい作品となっていました。
 これ本当にBlu-rayで欲しいです。作ってくださぁああい。

 最後に一つだれか答えを知っていたら教えていただきたいのですが、なぜタイトルにある二つ目の‘CO’のフォントが違うのでしょうか。気になって夜しか眠れません。

投稿 : 2024/03/23
♥ : 7

63.9 3 自主制作アニメランキング3位
絶望の怪物(アニメ映画)

2019年6月10日
★★★★☆ 3.2 (25)
82人が棚に入れました
アニメ制作スタッフとして働いた経験のある漫画家のコタニジュンヤが、完全個人制作で手がけた30分の短編アニメーション。ある日、中学生の星野アオイは、自分と家族が醜い宇宙人の怪物であることを知る。両親が隠していたため、彼女と弟のユウタは、その事実を知らずに育ってきた。彼らは薬を使って人間の姿に化けていたが、なぜかアオイにだけ、その薬が徐々に効かなくなり……。2019年6月10日から名古屋・大須シネマにて上映され、7月6日からは東京・下北沢トリウッドで公開。
ネタバレ

カミタマン さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

たったの29分!!

2021/09/27 投稿

率直に言ってすごいと思いました。

29分間,テレビシリーズ1話分の長さです!

しかし,視聴後の満足感は高いです!

ストーリーは{netabare}タイトルや作品のキャッチコピーなどから容易に想像できます。完全にイメージ通りのストーリーと言えます。{/netabare}ツッコミどころもいっぱいありまが,あまり気になりません。

背景はきれいだと思いました。描き込まれた美しさでは無く,シンプルに描き色できれいに見せるといった感じでした。

キャラクターは絵が上手いとは感じませんでしたし,良く動いているわけでもありませんでしたが作品世界としてはこれでいいと思います。作品の成り立ちを考えれば,これが最適なのでしょう。

音楽はピアノの旋律が切なさを増幅します。
主題歌は,音程が安定せずにお世辞にも上手いと言えない歌唱力なのですが,逆にそれがよりいっそう切なさを感じさせます。
おそらく,この音楽の力が作品上大きく貢献していると思います。

結局何がすごいのか,そう感じさせるのか考えてみると,とにかく見せ方が上手いのだと思います。
余分な物を削ぎ落とした,引き算の美学とでも言うのでしょうか?歴史的に見ても日本人の琴線に触れるそんな作りの作品でした。

クレジットを見ると原作・脚本・絵コンテ・演出・作画・美術・着彩・撮影・編集・音響・監督・プロデューサー・他全般 コタニジュンヤとなっています。ほぼ一人で作り上げたという点は考慮せずに評価しています。

一方29分で完結している点は自分の中では,評価上大きなポイントになっています。

たった29分なので,見て損は無いと思います。

投稿 : 2024/03/23
♥ : 11
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