「Occultic;Nine -オカルティック・ナイン-(TVアニメ動画)」

総合得点
73.4
感想・評価
995
棚に入れた
4464
ランキング
998
★★★★☆ 3.7 (995)
物語
3.7
作画
3.7
声優
3.7
音楽
3.7
キャラ
3.6

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ネタバレ

なばてあ さんの感想・評価

★★★★★ 4.8
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

画の弾性、話の同調

(2017.05.22 加筆修正・評価変更)
(2019.06.24 加筆修正・評価変更)

うっとうしいキャラ設定と、すさまじい言葉数。この2つの極(局)がライトユーザをはじく磁場を生成する。

浅い話数で切った視聴者が多かったのも納得がいく。ただ、このハードコアな磁場に、凝りに凝った画作りが重ねられることで、独特な魅力が備わった。アナログで繊細に振動する描線が、「こちら」と「あちら」の速度の差に震える関係を写し取る。ときに登場人物が埋没するほどの、背景とキャラの同質性は、奥行きを圧縮するフラットネスに帰結しつつも、それを重ねたレイヤー感が醸し出され、結果、「こちら」と「あちら」の位置関係を映し出す(とくに第5、6、7、10話はすごい)。

あまりにも洗練されたこの画の「弾性」こそ、一見カラまわりしっぱなしのようにみえる回転数の物語と「同調」する鍵となる。

{netabare} たしかに終盤のかけ足感はパない。未回収の伏線もある。梨々花と森塚の件など、「回収しきれていない伏線」の存在は、たしかに瑕疵としか言えない。それから、コトリバコ事件がメインの本筋としっかりかみ合っているかというと、けっしてそうではなく、ちょっと挿話めいた位置づけにとどまっている。6話までで広げきった大風呂敷が、ひとつの微少な点に折りたたまれているかというと、けっしてそうではないということ。この事実は、ひとつの作品としての完成度をやや引き下げる要素として認めざるをえない。この作品の価値に見合うだけ円盤が売れていれば、2期で残る伏線はしっかりと活きてきただろうに、可能性の針がネガティブに振り切れたことが無念でならない。あとほんのわずか、ほんの少しだけ、風呂敷のたたみ方に丁寧さがあれば、・・・と身もだえしながら振り返るばかり。 {/netabare}

{netabare}とはいえ、この作品をただの「雰囲気アニメで駄作」とする評価や、「早口の説明ゼリフばかり」で「後半は駆け足すぎて萎える」という批判は、まったくあたらない。「雰囲気」「早口」「説明ゼリフ」「駆け足」という要素はすべて、ストーリィとの有機的な連関のなかで、必然性を説得的に獲得している。波長やアストラル体という概念に思いを馳せれば、この作品を際立たせるイレギュラの一切は、レギュラの範疇に収束していく。この作品にかんしてだけは、自分の読解力のなさを、厚顔にも作品へ投影させるという不躾な行為を、糾弾したくてたまらない。{/netabare}

{netabare}詰まるところ、最終話のがもたんが仲間に対して「お願いだから」と大見得を切る展開の唐突さも、がもたんとりょーたす(であるところのアヴェリーヌ)の慌ただしいキスも、オーラスエンディングテーマラストに一瞬挿入されたCパートの未練がましさも、すべてが美しいということをぜひ言っておきたいということ。小林秀雄じゃないけど、悲しさは(疾走、ではなく)失踪するということだ。涙は追いつけない。それは涙にまみれるには美しすぎる。でもロストした悲しさは、波長を合わせることで捕捉できる。その労を執らない輩から、この作品がただ無理解の悪評に晒されていることに、ただただ絶望する{/netabare}

換言すれば、他人への想像力って大切だよね、・・・という陳腐な言葉から、陳腐を引き算してみる試みなのだ。

そして作画。キャラの日常芝居のクオリティの高さ。各話絵コンテのモダニスティックな洗礼。pakoさんデザインのキャラクタが活き活きと動く奇蹟。3回目のマラソンを経て、つくづく作画ヲタを志してきて良かったと思った。奇蹟の原画陣がここにいた。

振り返ってみて、この作品ストーリィも作画も、『シュタゲ』の系列というよりも『電脳コイル』へのアンサーアニメという印象。もちろん『コイル』と比べると速度感はぜんぜんちがうけど、それこそ「周波数」を合わせてみたら、かなり質感が近い。さらにいうと、タイミング的にはこの作品のあとにくる『SSSS.GRIDMAN』は『オカン』へのアンサーアニメとして成立しているようにも見える。これはわたしなりのかなり挑発的な解釈だけど、こう並べることで、現代アニメ史における『オカン』の重要性はいや増すばかりであることがあきらかになるのではないか。

衝撃:★★★★
独創:★★★★★
洗練:★★★★★
機微:★★★★
余韻:★★★

投稿 : 2019/06/24
閲覧 : 386
サンキュー:

9

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