「残響のテロル(TVアニメ動画)」

総合得点
82.1
感想・評価
2152
棚に入れた
11378
ランキング
370
★★★★☆ 3.7 (2152)
物語
3.7
作画
3.9
声優
3.7
音楽
3.7
キャラ
3.6

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ネタバレ

蒼い✨️ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.3
物語 : 1.5 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 2.5 状態:観終わった

作画は素晴らしかったのですが。

アニメーション制作:MAPPA
2014年7月 - 2014年9月に放映されたTVアニメ。

テロリズム(英: terrorism)
不穏で陰惨な響きがする言葉。
今の日本ではISIL(自称・イスラム国)やらアルカイダが有名ですね。

昨年11月のパリ同時多発テロ事件では130人が死亡したことは記憶に新しく、
過去にあった実際の列車爆弾テロ事件では200人が死亡したなどの報道がなされており、
決して良いイメージは、ありません。

この作品の主人公は17歳の男子高校生コンビ。職業はテロリスト?
スピンクスと名乗る彼らは、都内に爆弾を仕掛けてネット動画で犯行予告を出しています。
彼らの目的は?動機は?遊び感覚でやってるように見えるんだけど、ふざけてるの?

一話目で予告のままに都庁が爆破されて崩壊するというショッキングな映像。
テロという言葉の過激さとの相乗効果でインパクトは抜群だったでしょう。

主人公は知能犯 vs ライバルは切れ者刑事 という構図が見えて、
この作品の目玉は、緊張感あふれる頭脳戦?トリックと推理?
もし、そのとおりならどんなに良かったことでしょうか?

実際に柴崎刑事がライバルとして機能してる間は見応えを感じられたのですが、
白髪の態度のでかい小娘がアメリカ政府から派遣されて、柴崎刑事は脱落。
舐めた口だらけだわ、アメリカの国家権力をバックに日本で好き放題するわ。
なんとも魅力が皆無な小娘です。

顛末は略すとして、物語は単なる愛憎劇みたくなって残念でした。

さて、ここからが本筋です。

「テ口ルは王道として大ヒットしていいアニメ、
 これが売れないんだったら、俺たちじゃなくて世の中が間違っている」

監督さんの御言葉です。

実際に、このアニメへの反響は小さかったようです。
何故、残響のテロルはアニメファンにウケなかったのか?
当時49歳の渡辺信一郎監督と、アニメ購買層の20代30代の意識の差だと思われます。

第8話にて学生運動をヒーローとして肯定するかのような台詞がありまして、それで腑に落ちました。

過去の日本、20世紀には反権力がカッコいいとされてきた時代が確かに存在してたのでしょう。
全共闘世代ていうのかな? 角材やゲバ棒や火炎瓶で機動隊相手に戦った人達?

若さに任せて信念のままに戦った青春の証?
国家権力に逆らったことは武勇伝?

お祭り気分で一時の狂騒に乗って暴れただけの末端。
幹部にいたってはテロリスト指定を受けたり、
仲間同士で集団リンチ殺人事件を起こしたりでガチの犯罪者集団。

実際には、きれいなものではなかったことが今の時代には全部バレてるんですよね。
これも情報過多の時代の恩恵なのでしょう。

残響のテロルでは主人公たちは一人も殺さないきれいなイケメンテロリスト。
実在のテロリストとは違いすぎてて無理がある設定ですが、
主人公たちは破壊活動で建造物に大被害を出しまくっていることには変わりなく、
その破壊活動を正当化するために、テロの目的として裁かれるべき巨悪が存在していて、
このアニメでは日本政府が悪。ついでにアメリカも人命無視で横暴の限りを尽くす悪。

主人公たちのテロ活動の動機として、
日本は戦争が出来る国に向かって暴走をしている!
政府は5歳以下の子供を集めて人体実験をして沢山死んだ。
僕らは仲間たちの無念を晴らすために、それを白日のもとに晒す!ストップ日本。

21世紀の日本を舞台でやるには無理がありすぎる設定ですね。

この物語はフィクションですと一応注意書きをしているものの、

現実の東京を模した細かい背景描写。
現実の日本を当てこすって歪曲と受け取られかねない物語。

リアルとファンタジーの融合の結果、
政治的啓蒙のムードが作品から漂いすぎてて、
監督の情熱とは裏腹に、そこが忌避された原因ではないかと?

人体実験そのものはフィクションの世界では全く珍しくありません(よくソビエトが悪役でそれをやらされていました)が、
実在のモデルが有る政府与党に21世紀の日本という設定でそれを態々やらせることに作為がありまくりですね。

やっぱり、渡辺監督とアニメファンの間に今作品では温度差が存在してたのではないでしょうか?
誰の主張が正しいかはさておいて、結局は人間とは自分の信じたいものしか信じない。
それは理屈ではなく、曲げたり翻すのは容易ではないのです。

何より今の時代は、日本を悪役に見立てた反権力ヒーローが受け入れられる土壌が失われつつある。
監督の見立て違いが原因であり、残響のテロルという作品は生まれてくる時代を間違えた。
20世紀に発表された作品なら受け入れられていたかもしれないと思いました。


これにて感想を終わります。読んで下さいまして、ありがとうございました。

投稿 : 2016/03/23
閲覧 : 444
サンキュー:

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