2023年度の音楽おすすめアニメランキング 2

あにこれの全ユーザーがおすすめアニメの2023年度の音楽成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年04月20日の時点で一番の2023年度の音楽おすすめアニメは何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

65.9 1 2023年度の音楽アニメランキング1位
青のオーケストラ(TVアニメ動画)

2023年春アニメ
★★★★☆ 3.3 (147)
422人が棚に入れました
バイオリニストの父の影響で中1まではコンクールで活躍していた青野一(あおの・はじめ)。父親が家を出たことでバイオリンから離れ、無気力になってしまう。しかし、中3の秋に秋音律子(あきね・りつこ)と出会い、初心者の彼女にバイオリンを教えることで再び音楽と向き合っていく。 音楽の楽しさを再確認した青野は、秋音とともに強豪オーケストラ部のある海幕(うみまく)高校に入学。ライバルや仲間たちと切磋琢磨し、自分自身や過去と対峙し才能に磨きをかけていく。青野だけでなく、家族や才能をめぐるさまざまな悩みを抱える部員たち。それぞれに乗り越えながら、定期演奏会に向けて自分たちの演奏をともに作り上げていく。音楽で心を通わせていく、青春群像劇。

声優・キャラクター
青野 一:千葉翔也
秋音 律子:加隈亜衣
佐伯 直:土屋神葉
小桜 ハル:佐藤未奈子
山田 一郎:古川慎
立花 静:Lynn
羽鳥 葉:浅沼晋太郎
原田 蒼:榎木淳弥
青野 龍仁:置鮎龍太郎
ネタバレ

レオン博士 さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

追憶の追奏曲

吹奏楽部の練習の厳しさもしっかり描写されていたし、とても面白かった!
青野君と佐伯君の関係性が好き
そして音がとても心地よく、クライマックスシーンの演奏がとても心に響きました

この作品は女子部員目線で文化系男子主人公を描いているのでぎこちなさを感じる人は多そうです
男子はやたら草食系寄りでやりとりが女性的だし、女子同士のやり取りが自然だから女性作者かな?と思ったらやっぱり女性でした
途中、主人公を放置して律子が主役みたいになっていて、青野君の物語よりもリアリティがありましたね
スポットライトを当てるキャラクターが多く、一人一人の掘り下げが足りてないのが惜しいかな?
この尺で物語を描くならもう少し目立つキャラクター減らしても良かったかも?

【ネタバレあり】
{netabare}
・青野君の父親のエピソード
これはいらないかな? 
父親の名前出てくるたびに青野君がトラウマ思い出して話の進行止まるし、話も感じ悪いだけで面白くないし、作品全体のテンポと雰囲気を悪くしていると思う、佐伯君との関係はびっくりしたけど、これを描くためにやってきたのかって思うと微妙に感じた
特に仮入部の時に青野君目の前にしてみんなでスキャンダルの話を始めたときは嫌な気持ちになりました

・律子とハルへのいじめ
さすが女性作者・・・女子の陰湿な集団イジメがよく描かれてますねー
学校は何やってるの?

・立花さん
この子と性格そっくりな子が知り合いにいて、最初はすごく苦手だった
立花さんの態度も悪いけど、律子たちが悪口言っていじめるのも感じ悪いですね
あれだけ態度最悪だった立花さんが律子達の頑張りを認めて急に態度が柔らかくなったのも
こういう素直になると急に変わる女いるよねーって思いながら見てました
{/netabare}

投稿 : 2024/04/13
♥ : 26
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

青臭い心の振動が響いてくる

一度はバイオリンを辞めた元・天才少年は、高校でオーケストラ部で再び演奏し始める。
そこで心を通わせる中で生じる様々な葛藤や成長を描く同名青春群像コミック(未読)のNHK Eテレ連続テレビアニメ化作品の1期目(全24話)


【物語 3.5点】
シナリオのバランスとしては音楽作品で青春しているというより、
青春している少年少女が音楽やってる。
そこを割り切れた視聴者などとだけキャッチボールが成立する、ハマるゾーンが狭い青春アニメ。
私は割り切れたので、また岸 誠二監督、構成・柿原 優子氏の『月がきれい』タッグは波長が合うのか、結構、満足度は高め。


序盤から主人公・青野一(はじめ)の中学時代から掘り下げ、海幕高校オケ部のエピソードが始まるのは3話から。
深掘りすると決めたキャラ回では主人公以外でも例えば{netabare} 律子やハルが経験した中学時代のイジメとトラウマ{/netabare} など、
演奏は二の次にして思春期の心の揺れ動きにフォーカスし続ける。

音楽アニメとして期待したら青春エピソードが重た過ぎて入り込めない可能性大ですし、
部活アニメとして期待しても、キャラ掘り下げに尺を使い過ぎて2クールかけて、3年生最後のとは言え定期演奏会1回終えるが精一杯。
コンクールはどうしたwとなりかねません。

大体、青野や佐伯の昼ドラ並みにドロドロな過去なんて、音楽アニメに必要なの?
と問われたら、必須ではないですよねと答えるしかないです(苦笑)

ただ必須じゃないんだけど、様々な青春を生きる少年たちが、
言葉にならない想いをぶつけられるのが音楽。
性格が違う者同士でも合奏すれば一つになれる。
だからクラシックは時代を越えて何度も奏でられる価値がある。

青春の中で音楽をどう位置づけるかの整理はできている作品だと思います。

終盤21話、{netabare} 野の父・龍仁{/netabare} によるバイオリンは振動が共鳴し音を出す楽器。
心にも振れ幅があればあるほどよりいっそう音は豊かになる。
この音楽観は作品のあり方やテーマも代弁していると言えるでしょう。

