「シュヴァルツェスマーケン(TVアニメ動画)」

総合得点
64.1
感想・評価
326
棚に入れた
1677
ランキング
3893
★★★★☆ 3.4 (326)
物語
3.3
作画
3.4
声優
3.4
音楽
3.4
キャラ
3.3

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ネタバレ

STONE さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6
物語 : 3.5 作画 : 3.0 声優 : 4.5 音楽 : 3.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

BETAより怖いのは人間

 原作は未読。
 終始暗く鬱的雰囲気が漂うが、これはBETAによる恐怖と東ドイツという国家の政治体制の
両方に起因しているよう。
 BETAに関しては本作ではあまり主筋ではなく、舞台装置といった印象。まあ天災みたいな
感じ。
 舞台がヨーロッパで、更に東から迫り来る恐怖ということで、一瞬本作におけるBETAは
(作中のではなく、現実の)ソ連のメタファーかと思ったが、むしろ現実の東ドイツにとっては
親分みたいなものか。
 ただ、この当時の西ヨーロッパにおける恐怖の感覚は、現実のソ連と作中のBETAは
似たような感じじゃないかと。

 BETAが舞台装置である分、中心となって描かれているのが東ドイツにおける共産主義体制の
恐ろしさ。
 いわゆるディストピアものの側面が強く、BETAや戦術機こそ架空の存在だが、この
東ドイツの政治体制は実際にあったものだと思うと空恐ろしく感じる。
 まあ、こういった政治体制を今も維持している国もあるわけだが。

 基本的にはロボットものだが、第666戦術機中隊を主軸としているためにミリタリー色が
強め。
 そして、展開としては東ドイツにおける民主革命を描いたために、政治劇としての色合いも
強く感じる。
 シュタージがメインの悪役的存在となっているが、このシュタージも一枚岩ではなく、
対抗する軍部、反体制活動家、更に西側諸国もその行動は自身の利益優先で動いており、
きれいごとでは済まされないところなどはやけに生々しい。
 BETAという人類共通の敵を前に内輪もめをしている様は、客観的には愚かしく
見えてしまうが、似たような例には歴史上幾らでもあるわけで、この辺はもう人間の
性なのかなと。

 こうした生々しさはキャラの行動にも見られる。
 他作品のようにきれいに自分の信念を貫くわけにはいかず、信念を貫くために良心や感情を
捨てるような展開が多々。
 特に自身の信念のために家族を殺すことになったテオドール・エーベルバッハや
アイリスディーナ・ベルンハルトなどは罪の意識を持ちながら進むしかないといった感じで
かなり悲劇性を感じる。
 その一方で狂気に走ることで良心を捨て去ったようなリィズ・ホーエンシュタインもいる。
 彼女に関しては悪役の一人ではあるのだろうが、やはりこの政治体制による被害者という感が。

 メインヒロイン的存在はカティア・ヴァルトハイムとアイリスの二人。
 カティアがテオドールとBoy Meets Girl的出会いを果たしただけに「先々恋愛関係が
生じるのかな?」と思っていたら、何も起きなかったのは意外。
 そのテオドールの気持ちはアイリスに向いていたが、こちらは拘束後はほとんど見せ場が
ないといった感じで、いわゆるヒロイン的印象度は全体的に薄かった感じがする。

 多少せわしない感はあったが、それなりにうまくまとまっており、個人的には同じ
マブラヴ オルタネイティヴ系作品の「トータル・イクリプス」より1本のアニメ作品としては
よく出来ていた感があった。
 まあ、暗いし、後味もあまり良くないしで、見ていて決して楽しい作品ではなかったけど。

 ロボットバトルも戦術機同士や対BETAなど見応え多々といった印象で、特に戦術機に
関しては第666戦術機中隊のMiG-21 バラライカの無骨な感じが個人的にはとても好き。
 ただ、同じマブラヴ オルタネイティヴ系作品の「トータル・イクリプス」にも感じたが、
BETAの脅威は変わらずといった部分を始め、あくまで外伝という印象が強い。
 この手の派生系作品は本編があってこそ判る面白さがあるだろうと思うのだが、そういう
意味では本編がアニメ化されていないこのシリーズはやはり損している部分が
あるんじゃないかと思ってしまう。

2018/05/27
2022/10/29 文章表現と改行位置の変更

投稿 : 2022/10/29
閲覧 : 929
サンキュー:

1

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