「宇宙戦艦ヤマト [完結編](アニメ映画)」

総合得点
67.2
感想・評価
31
棚に入れた
193
ランキング
2491
★★★★☆ 3.8 (31)
物語
3.7
作画
3.7
声優
3.9
音楽
4.1
キャラ
3.8

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ネタバレ

雷撃隊 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0
物語 : 2.0 作画 : 4.0 声優 : 5.0 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

ヤマト、最後の戦い

この作品について長々と語る人は少ないけれどちょいと語ってみようと思います。

通称ファイナル・ヤマト。この作品は単独作品、或いは最終回としては出来が良くシリーズの流れとしては破綻していて酷い。

まず悪い点。
キービジュアルの爆発しているヤマトのイラストがこれ見よがしであざとい。いかにも「本当に終わりにします」という感じでわざとらしい。

冒頭で異次元空間が出現するが本編とはまるで関係無し。またまたデスラーの国家が崩壊、まるで意味なし。

沖田艦長が生き返る、これがまた酷い。しかも未来科学ではなく実は死んでなかったという理由付けが最悪。さらに折角復活してもすぐに2度目の成仏だ。まあラストに生存するとは思わなかったけれど。ちなみにコミカライズ版やノベライズ版ではクローン技術だったりサイボーグ技術だったり媒体により設定がコロコロ変わる。

パターン化の連鎖も限界を超えている。味方艦隊が全滅しようが地球が滅亡しかけようがモブキャラが何人死のうがまるで危機感ゼロ。もはや感覚がマヒしている。

敵キャラに魅力も存在感も無し。毎回出てくる水戸黄門の悪代官と変わらない。

時は80年代なのに精神論は70年代のまま。これが決定的だ。富野由悠季、河森正治、宮崎駿あたりに完全に遅れをとっている。さらにあのGAINAXの連中も動き出す。時代の変化に対応できていない。

つづいて良い点。
原作に松本零士、西崎義展と両者がクレジットされている。ヤマトは結局良い点担当の松本、悪い点担当西崎のせめぎ合いでバランスをとっていた。少なくともこの作品までは。思想的にも「艦長は船と運命を共に」という西崎の思想と「若者は生きて未来を作るべき」という松本の思想のハイブリッドでヤマトらしい。

作画レベルは流石に高い。10年の積み重ねは伊達じゃない。90年代でも通用するだろう。CGのレベルも当時としては上々。アクエリアス星の表現や都市衛星との戦闘は今見ても高レベルだ。

青春からの卒業というテーマには共感できる。ヤマトはさながら大学の校舎。松本氏は「古代と雪の人生からヤマトという枠を外すこと」とコメントしていた。

ヤマト最後の戦いが敵軍と刺し違える特攻ではなくアクエリアスによる水没という天災だという点。少なくとも皆殺しを美辞麗句で飾り立てた「さらば」より数倍マシだ。あれは戦争映画と任侠ヤクザ映画をはき違えた滅びの美学と自己陶酔でムナクソ悪い。主に西崎の思想が。対してこの完結編は松本、西崎のホドヨイ落としどころだろう。老兵の沖田は子供たちに故郷を遺す。少なくとも死ぬ順番が逆ではない。

命は受け継がれるというテーマ。沖田は古代に「お前自身が雪と共に幸福になることが大事な戦いなのだよ」と諭す。これは999と同様に親から子へ命は受け継がれ続いていくというメッセージで松本零士らしい。

ヤマトVS化学兵器のバトルは面白い。敵艦隊の主力は大型戦艦ではなく成形炸薬弾を搭載した水雷艇。毎回戦闘シーンは工夫がみられる。コスモタイガーは今回グリーンとライトグレーのツートンカラーの日本海軍色でカッコいい。ヤマトに新しい艦内設備も登場。メカ描写と艦隊戦は相変わらず素晴らしい。旧ガミラス艦隊とデスラー艦も登場して懐かしい気分に。セル画のヤマトのカッコよさは頂点に達していてヤマトそのものに重厚感と貫禄が備わっている。まさに歴戦の艦という表現が相応しい。このぐらいの作画レベルでイスカンダル編のリメイクが見たかった。やはり松本ヤマトは艦に命を感じられる。

音楽は宮川泰に加えて音響スタッフとして参加してきた羽田健太郎も参加してパワーアップしている。どの曲もカッコいい。

10年継続して浮き沈みが多いシリーズだが僕はリアルタイムではなかったが故に全てを1つの塊と認識できたのだろう。毎年これをやられたらたまったもんじゃないだろう。まさか平成二桁の今日に泥沼に嵌るとは思ってもいなかった。ヤマトといいガンダムといい海外のスターウォーズといい終わり損ねた作品の末路は痛々しい。

僕にとってヤマトは74年から83年の航海が1つの塊だ。偉大な船の10年の旅に敬礼!!

投稿 : 2015/12/23
閲覧 : 336
サンキュー:

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