あの回は青野が部活の青春を通じて心を開いて来た成果が、
過去の捉え直しを通じて感じられる。
本作らしい主人公覚醒回として印象に残っています。


21話までは物語4.0点だったのですが、ラスト2回に亘る定演回が思ったよりグッと来なかったので3.5点に。

演奏会自体はタップリ尺が取られているのですが、合奏は群像回想劇等のBGMに使われる構成。
本作を青春アニメとして割り切っている私にとっては音楽を脇に回す構成そのものには不満はないです。

ただ、その回想等の内容がサイドストーリー感があるシーン多めで、感動が脇に分散した感じ。
{netabare} コンマス原田先輩に、お前自分に甘いだろ?と喝破された羽鳥{/netabare} の件など、中々の良シーンもあるにはありましたが。

せっかく尺を費やして衝突も繰り返して青春して来たのなら、
多少重複しても良いので、メインエピソードの熱量をダイレクトに伝える回想シーンをピックアップして欲しかったです。


私の心に一番響いた演奏シーンは、定演ではなく意外と8話のバッハ「G線上のアリア」だったり。
{netabare} 律子とハル。{/netabare} 心の傷を共有する者同士が、2話分の尺と言葉を尽くしてもなお言い表せない想いを月夜に向けて音色に乗せて響かせた。
青春作品で音楽をやる意義を感じたワンカットでした。


【作画 3.0点】
アニメーション制作・日本アニメーション

物議を醸した演奏シーンでのCG。
CG自体のクオリティは悪くはない。
むしろ大人数による息が合ったオーケストラの迫力を演出できる利点もありますし、
表情描写まで対応して好感できる部分もあります。

ただ途中まで手描きで演奏する人物を描いておいて、唐突にCGに変わるのには違和感を覚えます。
CGに切り替わる度に、視聴の集中が切れる。
それだったら、いっそ楽器持ってる人間は全部CGにしてと何度も思いました。

日常シーンでの作画カロリーの著しい低減具合から見るに演奏シーンまで手描きで行けるだけの作画兵力は恐らくない。
だからと言って、フルCGアニメにするだけの技術力があるとも思えない。
全体的に制作体制が脆弱だったのではと言わざるを得ません。


このままだと作画基準点割れは必至ですが、どうにか3.0点キープしたのは、
ブルーを強調した画面作りが、私の好物だったから。
校舎から、制服から、主題歌アニメーション、主人公の髪色、名字まで青尽くしの多幸感。
ブルーがCGへの切り替えで切れかけた私の集中力を繋いだ命綱でした。


【キャラ 4.0点】
天才バイオリニストの父との愛憎を抱える主人公・青野一。
ドイツからやって来た宿命のライバル・佐伯直。
多少言葉をぶつけ合っただけでは解決しない。本気で喧嘩しないと分かり合えない。
2人を筆頭に、1話分のキャラ回では処理しきれない豊富な設定量で
(一部視聴者を胃もたれさせつつw)
心で響かせる音楽を表現。

その設定量が、脇に至るまで敷き詰められている辺り、
本作が心を重視していることが伝わって来ます。
終盤、{netabare} 武田先生の柔道部時代からオケ部での青野父との青春{/netabare} まで掘り下げられたのには舌を巻きました。

私が地味に好きなのは秋音律子と立花静の関係性。
初心者に苛立つ経験者というよくあるギスギスの構図なのですが、
{netabare} 初心者・律子が中学時代に相容れない他者と衝突するばかりだった苦い経験を経て、
同じ轍を踏むまいと懐の深さと成長を見せる辺りが、{/netabare}
コクが深いカップリングだなと思います。


【声優 4.0点】
主人公・青野一役の千葉 翔也さん。
本作では時に声を荒らげて本音をぶつける熱い演技も交えて、
貧弱な作画ではカバーし切れない心の葛藤も好表現。

岸 誠二氏が共同監督を務めた『よう実』でも主演したチバショーならば観るというのが、私の主たる視聴動機に。

チバショーの相手になった佐伯直役の土屋 神葉さん。
序盤は繊細な美少年ボイス中心でしたが、以前主演した『ボールルーム~』でも熱情をぶつけて来た土屋さんとなら、
ライバル舌戦もヒートアップするに違いないとの期待も私の視聴を後押し。
そして、2人は期待通りの掛け合いで魅せてくれました。


【音楽 4.5点】
作中クラシック曲は洗足学園フィルハーモニー管弦楽団を基軸に、
キーキャラクターの演奏にはプロのバイオリン奏者も当てて再現。
その演奏で主人公や周囲の人生を翻弄した青野父の奏者には、米国の世界的奏者・ヒラリー・ハーン氏を招くなど、
奏者とキャラの格もグローバル規模で調整。

個人的にMVPだったのが初心者・秋音 律子の演奏を担当した山田 友里恵さん。
下手くそなんだけど、何か心を動かされる。青野も思わずまたバイオリン弾きたくなっちゃう。
このさじ加減が絶妙でした。


クラシックにはそれほど詳しくない私でも聞いたことある曲ばかりだったのが親しみやすかったです。
特にライバルとの決着を付ける曲などとしても頻出したドヴォルザーク「交響曲第9番『新世界より』」第3楽章は、
この夏の私の作業用BGMとしても重宝しました。


OP主題歌はNovelbright「Cantabile」
鬱屈から立ち上がる歌詞世界に合わせて、ストリングスもアレンジしながら高揚感を表現した良作青春ソング。

ED主題歌は「夕さりのカノン feat.『ユイカ』」
お笑いコンビ・霜降り明星の粗品さんが作詞・作曲を担当。
痛切さもあるOPとは対称的に楽しげなムードのED。
例え本編が修羅場でも、EDで音を楽しむと書いて音楽を感じられる貴重なひと時を提供。

ネタ作りに作曲と創作に貪欲なお笑い芸人のバイタリティーには圧倒されます。


【付記】
放送終了後、2期制作も発表。

メインキャラの過去の問題には概ね解決の道筋がついたと思われるので、続編はもう少し音楽、部活アニメ寄りにシフトするのでしょうか?
もっとも青野、律子、ハルのトライアングルに引火などしたらまた別でしょうがw
いずれにせよ続編視聴の機会があれば方向性を示すサインは見逃さないようにしたいです。

あとは作画兵力をもう少し増強していただければw

投稿 : 2024/04/13
♥ : 22
ネタバレ

Witch さんの感想・評価

★☆☆☆☆ 1.0

NHKの目利きが一番の戦犯?!個人的には今年ワースト2かな/2023/11/23追記

【レビューNo.89】(初回登録:2023/10/9)
コミック原作で2023年作品。全24話。
「クソアニメのレビューを書く」という体験を1回しましたが、負のエネルギー
が体を突き動かすというか・・・
個人的にはクソアニメのレビューを書くのは、時間のムダだし腰を上げるのにそ
こそこエネルギーがいるので、基本「レビュー止めとこ」ってなるわけですが、
それでもレビューを書きたいと思うのは、相当なクソアニメってことなのかw

(ストーリー)
かつてはヴァイオリンのコンクールで数々の成績を収めていた少年・青野一。
しかし著名なヴァイオリニストの父親は不倫から家族を捨て離婚。そのため一
は父親を憎み、ヴァイオリンを止めていた。
しかし中学3年時、担任の武田先生の依頼から秋音律子にヴァイオリンを教える
ことになり、自身も自分と向き合い再び弾き始めることになる。
そして武田先生が指し示したのは、オーケストラ部の名門「海幕高校」へ入り、
音楽を続ける道だった。
秋音とともに海幕高校に進学した青野は、そこでコンクールでトップの成績を収
めていた佐伯直と出会い、ヴァイオリンの腕を競うことになる。

(評 価)
音楽モノってあんまり観ないのですが(特にバンドモノとか)それでも「のだめ」
をはじめ、「この音止まれ!」「ユーフォニアム」など「音楽モノに外れなし」
というのが今までの私の認識だったのですが、それを見事に覆してくれましたねw

・絶望的に魅力のない主人公
 ・陰キャっぽいビジュアルの悪さもあるんですが、なんか主人公に絶望的に魅
  力がないんですよね。
  一番の原因が、何をやりたいのかが分からず共感できない点ですね。
  まあ「メジャー:茂野吾郎」のようにギラギラしてればいいのかということ
  でもないのですが、まず最初の「海幕高校」もオーケストラ部入部も動機が
  曖昧なんですよね。
  「漠然とヴァイオリンが上手くなりたく、なんか流れのままに」
  って感じで。
 ・その後佐伯や先輩との出会いにより
  ・もっとヴァイオリンが上手くなたいという強い思い
  ・オーケストラ部のコンマスを目指すという大きな目標etc
  輪郭は強化されるのですが、見せ方が悪いのかこちらに熱く伝わるものがなく
  「ストーリー都合だけで、青野が本当にそういう思いを抱いているの?!」
  という感じで、何故か共感できないんですよ。
  ざっくりいうと、結局
  「青野一という『人間』をどう描きたいのか」
  をしっかり定めず、「設定」だけで見切り発車してるなっていう印象ですね。  
 ・あと何かにつけ「(不幸自慢の)親父が悪い」的な後ろ向きな点も。
  (この部分は、終盤で「自分の音楽の源流には父親がいる」と感じる描写が
   増え「原作者がやりたかったのはこれなんかなあ」って感じる部分はあり、
   改善の見込みはありそうですが)
 
・上っ面をなぞったようなストーリー
 ・ストーリーもなんというか、音楽モノや青春モノの外れのないテンプレ的な
  レールを集めてきて、その線路上で物語を走らせているという感じで、
  「『青のオーケストラ』という作品を観てワクワクする」
  といった満足感が皆無なんですよね。
  (以前レビューした「僕ヤバ」とは真逆だなっとw)
  王道展開というより、上っ面をなぞったようなストーリー展開って感じ?!
 ・あとストーリー構成のチグハグさも。
  主人公をろくに描いていないのに、高校入学早々秋音と(もう一人のヒロイ
  ン?)小桜ハルの中学時代の重いエピソードが展開され、そっちのキャラの
  深掘りが始まっちゃうので、なんじゃそりゃ?Iって感じで。
  それでいて青野の方は「いつ魅力的になるんや」って期待してたら、上述の
  通りでアニメ終わっちゃったよとw
  そして秋音の方も中学時代は魅力的なキャラに映ったのに、高校に入り上述
  エピソードが終わると、なんとなく埋没しちゃったなっと。 
 ・それに「名門:海幕高校」という設定も、まるで活かせていないのも致命的。
  原田や羽鳥がもっと魅力的に描かれていれば作品の見え方も違っただろうに、
  この辺も描写が甘く「ただのいい先輩やん」って。
  また顧問の鮎川先生も厳しく怖いらしいが、作品を観る限りいうほどかと?
  部の方針なのか分からんが、「ユーフォニアム」と比べてもなんか緊張感が
  足りず緩くないかと。空気にメリハリ感がなく、作品的には「名門校たる所
  以はどこにあるのか」よくわからんレベルだなっと。
  (時々それっぽいセリフや描写は入るが、作品としての一貫性が確立されて
   いないから「点」で終わり、そもそもアニメとしての演出も出来が悪いの
   で説得力がないんだよね。)
  高校では部活のシーンが大きなウエイトを占めるのに、ここに独自の面白さ
  がないとか、一体どういうことやねんとw

・最大の隠し玉も不発?!
 ・この作品最大の隠し玉は(以下重要ネタバレ)
  {netabare}「佐伯は青野の父親の不倫相手の子供だった!!」
  たしかにネタとしてはセンセーショナルなのですが、作品を観る限りなんか
  これも不発に終わったなっと。
  それによりどんでん返しがあった訳でもなく、作品の面白さに大きく貢献し
  た訳でもなく、「一体何だったんだ?!」って感じでwww
  (一応2人が完全に分かり合えたとか、青野が一皮むけた扱いになってるが、
   その辺の描写もアニメとしては・・・って出来なんだよなw)
  これなら、この設定がなくても大局には支障なかったのでは?
  (まあ原作者的には、最大のオリジナリティだから「なし」にはできないで
   しょうが。穿った見方をすれば、原作者もこの設定を思いついたところで
   満足してしまい、そこで思考停止しちゃったのかなっと。){/netabare}
 ・この作品も全体的にイベント頼みで、それに沿って人物を動かしてるだけで、
  結局「人間」をしっかり描いていないんですよね。
  個人的に魅力的だったのは、中学時代の秋音だけでしたね。
  (あとは武田先生位で、思えば中学時代がこの作品のピークだったかなっとw)

総評としては
・音楽モノをやってる割には、そこに特筆すべきエッジがある訳でもなく
・では青春群像的なものを見せたいのかといえば、「人間」をしっかり描いてい
 ないから、主人公以下主要キャラが魅力的に見えず
「『青のオーケストラ』という作品は何をやりたいのかよく分からない」
まま終わってしまったという印象ですね。
そもそも「著名なヴァイオリニストの父親」以外は「音楽モノ」である必要性が
あったのかという、根幹から疑いたくなるレベルで
「『音楽モノ』の作品として、『音楽』とどう向き合っていくのか」
という観点を軽視しすぎでは、という印象を受けました。
(それっぽい曲の解釈を入れたから、『音楽』と真摯に向き合った作品というの
 はちょっと違うだろうっと。それじゃこちらに響くものがない訳で、この辺り
 も『主人公の魅力のなさ』に大きく影響してるように感じる)
それに全般的にアニメとしての演出も弱く、センスが感じられなかったかな。
  
NHKで放送する作品って、どこか1本芯が通っていて「さすが」って感じが強かっ
たのですが、この原作のどこが琴線に触れたのか?
単純に出来の悪さなら「なろう系の量産型異世界モノ」など下はいくらでもある
でしょうが、この辺とはそもそも予算をはじめ土俵が違いますからね。
NHKがバックでこの出来とか正直救いようがねーなとw
そういう意味では、個人的には今年ワースト2の作品だといえるかも。
個人的な見解ですが、一番の戦犯は
「NHK、なんでこんな作品選んじゃったの?!」
目利きが曇ったのか、こんな上っ面だけの作品に騙されるんじゃねーよと。
(クラシック音楽という題材と「小学館漫画賞」少年向け部門受賞という看板だ
 けで選んだんじゃねーのかと)
2期決定らしいですが、なんだかなあって感じですね。
それよりも「アオアシ2期」をさっさと制作しようよとw

(訂 正)
・今年ワーストワン → ワースト2
 「Buddy Daddies」が今年のアニメってことが抜け落ちてました。
 個人的にはこの作品が断トツのワーストワンですね。
 でもそれに次ぐ印象の悪い作品かなっとw

(2023/11/23追記)
{netabare}個人的には「101匹足利尊さん」の「青臭い心の振動が響いてくる」というレビュー
が興味深く「なるほど、そういう見方もあるのか」と。

ただ個人的には「やっぱり評価できない作品かな」っていう点は変わらずで、その
辺を補足。

>一番の原因が、何をやりたいのかが分からず共感できない点ですね。
レビューを書いている時に感じたのは、逆に、
「自分がまだ未成熟で何者かわからないから、それを探していく物語」
として進めていく路線もアリじゃないかと。
でも本編をみる限りでは、そういうのをメインに置くわけでもなく
・父親の離婚という不幸自慢
・オーケストラ部の名門校
・佐伯の衝撃告白 etc
原作者は「青野という人間をどう描くか」よりも、いろいろキャッチ―なパーツは
集めたもののそこに深みはなく「どうストーリーが見映えするか」という表面的な
描写にご執心なのかなっと。
>「人間」をしっかり描いていないから、主人公以下主要キャラが魅力的に見えず
結局この原作者がやってることは「人物描写」ではなく、「彼はこういうタイプの
人間です」という「レッテル張り」レベルにしか見えなかったんですよね。

>オーケストラ部の名門校
> 原田や羽鳥がもっと魅力的に描かれていれば作品の見え方も違っただろうに、
ここも追加で書くと
・ずっとヴァイオリンを続けていた佐伯より、ブランクのあった青野の方が評価が上
 (一応青野の努力している描写もあるが、表面的でなんか軽い)
・2年のトップがダンス部と兼部のチャラい羽鳥(しかも1年に簡単に負ける)
で、名門校の威厳や演奏家の厳しさがまるで感じられないんですよね。
そして原田も凄いコンマスらしいのですが、人物描写が甘いので説明セリフメイン
で無理やり持ち上げている感じで、コンマスなんて知らなった私に一発でコンマス
の価値を理解させた「のだめ:カイ・ドゥーン」の描写とは雲泥の差だったなと。

それにストーリー構成のチグハグさも追記すると、通常2クールアニメなら
・1クール目は丁寧な下準備をして
・2クール目に入った辺りからメインテーマを解放して一気に面白くみせていく
という感じなのですが、
・1クール目で下準備ができていない
 → 中学編の導入部はよかったが、それ以降は秋音と小桜の掘り下げが始まった
   り(それが後の展開の面白さに繋がるなら理解できるが単発で終わった感じ)
   上述の通りいろいろサボってるって感じで、漠然と部活の様を見せられてい
   るだけ
・2クール目のここからというところで
 → 青野のお母さんが倒れた
 → 佐伯の衝撃の告白
 で、話の腰を折るという・・・
 しかも、佐伯の衝撃の告白はかなり重い話で、もっとここで深堀してもいいとこ
 ろだが、結局中途半端で終わり。
 これなら「部活の方針等で大喧嘩して本音をぶつけ合って分かり合えた」という
 展開とどう違うのって感じなんですよね。
 せっかく意味深な爆弾ぶち込んだなら、それをしっかりと活かせよと。
 なので、大事なタイミングでこんな話をぶち込んでくるから「この作品は一体何
 をやりたいんだ?」という評価になっちゃうんですよね。
・で、こんなことをしているから、物語的には「定期演奏会」までしか進まず
 → 定期演奏会前に長い原田らの思い出語り
   これで演奏会は演奏に集中するのかと思いきや
   演奏中にも更に思い出のフラッシュバックって、感動の押し売り演出がウザい
 しかもここに原田→羽鳥への厳しい言葉とか、ホンマ意味分からん。
 これどのタイミングで言ってたんや?!それにより物語の整合性が・・・

>上っ面をなぞったようなストーリー
こんな感じで個人的には褒められる部分がほとんどないって感じなんですよね。
しかも2クール使ってこれだと弁解の余地はないかなっと。
(エピソードは進むも、こちらに積み上がってくるものがないという・・・)
唯一評価できるとしたら
>終盤で「自分の音楽の源流には父親がいる」と感じる描写が増え
「人間としては最低だが、音楽家としては認めることができる」という流れが2期に
みられれば、青野の成長として本作の意義も少しは出てくるのかなっと。
それ以外は「『青のオーケストラ』という作品を観てワクワクする」が皆無って感じ
で、私には全く合わない作品だったかなっと。{/netabare}

投稿 : 2024/04/13
♥ : 19

75.7 2 2023年度の音楽アニメランキング2位
BLUE GIANT(アニメ映画)

2023年2月17日
★★★★★ 4.1 (84)
277人が棚に入れました
「オレは世界一のジャズプレーヤーになる。」
ジャズに魅了され、テナーサックスを始めた仙台の高校生・宮本大(ミヤモトダイ)。
雨の日も風の日も、毎日たったひとりで何年も、河原でテナーサックスを吹き続けてきた。
卒業を機にジャズのため、上京。高校の同級生・玉田俊二(タマダシュンジ)のアパートに転がり込んだ大は、ある日訪れたライブハウスで同世代の凄腕ピアニスト・沢辺雪祈(サワベユキノリ)と出会う。
「組もう。」大は雪祈をバンドに誘う。はじめは本気で取り合わない雪祈だったが、聴く者を圧倒する大のサックスに胸を打たれ、二人はバンドを組むことに。そこへ大の熱さに感化されドラムを始めた玉田が加わり、三人は“JASS”を結成する。
楽譜も読めず、ジャズの知識もなかったが、ひたすらに、全力で吹いてきた大。幼い頃からジャズに全てを捧げてきた雪祈。初心者の玉田。
トリオの目標は、日本最高のジャズクラブに出演し、日本のジャズシーンを変えること。
不可能と思われる目標に、必死に真摯に、激しく挑む---。
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

🏅ジャズ🎷演奏シーンが凄すぎて月🌘まで飛ばされるかと思いました

やがて世界的なテナーサックス奏者となる宮本大(だい)の足跡を描く、
ジャズ漫画シリーズ(第1部・5巻、仙台編~東京編序盤辺りまで購読中)の劇場アニメ化作品。

【物語 4.0点】
原作は明らかに連続アニメ化した方が適した連載コミック。
ですが原作再現よりも、映像でも“本物のジャズ”を届けたいと原作者が熱望。
これを受けスタッフは初手から音響設備で音楽体験を最大化できる劇場アニメで制作する勝負に出る。

構成は4分の1がライブシーン。
あとは東京編「JASS」3人のバンド活動を中心にピックアップしシナリオを形成。
そのあおりで仙台編にて“河川敷のコルトレーン”主人公・大(だい)を芽生えさせた恩師・由井など、大幅カットされたシナリオ多数。

だが決して物語が音楽の添え物というわけではない。
アドリブソロなどで回想カットを挿入し激情を昂ぶらせリミッター解除する。
演奏能力インフレも急激となるが、そこもバイト中のエアピアノ、エアドラムのカットで補完してエモさをアップさせる。
「ジャズは感情の音楽」、故にジャズの演奏は再現不可能な一度きりのパフォーマンス。
作品がこだわる価値観や、ジャズの火力を最大化するために必要なシナリオ熱量は十分確保されている。


【作画 5.0点】
アニメーション制作・NUT

演奏シーン。私は過剰な演出を排除して、ジックリと音楽を聴かせる映像の方が好み。
ですが、本作の場合は、テナーサックス中心に音楽が怪物級に強力。
ただ奏者をキャプチャーするだけでは絵が音楽に押し負けてしまう。

よってサックスが火を噴こうが、星を出そうが、演出が時空間を超越しようが。
この音楽と対峙するなら、アニメーションも総力戦だよねと納得するしかありません。

「すべての感情を音で表現できること」を至上とする大(だい)の音楽観。
受ける作画もセリフに頼らず、時に言葉以上に感情を爆発させる必要があります。

これに対応したのが総作画監督・キャラクターデザイン・高橋 裕一氏らのスタッフ陣。
『Vivy』でも歌でみんなを幸せにしたいAIの心の在り処という難題を取り扱った高橋氏。
サックスを描くのは宇宙戦艦を描くより難しいと愚痴りつつもw
彼らの画作りがフィットしたのも私にとっては大きかったです。

何より私は青の映像が大好物。
緻密に構築された青い東京の街並みを眺めるだけでうっとりしてしまうのですw


大(だい)がビッグになる未来は確定している本作。
大の伝説の始まりを関係者に尋ねるインタビュー形式の映像もしばしば挿入され、
巨星が頭角を現すスピード感を後押し。


【キャラ 4.5点】
★超新星若手ジャズトリオ「JASS(ジャス)」

宮本 大(だい)/テナーサックス……ほぼ独学でパンチ力のある演奏を体得。「世界一のジャズプレイヤーを目指す」が口癖のジャズの化け物。

沢辺 雪折(ゆきのり)/ピアノ・作曲……幼少より技術を積み上げて来た天才タイプ。大と出会うまでは才能を持て余し、片手演奏でナメプしたりしていた(ある意味これも伏線回収されるから凄い)ジャズシーンを変えると豪語するなど、大とはまた違った、ナルシスト方面のビッグマウス。

玉田 俊二/ドラム……サッカーサークルで燃焼しきれない衝動をこじらせた大学生。部屋に転がり込んで来た大に触発され叩き始めた初心者。キャリアの中で組むメンバーを変えるのがジャズバンドと割り切る2人とは対照的に、体育会系らしい仲間意識も持つ熱血漢。

以上3人の青春劇が基軸。
雪折の上手く弾きこなせているようで実は吹っ切れていない。
張り合える巨星・大に連れられ、ぶつかれる壁にまで高められることで初めて挫折と成長を知る。
器用なイケメンが不器用に足掻く様は、何度味わってもグッときます。


ノッてる若者たちを見定めるジャズ関係者の大人たちも渋くてグッド。
{netabare} 雪折にぞんざいに扱われた後、謝罪される豆腐屋のオヤジ。
玉田の成長するドラムが好きだといってくれたファンのおっさん。{/netabare}
衰退の一途をたどるジャズ。細々と語り継ぐファンのためだけに弾いていても仕方がないというのも一理ある。
ですが、巨星が出現した時、愛をもって見極めるだけのファンがいなければ、星は輝かず廃れるのみ。

ジャズだけでなくアニメ鑑賞などあらゆるジャンルの愛好家が肝に銘じたい心意気です。


【声優 4.0点】
若手俳優のメインキャスト3人の周りをベテラン声優陣が固めて安定をはかる、よくある劇場アニメの布陣。

最適解とは思いませんが、若い勢いを大人が受け止めるという構図が多発する本作ならそれもありでしょうか。

主人公・大(だい)役の山田 裕貴さん。
今年の大河ドラマでは、主君・家康にツンツンする重臣・本多忠勝役で好演中。
大口を叩くが実力もある若者の猛々しい演技が得意なのでしょう。
声だけの本作でも、その一端は発揮されていた印象。

山田さんは共演者とぶつかることで演技が引き出される憑依型の役者。
雪折(ゆきのり)役・間宮 祥太朗さん、玉田役・岡山 天音さん。
コロナ禍でも臆せず同世代俳優3人の同時収録を敢行したのも好判断だったかと。
3人のおバカな青春の掛け合いもまずまずのお味でした。


そんな若者の鼻面をへし折ったり、引き上げたりする役回りを演じたのが平(たいら)役・東地 宏樹さん。
日本一のジャズクラブを背負うプライドと責任から放たれるジャズ愛の鞭。
そこまで言ってくれるのかと私も胸のすく思いでした。


【音楽 5.0点】
Dolby Atmosにて劇場鑑賞。

担当は世界的なジャズピアニスト・上原 ひろみ氏。
劇伴だけでなく「JASS」のライブ楽曲群、EDも作曲。
宣伝のための無粋なポップス主題歌なんて要らない。全編ジャズで貫き通す潔さ。
さらには自身も雪折のピアノ演奏担当としてプレイヤー参加。

ジャズを知らないお客さんにも聞いてもらえる演奏をする。
ジャズで一番を目指すんじゃない。東京の音楽シーンのてっぺんに立つ。
作中主人公たちの大口に、現実のプロが全身全霊の音楽制作で応える。
この制作体制が既に熱いです。

サックスなどの音圧の強さが目立ちますが、繊細さも併せ持ちます。
こじんまりとした店のピアノは敢えて調律を甘くしてもらった
との上原氏のこだわりは、素人の私には高度すぎて分かりませんがw
真摯な音作りから醸される情熱はビンビン伝わって来ました。

繊細なのは音響も同様。
ライブ会場で熱狂する観衆などは臨場感があり没入させられました。

地味にお気に入りなのは、主人公が天候に合わせた選曲意図を汲んだ一コマ。
それが{netabare} ジャズバー「TAKE TWO」店主アキコとそこを練習場にする「JASS」の縁{/netabare} の始まり。
雨音とジャズが一体となった素敵なシーンです。


【感想】
2023冬アニメ。私の大本命が期待通り、いや想像を超えたパフォーマンスで魅せてくれました。

やはりライブシーンが圧巻。
{netabare} 星はあまりに高音になると赤を通り越し青く燃えるのだ。{/netabare}
アニオリだという演出も交えてタイトル回収されたクライマックス。
感極まった私の目頭もヒートアップ。劇場から出たあと鏡で見た自分の眼が赤すぎて恥ずかしかったですw

音楽アニメとしては今年随一とか、近年屈指とかではなく、
私の生涯の中でも指折りのインパクト。
青々と魂を燃焼される演奏シーン。必見です♪

投稿 : 2024/04/13
♥ : 29

フィリップ さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

体の奥底まで伝わるジャズの熱量

アニメーション制作:NUT、
監督:立川譲、脚本:NUMBER 8、
キャラクターデザイン:高橋裕一、
音楽:上原ひろみ、原作:石塚真一

アニメで本格的な音楽を聴く―――
アニメを観始めたころは、そんなことを考えたこともなかった。
アニソンなんて、オタクたちの聴く声優の歌う音楽だろう。
そんなふうに思っていた私は、自分の「偏見」を恥じることになる。
今では、私は「アニソン」ばかり聴いている。

『キャロル&チューズデイ』という音楽アニメの傑作がある。
アニメとしては、微妙な部分も多いのだが、音楽は最高だった。
その作品を音楽の面で超えたと言えるのが『BLUE GIANT』だ。
演奏シーンについては、体の奥まで響くほどの凄みを感じさせる。
クリント・イーストウッド監督の『バード』という
チャーリー・パーカーの生涯を描いた映画があるが、
ライヴシーンは、それにも引けを取らない表現力だ。
それもそのはず、音楽の部分のほぼ全てを任せられたのが
世界的ジャズピアニストの上原ひろみ。
よくこんな人を1本のアニメに引っ張ってこられたと思う。
上原ひろみというと、秋吉敏子以来ともいえるほど、
日本人として世界に認められ、活躍しているジャズ・ミュージシャン。
ジャズの本場、ニューヨークの最も有名なジャズクラブ、
ブルーノート・ニューヨークで何度も公演を行うなど、
世界でも指折りのミュージシャンだ。

そんな一流ジャズ・ミュージシャンがこだわった表現。
とてつもないレベルで完成度が高い。
特に主人公・宮本大の演奏シーンには痺れる。
力強い音色、心地よいスイング、スムースなアドリブ。
そして、何よりも圧倒的な熱量がある。

最近は、ジャズをほとんど聴いていないので、
宮本大役の馬場智章は、
初めて知ったミュージシャンだったが、
経歴を見てみると、バークリー音楽大学の奨学生として
音楽を学んだエリート。
報道ステーションのテーマ曲を手がけ、
リーダーアルバムを2枚リリースしているという
期待のジャズマンだそうだ。
上原ひろみからの要望をしっかり受け止めた
その表現はどこか別格な雰囲気さえ感じさせる。
コルトレーンっぽさを感じたと言ったら言い過ぎだろうか。
漫画は読んだことがないが、
この作品にあまりにもぴったりとはまる演奏だった。

ジャズを聴くようになってから、
音楽表現の幅広さや奥深さが、それなりに分かるようになった。
初めて聴いたのはデクスター・ゴードンの『GO』というアルバム。
1曲目の『Cheese Cake』に魅了された。
テナーサックスの音色とその空気感に衝撃を受け、
ジャズという音楽にはまっていった。
ジャズの真の魅力を知るには、ライヴに行くのがお薦めだ。
映画のなかでも語られるが、
ジャズの聴きどころは、即興(インプロヴィゼーション)にある。
そこで感じるのは、「メロディの良さ」ではない。
私たちは、幼い頃から西洋音楽を基礎とした音楽を
ずっと学んできているので、
音楽をメロディでしか聴かない人が多い。
しかし、黒人音楽をベースとした音楽では、
リズムや流れのほうが重要になってくる。
例えば、黒人たちが白人アーティストの
1枚のアルバムを聴いたとき、
間奏の部分で大いに盛り上がったりすることがある。
作曲家がリズムやテンポを重視した聴きどころを
持ってきている場合も多く、
これを「ブレイク・ビーツ」と呼び、
西洋音楽との大きな違いとして今では幅広く認識されている。
つまり、演奏者や作曲者の「ノリ」のような部分が
凝縮されているような音楽になっていることがあるのだ。
黒人音楽であるジャズの聴きどころが、
メロディ部分ではなく、テーマの後のアドリブ(即興)にあるというのは、
そういう感覚が大きく影響している。
だから、ジャズの良さを知るには、
ライヴを聴くのが手っ取り早い。

私もジャズの本当の良さが分かるようになったのは、
ライヴに行くようになってからだった。
チック・コリアやハービー・ハンコック、キースジャレット、
ゴンサロ・ルバルカバのピアノ、アート・ブレイキー、
ジャック・ディジョネットのドラム、
グラント・グリーン、ウェス・モンゴメリーのギター、
マイルス・デイビス、ケニー・ドーハムのトランペット、
チャーリー・パーカー、ジョン・コルトレーン、
ジョシュア・レッドマンのサックス。

かなり昔の話だが、『BLUE GIANT』の作中に登場する
有名ジャズクラブSo Blueのモデルであるブルーノート東京で、
ジョシュア・レッドマンのサックスを聴いた夜の
震えるほどの感覚は、今でも忘れられない。
天才的なアドリブとスムースなフロウ、
音が体に沁み込んでくるような感覚を覚えたのは、
あの夜が初めてのことだった。

『BLUE GIANT』を観て、
音楽を聴いて恍惚としたブルーノートでの体験を思い出した。
そんなことを感じさせるほど
『BLUE GIANT』には、質の高い音楽がある。
上原ひろみが音楽全体を仕切っているのだから、
ある意味、当然かもしれないが、
主要曲の作曲も行うなど、
かなり力を入れていることが分かる。


反面、ストーリーについてはそれほど驚くべき点はないともいえる。
地元の仙台の川辺でひたむきにサックスを練習していた
主人公の宮本大が世界一のジャズプレイヤーになるため、
東京に出て仲間を作り、奮闘していくというのが基本ストーリー。
ただ、この作品には、シンプルで真っ直ぐなストーリーが合っている。
ジャズという音楽から感じられる泥臭さや熱量が物語から滲み出てくる。

漫画の存在は知っていたし、
映画化されたことを耳にしても、
ジャズを一般の人を相手にアニメで表現するなど
無理な話だろうと思っていた。
好きな人には申し訳ないが『坂道のアポロン』が
放映されたときにとても期待して観たのだが、
音楽面でとても落胆したことが
記憶に深く残っていたこともあった。

日本アニメは凄い。
ジャズをアニメでここまで表現できるということは、
もう何でも実現可能な気がする。
多くの人が指摘しているように
演奏シーンでのポリゴン表現は残念だった。
ここを上手くやっていれば、さらに評価は高まっただろう。
個人的には、そういうマイナス部分もカバーするほど
音楽面が素晴らしかった。

日本アニメが「本物」を制作することのできる
世界でトップの業界なのだろうということを
改めて感じさせてくれた。

※ところで、作中に登場したソニー・ロリンズならぬ
ソニー・スティットについてだが、
『Sonny Stitt/Bud Powell/J. J. Johnson』というタイトルの
鳥が飛んでいる珍妙なジャケが目印の人気アルバムがある。
ジャケのしょぼさに反して中身の演奏の迫力がとんでもなくて
笑ってしまうほどだったのを思い出した。
もし機会があれば、一聴して欲しい。
(2023年4月2日初投稿)

投稿 : 2024/04/13
♥ : 28

かんぱり さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

素晴らしいジャズ演奏に酔わせていただきました🎵

仙台市出身の宮本大(みやもとだい)は世界一のジャズプレイヤーになるべく単身東京に降り立つ。
そして彼の人柄と熱い音楽に集まった沢辺雪祈(さわべゆきのり)と玉田俊二(たまだしゅんじ)と共にジャズバンド"JASS"を結成して・・

原作は石塚真一さんのコミックで全10巻(第1部)。
現在は第4部のニューヨーク編連載中みたいです。
主人公のダイの出身地が地元ということもあり、そしてジャズも嫌いじゃないのもあって原作は第2部のヨーロッパ編まで読んでます。

原作は話も面白いですけど、読んでると音楽が聞こえてくるような迫力ある描写が特徴的で、「これアニメ化して欲しいけど難しそうだな」って思ってました。

映画化の話を聞いて嬉しかったですけど、10巻の内容をどう取捨選択してあの作品のエッセンスを失わずに作品化できるのかちょっと不安でした。

で、劇場は都合で行けなくて今回配信で見たんですが、なかなかうまく落とし込んでるなって感じました。
本当はダイがジャズと出会った高校時代の様々なエピソードもなかなか良くて好きなんですけど、この作品で一番観たかったのはやはり演奏シーン!!
ジャズピアニストの上原ひろみさんの音楽をはじめとした素晴らしいジャズ演奏に酔わせていただきました🎵

それから見てていいなと思ったのは、ダイ、雪祈、玉田 3人の距離感が素敵だったこと。
お互い言いたいことを言い合って、でもさりげなく相手を気遣ってたり・・
これもダイという魅力的な人柄とサックスがあったからなのかもですね。

作品のタイトルの一部にもなってる"BLUE"
元々黒人音楽の憂いを帯びた感じから来ている言葉で、ブルースの語源にもなっててジャズにも良く使われてるんだけど、作中でダイが「ジャズはとても熱い音楽だべ。一番熱い炎は青いんだ」みたいなことを言ってて、そういう解釈も素敵だなぁって思いました。

仙台は毎年9月に「定禅寺ジャズフェスティバル」を市内あちこちで多くのバンドが参加して2日間開催しています。
最近はコロナの影響で縮小傾向にありましたが、知り合いが参加してることもあり、ちょくちょく見に行ってました。
ダイの出身地が仙台なのも、このイベントが発端みたいです。

音楽好きな方におすすめしたい作品です。

投稿 : 2024/04/13
♥ : 23
ページの先頭へ